第59話 ある日の休日
昨日はあんな事があったから、今日は休みにしようかな。
身体は疲れていないが、気分の問題だ。
人は欲深い生き物だから、他人を妬む気持ちもわかる。
私だって、神様にこれでもかとスキルや色んな事を要求した。
今は快適に過ごせているおかげか、他人を羨む気持ちはおきない。
この世界の人と交流が増えたら、欲求が出てくるのか。
恋人が欲しいと思うこともあるかもしれない。
これから先どうなるか分からないが平穏に暮らせることを願うばかりだ。
「おはよう、ジョン」
人形ジョン『おはよう、アン』
「今日はねぇ。シェルターでゴロゴロしていようかと思う」
人形ジョン『どこか、体調でも悪いのですか』
「違うよ。なんだか昨日の件で気分的に疲れたかなぁって」
人形ジョン『そうでしたか。それはお疲れ様です』
『アンは、外に出かけなくてずっとシェルターで過ごすのでもいいのでは』
「え~、それじゃあ完全な引き籠りじゃない」
人形ジョン『ですが、初めは引き籠り生活をしたいと、おっしゃっていましたよね』
「そうだねぇ。最初はね、そう思っていたけれど偶には外にも出たくなるでしょ」
人形ジョン『そうなのですか』
「そう、そんなものなの」
「今日は一日シェルターで過ごす予定」
「あ~でも特になにをするかは決めていないよ」
「だから、ジョンはいつも通りに過ごせばいいよ」
人形ジョン『そうですね。でもアンが居るならば一緒に何かしたいです』
「一緒にねぇ。ジョンは泳げるの?」
人形ジョン『一応は練習しましたので泳げます』
「ジョンは水に入っても問題ないの」
人形ジョン『はい、問題ないようにしましたから』
「じゃあ、一緒にプールで泳ごうか」
「後は、映画でも観ようよ」
「ジョンはしたいことがある?」
人形ジョン『添い寝をしてみたいです』
「はっ、添い寝?」
人形ジョン『はい、ドラマや映画を観ていたら、親子や恋人が添い寝をしていまして、どんな感じなのか体験してみたいです』
親子と恋人では、関係性が全然違うじゃないか。
あ~でも、ジョンは元人形だから、いや今も人形か、そのあたりの間隔とか感情が分からないのかもしれないか。
深く考えるのはやめよう。
「分かった。じゃあお昼寝を一緒にしよう」
人形ジョン『ありがとうございます。楽しみです』
「でも、ジョンは他にすることがあるんじゃないの」
人形ジョン『いいえ、特に急いですることはないです』
「そうなんだ。朝ごはんを食べたらプールに行こうか」
人形ジョン『分かりました。準備してきます』
気のせいか、ジョンが張り切っているように見えるのは。
さて、朝ごはんは何にするか。
自分では作らないのに、メニューに悩むとはなんて贅沢な。
でもなぁ。これが食べたい!!! って思い浮かばないと困るのだ。
鮭定でいいか。
ご飯、焼き鮭、温泉卵、納豆、キムチ、ほうれん草のごま和え、レンコンの甘辛炒め、サラダ、ヨーグルト、りんご、キウイフルーツ、ザクロジュース、コーヒー。
なんだか、鮭定が随分豪勢になった。
食後ゆっくりしてから、プールに行った。
ジョンは準備ができたのか、プールの淵にあるベンチに座っていた。
「ジョンも水着を着るんだね」
人形ジョン『泳ぐ時は水着を着るのですよね』
「そうだね。その水着はジョンが選んだの」
人形ジョン『はい、水泳の競技を見ていたら皆このような水着を着ていましたから』
確かに間違いではないが、あれは、ブーメランパンツという物ではないのか。
ジョンは以外と体格はいいのだ。
ムキムキではなくて、細マッチョに近いか。
「軽くストレッチをしたら泳ごうか」
人形ジョン『そうですね。運動前のストレッチは大切です』
「ジョンは泳ぎ方で好きなのはあるの?」
人形ジョン『得には無いです。アンはどうですか』
「私は、平泳ぎがいいかな」
人形ジョン『では、私も平泳ぎにしましょう』
二人でプールに入り、泳いで行く。
私はのんびりと進んで行くが、ジョンはスイスイと泳いで行く。
あれは、本気の泳ぎか。
あっという間に、向こうの淵に着いている。
「ジョンは早いね」
人形ジョン『そうですか。アンはゆっくりですね』
「そうだよ。競技ではないから、のんびりと泳ぐの」
人形ジョン『・・・のんびりですか』
