第109話 王都に向けて出発②
人形ジョン『アン、おはよう、起きる時間ですよ』
『アン、アン』
なんか、ポンポンされながら、ジョンの声が聞こえる。
人形ジョン『アン、起きてください』
「あれ」
人形ジョン『もう、起きる時間です』
「あれ、ジョン、何してるの」
人形ジョン『野営中です。今4時ですから、起きる時間です』
「あーそうか、護衛依頼中だったか」
「おはよう、ジョン、起こしてくれてありがとう」
「目覚ましをかけていだけれど、起きなかったみたい」
人形ジョン『疲れているんでしょう』
「そうだね。気がつかないだけで、緊張しているのかも」
「すぐに、朝食にするね」
クリーンを掛けてから、違う乗馬風の服にチェンジする。
野営の時、服が魔法で着替えられるのは便利だ。
テントの外に出ると団員たちはすでに起きていた。
テーブルと椅子を出し、アウトドアチェアをしまう。
朝食は何にしようか。
しっかりと食べたいから、ポトフにしよう。
テーブルにポトフ、ロールパン、サラダ、ヨーグルト、果物の盛り合わせ、コーヒーを出す。
「ジョン、食べよう」
「今更だけれどさ、護衛と見張りって具体的に何をするか言われていないよね」
人形ジョン『そうですね。警戒するように言われただけです』
「まあ、ジョンは後方担当だから、討伐が優先だよね」
「食べ終わったら、子爵に聞いてくるよ」
「おはようございます。子爵閣下」
「おはよう」
「今、よろしいでしょうか」
「ああ、なんだ」
「今更ですが、護衛と見張りはどうすればいいでしょうか」
「はっ」
「護衛するとだけ指示されましたが、具体的には聞いておりませんでしたので」
「緊急時は、馬車をお守りすればよいのか、討伐に参加するのかです」
「それと、見張りは自分のテントの前に居ればいいのでしょうか」
「プッ、本当に今更だな」
「エドには何も言われなかったのか」
「エド様には、護衛は初めてかと聞かれただけです」
「エド様って、お前」
「えっ、呼び方が間違っていましたか」
「エドとしか、紹介されませんでしたので」
「お前がエド様と呼んで、あいつはどうした」
「えーっと、特には何も言われませんが」
「へぇー、何で様付けなんだ」
「騎士様だから、エド様なのかと思いまして、ダメだったのでしょうか」
「いや、そのままでいい」
「御者は、馬車を守るのがよろしいかと」
「そうだな。エドと一緒に馬車を守るようにしてくれ」
「見張りは、テントの前で監視していればいい、緊急時には他の見張りに声をかければいいから」
「盗賊が出た場合は、どうしますか。殺しますか生け捕りにしますか」
「お前なぁ。女の子なんだから、もっと言葉を選べよ」
「はあ、気をつけます」
「盗賊は、基本生け捕りだ。だが、難しい場合は殺しても仕方ない」
「お前は、盗賊が出たら、殺せるのか」
「分かりません」
「分かりませんって、お前」
「対人戦は、模擬戦しかしたことがありませんから、その時にどうなるかは分かりません」
「お前、冒険者だろ。覚悟がないのか」
「覚悟と言われましても、実際に戦うまでは分かりません」
「そうか、まあそうかもしれない」
「とにかく、盗賊は基本は生け捕りだ。いいな」
「はい、分かりました」
「それから、アン、朝から旨そうな物食べていたな」
「そうですね。きちんと食べて護衛をしなくてはいけませんから」
「俺にも寄こせ」
「はい?」
「だから、俺にも食わせろ」
「有料ですよ」
「お前、ケチだな」
「冒険者が遠征時に無料で食料を分けたりしませんよ」
「分かったよ。報酬分に上乗せしておくから」
「ポトフですが、いいですか」
「ああ」
テーブルの上に、ポトフの入った『スープジャー』を出す」
「なんだこれは」
「ポトフの入った、スープジャーです」
「なんだ、スープジャーとは」
「スープを入れる容器です。保温も冷却保存も出来ます」
「そんなに便利な物なのか」
「知らなかった」
「日進月歩ですよ」
「分かっている」
