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第58話 冒険者活動⑥ー2

「おはよう、ジョン」

人形ジョン『おはよう、アン』

『今日は本当に行くのですか』

「そうだよ。売られた喧嘩は買わなくちゃ」

人形ジョン『アン、あなたは女性なのですから、危険なことはしなくて良いのですよ』

「でも、ジョンは私を強くするために鍛えたんでしょ」

人形ジョン『それは、スキルがあるからで。それにこの異世界は危険がつきものですから』

「そう、この異世界は危険が多いし、人権も有るようで無いしね」

「だから、自分のことは自分で守らないと」

「もちろん、困った時はジョンに助けてもらうけれど、ジョンに甘えてばかりではダメでしょ」

人形ジョン『分かっています。奴らはきちんと監視していますから』

『それでも、いつも以上に気を付けてくださいね』

「うん、わかった」

「じゃあ、西門で採取してから、東に移動するね」

「なにか進展があったら、念話で連絡してね」

人形ジョン『はい、お任せください』


ジョンは、アンが心配でならない。

本心は、自分が一緒でない時は、シェルターから一歩も外に出したくないのだ。

あんな奴らは、一瞬で消し去りたいのだが、アンが望まないし奴らの存在に気がついてしまったから、手出しはできない。

アンが気づく前だったら、消し炭にしていたのにと後悔していた。

これからは、同じことが起きないように、自動で敵がいないか監視することにした。

ジョン自身も訓練や、色んな技術を身につけようと忙しく一日中監視することができないのだから。

ただの教育係だったはずのジョンがどうしてここまで変化したのかは謎である。

アンという人間と交流するうちに、刺激され進化したのかもしれない。


今日は、アンが西門に来たことを印象づけるために、門から正規の手続きをして出ることにした。

西門の近くで外にでて、列に並ぶ。

「おはようございます」

「おや見ない顔だね」

「はい、いつもは東で活動していますが、はじめて西門に来たんです」

「何か注意することはありますか」

「はい、ギルドカードを返すね」

「アンちゃん、初めてなら、西にいる角うさぎには注意することだね」

「そうなんですか」

「東は角が一本だが、西では鹿のような角が二本あるから、危険度が増す」

「二本ある角うさぎはジャッカロープというんだ」

「だから、注意するんだよ」

「わかりました。ご親切にありがとうございます」

「あ~いいって、それも俺たちの仕事だから」

「俺は、マークだ」

「アンです、ありがとうございました。行ってきます」


これで、一人目の門衛に印象づけられた。

あとは、帰りも同じようにしよう。


早歩きで採取場所まで行く。

薬草も東とは違う品種があるようなので、それが目的だ。

草原に着いた。

「サーチ 西門限定 良品 薬草 自動採取」

サファイアリリー、スコーピオンビーンズ、ホワイトリーフ、ロホジザ蔓を採取。

どれも、東では見かけない薬草だ。

これならば、大丈夫だろう。


あとは、角うさぎか。

ジャッカロープを一匹は見つけたいな。

「サーチ ジャッカロープ」

おっ、何匹か見つけた。

「ウインドカッター」

次々と倒していき、5匹捕まえた。

全部血抜きして、収納にしまう。

西門から歩いて帰るから、出すのは一匹でいいだろう。


さて、目的は達成できたから、ゆっくり休憩しよう。

その前にジョンが心配しているだろうから、連絡でもするか。

念話『ジョン、聞こえる』

人形ジョン『はい、聞こえます。アンは大丈夫ですか』

『うん、大丈夫。西でしか採取できない薬草や、西にしかいない角うさぎでジャッカロープを捕まえたから、休憩したら東まで行くね』

人形ジョン『分かりました。初めての場所ですから気をつけてくださいね』

『奴らのことは監視していますから』

『うん、よろしくね』


結界と認識阻害を強めに張り、シートを敷いてお茶にする。

今日は、カツサンド、アップルパイ、クラムチャウダー、紅茶。

贅沢なお昼である。

また、門衛さんに印象づけないと。


西門に近づいたので、認識阻害を弱めに変える。

「こんにちは」

「こんにちは、あまり見ない顔だね」

「はい、アンといいます。今日初めて西に来たんです」

「朝、門衛のマークさんにジャッカロープのことを教えてもらい助かりました」

「東とは違うので見てビックリしちゃいました」

「教えてもらっていてよかったです」

