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第113話 商業ギルド王都本部へ②

【アリソン子爵 side】

「忙しくて集まれなかったが、ここ数日の報告をしてくれ」

「エドから」

「はい、アンはいつも通りです。馬の世話も良くしてくれています」

「盗賊が出た時は、どうしていた」

「馬車を警戒しながら、騎士や盗賊の動きをよく見ていました」

「その時に特に変わったことはなかったか」

「ないと思います」

「では、次エドワード」

「盗賊が出た時も落ち着いていて、抜刀しいつでも戦える準備をしていました」

「馬車を護衛しつつ、騎士たちの戦いをよく見ていましたし、後ろも常に気にしていました」

「そうか、特に問題は無かったんだな」

「宿の部屋割りで、アンと同室だと分かるとホッとしているように見えました」

「ああ、アンもそうでした」

「そうか、報告が以上なら退出してよし」

「「はっ」」


「お前たちは、何かあるか」

「盗賊が出た時に、アンが逃げ出そうとした奴らを魔法で拘束して、こちらまで引き寄せていましたよね、あれには驚きました」

「そうだな、魔法であんな事ができるとは思わなかった」

「それから、勘違いかも知れませんが、奴らと苦戦している時に身体が守られたような感覚がありました」

「どんな感じだった」

「初めての感覚で、身体全体が包まれているような感じでした」

「ただ一瞬の出来事なので、よく分かりません」

「うーん、なんだろうな」

「もしかして、イアンの時のように包まれたんじゃないか」

「あー、なるほど」

「だとすると、アンが何かしたのかも知れないな」

「私たちを守ってくれたってことですか」

「まあ、断定は出来ないが、それしか考えられないだろ」

「他に感じた者はいたのか」

「いえ、いませんでした」

「団長だから気がついたってことか」

「あり得ますね」

「アンには、助けられてばかりだな」


「今日、アンたちは出かけていたようです」

「初めての王都だと言っていたから、観光でもしていたのかもな」

「しかし、アンとジョンが同室で良かったんでしょうか」

「本人たちがそれでいいと思っているんじゃないか」

「でも、アンは16歳とはいえ、女性ですからね。男性のジョンと一緒というのも困りませんか」

「たぶん、二人は信頼関係にあるから気にしないんじゃないか」

「寧ろ、一緒でないと落ち着かないんじゃないか」

「不思議な関係ですね」


【商業ギルド 王都本部】

「あー、ジャック、ホテルの方はどうだ」

「はい、今朝寄ってみましたが、出かけていました」

フロントの人は、鍵があるので出かけていると判断しました。

まさか、前日に鍵を返してから、戻ってきていないとは思っていない。

フロントの人が入れ替わるので、気がつかない。

「そうか、観光でもしているのか」

「ギルドに来てくれますかね」

「どうだろうな、結構怒っていた感じだっただろ」

「もしかしたら、ダーニュ町みたいに見限られたりしてな」

「まさか、本部ですよ」

「普通はな。本部との顔つなぎは欲しいと思うが、彼女たちは違うのかもな」

「ちょっと、今日も捕まえられなければ、何を言われるか分かりませんよ」

「それに、減俸に降格だってあり得ますからね」

「ジャック、物騒な事を言うなよ」

「それだけの失態を我々は犯したんです」

「あー、頭が痛い。帰りてぇ―」

「現実逃避しないでください」


「会長、スペンサー様は来てくれますかね」

「どうかな、無理だろうのう」

「囮にしたあげく、毒を盛られたんじゃ、普通は信用できないから来ないだろう」

「サブマスの言うことでは、今朝から出かけていると」

「ところで、スペンサー様はどうして王都に来られたのでしょう」

「わざわざ、お礼に来られた訳ではございませんよね」

「そうだのう。キルィ町のサブマスに連絡してみようかのう」

「すぐに確認してみます」


「分かりました。アリソン子爵の護衛で来ているようです」

「護衛??? はい、スペンサー様たちは冒険者もしているようです」

「そうか。だったら、宿は子爵と同じところだろう」

「でも、サブマスの話しでは、それなりのホテルに泊まっていると」

「何らかの理由でホテルを取ったのであろう。ここに来るときはどんな服装だったか」

「それなりの服だったようですが」

「それならば、着替えるためにホテルを取ったのかもしれない」

「わざわざ、着替える為にですか」

