第52話 雑用の日③
「はぁ~」
朝からため息が出てしまうのは、仕方ないと思う。
自分の意志で引き籠るのはよいが、他人のせいで引き籠るのは違うのだ。
これも、商業ギルドのせいだ。
いや、待てよ。
内緒で、薬草採取に出かければいいのでは、そうだよ、冒険者ギルドに行かなくても、薬草採取だけすればいいじゃないか。
そういえば、この町には冒険者ギルドは、一か所だけなのか。
そこそこの広さがある町だから、別の門近くにもあるかもしれない。
【地図】を開いて、西南北の門を調べてみる。
おっ、西門の近くに冒険者ギルドがあった。
南と北には無かった。
そうだよね。一つの町でそんなにいくつも冒険者ギルドは無いよね。
西門からも薬草採取ができるから、こちらに行ってみるのもありかも。
そんな気分でもお腹は空くのである。
今朝のメニュー。
シナモントースト生クリーム付き、目玉焼き、ウインナー、チーズ盛り合わせ、サラダ、プルーン、ヨーグルト、コーヒー。
自分で作るシナモントーストは、イマイチなのにお店で食べるのはなぜ美味しく感じるのか。
腕の差か。
「おはよう、ジョン」
人形ジョン『おはよう、アン』
「この町には、西門にも冒険者ギルドがあったの」
「今度、そっちに行ってみようかな」
人形ジョン『そうですね。それも、いいかもしれません』
『ですが、東門のギルドにも顔を出して、様子を確認するのが良いと思います』
『東門は問題ない人なので、人脈づくりもかねて行くのがいいと思います』
『ただ、一週間は様子をみましょう』
「わかった」
「今日は、魔道具を作ろうかな」
人形ジョン『どのような魔道具ですか』
「鑑定ができる魔道具」
「ほら、私が作っている商品の偽物が出てくるとか、盗作だと言い出す人が出たときに、鑑定の魔道具があれば、証明できると思って」
人形ジョン『なるほど。それはいいですね』
「そうでしょ。それで鑑定した内容も印刷できたら便利でしょ」
「空間に表示されるだけだと、証明書にはならないからさ」
人形ジョン『それはすごいです。でも、そんなに難しそうな魔道具なのに作れますか』
「いや、わからないけれど、作ってみるよ」
人形ジョン『そうですか。頑張ってください』
「でも、商品には【偽造防止】を付与しているけれど、盗作されちゃうかな」
人形ジョン『できないと思いますが、万が一を考えるのもいいでしょう』
「そうだね」
「ジョンは今日何するの」
「また、勉強」
人形ジョン『そうです。人体のつくりは複雑です』
『今日は、医学書を読み込みます』
「へぇ~、すごいね。頑張って」
人形ジョン『はい、ありがとうございます』
『それと、西門も調査しておきます』
「ほんと、ありがとう」
魔道具を作る前に、ジョンの服を買おう。
従者用の服は、地球のネット通販から、ベストの色をグレーで柄の入ったのを選ぶ。
今後のことを考えると、護衛用の服も必要だよね。
貴族風とか騎士風にしてみようか。
これは、この世界のネット通販で上級品を買おう。
ワイシャツは細目のプリーツが入ったのがいいかなあ。
あとは、ボタンダウンとストライプ柄。
こっちの世界には、無いのか。
仕方ない、ワイシャツだけは地球から買おう。
上に着るのは、ベスト型で腰まで丈があるのにして、コートはひざ丈にしよう。
色は黒よりのグレー。
ズボンは白と黒の二本で靴はひざ下までのブーツで色は黒。
剣をさす、腰ベルトも必要だね。
短剣とショートソードも必要だ。
これは勝手に買えないから、ジョンに選んでもらおう。
【鑑定魔道具制作】
どんな形にしようか。
門衛とかギルドでは、水晶で確認していたよね。
石は水晶にしよう。
持ち運びも考えて、5cmにするか、小さいかなあ。
濁り、くすみの無い透明なクリスタルにすれば大丈夫かな。
