第50話 商業ギルド②
今日は、また商業ギルドに行く。
今度は、商会を登録する。
名前は地球からとって、『アース商会』にしよう。
安直かなと思うが、私としては分かりやすくて良いと思っている。
ジョンにも、一応は相談しよう。
昨日は、あれからジョンの録画用アクセサリーを作った。
男の人は、アクセサリーをあまりつけないので、どんな物にしようか迷ったよ。
スーツを着るので、ネクタイピンと上着の襟につけるブローチ。
耳はピアスだと従者らしくないので、イヤーカフ。
髪を束ねている紐に、大円の石を取り付けた。
これならば、不自然ではないだろう。
「おはよう」
人形ジョン『おはよう』
「ジョンの録画用アクセサリーを作ったから、見て」
人形ジョン『こんなに沢山ですか』
「そうだよ。着けられるところは全部作ったの」
「着替えたら、着けてみて」
人形ジョン『ありがとうございます。全部着けます』
「それと、商会の名前を地球からとって、『アース商会』が良いかなと思ったけれど、ジョンはどう」
人形ジョン『地球からですか。アースというのですね』
「そうなの。日本語だと地球だけれど、外国語にするとアースともいうの」
「私としては、変な名前にするよりは、分かりやすくて間違えないからいいかなと」
人形ジョン『そうですね。アンらしくていいと思います』
「それで、会長を私にして、社長をジョンにすればいいかなって」
「できれば、会長も非公開で」
人形ジョン『そうですね。そこは商業ギルドとも相談ですね』
「何時に行く。前回と同じ10時30分にする」
「今回は、門を通らずに路地に直接行く?」
人形ジョン『それでいいです』
先日、購入したミントグリーンのワンピースを着て、ネックレス、ピアス、ブローチに髪留めをして時間になるのを待つ。
アクセサリーを着けすぎるような気もするが、自称お嬢様はこのくらいでいいのだ。
ジョンも着替えてきた。
「ジョン、アクセサリー似合っているよ。後ろ姿も見せて」
「髪結いの紐も綺麗に結べているね」
人形ジョン『ありがとうございます』
時間になり、路地から外にでる。
商業ギルドに入ると、ナタリアさんと腹黒がいた。
「こんにちは、ナタリアさん」
「こんにちは、スペンサー様、いらっしゃいませ」
「本日はどのようなご用事でしょうか」
「少々相談したいことがございまして、個室をお借りできますでしょうか」
「はい、只今確認いたしますので、少々お待ちください」
前回と同じ部屋に案内された。
席につき、結界魔道具をセットすると。
「本日のご用事をお聞かせください」
「はい、商会を設立しようと思います」
「店舗はないのですが、商品を販売するのですから、商会があるといいのではと思いまして」
「そうでございますね、個人でのお取引よりも商会のほうが信用される場合もございますから」
「では、お願いできますでしょうか」
「はい、書類を用意してきますので、少々お待ちください」
「こちらの用紙に商会名と登録者のお名前を記入願います」
「あの、私が会長、ジョンを社長で登録して、私の名前はまた非公開にできますでしょうか」
「そうですか、上司に確認してまいりますので、少々お待ちください」
「問題ございませんでした。スペンサー様は非公開で手続きいたします」
「商会名の名前に登録済みが無いか確認してまいりますので、また、少々お待ちいただきます」
「登録済みは、ございませんでしたので、この書類にて『アース商会』を登録いたします」
「前回お渡しした、銅メダルはお持ちですか、そちらに商会名を記入いたします」
「メダルは持ってきました」
「ではお預かりいたします」
アース商会と記載されて戻ってきた。
「それとですね。商品を持ってきましたので、こちらのテーブルに出しても宜しいですか」
「えっ、もうお持ちくださったのですか」
「まあ、ちょっと頑張りました」
「そ、それはありがとうございます」
木彫りのウサギ10体、ティディベア10体。
ぬいぐるみのウサギ8体、ティディベア8体をテーブルに出した。
「拝見しても宜しいですか」
「はい、どうぞ」
ナタリアさんは、手袋をして食い入るように全体をみていた。
「それで、卸値とか販売価格とかはお決まりですか」
「その、素人で申し訳ありませんが、販売価格は、木彫りが5,000円、ぬいぐるみが8,000円で、どうでしょうか」
「はっ、それは安すぎるのではありませんか」
「その倍で宜しいかと存じますが」