「スペンサー様たちは、商会のことは秘密にしているようじゃったろう。だから、宿では冒険者の服でホテルでは商会用の服に着替えたんじゃないのかのう」

「ああ、だったらホテルに不在なのは宿にいるからでしょうか」

「なるほど、そうかも知れません」

「ただ、宿から出ているかどうか。用心して部屋に籠るんじゃないですか」

「エヴァとオーブリーの方は大丈夫と思うが、どうしたものかのう」

「子爵の方に、商会の事は伏せているだろう」

「サブマスがあちこちで探しまくっていたら、隠れるよのう」

「こっそりと行って聞いてみましょうか」

「そうだの。子爵一行にバレないように聞いてみようかのう」


「エヴァとオーブリーの方は、本当に大丈夫なんですか」

「エヴァは、早朝に一番きつい修道院に向けて出発しておる。オーブリーは、今朝衛兵に引き渡してある。ナン男爵も了解済みだ」

「さすがに、上客に毒入りのお茶をだして無罪放免とはいかないことぐらい分かるさのう」

「オーブリーの反応はどうでした」

「まさか、自分が衛兵に突き出されるとは思ってもいなかったようです」

「平民の女性に毒を入れただけなら、注意くらいで済むと思ったんじゃろう」

「浅はかですね」

「平民だろうと、衛兵には突き出すというのに」

「そんな考えだから、エヴァにも付け込まれるのだろう」

「もう、今更どうしようもないですね」


「それでは、アリソン子爵一行が止まっている宿にこっそりと探しに行きますか」

「そうしようかのう。ギルマスたちには、ちょっと出かけてくると伝えればいい」

「ここが、その宿でございます」

「フロントで聞いてみるかのう。但し、他のお客がいたらロビーで様子をみよう」

宿に入ると、フロントでは他のお客様を対応していた。

ロビーでしばらく待ち、誰もいなくなったので、フロントに声をかける。

「こちらでお泊りのアリソン子爵一行の中に、若い女性の方がいらっしゃるはずなので呼んでいただけますか」

「失礼ですが、お客様はどちら様でしょうか」

「ああ、これは失礼をした。私は商業ギルド会長のデイビスと申します。昨日ギルドにお越しいただいたのですが、生憎と出かけておりましてお会い出来なかったのです」

「それで、本日こちらからご挨拶に伺った次第です」

「そうでしたか。それは失礼いたしました。ご本人様に確認を取りますので少々お待ちいただけますでしょうか」


トントン「フロントでございます。お客様をお尋ねになられた方がいらっしゃいますが、どうされますでしょうか」

「ジョン、誰か来たみたいよ」

マッピングで確かめると、商業ギルド会長と従者だった。

「商業ギルドの会長だった」

人形ジョン『私が聞いてきます。アンはここで待っていてください』

「うん、気をつけてね」

ジョンが係りの人とフロントまで行く。


人形ジョン『私に何か御用ですか』

「タンディ様でいらっしゃいますか」

「私は、商業ギルドの会長をしております、ロニー・デイビスと申します」

「昨日は、部下たちが大変申し訳ございませんでした」

人形ジョン『ここで、話しをするものなんですから、場所を移しませんか』

「そうじゃのう。近くにカフェがあるから、そちらに行きましょう」

人形ジョン『場所と名前を教えていただければ、すぐに行きます。私、一人でいいでしょうか』

「仕方あるまい。ここから歩いて5分のところに、カフェ・シンフォニーがある。そこの個室に待っておる」

人形ジョン『分かりました。支度をしてから伺います』


「ジョン、大丈夫だった」

人形ジョン『これから、近くのカフェで話しをして来ますから、アンはここで待っていてください』

「えっ、私も一緒に行ったほうがいいんじゃない」

人形ジョン『いえ、相手の思惑が分かりませんので、最初は私だけで行きます』

『アンは、念のためにシェルターにいてください』

「えっ、誰か訪ねてきたら困らない」

人形ジョン『私と一緒に出掛けたと思うでしょう』

「そうかな。でも、分かった」

ジョンは、ちょっと上質な服にチェンジしてから出て行った。


人形ジョン『お待たせ致しました』

「いや、こちらこそ、急に訪ねてしまい申し訳ございません」

「改めまして、商業ギルド会長のロニー・デイビスと申します」

「この者は、私の従者をしておるラリー・ヘレラと申す」

「この度は、部下たちの非道な振る舞い、申し訳ございませんでした」

「我らの監督不行き届きであった」

人形ジョン『そうですね。王都の本部であるのですから、教育も行き届き一流の職員がいるとばかり思っておりました』

『これでは、ダーニュ町と変わらないのではありませんか』