「そう。誰かとタイムを競争しているわけではないから、楽しむためにゆっくり泳ぐの」
人形ジョン『泳ぐのにもそんな意味があるのですね』
「ハハ、そんなに難しく考えなくてもいいよ。ジョンが泳ぎたいようにすれば」
人形ジョン『分かりました』
それからは二人で、クロール、バタフライ、背泳ぎと泳ぎ方を変えて楽しんだ。
競争してもジョンには勝てないので、無駄なことはしないのだ。
そのあとも、水中バレーボールをしたり、浮き輪に乗って遊んだりした。
プールサイドチェアに座って、トロピカルジュースを飲んで休憩もして楽しんだ。
あ~今度、仮想地球に行くときは、海外の綺麗な海も良いかもしれない。
「そろそろ上がって、お昼にしようか」
人形ジョン『そうですね。十分に楽しめました』
「そう、ジョンが楽しめたのなら良かった」
お昼は軽めがいいかなぁ。
ミックスサンドにしよう。
「ジョンも何か食べる?」
人形ジョン『そうですね。アンと同じ物が食べたいです』
「ミックスサンドだけれど、それでいい?」
人形ジョン『はい、お願いします』
二人分用意して、一緒に食べる。
やっぱり、一人で食べるよりは二人の方が美味しく感じる。
「え~と、お昼も食べ終わったし、お昼寝する?」
人形ジョン『はい、したいです』
「どこで寝る?」
人形ジョン『アンの部屋がいいです』
「私の部屋?」
人形ジョン『アンをより感じながら寝てみたいです』
「そういえば、普段ジョンは寝ているの?」
人形ジョン『いえ、私には寝る必要はありませんから』
「でもさ、休憩は必要なんじゃないの。ずっと働き続けるのは無理でしょ」
人形ジョン『そうですね。少しの時間は休憩していますね』
「それは、寝ているわけではないの」
人形ジョン『はい、じっとしているだけです』
「ふ~ん、とにかく休憩はしているんだ」
「じゃあ、私の部屋に行こうか」
人形ジョン『はい』
人形ジョン『ここが、アンの部屋ですか』
「あれ、ジョンも入ったことあったよね」
人形ジョン『最初の時だけ入りましたね』
「じゃあ、寝ようか」
人形ジョン『着替えなくてもいいのですか』
「ジョンは、パジャマなんて持っていないよね」
人形ジョン『パジャマは、無いです』
「今買うから待っていて」
ジョンには、可愛い系かクール系どちらがいいか。
この際だから、両方買おう。
ついでに、お揃いにしちゃおう。
「ジョン、2種類買ったから、どちらがいい?」
人形ジョン『アンが選んでください』
「ふふ、可愛いのにしよう」
二人でお揃いの可愛いパジャマを着て、ベッドに入る。
「なんだか、不思議な感じだ」
人形ジョン『もっと近づいてもいいですか』
「あ~うん」
ジョンとピッタリくっついて寝る。
これ寝られるのか。
人形ジョン『アン、腕枕とやらもしてみたいです』
「はあ~」
人形ジョン『ダメですか』
「ダメと言うか。ジョンはどんなテレビを見ているの」
人形ジョン『色んなテレビです』
『サスペンス、刑事、学生、恋愛、コメディ、SF色々です』
「その中で腕枕していたの」
人形ジョン『そうです。母親が子供を抱いていたり、恋人がしていたりしていました』
「わかった。じゃあいいよ」
人形ジョン『はい、ありがとうございます』
なんだか、よく分からないうちに、腕枕され寝ることに。
最初は、ドキドキして寝られないと思っていたが、いつの間にか眠ってしまった。
ジョンは、アンが寝息をたてはじめたら、ずっとアンの顔を眺めている。
ジョンとしては、良く分っていないが、幸せを感じていた。
腕枕していた腕は、自然とアンを抱きしめていた。
アンが目を覚まして驚くまでもう少し。
「ジョン、映画は何が観たい?」
人形ジョン『特にありませんので、アンが決めてください』
「そうだなあ。無難にアニメにしようか」
「子供向けの童話にしよう」
ソファーベットのような、カップルシートに並んで観る。
映画に付き物の、炭酸ジュースとポップコーンを注文。
久しぶりの映画は、十分楽しめた。
せっかくあるシアタールームなので、これからはもっと観るようにしよう。
「ジョン、久しぶりの休日はどうだった」
人形ジョン『ずっと、アンと一緒に過ごせてよかったです』
「そう、それならよかった。また休みの日をつくろうね」
人形ジョン『はい、嬉しいです』