「見てください。一匹だけ狩れたんです」

「ああ、マークかい。あいつは親切だからな」

「どれ、本当だな、一匹でも狩れたならばすごいじゃないか」

「はい、これもマークさんのおかげです」

「そう言ってもらえると、うれしいね。マークにも伝えておくよ」

「俺は、ライアンだ。よろしくな」

「はい、よろしくお願いいたします」


これで、西門の門衛二人に印象づけられた。

あとは、ギルドで勝負だ。

アンは、うさぎに重力軽減をかけて、東まで歩いていく。

東門から帰ってきた振りをするために、途中からは裏通りを行き東門ちかくの道にでる。

まわりには奴らの仲間がいないことは、確認済みである。


念話『ジョン、今東門近くまで戻ってきたよ』

人形ジョン『はい、【ビューview】機能で見ています。奴らはギルドの近くで待機しています』

『十分注意してくださいね』

『わかった』


気がつかない振りをしてギルドに入る。

レジーナさんの前まで行き、採取したものを出そうとしたときに。

「見つけたぞ。おまえ」

「俺たちから、採取したものを奪っただろう」

私が無視していると。

「無視してんじゃねえぞ、そこの女おまえだ」

「私のことですか」

「とぼけてんじゃねえぞ。おまえだよ。俺たちから盗みやがって」

「何を言っているのか、わかりませんね」

このやり取りの間に、レジーナさんは目線で隣にいた、アリシアさんに上司を呼びに行かせている。

偶にあることなので、目線だけで指示することを打ち合わせしてあるのだ。


「俺たち全員が証人だ。言い訳は出来ねえぞ」

「私があなたたちの何を取ったというのですか」

「決まっているだろう、東門の採取場所に決まっているじゃないか」

「東門ですか」

「だから、そう言っているだろう。言い逃れは出来ねえからな」

「レジーナさん、今の会話は聞こえましたか」

「はい、聞こえています」

「では、彼らが東門から採取したものを私が盗んだと言っていると証人になっていただけますか」

「はい、もちろんです」

「あ~、俺も証人になるぜ」

この冒険者ギルドのギルマス ジェームズ・セント・カヴィーゼルの登場である。

「げっ、なんでギルマスが」

「なんだ、文句でもあるのか。俺が出てきちゃ都合が悪いのか」

「そんな訳ないだろう。いいぜ、ギルマスも証人になってもらおう」

私は、チラッとギルマスの顔を見て、カウンターに採取したものを取り出す。

「では、私が採取したものを出します」

カウンターに薬草とジャッカロープをおく。

レジーナさんが。

「確認します。サファイアリリー、スコーピオンビーンズ、ホワイトリーフ、ロホジザ蔓、ジャッカロープですね」

「どれも、西門でしか採取と討伐できないものです」

「インチキだ。俺たちを騙そうとしている。俺たちから奪ったものをどうした」

「あなたたちが、何を言っているのかわかりませんね」

「私は西門で採取してきましたし、あなたたちが東門で採取したものなど知りませんよ」

「誰かと組んでやがるな。それで西で採取したものと入れ替えたんだろう」

「それならば、西門の門衛さんのマークさんとライアンさんに確認してください」

「西門から出るときと帰ってきたときに、会っていますから」

「そんなの嘘に決まっている。門衛がいちいち覚えている訳ないじゃないか」

「絶対に覚えているとは断言できませんが、二人とも今日会って会話しているんですから、覚えている可能性があると思います」

「誰かに確認してもらいますか」


「そこまでだ」

「アンの言うことが正しい」

「なんでだよ。ギルマス、俺たちが嘘をついているっていうのか」

「ああ、そうだ。俺が知らないとでも思っていたか」

「お前たちが、新人相手に同じようなことをしていたことは、わかっているんだぞ」

「何人もの新人たちが訴えてきたが、証拠が見つからずに今に至っただけだ」

「お前たち、これだけのことをしたんだ。覚悟はあるんだろうな」

「冒険者ギルドの規約違反により資格はく奪だ」

「それだけじゃないぞ、おまえたちは犯罪奴隷いきだ」

「ふざけんじゃねえぞ。ギルマスは女に甘いだけじゃねえか」

「そこまで言うなら、今から西門に人を行かせて証人を呼んでこさせる」

「ああ、おまえ悪いが行ってきてくれ、大至急とな」

ギルド職員が慌てて出て行った。


「こんな女がジャッカロープを捕まえられるはずがねえ」

「俺たちと勝負しろ。決闘だ」

「なぜ、私があなたたちと決闘しなくてはいけないのです」

「お断りします」