「耳が痛い話しでございます」

「本部ということで、つけあがっている者がいたのですな」

人形ジョン『田舎者だと馬鹿にする者はいるでしょうが、それは口に出さないのが礼儀でしょう』

『まさか、毒まで入れられるとは思いもしませんでした』

『私たちだから気がついて良かったですが、他者でしたら大変なことになっていたでしょう』

『そもそも、なぜ職場であるギルドに、下剤などがあったのでしょう』

『日常的に使われていたのでしょうか』

『まあ、今更どうでもよいですが、彼女らはその後どうなりましたか』

「受付担当の者は、一番きつい修道院に入りました。毒を運んだものは衛兵に引き渡してございます」

人形ジョン『お二方は、貴族のご令嬢とお見受けいたしましたが、よく親御様が承知いたしましたね』

「それは、今までも素行の悪い事をしておりましたので、相手も納得せざるを得ない状況でございましたから」

人形ジョン『私どもをおとりにしたくらいですからねぇ』

「誠に申し訳ない」

人形ジョン『いや、もう謝罪は受け取りましたから結構です』


『それで、他にも話があるのではないですか』

「はい、出来ましたら、スペンサー様にもお会いしたいですし、新商品も見てみたいのですが無理でしょうか」

人形ジョン『正直申せば、もう王都からは帰りたいです』

『ですが、仕事で来ておりますから無理ですし、彼女も王都に来るのを楽しみにしていましたから』

『それに、各ギルドの方々には、ライアン子爵の件でお礼も申し上げたかったですしね』

「いえ、私どもの大切なお客様ですから、当然のことをしたまででございます」

人形ジョン『ありがとうございます』

『では、彼女を呼びますが、ここでいいですか。それとも別の場所がいいでしょうか』

『商品はギルドからお借りしたバッグに入っておりますので、返していただく必要がございますが』

「それでしたら、こちらから返しますので問題はございません」

人形ジョン『それでは、その間ギルドで困りませんか』

「こちらでも、定期便がございますので問題ありません」


人形ジョン『では、私共が予約しております、ホテルではどうでしょう』

「おお、それは良いですな」

人形ジョン『ローデリック・エッベルスホテルのロビーでお待ちください。彼女を呼んですぐに行きますので』

「分かりました。よろしくお願いいたします」


人形ジョン『アン、戻りました。予約したホテルで会長たちと会うことになりました』

「お帰り、ジョン。大丈夫なの」

人形ジョン『私たちの身元がバレないように気を使ってくれましたので大丈夫だと思います』

「そうなの。それならば良かった」

「着替えはどうするの」

人形ジョン『この前と同じようにホテルに入るときは、コートと靴と髪型だけをチェンジして、部屋に入ってから服をチェンジしましょう』

『その時に着替えてきますと言えば、大丈夫だと思いますよ』

「分かった」


急いでホテルに向かい、フロントで鍵を受け取ってからロビーに行く。

人形ジョン『お待たせいたしました』

「初めまして、スペンサーと申します」

人形ジョン『挨拶も部屋に行ってからにしましょう』

「そうでございますね」

部屋に入ってから

「着替えてきますので、少々お待ちください」

本当は一瞬で着替えられるが、5分ほどしてからリビングに戻る。

「お待たせいたしました。スペンサーと申します。この度はご足労いただきましてありがとうございます」

「改めまして、商業ギルド会長のロニー・デイビスと申します」

「この者は、私の従者をしておるラリー・ヘレラと申す」

「ライアン子爵の件では、お口添えをいただきましてありがとうございます」

「いいえ、とんでもございません。大切なお客様ですから当然のことをしたまででございます」

「この度は、部下たちが大変なことを仕出かしました、申し訳ございません。お詫びのしようもございません」

「正直に申しますと、許し難い行為だと思っております。ですが、謝罪は受け取ります」

「今後ともお付き合いはございますし、ご協力をお願いすることもあるかと思いますので」

「ありがとうございます」


ジョンがお茶を入れてくれる。

この日の為に、地球から高級な紅茶を取り寄せていたのだ。

「これは、素晴らしい香りのする紅茶でございますな」

「ありがとうございます」


「では、商品のご案内をさせていただきます」

「介護用簡易トイレ、LEDランタン、魔導コンロ、広角式懐中電灯になります」 

グリーンさんにした説明を同じようにしていく。