「ランタンは、返してください」
「えー、遠征中は貸してくれよ」
「分かりました。終わったら返してください」
「分かっている」
「結界魔道具の魔力の充電はどうしますか」
「俺のほうでするから」
「分かりました」
「馬のほうの結界魔道具は、回収しましたか」
「ああ、それもしておく」
ジョンのところに戻り、テントとテーブルと椅子をしまう。
「馬のところに行ってくるね」
人形ジョン『私も一緒に行きます』
二人で馬が繋がれているところに行く。
昨日の馬を探すと、不思議と分かった。
ジョンも自分が乗っていた馬が分かったようだ。
私は、昨日の馬にそっと近づく。
「おはよう」
『人の子か。おはよう』
『何かして欲しいことはありますか』
『水が飲みたい。お腹も空いたぞ』
「今用意しますね」
昨日のバケツが見当たらないので、近くにいた騎士の人に聞いてみる。
「あの、馬に水をあげたいのですが、どこにありますか」
「ああ、あそこに置いてあるよ」
「ありがとうございます」
馬から少し離れた場所に、いくつものバケツがあり水が入っていた。
『お水をどうぞ』
『ありがとう 人の子』
馬はバケツに顔を突っ込んで、ガブガブ飲み始めた。
餌を探すが、どこにも置いて無さそうだった。
『私の持っている野菜でもいい?』
『なんでもいいぞ』
勝手にあげて大丈夫かなぁと思いつつ、にんじんを与えた。
『うまいぞ、うまい』
よほどお腹が空いていたのだろう。
『ねえ、朝は後何をするの』
『身体を拭いたり、ブラッシングをしたりするの』
『朝も両方するぞ』
『魔法できれいにするのはダメなの』
『魔法でされたことはないな』
『試しにやってみてもいいかな』
『おお、いいぞ。ダメだったら拭いてくれ』
『分かった。じゃあ掛けるね』
『クリーン』
『どう、どんな感じだった』
『おお、身体がスッキリした感じがする。これでもういいぞ』
『良かった』
馬とそんなやり取りをしていると、エドがやってきた。
「おはよう、もう、馬の世話をしていたのか」
「おはようございます。水とにんじんを少しあげました」
「餌がどこにあるのか分からなくて、私のをあげたのですが、問題なかったでしょうか」
「ああ、本当はダメなんだが、あげてしまったものはしょうがないな」
「あっ、やっぱりまずかったですか」
「馬に与える餌は、全て検品しているからな。他の餌を与えて万が一のことがあると困るから」
「そうでしたか。勝手なことをして申し訳ございません」
「次からは注意してくれればいい」
「この馬の餌は俺が持っているからな」
「そうでしたか、すみません」
「一応、餌も与えるか。まだ食べるかもしれないからな」
「あと、クリーンを掛けたのですが、それもまずかったでしょうか」
「えっ、クリーンを掛けたのか。馬は嫌がってはいなかったか」
「ええ、さっぱりしたような顔をしていました」
「そうか、それならば問題ない」
「後は、ブラッシングだけだな」
エドがにんじんと果物をあげると、また食べだした。
私があげただけでは、足りなかったようだ。
「ブラッシングするね」
『頼むよ』
朝から重労働だ。
「遠征の間は、ブラシをアンが持っていていいぞ」
「ありがとうございます」
「馬の世話は終わりだ。支度に戻ったほうがいい」
「分かりました」
支度といっても、後は簡易トイレをしまうだけだ。
これは、いつ仕舞えばいいのか。
出発の合図があってからでいいかな。
まだ、利用する人もいるかもしれないし。
「あと、5分で出発するぞー」
トイレの近くで待っているが、誰もこないので仕舞おう。
ジョンが戻ってきたので「もう、行く?」
人形ジョン『そうですね。持ち場に行きましょう』
もう、隊列されていたので、馬車に向かう。
馬も馬車に繋がれていた。
エアークッションを出して乗り込む。
「エド様もエアークッションを使われますか」
「ああ、頼む」
昨日と同じように、少し大きめにして出す。
「しゅっぱーつ」