「ほら見ろ、やっぱり実力がないから、逃げるんだろう」

「いいじゃないか。決闘してみれば」

「ギルマス、分かっているじゃねえか」

「アンちゃん、ここいらで、あんたの実力を見せつけたほうがいいんじゃないか」

何言ってんだこのギルマスは、と心の中で思う。

「わかりました。不本意ですが、そこまで言うのでしたらお受けいたします」

「ハハ、いい度胸だ。半殺しにしてやるからな」

はあ、馬鹿な人たちだ。

こんな奴らは、思いっきり潰してやろう。

「おい、殺すなよ」

私の顔を見て言ったのか。このギルマスは。

「俺たちだって、分かっているよ。殺さないさ、半殺しにするだけだよ」

自分に言った言葉だと、勘違いしている。

この馬鹿はわかっているのか。やるならば、やられる覚悟もあるのだろうな。


私たちは、訓練場に移動する。

「では、これより木刀での決闘を開始する。殺しはダメだ」

「それから、勝負は一対一で行う」

「他の者は手出し無用だ。いいな」

私と吠えていた人がまず入る。

「それでは、開始」

ギルマスの掛け声で、一瞬にして相手の間合いに入った。

両肩を思いっきり叩き潰した。

続いて、両手首。

肩も手首の骨も、粉々だろう。

「ウォーギャオー」

「いてぇ~、いてぇ~よぉ~」

なんとも、情けなく痛がりながら転げまわっている。

「勝者、アン」

「おい、誰かそいつを片付けろ」

「次」

「今度は俺が相手になってやる」

「そいつみたいに簡単に倒せると思うなよ」

「勝負開始」

また一瞬で相手まで移動し、肋骨を思いっきり叩いた。

たぶん、何本も砕けただろう。

男は一歩も動くことをせずに、叩き潰されたのである。

「ギャー」と声をだしたが、それっきりうずくまり動かない。

あれ、まさか死んでいないよね。

力を入れ過ぎたか。

「勝者、アン」

「残り二人だ。こいつも早く片付けろ」

ガタイのいい人と陰気そうな二人が残った。

「俺がいく」

ガタイのいい方が出てきた。

「それでは、開始」

相手も同じように一瞬でこちらに向かってきた。

だが、こちらの方が早い。

膝と足首を打ち、次に肩を潰した。

これで歩けないだろう。

相手が倒れたことで、離れると「バチン」と音がした。

音がした方を見ると、さっきの陰気な男が倒れている。

あ~馬鹿が、魔法で私に攻撃したな。

そんなこともあるだろうと、バリアを強めに張り、攻撃されたら、3倍返しにしておいたのだ。

自分で放った魔法が自分に返ってきたのだ。

「勝者、アン」

「そして、倒れているこいつは、ルールを破り対戦中のアンに向かって魔法を打った」

「ひっ捕らえろ」

ギルド職員が縄をかけて、連れて行った。


「さあ、これで決闘は終わりだ。解散」

ギルマスが訓練場にいる見物人に声をかける。


まったく、この人のせいで疲れた。

ギルマスを見ると。

「なんだ、不服そうだな」

「まあ、そうですね。わざわざ決闘する意味ありましたか」

「そう言うなよ。これで実力は証明できたんだから」

「余計に厄介ごとが増えそうですけれど」

「まあ、そん時はそん時だ。ハハハ」

いや、笑いごとじゃないし。


受付のフロアーに戻ると、西門の門衛さんが二人いた。

今日会った人だ。

ギルマスが「わざわざ来てもらって悪いな。こちらのアンちゃんが他の冒険者に因縁をつけられてな」

「今日、西門に行ったか確認したかったんだ」

「あの、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「変なことに、巻き込まれまして」

「あ~馬鹿な奴らが、アンちゃんを逆恨みしてな、自分たちの採取したのを横取りしたと言い出したものだから、一応確認のために来てもらったんだ」

「間違いなく、アンちゃんは朝一番で西門から採取場所に行きました」

「俺も証言できます。採取から西門に帰ってきて、ジャッカロープも見ましたから」

「そうか。ありがとうな。手間を掛けちまって」

「これ、僅かだが手間賃だ」

「あ~、すみません。ありがとうございます」

「今日は本当にすみませんでした」

「いや、良いってことよ。偶にいるんだよ。新人相手にしでかす奴らが」

「だから、気にするなって。また、西門にも来てくれよ」

「はい、楽しかったのでまた行きたいです」

「じゃあな」

門衛さんたちは、手を振って帰って行った。


「さて、これからあいつらを処分するか」

「何か望むことはあるか」

「いえ、これ以上関わりたくありませんから」

