第107話 王都に向けて出発
アリソン子爵邸の応接室にて。
「出発は三日後となった」
「準備は大丈夫か」
「はい、準備は完了しております」
「結界魔導具は、馬車のどこに付けますでしょうか。馬車の中なのか外なのか」
「そうだなぁ。どうするか」
「馬車の中のほうが、よろしいのではないですか」
「外だと小さいながら目立つと思われますので」
「そうだな。中に取り付けるようにしよう」
「分かりました。では、当日お渡しいたします」
「どうやって起動するんだ」
「魔力を流せば起動しますので、私が魔力を注入してからお渡しいたします」
「分かった。それで頼む」
「それから、イアンの事なんだが」
「イアン?」
「アン、お前を後ろから攻撃した奴だ」
「ああ」
「まさかと思うが、忘れていたのか」
「まあ、どうでもいい輩でしたので、忘れておりました」
「お前は、いい性格をしているな」
「お褒めに預かり恐縮です」
「褒めてない。嫌味だ」
ニコリと微笑んでおく。
「まったく」
「話しを続けるぞ。あの後、冒険者でギルマスとABCランクと戦わせたんだ」
「全てに負けたようだ」
「・・・」
「その後に、やらかした。最後にギルマスと戦って負けて悔しかったらしく、ギルマスが背中を向けているのをいいことに、火球を放ったそうだ」
「えっ、ギルマスは」
「ああ、大丈夫だ。振り返って、木剣で火球を叩き斬ったそうだからな」
「流石ですね」
「そうだろう。あいつは、かなり強いからな」
「それで、その晩はギルドの牢屋に入れて置いた」
「団長や副団長とも話し合ったんだが、ルールを破りしかも後ろから攻撃したんだからな、殺意があったとみなして、奴隷落ちとなった」
「えっ、でも、彼は貴族だったのではないですか」
「そうだが、大勢の観客の前でしかも相手はギルマスだ。簡単な処分で許されることはできなかった」
「そうでしたか、とても残念です」
「ああ、真面目に訓練していれば、もっと強くなっただろうにな」
「だが、騎士に囚われて相手をないがしろにするような奴は、俺の騎士団には必要がないからな」
「というわけで、報告はここまでだ」
今日、王都に向けて出発する。
時刻は、早朝5時。
出発の日は、予定通り10日後となった。
通常、門は6時に開門するが、貴族御一行がいる場合、人数が多くなるので他者に迷惑がかからないように、早めに出発するそうだ。
王都に行くメンバーは、子爵、執事、家令、騎士団長を含めた騎士12名、私、ジョン。
護衛が12名+2名が多いのか少ないのかは、分からない。
遅れてはいけないので、5時に門に着いた。
貴族の護衛なので、普段よりは乗馬風良い服を着ている。
少し待てば、子爵たちがやってきた。
「おはようございます」
「おはよう、随分と早いな」
「遅れてはいけませんので」
「結界魔道具をお渡しします。付けるのはどうしますか」
「これなら自分で付けられるから大丈夫だ」
「うちのメンバーを紹介しよう、執事のウェントワース・アステルと家令のエイドリアン・アンジュー」
「後は、騎士団長と団員だ」
「執事のアステルです」
「家令のアンジュ―です」
「アンです」
人形ジョン『ジョンです』
『「よろしくお願いいたします」』
「「よろしくお願いいたします」」
「よし、お互いに紹介は終わったな」
「ジョンは馬に騎乗して、アンは御者台な」
「分かりました」
「御者は団員がするから、隣に座ればいい」
「私は、見張りだけしていればいいですか」
「そうだな、警戒を頼む」
「ジョンは、後ろに着いてくれ」
人形ジョン『分かりました』
「他の団員を見て覚えてくれ」
人形ジョン『はい』
「では、出発したら2時間後に休憩だ」
「ジョン、大丈夫」
人形ジョン『はい、問題ありません』
ジョンは、団員たちのところに行き、馬を借り騎乗して待機している。
私は、御者台に行き、団員に挨拶する。
「冒険者のアンです。よろしくお願いいたします」
「エドだ。よろしく」
私も、御者台に乗り待機だ。
5時30分になり、貴族の門が開き出発する。
御者台はお尻が痛くなりそうだったので、最初からエアークッションを座椅子の様な形にして座っている。
馬車を中心に100mの距離にサーチをかけている。
しばらくの間は、お互いに無言だったが。
「お前、護衛の依頼は初めてか」