隊列が順調に進むまでは、お互いに無言だった。
「朝まで馬の世話はしなくていいぞ」
「朝は支度で忙しいだろ」
「そうですが、お水と餌をあげるくらいでしたら大丈夫です」
「そうか。無理はするなよ。まだ遠征は続くんだからな」
「はい、分かりました」
「あの、今朝、子爵閣下に確認したのですが、私たちは緊急時に馬車を守るのでいいのですか」
「お館様がそう言ったのか」
「はい、そうです。普段は違うのですか」
「まあな。普段はお館様が率先して戦いに行くからな。馬車を守るどころじゃないんだ」
「あー、そうなんですね」
「俺らも馬車の中で大人しくしてくれると助かるんだがな」
「一番強そうな感じがします」
「たぶん、そうだと思う」
「率先して戦うのは困りますが、強いことは良いことですよね」
「まあな。何も出来ないのも困るよな」
「他の貴族のご当主様も皆さま強いのですか」
「いや、そんなことは無いな。武術にたけた人もいれば、文官のように書類管理にたけた人もいるからな」
「まあ、そうですよね。皆それぞれなんですね」
「簡易トイレありがとな」
「いえ、外にいるときは、困りますものね」
「そうなんだ。昼間はまだいいが、夜はな。森の中に行くだけでも危ないからな」
「そうですよね。真っ暗なところを歩くだけでも大変ですよね」
「足元もろくに見えないし、木の根があったりするだろ。急いで行って戻るしかないからな」
「野営地にあれば、安全だしいつでも行けるからな。本当に助かるよ」
「そう言っていただけると、用意したかいがありました」
「初めての野営なので、何をどこまで準備すればいいのか、迷いました」
「家にいるときのように、あれもこれも必要に思えて」
「慣れるまではそんなもんだ」
「段々慣れてくれば、最低限の必要な物が分かるようになるからな」
「そうですね。経験しないと分かりませんよね」
そうか。夜にも使うのだから、テントの入口にもランタンを取り付けよう。
トイレ本体の入口とトイレの中は、センサーライトにしようか。
あー、でもこの世界の人には、センサーライトだとビックリしちゃうかな。
あとで、ジョンに相談してみるか。
エドと雑談をしていると、サーチに引っかかった。
なんだろうと、集中するとフォレストウルフの群れだ。
15頭くらいだろうか。
「エド様、前方にフォレストウルフの群れが15頭ほどいます」
「なに!!! 本当か」
「はい」
エドが合図を送っている。
すると、馬車と並走していた一人が近づいてきた。
「どうした」
「アンが前方にフォレストウルフの群れが15頭ほどいると」
その騎士が私のほうをみて
「本当だろうな。ガセじゃただじゃすまないぞ」
「本当です」
なんか、信用されていない感じ。
その騎士は、前方にいる騎士まで走って行った。
前方の騎士からも合図があった。
さっきの騎士が戻ってきて
「前方にフォレストウルフの群れだ !!! 皆持ち場につけ !!!」
「あの私たちは、どうすればいいですか」
「このまま進む」
「降りて、馬車を守らなくてもいいんですか」
「その時の状況による。降りるときは指示を出す」
「分かりました」
1対1ならば、戦ってきたが、他者がいて守る馬車があると違ってくる。
結界魔道具は馬車に取り付けてあるが、念のために私のほうでも馬と馬車に二重に結界を張るか。
フォレストウルフの群れが見えてきた。
馬が怖がるかもしれないから、念話をしてみよう。
『馬さん、私です。アンです』
『おお、人の子か今はウルフが向かってきているから、それどころではないんだ』
『馬さんには、結界が張ってあるので大丈夫です』
『そうなのか。本当に大丈夫なんだな』
『はい、ですから、このまま走り抜けても大丈夫です』
『分かった。人の子よ。感謝する』
馬と馬車には、10m範囲の結界を張った。
これで、襲われることはない。
前方の騎士たちがウルフを倒していく。
もれて、こちらに来るウルフは、両隣にいた騎士たちが倒していく。
