表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/114

第104話 初めての護衛依頼

「まったく、とんだとばっちりだった」

「やっぱり、貴族になんてなるもんじゃないな」

「では、私たちはこれで失礼いたします」

「おいおい、まだ話しは終わっていないぞ」

「いえ、私たちにはございませんので」

「なんだよ。頼みたいことがあるって言ったよな」

「謹んでお断りさせていただきます」

「まだ、内容を話ししていないぞ」

「いえ、聞かなくとも充分です」

「それは、不敬だぞ」

「それでは、この土地とも失礼させていただきます」

「そんなこと、出来るわけないだろう」

「冒険者は自由ですので」

「まあ、そう言うなよ。お前たちにとっても、悪い話しじゃないぞ」

「はあ、何でございましょうか」

「護衛依頼だ」

「はあ」

「なんだ、その気の無い返事は」

「お前たちは、Dランクだろ。Cランクに上がるには護衛依頼を一回でも受ける必要がある」

「そこでだ。俺たちならば、気心も知れているし安心だろ」

「いいえ、まったく」

「お前なあ。少しは言葉を選べよ」

「護衛依頼は、依頼主によっては酷い目にあうんだぞ」

「そうなんですか」

「ああ、悪い奴は、最初から失敗するように罠を仕掛けたりするんだ」

「荷物が壊れたと言いがかりをつけたり、仲間と協力して怪我をさせたりと色々だ」

「そうなると、弁償したり賠償になったりで、金銭を払えなければ、借金をして奴隷落ちするんだ」

「その点、俺たちならば何の問題もないだろう」

「はあ」

「一度でも護衛依頼をすれば、後はしなくてもいいんだからな」

「はあ、それでどこまで行くんですか」

「王都だ」

「子爵になったから、授爵式を受けるんだ」

「はあ、そうですか。おめでとうございます」

「気持ちがこもっていないぞ」


念話『どうする、ジョン。受けたほうがいいかな』

人形ジョン『そうですね。どうせ受けるのならば、アリソン子爵がいいかも知れません』

『分かった』


「それで、もしも、受けるとしたならば、私たちは何をするんですか」

「そうだな、騎士たちに交じって護衛についてもらう」

「王都までは遠いいので、馬に乗るか御者台に乗るかだな」

「ジョンたちは、馬には乗れるのか」

「一応は乗れますが、遠乗りはしたことないです」

「そうか、まあ、休憩しながら進むから問題ないだろう」

「騎士様たちだけでは、ダメなんですか」

「ダメなことはないが、こちらにも騎士は残しておきたいからな、お前たち二人が加われば、その分人数を減らせるし」

「はあ、それは買い被りですし、責任は取りたくないです」

「そんなに難しく考えなくてもいいぞ」

「魔物や盗賊を退治すればいいだけだし、俺も戦えるしな」

「それは、まずいですよ」

「子爵閣下は、守られる立場なんですから」

「いや、俺強いし」

「強い弱いの問題ではございません」

「そうですよ。アンもよく言ってくれました」

「お館様もいい加減自覚してください」

「守られる立場の人が、率先して戦ってどうするんです」

「いやいや、強い者こそ戦うべきだろう」


「それで、王都までは何日かかるのですか」

「そうだなあ。7日から10日くらいか」

「はあ、長いですね」

「仕方ないんだ、途中で他の貴族に挨拶する必要な箇所があるからな」

「はあ、面倒くさいですね」

「そう言うなよ。俺が一番にそう思っているんだから」

「貴族は大変ですね」

「お前は、他人事でいいよな」

「ええ、他人ですから」

「お前は、まったく」

「それで、受けてくれるのか」

「そうですね。メリットは分かりましたが、デメリットもあるのではないですか」

「デメリットかあ。そうだなあ。長時間拘束されることぐらいじゃないか」

「護衛失敗になるようなことは、ありますでしょうか」

「護衛対象を守らない。戦わない。途中で許可なく離脱する。ぐらいだろう」

「食事や夜の見張りや宿はどうなりますか」

「食事はこちらで用意する。夜の見張りは交代制だ。宿もこちらで準備する」

「食事は自分たちで用意するのでも、構いませんか」

「準備出来るのならば問題ない」

「食事内容に何か言われることはありますか」

「それは、どういう意味だ」

「私たちが別の食事メニューを食べていて、クレームをされることはないですか」

「ああ、それは無い。何を食べようと自由だ」

「途中の休憩はどんな感じですか」

「馬を休ませることが第一たな。それから、俺や団員たちが軽食を食べたりお茶を飲んだりするくらいだ」

「その時も、自分で用意した軽食やおやつを食べてもいいんですか」

「構わないが、いやに食べることにこだわるな」

「それは当然です。自分の好きな物を食べたいですから」

「なんだ、お前は食いしん坊なんだな」

「休憩時の見張りはどうなります」

「それは、団員がするから心配いらない」

「王都に着いた後は、自由ですか」

「そうだな、朝と夜に宿にいて連絡が取れる状態ならば自由だ」

「なんだ、行きたい場所があるのか」

「まだ決めていませんが、せっかく王都に行くのでしたら、色々と見たいので」

「そうか、じゃあ行くんだな」

「そうですね。お受けいたします」


「今回は、妻と子供たちは、留守番だから俺だけが行くからな」

「えっ」

うそぉ~、奥さんいるのぉ。まして、子供も。

「なんだ、その顔は、俺が結婚しているのがおかしいか」

「いえ」

「いいや、その顔は、俺みたいな男が結婚出来るはずがないと思っていただろう」

「ソンナコトハアリマセン」

「なんだ、その片言は」

「不敬にしないから正直に話ししてみろ」

「本当に不敬とか言いませんか」

「ああ、言わないから言ってみろ」