「はい、今日が初めてです」
「初めてなら、他の人よりも子爵閣下を護衛するほうが信用できると、ご本人から勧められまして」
「そうか、嵌めるつもりで依頼を出す奴がいることは聞いたことがある」
「えっと、そんなに多いのでしょうか」
「いや、多くはないが、そういう奴がいるとは聞いている」
「はあ、これからは気をつけます」
「そうだな、お前のような子供は狙われやすいからな」
「あの、アンです。お前でなくアンとお呼びください」
「ああ、そうか。悪いな。アン」
「はい」
何事もなく進み、2時間過ぎたころに大きめの休憩所があり、そこで休むことになる。
「私は、何かすることはありますか」
「特にはないが、そうだな。馬に野菜や果物を上げてくれ」
「今、バケツを渡すから」
「はい、分かりました」
私は、エドから馬の餌が入ったバケツを受け取り、馬のところに行く。
「こんにちは、アンです。今から野菜や果物をあげますね」
馬は後ろから近づくと危ないので、前方から近づいた。
馬は驚くこともなく、素直に食べてくれた。
2頭いるので、同じように挨拶してから、餌をあたえた。
「エド様、餌やりが終わりました」
「終わったか、それじゃあ、馬にブラッシングをかけてくれ」
「上から下に向けてかけるといい」
「分かりました」
エドからブラシを受け取り、馬に声をかけてから始める。
これが、中々の重労働だ。
そうだ。折角ならばこの馬と会話をしたい。
たしか、動物と話しをすることを『アニマルコミュニケーション』と、いったな。
創造魔法で作れないかな。
『創造魔法、アニマルコミュニケーション』
たぶん、成功だ。
馬の顔がある方に移動して、頬をなでながら聞いてみる。
念話『こんにちは、アンです』
なんだ、なんだと、馬がキョロキョロしだす。
『私ですよ。話しかけたのは』
『はあ、人の子が話しているのか』
『そうです。魔法で話せるようにしました』
『そんなことが出来るのか。人の子はすごいな』
『たぶん、私だけだと思いますけれど』
『そうだろうな。そんな子は見たことがないからな』
『何かして欲しいことはありますか』
『そうだな。ブラシはもっと強くてもいいぞ』
『分かりました』
腕に身体強化を掛けて、ブラッシングしていく。
『ブラッシングが終わりました』
『おう、ありがとな。人の子』
「終わったのならば、アンも休憩していいぞ」
「はい、ありがとうございます」
ジョンを探すと、こちらに歩いてきていた。
「ジョンも休憩出来る」
人形ジョン『はい、私の作業も終わりましたから』
「じゃあ、あっちの隅で休憩しよう」
休憩場所の隅に行き、小さなテーブルと椅子を出して、紅茶のポットとカップを出す。
小腹がすいたくらいなので、パウンドケーキを二切れだす。
「ジョンも食べるでしょ」
人形ジョン『そうですね』
基本、ジョンは人形なので食べなくてもよいが、怪しまれないために食べるだけなのだ。
「ジョンのほうは、どんな感じ」
人形ジョン『団員3名とは2名ずつに分かれて後ろから付いていっています』
「そう、他の団員とは話しした」
人形ジョン『お互いを紹介しただけで、会話はないですね』
「そうなんだ。私のほうは、エド様と少しだけ話しをしたよ」
人形ジョン『嫌がらせとかは、されていませんか』
「うん、今のところは無い」
「ジョンも、サーチしながら騎乗しているんでしょ」
人形ジョン『そうですね。100m範囲にしています』
「私と同じだ」
「そうだった。創造魔法で動物と話しができる魔法を作ったの」
「それで、馬ともちゃんと会話が出来たよ」
人形ジョン『それは凄いですね。私もやってみましょう』
「動物と話しが出来ることを、アニマルコミュニケーションというのね。それで、その名前で魔法を作ったの」
人形ジョン『では、私も同じ名前で作りましょう』
「ふふ、馬のところに戻ったら会話してみて」
パンパン「休憩終了。各自持ち場に戻れ」
騎士団長からの指示がでたので、御者台まで戻る。
「ジョン、また後でね。何かあったら念話で」
人形ジョン『分かりました』
「どうだ、少しは休めたか」
「はい、お茶休憩出来ました」
「慣れないと疲れるだろう」
「そうですね。同じ姿勢でいるのは大変ですね」
「お尻は痛くないか」
「あっ、女性には失礼だったか」