15頭ほどいたウルフは、あっという間に討伐された。
討伐し終わると、馬車を停止した。
討伐したウルフを片付けるようだ。
道にこのまま残しては、他の魔物が寄って来るので、片付ける決まりのようだ。
『ジョン、大丈夫だった』
人形ジョン『大丈夫です。こちらにウルフは来ませんでしたから』
『そっか。良かった』
『馬さん、大丈夫だった』
『人の子の結界のおかげで大丈夫だったぞ』
『それは、良かった。また、魔物が来たら結界を張るから、安心してね』
『助かる』
「エド様、私たちは何かお手伝いするんですか」
「いや、他の騎士が対応するから問題ない」
「俺たちは、ここに座っていつでも出発できるようにするんだ」
「そうなんですね。分かりました」
「よく、フォレストウルフの群れがいるって、分かったな」
「サーチを掛けていたので、分かりました」
「そうなのか、凄いな」
「何が襲ってくるか、分かりませんから」
「まあ、そうだよな」
「しゅっぱーつ」
隊列が整ったのか、ほどなくして出発した。
「子爵閣下が馬車から飛び足してくるかもと、心配していましたが、杞憂に終わってよかったです」
「たぶん、馬車の中では家令と執事が必死に止めていたと思う」
「えっ、そうなんですか」
「たぶんね」
「それは、周りの人は大変ですね」
すぐに、休憩場所に着いた。
馬のところに行き
『さっきは、大丈夫だった』
『結界とやらのおかげで、大丈夫だったぞ』
『それならば、良かった』
『馬さんには、名前はあるの』
『俺は、アレクで、こいつはベンだ』
『そうなんだ。名前は誰がつけてくれたの』
『お館様だ』
『ふふ、アレクまでお館様って呼ぶの』
『騎士たちがそう呼ぶからな、他の呼び方は知らないんだ』
『へえー、そうなんだ。アレクは人が話ししていることは、分かるの』
『難しいことは分からないが、だいたいのことは分かるぞ』
『それは、アレクが特別なの。それとも、他の馬もそうなの』
『他の馬たちも分かっているぞ』
『馬たちも凄いんだね』
馬の世話が終わったので、休憩する。
ジョンもやってきたので、小さなテーブルと椅子を出す。
「ジョン、お疲れ。何か飲む」
人形ジョン『アンと同じでいいです』
「じゃあ、紅茶とマフィンにしよう」
「馬に名前を聞いたら、アレクって教えてくれた」
「ジョンも馬に名前を聞いた? 」
人形ジョン『いえ、聞いていません。後で聞いてみます』
「アレクとベンは、子爵閣下が名付けてくれたんだって。他の馬にも付けているかもね」
「名前と顔が一致するのかしら」
人形ジョン『みな、同じようですから、難しいんじゃないですか』
「そうだよね」
「ウルフが来た時、ジョンたちはどうしていたの」
人形ジョン『こちらに来たら、すぐに対応出きるように体勢を整えていました』
「ジョンも来るの分かっていたでしょ」
人形ジョン『サーチで分かっていました』
「やっぱり、こういう時にサーチは助かるよね」
「でも、みんなが使える訳じゃないのかな」
人形ジョン『たぶん、みなが使える訳ではないと思います』
「あと5分で出発」
「もう、休憩が終わりか、ジョンも気をつけてね」
人形ジョン『アンも、無理はしないでください』
テーブルと椅子を片付けて、馬車に戻る。
『アレク、ベン休めた』
『しっかりと休めたぞ。これでまた走れる』
『まだ先は長いから、無理はしないでね』
『分かっているって、遠くにいくのも慣れている』
『そうなんだ。また、危なくなったら結界を張るからね』
『頼んだ』
「しゅっぱーつ」
御者台に乗り込み、出発する。
まだ、二日目、先は長い。
もう、帰りたくなってきた。
ジョンと二人ならば、野営ももっと楽しいだろうし、そもそも、王都までマップで選べばすぐに到着する。
こんなにチンタラと進まなくてもいいのだ。
飽きてきて当然だ。
「遠征って、良くするんですか」
「そんなことはない。偶にだ」
「魔物討伐とか調査に行くときぐらいだ」
「いつも、こんなに日数かかるんですか」