「えっ、倍ですか。そのような価格で売れるのでしょうか」
「大丈夫です。問題ございません」
「では次に、商業ギルドの手数料ですが、10%でいかがでしょうか」
『ジョンどう思う』
人形ジョン『そうですね。打倒だと思います』
「その金額でお願いいたします」
「受け取りの書類を作成してまいりますので、少々お待ちください」
「あの金額の手数料でよかったの」
人形ジョン『高いとも安いとも言えませんね』
『商業ギルドは大きな組織ですから、そう考えると、この金額でも安いかもしれません』
「そんなものなんだ」
「お待たせいたしました。こちらの書類に署名をお願いいたします」
「私とジョンの名前を書けばいいですか」
「そうですね。お二人で書かれたほうが良いですね」
ジョンも納得しているようなので、大丈夫でしょう。
「では、手数料を差し引いた額は、口座にお振込みでよろしいですか」
「口座ですか」
「商会を設立なされましたので、自動的に口座も作られます」
「あ~、そうなのですね。口座でお願いします」
また、手続きのために席を外して、戻ってきた。
「こちらが手続き完了の書類になります」
「はい、ありがとうございます」
「これからお時間はありますでしょうか」
ジョンと顔を見合わせて。
「はい、大丈夫です」
「お時間を取らせて申し訳ございませんが、サブマスからお話がありますので移動願います」
なんで、サブマスが。
まさか、もうトラブルとか言わないよね。
仕方なく、ナタリアさんに案内されて、2階のサブマスの部屋に行く。
「やあ、こんにちは。お時間を頂きありがとうございます」
「・・・・・」
「実はトラブルが発生いたしまして、誠に申し訳ございません」
人形ジョン『何がでしょうか』
「先日スペンサー様たちがお越しになった深夜にですね、私が管理している部屋に部外者が侵入いたしまして」
「部外者と申しましても、ギルド職員なのですが」
「部屋に入る権利のない人間ですね」
ジョンの顔が怖くなっているように見える。
「私は深夜この部屋で仮眠をしていたのですが、いきなり大きな音が鳴り響きまして」
「慌てて部屋から飛び出すと、管理している部屋から鳴っているのです」
いやな予感がしてきましたよ。
「それで、部屋に入ると職員の男性が倒れているのですよ」
「あっ、侵入されたんだと思いましたが、どこから音が鳴っているのかわからず」
「職員の手にある書類を手に取ると、音が止んだのです」
「その書類は、スペンサー様の書類だったのです」
「もう、何が何だかわからなかったですよ」
人形ジョン『それは、謝罪しているのですか、それとも攻めているのですか』
『その人物は誰ですか』
「いえ、とんでもございません。こちらの監督不行き届きですので、もちろん攻めるなどありえません」
「その職員は、ジョン様が指摘されました3名でございます」
ジョンがナタリアさんを見る。
人形ジョン『ナタリアさん、あなたに確認しましたよね。そうしたら、信用できる職員だとお答え頂いたと記憶しておりますが、間違いでしたでしょうか』
「本当に申し訳ございません。お詫びのしようもございません」
人形ジョン『こちらのサブマスさんは、謝罪しているようには見えませんが』
『こちらのギルドを信用したのは、間違いでしたね』
『アン、帰りましょうか』
『先ほどの販売もキャンセルさせてください』
「お待ちください。それだけは、どうか考え直していただけないでしょうか」
人形ジョン『書類なども非公開とお願いしたのに、こんな管理がずさんでは信用できないのは、当たり前ではないですか』
「おっしゃる通りでございます。まさか、私の管理するサブマスの部屋に入るなどとは考えも及びませんでしたので」
人形ジョン『あらゆる事態を想定するのが、トップの仕事ではないですか』
「お怒りはごもっともです」
「ただ、ひとつだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「あの音が鳴ったのはなぜですか」
「あ~、それは、盗難防止をかけていたからです」
「はい? 盗難防止ですか」
「はいそうです。ジョンからは怪しい人物が3人いると聞いていたので、用心のためです」
「まあ、その人たち以外にもいるかもしれませんでしたので」
「事前にどのように、書類を管理されているかナタリアさんに聞きました」
「ですので、保険のようなものです。何もトラブルがなければ、音が鳴ることもありませんし問題ないでしょう」