「いえ、問題ないです。私は、エアークッションを敷いているので痛くないです」
「なんだそれは」
「出してみますね」
「触ってみてください」
恐る恐る手を伸ばして、触っている。
「柔らかいな。それにプニュプニュしている」
「ええ、これならば、柔らかいのでお尻も背中も痛くならないです」
「いいな、お前。あっ、アン」
「エド様も使ってみますか」
「いいのか」
「はい、じゃあ出しますよ」
エドのほうには、私よりは若干大きめの形にした。
早速座ってみるようだ。
「これは、いいな。確かに痛くなりにくそうだ」
「そうでしょう」
「なんだ、アンは最初からこれを使っていたのか」
「はい」
「それならば、疲れづらいよな」
そんな話しをしていると。
「しゅっぱーつ」
団長の声が響く。
護衛三名が先頭を行き、両脇にも三名ずつ付く。
「アンは、馬に慣れているのか」
「いえ、乗馬訓練で乗りますが、お世話はしたことがないです」
「そうなのか、手馴れているように見えたが」
「そうですか」
「最初に馬に話しかけるのもいいことだ。馬が安心するからな」
「そうですよね。人間でも知らない人が近づいてくれば、怖いですからね」
「馬は、2時間で休憩するものなんですか」
「そうだな。馬車を引くだけでも大変なのに人も乗せるだろう」
「馬は脚を痛めたら、もう使われないから処分するしかなくなるんだ」
「だから、そうならない為にも程よい時間で休憩させるんだ」
「そうなんですね。馬も処分されてしまうのは、可哀そうですね」
「そうなんだが、働けない馬を管理するのにも費用がかかるからな。仕方ないんだ」
「なんだか、残酷ですね」
「アンは、王都には行ったことがあるのか」
「いいえ、今回が初めてです。だから楽しみなんです」
「そうか。王都は店も人も多いからな」
「店を見て回るだけでも、楽しいと思うぞ」
「ただ、人が多い分悪い奴も多いからな」
「スリや言いがかりをつけてくる奴もいるから気をつけるといい」
「まあ、ジョンと一緒ならば大丈夫と思うが」
「そうですね。ジョンから離れないようにします」
「団員の皆さまは、どう過ごされるのですか」
「そうだな。交代でお館様の護衛につくと思うが、そうでない時はやっぱり観光かな」
そんな話しをしていると、お昼休憩になった。
「ここで、一時間の休憩だ」
私とエドは、馬の世話をする。
まずは、水を飲ませる。
水の入った木のバケツを置けば、馬が勝手に飲んでくれる。
次は馬の身体を拭いてあげる。
馬も汗をかくそうだ。
『顔から拭きますね』
『頼むよ。人の子。汗をかいて気持ち悪いから』
顔から身体へと拭いていく。
『どうですか。どこか気持ち悪い箇所がありますか』
『お腹の下をもっと拭いてくれ』
『分かりました』
せっせとお腹の下を拭く。
野菜と果物をあげる。
『どうですか。美味しいですか』
『にんじんとリンゴは好きだ』
『沢山食べてくださいね』
「アンも休憩していいぞ」
「はい、ありがとうございます」
ジョンを探しに行って、また休憩所の隅にテーブルと椅子を出す。
「ジョン、サンドイッチでいい」
スープは、ミネストローネにしよう。
テーブルに、サンドイッチ、ミネストローネの入ったスープジャー、紅茶を出す。
あっ、サラダも食べよう。
人形ジョン『アン、御者はどうですか』
「エド様と話しをしているから、特に問題はないかな」
「ジョンはどう」
人形ジョン『偶に話しをしますが、警戒するほうが優先ですので、そこまでではないです』
「そっか、そうだよね。後ろも大変だよね」
「ジョンは、馬に乗っていてお尻が痛くならない」
人形ジョン『人形なので大丈夫です』
「でもさ。人形でもお尻には負担がかかるでしょう。大丈夫なの」
人形ジョン『私も、薄くエアークッションしているので大丈夫です』
デザートも食べよう。
「ジョンは、デザートどうする」
人形ジョン『私はいいです』
「そう、私はチーズケーキにしよう」
チーズケーキとコーヒーを出して食べる。
ああ、ここのケーキはいつも美味しい。
しばらく、まったりしていたが。
「ねえ、トイレは行った方がいいよね」
人形ジョン『そうですね。出発してから一度も行かないのは不自然です』
仕方ないか。この日の為に『簡易トイレ』を用意した。
身体の中にある、尿と便だけを魔法で消去出来るようにした。
