表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/114

第61話 商業ギルド 本部 side

王都にある商業ギルド本部のサブマスの手元には、ある書簡が届けられていた。

送り主は、スヴァロード領のキルィ町の商業ギルド、ギルマスのビル・エルフマン。

書類には報告書とあるが、内容は告発状だった。


ジユジョア領ダーニュ町にある商業ギルドで起こった犯罪とそれの隠ぺい、顧客への規約違反、不誠実な対応などが書かれていた。

サブマスことジャック・W・ブラッズは、頭を抱えている。

あそこのギルマスは、いつの日か何かを仕出かすだろうと思っていたからである。

ギルマスとしての技量はあるのだが、なんせ彼は好奇心旺盛で全てにおいて、優先されてしまうから、理性や秩序などは関係ないのだ。

「ハァ、まったくこれからギルマスに報告せねば」

彼は、重い足取りでギルマスのいる部屋のドアを叩く。


「入れ」

沈んだ顔のサブマスを見て、瞬時に判断したギルマス。

これは、かなりの厄介ごとのようだ。


「なんだ。どうした」

「はい、スヴァロード領のキルィ町から告発状が届きました」

「はっ、なんだと!!!」

「いえ、正確には報告書ですが、内容は告発状です」

「ジユジョア領ダーニュ町のギルドで起こった事件です」

「それをなんで、スヴァロード領のキルィ町が告発するんだ」

「どうも、顧客自身がここのギルドを信用できないからスヴァロード領のキルィ町に乗り換えたようなんです」

「とにかく、こちらの書簡をお読みください」

ギルマスことリッキー・ジョン・パーカーは、しぶしぶ書簡を読み始める。

読んでいくうちに眉間のしわが深くなる。

「あ~あいつならやりかねないな」

「まったくです」

「それで、この犯罪行為の報告はあるのか」

「いえ、今の時点でないです」

「そうか、恐らく隠ぺいをしようとは考えてはいないだろう」

「この内容だ。おおよそ調査に時間が掛かっているんだろうさ」

「そうですね。そう思いますが、発覚した時点で我々に報告する義務があります」

「しかし職員が偽造か盗撮に関わっているとなると、大事だな。ギルド自体の信用問題になる」

「それにギルマスは日常的に顧客を無断で鑑定しているようですし」

「どう、処分されますか」

「そうだな。まずは事実確認をしなくては」

「この顧客だけの言い分を聞くのもまずいだろう」

「では、誰を行かせますか」

「若い奴とベテランを一人行かせるか」

「実力のある若い奴を選べ、新人研修とでもすれば、相手も油断するだろう」

「少し時間をおいてからベテランを行かせるか、一緒に行かせて待機させるか周辺の聞き込みでもさせるかだな」

「そうですね。相手が若手ならば、油断して鑑定するかもしれませんね」

「そうなると、鑑定されたことが分かる人でないとダメですね」

「誰か該当する奴がいるか」

「若手でしたら、ヘンリー・ケリガンがいいでしょう。鑑定スキルを持っていますし、実力もあります」

「ベテランは、ロン・ブレイクリーですかね。書類管理もずば抜けていますから、調査に役立つでしょう」

「犯罪者たちをどうするか、こちらに輸送させて、尋問するか。衛兵に引き渡すか」

「一旦、こちらでも事情聴取しないと、まずいでしょう」

「そうだな。それじゃあ、若手らが出発する時に警備員と冒険者ギルドで護衛も雇って同行させよう」

「すぐに手配してくれ」

「はい、直ちに」

サブマスは一礼して部屋を出ていく。


「それにしても、このアース商会とやらは、何者なんだ」

「登録者は非公開になっているし、登録内容も公に出来ない物じゃないか」

非公開となっていても、ギルド組織のトップクラスの人は見られるのだ。

俺だけじゃ責任取れないしな。

仕方ない、会長に報告するか。


ギルマスもまた、重い足取りで会長室に向かう。

トントン「ギルマスのリッキーです」

「入りなさい」

会長のロニー・デイビス。

「珍しいですね。あなたがこの部屋を訪れるのは」

「はい、お忙しいところ恐れ入りますが、至急報告したい事案がありまして」

「ほう」

「こちらの書簡をご覧ください」

秘書に手渡す。間違っても会長に直接渡してはいけない。

「スヴァロード領のキルィ町のギルドマスターから、ジユジョア領ダーニュ町のギルドへの告発状となります」

「それは穏やかな話ではないね」

会長は、書簡を受け取り読む。

「これは、由々しき事態ですな」

「こんなことが公になれば、商業ギルドの信用も地に落ちる」