「私としても、大事な個人情報が書かれた書類ですから、万が一を考えて対処するのは当然かと思います」
「ナタリアさん、申し訳ございませんが、先ほどお渡しした商品と書類の返却をお願いいたします」
「それに、今日私に会った時に、まず謝罪するのが筋だと思うのですが、違いますか」
「それは、私が後から説明するので、まだ話さないように指示を出していたからでして」
「そうですか、上司の指示には逆らえませんものね」
ナタリアさんは、サブマスを見るがうなずかれたので、部屋を出て取にいったようだ。
トントン、部屋がノックされて、サブマスが返事をすると、男性が入ってきた。
あ、この顔はギルマスだ。
「初めまして、このギルドのギルドマスターをしている、トニー・ペリーと申します」
「この度は、うちの職員が申し訳なかった」
「たしかに、こちらの監督不行き届きで、職員を信用し過ぎていたのは否定できない」
「謝罪して済むことではないが、この通り、申し訳なかった」
『「・・・・・」』
「勝手なお願いだが、このまま取引を続けて貰えないだろうか」
人形ジョン『あの3人は、今回が初めてではないでしょう』
『たぶん、常習的に犯していたのではありませんか』
「そのあたりは、まだ調査が終わっていない」
「・・・・・」
「バチン!!! ぎゃあ~」
ギルマスがソファーから転げ落ちた。
私は、ソファーから立ち上がった。
「このギルドは、本当に信用できませんね」
「今、ギルマスさんが何をしたか、サブマスさんはわかりますか」
「いえ」
「私のことを許可もなく鑑定したんですよ」
「ギルドでは、それが当たり前のことですか!!!」
「あなたは、何てことを!!!」
「いや、つい」
「ついも何もありませんよ」
「スペンサー様、本当に本当に申し訳ございません」
「こいつは、何も考えていないんです」
「そんなことは、理由にはなりませんよ」
「それに今までも、平然としてお客を鑑定していたのでしょう」
「ジョン帰ろう」
ナタリアさんが戻ってきたので、販売の書類と商品を受け取り、部屋をでた。
ナタリアさんは、何が起きたかわからずに、ボーっとしていた。
私たちは急ぎ足で建物を出て、路地にいき「帰還」した。
「疲れたね、ジョン」
「とんだ一日だったよ」
人形ジョン『そうですね』
「あれから、どうなっているか、【ビューview】機能で見ようよ」
ギルドのサブマスの部屋を見ると、ギルマスが正座させられて、サブマスに怒鳴られている。
横には、ナタリアさんが立ち尽くして、動いていない。
【ギルド side】
「あなたには、いつも言っているでしょう」
「許可なく人物を鑑定するなと」
「いやだって、お前だって、あの嬢ちゃんが気になるって言っていたじゃないか」
「あの二人は普通ではないのですよ。だから、慎重に事を進めたかったんです」
「それなのに、あなたときたら」
「悪かったって、きっとまた来るよ」
「いいえ、このギルドはもう見限られたのです。二度と来ませんよ」
「でもよぉ~、俺の鑑定が弾かれたんだぜ」
「だから、言っているでしょ。普通ではないと」
「追いかけるか」
「探しようがないですよ」
「どこかの宿に泊まっているだろう」
「今頃は、もう町から出ていますよ」
「え~、私たち普通じゃないってさ」
人形ジョン『まあ、間違ってはいませんね』
「あっ、ナタリアさんが泣き出しちゃったよ」
人形ジョン『自分の手柄が無くなったのだから、ショックなのでしょう』
「あの、ギルマスは何度もやらかしているね」
「ねえ、これからどうする」
「まだ、冒険者も始めたばかりなのに」
人形ジョン『そうですね』
「認識阻害をかけていれば、バレないかな」
人形ジョン『たぶん、大丈夫だとは思いますが』
『ギルマスには、どうでしょうか。見破られるかもしれません』
「困ったなあ、Dランクになったら他の町に行こうと思っていたのに」
「まだ、他の町に行くのは早いよね」
人形ジョン『そうですね。もう少し馴染んでからがいいと思っていましたから』
「冒険者ギルドに連絡するかもよ。そしたら、どうしよう」
人形ジョン『不義理をされたので、無視してもいいのではないですか』
『何か言われたら、そう答えれば』
「まさか、直接見張りに来ないよね」
人形ジョン『あの手の人は、何をするかわかりませんからね』
『あの人のようなことを、【脳筋】と呼ぶのでしょう』
「ハハ、確かにそうだね」
「あ~あ、無駄な一日だった」