「いや、いつもは三日から四日ぐらいかな。今回みたいに七日以上はほとんどない」
「それでは、皆さまも大変ですね」
「そうだな。長丁場だと疲れてくるかも知れないな」
「ずっと野営だと疲れるから、泊まれる時は宿に泊まるようにするんだ」
「そうなんですね。やっぱり宿のほうがいいですよね」
「見張りが無いだけでも、違うからな」
「宿に泊まるときは、見張りは必要ないんですか」
「そうだな。割り当てられた部屋で過ごせるから、楽だな」
「でも、これだけの人数だと一つの宿で泊まれるんですか」
「偶に、宿が分かれる時がある。それも仕方ないさ」
エドと雑談をしているうちに、お昼休憩する場所に到着した。
「アレク、ベンお疲れ様でした」
すぐに水を飲ませる。のどが渇いているだろうからね。
「クリーンを掛けるよ」
水を飲んでいる間に、クリーンを掛けてあげる。
水を飲み終わったら、ブラッシングをする。
少し落ち着いたら、餌を与える。
最初は、草だ。
これにも、数種類の草が混ぜられているらしい。
沢山、草を食べたら、にんじん、リンゴ、バナナを与える。
「アンは休んでいいぞ」
「はい、ありがとうございます」
休憩している騎士たちの近くに、テントで隠れた簡易トイレを出しておく。
私は、少し離れて小さなテーブルと椅子を出す。
準備していると、ジョンがやってきた。
「お疲れ、ジョン」
人形ジョン『アンもお疲れ様』
「ジョンは何を飲む」
人形ジョン『アンと同じでいいです』
いつも紅茶かコーヒーで飽きたから、ジュースにしようか。
あっ、でもお昼を食べるからお茶にするか。
疲れた時は甘い物が欲しくなる。
ハワイアンホットケーキにしよう。果物とプリン付きにして。
そうなると飲み物は、アイスコーヒーがあうか。
盛り盛りのホイップクリーム。
太りそうなメニューだ。
さすがにジョンも同じメニューはおかしいだろうと、ハンバーガーとポテトにした。
「ジョン、ここずっと食べているけれど、大丈夫」
人形ジョン『食べたらすぐに消去できるから問題ないです』
「なんか、それはそれで勿体ないね」
他人の目があるから仕方ないけれどさあ。
食べていると、また子爵がやってきた。
「旨そうな物食べているな。俺にも食べさせろ」
「無いですよ」
「嘘だ。絶対に余分にあるはずだ」
「そんなことを言っていると、家臣に笑われますよ」
「俺はそんなことは気にしないたちだ」
いや、そこは気にしろよ。
「ジョンと同じ物でいいですか」
「いや、アンが食べているのも欲しい」
「はっ、まさか両方ですか」
「そうだ」
「閣下の分の料理は、準備されているんじゃないですか」
「もう、食べ終わった」
「食べたのに、まだ、食べれるんですか」
「このくらい大した量じゃない」
「朝のスープジャーも返してもらっていません」
「容器ごとくれたんじゃないのか」
「違います。容器は返してください」
「わかったよ。後で返すよ。それよりも早くくれ」
まったく、図々しいな。
お盆を出して、ホットケーキとハンバーグを出して渡す。
「もう、これっきりにしてください」
「えー、ケチだなあ。旨そうな物を食べているアンたちが悪い」
「人のせいにしないでください」
料理を受け取ると、ニコニコ顔で戻っていく子爵。
『ねえ、ジョン、あれも探りを入れているのかな』
人形ジョン『そうかも知れません。アンがどのくらい料理を保管しているのかとか、どんな料理を持っているのかを調べているのかも知れません』
『だから、事前に食事は自由にさせてくれと頼んだのに』
その後は、三時の休憩も問題なく済ませ、今夜泊まる野営地に到着した。
今夜の見張りは、私とジョンはしなくてもいいらしい。
ローテーションでそう決まったようだ。
今日は、テントからシェルターに戻って休もう。
お風呂にも入って、露天風呂にも入りたい。
ジョンも一緒に帰ろうと言ったが、テントに誰もいないとまずいからと、ジョンはテントで一人過ごすことになった。