「おお、これは何とも素晴らしい」

「いつもながら、感心いたします」

「サブマス殿は、いつもこのような楽しい体験をしているのですな」

「いえ、いつも突然にお伺いして、ご迷惑をかけてばかりおります」

「なんの、こんな素晴らしい商品を一番に拝見出来るのですから、羨ましい限りです」

「そう言っていただけると、嬉しいです」

「では、本日はご無理を申し上げてありがとうございます」


「それから、今回の新商品の申請もありますが、地位を高めたほうがスペンサー様の安全が確保できると思いまして、白金仮に昇格させていただくことにしました」

「ここまで、最速で昇格してきましたので、本来は白金にしたいところですが、やっかみも考慮して仮としました」

「昇格はお望みではないかもしれませんが、是非お受けいただきたいです」

「そうですか、正直昇格はあまり望みませんが、ご配慮いただきましたので有難くお受けさせていただきます」

「ありがとうございます。こちらが白金仮のメダルと証書となります」

「はい、ありがとうございます」

「今後とも商業ギルドをよろしくお願いいたします」

「これで、こちらの要件も全て終わりました。ありがとうございます」

「こちらこそ、お時間をいただきましてありがとうございます」

「こちら、皆さまでお召し上がりください」

「お気遣いいただきありがとうございます。では、遠慮なくいただきます」


無事に会長たちとの話しも終わり、来た時の服にチェンジしてホテルを出る。

これで、安心して街中を歩ける。


「ジョン、お疲れ様」

人形ジョン『アンもお疲れ様』

「これで、王都にきた目的は果たせたね」

人形ジョン『そうですね。後は無事に帰るだけです』

「白金仮になっちゃったね」

人形ジョン『そうですね。ここで昇格するとは思いませんでした』

「しかし、彼女たちは残念だったね」

人形ジョン『アンが気にすることはありません』

『自業自得ですよ。貴族だからと思いあがっているのが悪いのです』

「身分制度って面倒だね」

「日本にはすでに無くなっていたけれど、貧富の差みたいなのはあったからね」

「実感したことは無いけれど、お金持ちにはそれなりの特権意識みたいなのはあったと思うから」

人形ジョン『どこに行っても差別は無くならないってことです』


「会長、楽しみにしていたスペンサー様ともお会い出来て良かったですね」

「ええ、本当に。可愛らしい女性でしたのう」

「タンディ様はかなりお怒りのようでしたから、心配いたしましたが会えて良かったです」

「あの魔道具も凄かったです」

「介護用トイレも便利そうですし」

「スペンサー様は介護に力をいれているのでしょうか」

「そうかも知れませんね。最近の登録商品に多いですから」

「キルィ町のサブマスにも、連絡しないといけませんね。無事に会えたことの報告もそうですが、バッグのことはお話しておかないと」

「リッキーたちには、話さないのですか」

「彼らは、今でもスペンサー様を探しているでしょうから。あまり探し回るとご迷惑になりませんか」

「それもそうですね。誰か連絡してきてください」


トントン「ギルマスのリッキーです」

「入りなさい」

「お呼びと伺いましたが」

「スペンサー様から、新商品を受け取ってきましたよ」

「はっ、いつの間に」

「こちらは、別ルートで探しましたから」

「ですから、ジャックにも探すのをやめさせなさい」

「はっ、はぁ、分かりました」


「それから、こちらはスペンサー様から手土産をいただきました」

クッキー缶の詰め合わせである。

アンのいつもの手土産だ。

「これは、また、美味しそうなクッキーですね。あなたもいただきなさい」

「では、遠慮なく」

「旨い。なんだこれ。旨すぎる」

「なんですか、大声をだして」

「たしかに、美味しいですね。こんなに美味しいクッキーは王都でもありませんよ」

「それに、この缶も素晴らしい出来です」

「スペンサー様は、どうやって手に入れたのでしょう」

「不思議な方ですね」

「少し、サブマスにも持って行きなさい。少しですよ」

「はい、ありがとうございます」

「あなたたちの処分は、これから決めますからね」

「えっ」

「なんですか、その顔は。当然のことでしょ」

「自分たちが何を仕出かしたかよく考えなさい」

「王都のギルマスだと、おごりがあったのではありませんか」

「はい、面目もございません」


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