魔法は便利だ。
だけれど、他の人がいるときに一度もトイレに行かないのは、まずいので『簡易トイレ』を作った。
小さな小屋に、水洗洋式トイレ、トイレットペーパー、洗面所、荷物置き場を設置。
荷物置き場は、剣を立てかけたり、服をかけたり置ける場所、荷物も置ける場所がある。
水回りは、水魔法を付与した魔石を取り付けてある。
もちろん、結界も張ってあり、防音機能もある。
防音機能は、部屋の中の音が外にもれないようにしてあり、外の音は聞こえるようにしてある。
外の音も聞こえないと、危ないときに困るから。
付与は、汚れ防止、自動クリーン、破損防止、盗難防止、湿気防止、完全防水、防炎、カビ防止、改ざん防止、偽造防止、盗作防止、コピー禁止、手書きの写し禁止、魔法攻撃無効、物理攻撃無効、魔法攻撃防止倍返し、物理攻撃防止倍返し、犯罪者使用不可、悪人使用不可、持ち主に帰還、自動帰還、使用者登録。
少し離れた場所に小屋を出した。
中に入って、用を足し出てきて、小屋をしまう。
また、テーブルに戻る。
向こうから、子爵が走ってくる。
「アン、今のはなんだ」
「今の?」
「小屋だよ。小屋。急に小屋が出てきたと思ったら、すぐに消えただろ」
「あー、トイレです」
「はあー」
「ですから、簡易トイレです」
「そんなのどうした」
「どうしたって、今回の遠出の為に用意しました」
「はあ」
「子爵閣下、声が大きいですよ」
「仕方ないだろう。お前が小屋なんて出すから」
「それは、申し訳ございません」
「ああ、謝ってほしいわけじゃないんだ」
「これって、俺たちにも使わせてもらえないか」
ジョンの顔を見ると頷いているので「いいですよ」と返事しておく。
「おーい。アンが簡易トイレを使わせてくれるぞ」
仕方ないので、また小屋を出す。
団員たちが集まってきた。
「おー、アンはすげぇなぁ」
「簡易トイレがあれば便利ですね。わざわざ森の中まで行く必要がありませんから」
「だけれど、アン、気をつけろ。俺たちだけの時はいいが、他の奴らがいる時は注意しろ」
「そうですね。分かりました」
その時は、大きなテントを出して、その中に簡易トイレを出そう。そうすれば、バレないよね。
「しゅっぱーつ」
お昼休憩が終わり、また走り出す。
それから、3時の休憩をして、今夜の野営地に着いた。
「馬はどうするんですか。このまま馬車に繋げておくのですか」
「いや、馬車から切り離して、木にロープで繋げて置く」
「ああ、そうなんですね」
「馬もそうしないと、休めないからな」
じゃあ、結界はどうするのかな。
後で、子爵に聞いてみるか。
とりあえず、馬のお世話をしてから、自分たちのテントをはる。
張るといっても、張ったまましまってあるので出すだけだ。
その間に、ジョンが見張りの順番を聞いてきた。
人形ジョン『アンは、最初で午後7時から10時まで、私が深夜1時から4時までです』
「分かった。ジョンの時は目覚まし時計いる」
人形ジョン『いえ、体内時計がありますので、大丈夫です』
夕飯は何にしようかな。
「ジョンは食べたい物とかある」
人形ジョン『特にはないです』
「ステーキにしよう。たしか、美味しいステーキ屋さんがあったよな」
先にテーブルと椅子を出しておこう。
昼間よりは大きめのテーブルを出す。
テントに入り、タブレットでステーキセットを注文する。
それから、トイレ用のテントを探し、四角で2m×2mとフレームを支える重りも購入。
トイレと同じ付与をする。
外に出で、騎士寄りのほうにトイレテントを設置する。
中に入り、簡易トレイを出す。少しだけ認識阻害をかける。
子爵に話しに行くか。
「子爵閣下、ちょっといいですか」
「アンか、なんだ」
「簡易トイレですが、騎士様よりの場所にテントを出しましたので、その中に簡易トイレを置きました」
「それから、馬たちですが、結界は必要ですか」
「そうだな。安全の為に出してくれるか」
「私が設置してきましょうか」
「いや、渡してもらえれば、俺たちが付けてくる」
「そうですか、それと明日の出発は何時ですか」
「5時に出発だ」
「ずいぶん早いんですね」
「ゆっくりしていると、道が混むときがあるからな」
「分かりました。見張り以外は自由でいいんですか」
「ああ、構わない」
