第32話 ブードキャンプ
今朝いつものように、トレーニングルームでストレッチをしていると、人形が『また体力テストをする』と言い出した。
なぜ人形が居るのかというと、ストレッチが正しく出来ているか、マシンを使うとき、事故があるかもしれないから指導と監視をかねて立ち会っているのだ。
「体力テスト」をする理由は、以前よりは体力や筋力がついたので、訓練方法の見直しのためにするのだという。
理由はわかるが、そこまでシビアにする必要があるのか疑問だよ。
冒険者は体力勝負だから、必要なことらしい。
朝食を食べて、訓練施設に向かう。
前回とは違う「体力テスト」のようだ。
腹筋、懸垂、腕立て伏せ、300m短距離走をする。
30分休憩したら、次のテストだ。
2回目のテスト開始。
2mの塀を乗り越える。
2mの高さの太い鉄棒を乗り越える。
太い丸太を乗り越える。
並んだ丸太のハードルを飛び越える。
おもりの入った人形を両肩に担いで歩く。
1時間休憩。
3回目のテスト開始。
1.6mの塀を乗り越える。
10mをほふく前進。
穴の空いた塀を乗り越える。
2mの塀を乗り越える。
人形の腕を持って引きずるように後ろ向きで歩く。
高さ3mの金網を乗り越える。
土のデコボコ道、石のデコボコ道を歩く。
2mの塀を乗り越える。
高さ2mの平面の屋根にのぼり、端まで進んで、高さ1m長さ2mの塀の上を歩く。
「ハァハァ、さすがに疲れた」
「なんだ、このテストは、絶対におかしいでしょ!!!」
人形『建物、山の中、岩、崖とかを想定したテスト』
「そんな危ない場所には行かないよ」
人形『一寸先は闇。避難訓練は大事』
「クー、それなら完全引き籠りになる」
「どうだ!」
人形『ずっとは無理。飽きる』『お昼休憩したら、次のテスト』
「・・・・・」
もう無視だ、無視。
お風呂に入って、自室にこもる。
まったく、あの人形は何を考えているのか。
いや、考えているのか?
あれは、神様からの指示なのか。
わからん。
なんだか精神的に疲れたから、軽く食べて寝よう。
「う~ん、よく寝た」
外は薄暗くなっていた。時計を見ると18時を過ぎていた。
リビングに行ったが、人形はいなかった。
あれは、勝手に戻ったのか。
私がいなくて指導が出来ないから、自動的にもどったのか。
まあ、どちらでもいいか。
夕飯を食べたら、テレビでも見て寝よう。
翌朝リビングにいくと、人形が居た。
なんだ、自動で出てきたのか。
テストは諦めていないようだ。
仕方がない、朝ご飯を食べて訓練施設に行くか。
訓練施設に行ったら、ビックリした。
なんだ、あれは。
2階建てくらいの高さの丸太のやぐらがある。
そこには、太めのロープが下がっている。
離れた場所には、3階建ての木造の作りで、各階に窓枠というか穴がある。
あれは、もしかしたら、消防士とか自衛隊が訓練するものじゃないのか。
いやな予感しかしない。
人形がそばに来て、あれが今日の訓練らしい。
建物の中から逃げるときの訓練と、崖から降りる訓練だって。
本当に必要なのかそれは。
まあ、昨日は寝てしまったから、やるしかないか。
まずは、丸太のやぐらからだ。
人形がロープの登り方を教えてくれる。
両足首にロープを絡ませて、腕をのばしてロープを掴み足を上げるのを繰り返すと登れるようだ。
なかなか足を引き上げるのが出来ない。
膝を曲げてお腹の位置まであげるのだが、そこまで上げるのが難しいのだ。
半分までは上げられるのだかそうなると、ちょこちょこ上がるしかない。
なんとか、人形に手伝ってもらい登れた。
上がったら降りるのだ。
それはそれで、怖いよね。
これはそう簡単に、スルスルとは出来なさそうだ。
次は、問題の3階建てだよ。
今度は、屋上まで階段で上がって、ロープで降りるらしい。
なにやら、ロープにフックをかけるようだ。
ロープは固定してあり、人形も上にいて調整するので落ちることはないらしい。
建物側に向いて、一歩ずつ降りていく。
今回は、危険だと思ったら、魔法を使っていいみたい。
少しは安心だ。
自分でロープ調整しながら降りる。
足を壁につけて降りるので、腰を落とした状態にしないと足が滑ってしまう。
なんとか、ゆっくりだが降りられた。
10分休憩したら、またするようだ。
今度は、足を開いて一歩飛んで下がり、また一歩飛んで下がるをしながら降りる。
もうこんな訓練はしたくないけれど、いつか役にたつと思うことにしよう。
あ~精神が削られていく気分だ。
次は、50mにカラーコーンがジグザクに置かれていて、そこを走り抜けて、3階建ての階段を屋上まであがり、降りてきてカラーコーンを走って終わりだ。
ジグザクに走るのが、案外むずかしいな、少しの距離ならいいが50mは長い。
コーンに足が引っ掛かりそうだ。
階段も登りはいいが、下りは早く走ると転げそうだ。
「はぁ~、これで終わりだ」
いよいよ軍隊入りか。
これって、ブードキャンプだよね。
そんなことになったら、絶対に逃げるぞ。