術式を刻むのか、付与で出来るのか。
鑑定は出来ても、印刷をどうするか。
台の上に水晶を置いて、台から紙がでるように。
台の素材は、木か、鉱物にするか。
台座が木だと安っぽくみえるかもしれないから、シルバーにしよう。
台座に空間収納を付与し、収納の中に紙を保管して、鑑定したら鑑定内容が紙に印字されて出るでいいか。
台座から水晶がずれないように、くぼみを作って、台座の紙が出るところをラッパ状にする。
水晶は、台座から外れないように、強力接着剤で取り付けて、付与でも外れないようにしよう。
「鑑定、書類、商品、品質、持ち主、名前、種族、性別、年齢、職業、学歴、性格、犯罪歴、悪い行い、三親等まで表示」
「鑑定内容を台座に収納されている紙に印字し出力される」
「シルバーの台座に水晶は固定」
「汚れ防止、破損防止、改ざん防止、偽造防止、持ち主に帰還」
「登録者 アン・スペンサー」
「台座の裏にアース商会名と商標登録を印字」
「台座の正面に鑑定魔道具と印字」
「クリエイト」
これで、上手くいったか。
台座の収納に紙を1万枚入れる。
では試してみよう。
水晶に手を当て。
「鑑定」
名前 アン・ヴァン・スペンサー(藤原香)
種族 人族
性別 女性
年齢 16歳(45歳)
職業 商会会長、冒険者(会社員)
学歴 なし(大学卒業)
性格 素直、真面目、楽天的
犯罪 犯罪歴なし
悪い行い 夜中におやつを食べている
三親等 父イアン・ベグリー・スペンサー(享年43歳)、兄エリック・ジェームズ・スペンサー(享年19歳)、母アビー・タルペ・スペンサー(享年39歳)、・・・」
今は隠ぺいしていないので、こんな表示でいいか。
まあ、成功といえるよね。
念話『ジョン、出来たよ』
人形ジョン『もう、出来ましたか』
『リビングに来て』
人形ジョン『わかりました。今行きます』
「ジョン、見て、これが鑑定魔道具」
人形ジョン『水晶を使ったのですか』
「そう、門衛とかギルドでも使っていたから」
「試しに、私を鑑定してみたの」
鑑定した書類をジョンに見せる。
人形ジョン『これだけの内容が分かれば、すばらしいです』
「ジョンも試してみる」
人形ジョン『わかりました』
ジョンが水晶に触れる。
「鑑定」
名前 ジョン・ゲインズ・タンディ
種族 人族 (ロボット)
性別 男性
年齢 28歳
職業 従者
学歴 なし
性格 真面目
犯罪 犯罪歴なし
悪い行い なし
三親等 イシノス神様
「ハハ、凄いね。ジョンの三親等は神様だよ」
人形ジョン『当然です。ですが、これも隠ぺいしなくてはいけません』
「ジョンは、悪い行いがないんだね」
人形ジョン『当然です。私はアンの従者ですから』
「そうだね」
「とりあえず、完成でいいかな」
人形ジョン『問題ないです』
「あとは、何か対策することはあるかな」
人形ジョン『できるならば、この国全土に、アンに敵対するものがいるか確認したいですが』
「まあ、それができれば、因縁つけられる前に対処できるよね」
「できると思う?」
人形ジョン『アンの魔力ならば出来るかもしれませんが』
『倒れられても困るので、領ごとにしませんか』
「あ~それならば、大丈夫かも」
「試しにやってみる」
「ここの領全土で、私たちに敵対する又は要注意人物」
「鑑定」
名前 商業ギルド マスター トニー・アヤラ・ペリー
目的 興味本位
名前 商業ギルド サブマスター ダーモット・タイ・ロンドン
目的 執着、何者か知りたい。
名前 商業ギルド 職員 ナタリア・フィップス・カヴァナー
目的 執着、自分の顧客に逃げられた。
「うわぁ、出たよ三人とも」
「しかも、ギルマスは興味本位って」
人形ジョン『やはり、あの三人は注意しないと』
「なんか、いやだねぇ」