自分たちのテントに戻りテーブルに、ステーキセット、野菜スープ入りのスープジャー、紅茶を出す。
「ジョン、早いけれど食べちゃおう」
人形ジョン『そうですね』
「子爵に馬用の結界魔道具を渡してきたよ。それと、簡易トイレの説明も」
人形ジョン『何か言われましたか』
「何も言われないよ。どうして」
人形ジョン『恐らく子爵たちは、私たちのことを監視していると思います』
「えっ、そうなの。どうして」
人形ジョン『何者なのか知りたいのでしょう。それと、何をしているのかとか』
「なるほどねぇ。そうなると、あまり手の内は見せない方がいい」
人形ジョン『そうですね。あまり派手なことはしない方がいいでしょう』
「それは、難しい選択だね」
「もう、テントも簡易トイレも出しちゃったし」
人形ジョン『まあ、あまり気をはらずに、ほどほどにしましょう』
「そうだよね。あまり気にしていたら疲れちゃうし」
食べ終わったら、テーブルと椅子をしまい、ランタンをテントの左右に置く。
明るさは、昼白色にした。明るすぎたら変えよう。
アウトドアチェアを二台だして、ジョンと一緒に座る。
「ジョンは、見張りが深夜だから、もう寝る?」
人形ジョン『いえ、もう少しアンと起きています』
「あまり、寝ないと不審がられるんじゃない」
人形ジョン『まだ、この時間ならば大丈夫ですよ』
「そうだ。見張りの時間がまだだから、簡易トイレの申請書を書いてきてもいいかな」
人形ジョン『そうですね。そのほうがいいでしょう』
「書けたら、グリーンさんに書類を送ったほうがいいかな」
人形ジョン『後から、トラブルになるよりはいいでしょう』
私は、テントに入り急いで簡易トイレの仕様書を書きはじめる。
そうだ。こんなに大きくなく、トイレだけある小さめのも用意しよう。
それから、アウトドアチェアもついでに書こう。
あっ、トイレ用のテントと重りもだ。
「ジョン、ちょっと簡易トイレに行って、商会名を印字してくるね」
人形ジョン『そのほうがいいですね』
急いで、トイレまで行き。簡易トイレの見やすい場所に、商会名と商標登録を印字する。
テントにも印字したいが、外に出て作業するとバレるかもしれないから、テントの中から表側に印字した。
アウトドアチェアにも印字と。これで全部できたかな。
また、テントに戻り書類作成をする。
グリーンさん、まだいるかなぁ。
地図アプリから覗いて見ると、まだ執務室にいた。
どこに書類を出そうか見ていると、まだ未処理の書類があったので、上から三番目に入り込ませた。
どうか、バレませんように。
「ジョン、終わったよ。グリーンさんも不審に思うかもしれないけれどね」
人形ジョン『仕方ないですね。あまり、思いつきで行動しないことです』
「肝に銘じます」
暗くなってきたら、また、子爵がやってきた。
「おい、アン、これはなんだ」
「ランタンですけれど」
「ランタンがこんなに明るいはずないだろ」
「そう言われましても、ランタンですし」
「いつから、ランタンがこんなに明るくなった」
「日進月歩ですよ」
「なんだそれは」
「日々進化しているということです」
「俺にも貸せ」
「子爵閣下は、我儘ですね」
一個だけ渡す。
まだ、手を出しているので、もう一個渡す。
「もう、ありませんよ」
「ちゃんと、返してくださいね」
「分かっている」
本当かなあ。
「見張りの時間になったから、ジョンは寝ていていいよ」
人形ジョン『もう少しだけ』
「ジョンだって、ちゃんと寝ないと疲れちゃうよ」
人形ジョン『分かった』
見張りは、三人ずつ3時間で交代する。
見張りをしている間は、何をしていればいいのか。
本とか読んでもいいのか。
こんなことなら、見張りの仕方を聞いておけばよかった。
他の二人も、自分のテントの前で見張りをしている。
サーチをかけているが、寝るわけにもいかないし、退屈だ。
きちんとしていないと、後からクレームが入るかもしれないしなぁ。
次の商品のことでも、考えておくか。
そろそろ、次の本を出してもいい頃だし。
介護用品続きで、次は、介護用ベッドかな。
あまり出し過ぎると、後が続かないか。難しいところだ。
色んなことを考えているうちに時間がきた。
ふう、これでやっと寝られる。
テントに入り「クリーン」をかけてから、寝袋の中に入る。
疲れているせいか、すぐに眠りについた。