「そうか。それじゃあ、こちらの規定どおりの処分とするぞ」

「はい、お願いします」

「ところで、アン」

「おまえ、あいつらを嵌めたな」

「何のことでしょう」

「あいつらが、今日やらかすと知って、わざと西門で採取したな」

「違いますよ。偶々ですよ」

ギルマスがジロリとこちらを見るが、知らん顔だ。

「そうか。まあ、そういうことにしておいてやる」


「それと、今日からお前はDランクだ」

「はい?、何でですか?」

「あいつらは、Dランクだ。それを軽々と倒したんだ」

「本当ならば、Cランクにしたいが、そうするとまた周りが騒ぐだろう」

「いや、でもまだEランクになって、間がないですよ」

「あれだけの実力があるんだ、Eなんておかしいだろう」

「誰でもFから順に進むべきではないですか」

「まあ、それもそうだが。決闘もしたんだ。Dでいいさ」

「レジーナに話してあるから」

そう言うと、ギルマスは2階に上がっていった。


レジーナさんのところに戻り、「ご迷惑をお掛けいたしました」

「アンさん、大丈夫だったかい」

「アリシアさんも、ありがとうございました」

「私は何もしていませんし、でも怪我が無くて良かったです」

「ギルマスを呼びに行ってくれました」

「やっぱり、責任者が立ち会ってくれるのが、一番いいですから」

「あの人たちの悪い噂は聞いていたから、困っていたんだよ」

「ギルマスによれば、処罰されるそうですから安心しました」

「まあ当然だよね」

「それより、今日の分の仕分けは出来ているから、昨日の分と合わせて支払いをするよ」

「はい、お願いします」

ギルドカードと昨日の木札を渡す。

「ギルマスからDランクに昇格するように言われているからね」

「アンさん、おめでとうございます」

「はい、ありがとうございます。でも、あまり嬉しくはないですね」

「普通に活動して上がりたかったです」

「そうかい。まあ実力はあるのだから」


ギルドを出て、ジョンに連絡する。

念話『ジョン、終わったよ。今から帰るから』

人形ジョン『はい、分かりました。お気をつけて』


「ただいまぁ~、ジョン」

人形ジョン『はい、お帰りなさい』

『大丈夫でしたか、お怪我はしていませんか』

「なんともないよ。大丈夫。心配かけてごめんね」

人形ジョン『本当にアンが帰ってくるまでは心配です』

「あいつらは、犯罪奴隷になるみたい」

「処分はギルマスに任せてきた」

人形ジョン『そうですね。その方がいいでしょう』

「なんかね。ギルマスには私たちの計画がバレていたみたい」

人形ジョン『そうでしたか。中々切れ者ですね』

「まあね。ギルマスだもんね」

「今回のことで、Dランクになったの」

「あいつらがDランクだったらしくて、それを倒したからだって」

「おかしな理由だよね」

人形ジョン『理由はともあれ、おめでとう』

「ありがとう」

「でも、これで他の町にも行けるけれど、もう少しはこの町に居ようか」

人形ジョン『そうですね。昇格してくれたギルマスに義理もありますからね』



【冒険者ギルド side】


「やっとあいつらを捕まえられたぜ」

「本当によかったですよ。これ以上被害者が出ると新人が皆いなくなるところでしたから」

「アンのおかげだな」

「そうですね」

「アンはどんな子だ」

「いつも礼儀正しいですよ。沢山採取もしてきますし」

「へぇー、新人なのにか」

「そうです。なんでも親と一緒に薬草採取したことがあると言っていました」

「そうなのか。あれだけの実力があるんだ。親はどう教育したのか」

「薬草の知識もあって、武術にも優れているって、まして女だぞ」

「そうですね。家族の話とかは、それ以外はしませんね」

「まあ、冒険者なんてそんなものだからな」

「よく教育された、良いところのお嬢さんかなとは思いますねぇ」

「仕分けを待っている時も、時々資料室に行っているようですし、勉強熱心ですよ」

「冒険者にしては珍しいよな」

「ええ、本当に。たぶん勉強することや本を読むことに慣れているのでしょう」

「そういえば、少し気になることが。商業ギルドのギルマスより何度も呼び出しされています」

「はっ、商業ギルドにか。何か商売しているのか」

「いいえ、そのあたりの話は聞いていませんし、御法度でしょ」

「そうだな。でも何の用事やら」

「あのギルマスだぞ。よっぽど興味があることなんだろうよ」

「そうですかねぇ」


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