「はい、今、若手とベテランを調査に向かわせ、捕縛用の警備員と冒険者ギルドに護衛を依頼するようにしました」

「このギルドも問題だが、この登録者も何者だ」

「こんな魔道具は聞いたことも見たことが無い」

「はい、登録者も設計図だけの登録で、今は商品の販売は考えていないようです」

「登録者も非公開になっていますし」


「ふむ、これはアース商会か」

「はい、登録したばかりの商会のようです」

「はて、どこかで聞いた名前だな。どこだったか」

秘書のリー・ラシャウェイが。

「先日、例の本を売りに来た御方が『アース商会』の代理販売をしていると、おっしゃっていらしたかと」

「お~、そうだった。確かに」

「それに、『アース商会』については、詮索も関わることもしないようにと、苦言されていました」

「えーっと、それはどういうことですか」

「これらを買ったのだよ」

そう言って会長は、購入した本や木彫り、ぬいぐるみをギルマスに見せた。

「これは、なんていう代物ですか」

「こんなにすばらしい品は見たことがないです」

「そうだろう。この木彫りとかも素晴らしいが、本も見なさい。表紙の作りも品があり丈夫でデザインも良い」

「本の内容だって、素晴らしいのだよ」

「今までの本が幼稚にすら思えてしまうのだから」

「子供向けの絵本も挿絵が素晴らしいし、ご婦人向けの恋愛小説も純粋で感情豊かで素晴らしいのだよ」

「こんな商会だ。誰でも自分のお抱えにしたいだろう」

「だから、そうならないように苦言されていったのだよ」

「商会登録の書類には、会長は女性でアン・スペンサー、16歳となっています」

「代理人がジョン・タンディです」

「こんなに若い人が会長ですか」

「だからだろう。非公開にして代理人を男性にしたのは」

「会長に苦言するような御方は、どのような人物なんですか」

「それが、私にも良く分らないが、いつの間にか知り合いになっておってな、これらを紹介されたのじゃ」

「そんなことが・・・おかしな話ですね」


「アース商会も疑問ですが、事件のギルマス、サブマスの処分をどうしますか」

「そうだね。ギルマスはクビか一年の減俸、サブマスは監督不行き届きとして半年の減俸だね」

「受付担当はどうしますか」

「そうだねぇ。上司の命令には逆らえないが、顧客としては関係ない話だからね」

「三か月の減給としよう」

「このことは、若手たちから一方があったのちに、各ギルドに通達するように」

「本来ならば、ギルド長会議にかけるところだが、急を要するからね」

「特例処置としよう」

「はい、わかりました」


ギルマスが出て行った部屋では。

「会長、このアース商会のことはどうしましょうか」

「どうもしないよ。何も悪いことはしていないし、現状を理解もしている」

「録画できる魔道具や鑑定できる魔道具など、誰でも欲しがるだろう」

「良いことにも悪いことにも使えてしまう」

「このアンという女性は、そのあたりを理解しているのだろう」

「ただ、なんらかの理由で設計図だけでもと思い、登録したのではないかね」

「そうなのでしょうか。是非お会いしてみたいものです」

「それはかなわないだろうね。苦言されたわけだし、後は運次第だね」


ギルマスは、調査団に指示を出していた。

若手とベテランに「ヘンリー悪いな、本来ならばおまえが行く必要はないんだが、優秀で鑑定できる奴が居ないからな」

「たぶんだが、相手のギルマスは最初に会ってすぐに鑑定を掛けるはずだ、その場ですぐに鑑定されたことを告げて捕縛しろ」

「ベテランと警備員は外で待機して、様子を見ているように」

「犯罪者の三名は、すぐに王都へ輸送」

「ギルマスを捕縛した後は、犯罪の調査にかかり、都度報告するように」

「ギルマス、サブマス、受付担当からの事情聴取も同時に行うように」

「そのサブマスと受付担当には、事情聴取後にこの書簡を渡し処分を言い渡すこと」

「ギルマスについては、クビか減俸か自分で選ばせろ」

「何か質問はあるか」

「期間はどのくらいでしょうか」

「そうだなぁ。三か月から半年だな」

「それだけあれば、調査も終わるだろう」

「護衛の冒険者はBクラスとCクラスの8名だ」

「馬車と荷馬車と護送車だ」

「調査した書類なども本部に持ち帰るように」

「宿は中クラスで頼む、下級の宿は辛いだろうし、高級宿は元々無理だからな」

「はい、わかりました」


これで、上手くいくといいんだが。

ギルマスのトニーよ、せめて抵抗はするなよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