「どんな顔をして、奥様を口説いたのだろうかと思っていました」

「「プッ」」

「お前ら、二人して笑うな」

「まったくよぉ。俺は口説いていない。俺の方が口説かれたんだ」

「・・・」

「お前信じていないな。本当なんだからな」

「奥様とお会いする機会がございましたら、是非聞いてみたいです」

「お子様は、おいくつなんですか」

「7歳と5歳で上が男で下が女の子だ」

「・・・」

「なんだ」

「奥様とお嬢様がいらっしゃるのに、女性の騎士がいないなと」

「ああ、女の騎士はいないんだ」

「それは、女性は騎士になれないのですか」

「いや、王族の護衛には居たかもしれない」

「一般的でないと」

「そうだな」

「これからは、困りませんか」

「なんでた」

「子爵になられたのですから、今後はお茶会などのお誘いが増えるのではないですか」

「ああ、そうかもな」

「その時に、男性騎士だけでは入れない場所とか出てきませんか」

「たとえば、トイレとか着替えをする時などです」

「言われてみるとそうだな」

「だが、急に騎士と言われてもな」

「戦うメイドとかは、居ないのですか」

「なんだそれは、小説の読みすぎじゃないのか」

「そうですか、でも現実的に騎士だと大事になるかもしれないし、見た目ですぐに分かってしまうから、侍女とかメイドだったら相手も油断するんじゃないですか」

「そうだな、それならば一人や二人でいいしな」


「奥様やお子様は護身術とは習っているのですか」

「いや、長男は剣の練習はしているが、妻と娘は何もしていないぞ」

「それは、なぜですか」

「お前は、知らないかもしれないが、貴族の娘はそんなことはしないんだ」

「いや、ですからなぜですか」

「なぜって、女だからだ」

「なんか、話しが通じませんね」

「お前、馬鹿にしているのか」

「いえ、違います。女だから習わない理由になっていないからです」

「では、お聞きしますが、もし、暴漢に襲われたら、もし、誘拐されたら、どうしますか」

「どうって、その前に騎士が捕まえるだろう」

「一日中、騎士が二人から三人ついているのですか」

「いや、ついても騎士は一人だな」

「騎士が戦っている間は、どうなりますか」

「その間に走って逃げられますか。それだけの体力はありますか。逃げる方向場所は判断できますか」

「貴族の女は走ったりしない。はしたないからな」

「別に戦う必要はないんですよ。その場から逃げられればいいだけなので」

「相手の急所を狙うとか、一瞬の隙があれば逃げられるようにするんです」

「縄で縛られたら、縄を解く練習をするとか、日頃から訓練していなければ、落ち着いて対処出来ません」

「もっと言えば、小刀や短剣などで、相手の急所が狙えれば一番いいですが」

「そんな風に考えたことはなかったな」

「どこにでも、悪い奴はいます。そういう輩は悪知恵だけは働きますから」

「そうだな。善処しよう」


「そうですね。日頃から訓練していれば慌てないと思います。避難訓練と同じです」

「なんだ、その避難訓練は」

「えっ、避難訓練をしていないのですか」

「だから、その避難訓練とは何かと聞いている」

「マジか」

「あ、失礼しました」

「そうですね。避難訓練とは、緊急時の訓練です」

「たとえば、火災が起きた時、魔物が襲ってきた時、盗賊が襲ってきた時などです」

「お屋敷にいるからと安全ではないですよね」

「緊急時に避難する道筋とか、避難できる頑丈な部屋とか、避難する時の責任者とか、持ち出すものを決めておくとか、後は避難後の集合場所とかです」

「ああ、お屋敷によっては、隠し通路なんかがありますか」

「お前は、凄いことを考えるな」

「いえ、当たり前のことです。日頃から身体が覚えるまで訓練しなければ、緊急時になんて動けませんから」

「なるほど、概ねは理解したが、頑丈な部屋とはなんだ」

「それは、外に逃げるのではなくて、部屋にこもる場合です」

「外に逃げるよりも、建物の中にいたほうが安全な場合や、外に逃げる時間がない時などですね」

「簡単に部屋が壊されたり、燃えたりしないような部屋です」

「パニックルームといいます」

「その部屋には、水回りのキッチンやトイレ、お風呂があると尚いいです」

「それから、食料や着替え、貴重品も必要です」

「そんな部屋は、聞いたことがないな」

「そうですか、王族とか高位貴族の屋敷にはあるんじゃないですか」

「ああ、そうか、それはあるかもな」

「そんな物まで準備しないとダメなのか」

「まあ、部屋を用意するのは、すぐには無理でしょうから、まずは、避難する手順を確認することから始めたらいいと思います」

「ああ、そうだな」


「王都に行くのに私たちは、何か準備する物はありますか」

「特にはないな。野営できる準備があればそれでいい」

「結界魔道具は、お持ちになるんですよね」

「なんだそれは」

「結界魔道具です」

「だから、それはなんだと聞いている」

「結界をはる魔道具です」

「そのまんまじゃねえか」

「まあ、結界をはる魔道具ですから、そうなりますね」

「そんな物はない」

「ございます。こちらになります」

バッグから取り出すふりをする。

「こちらが魔道具になります」

「結界の範囲が10mでドーム型に張れ、馬と荷台一台分を想定しております」

「付与魔法は、防水、汚れ防止、破損防止、改ざん防止、魔法攻撃防止倍返し、物理攻撃防止倍返し、盗難防止、犯罪者使用不可、悪人使用不可、使用者登録、自動帰還です」

ギルドに登録してから、いくつかの付与を追加してある。

台にはフックも付けて、両脇に二カ所穴をあけて紐を通して固定できるようにもした。

あっ、追加で使用変更届を出さないとまずいかな。近々商業ギルドに行こう。

「嘘だろ。こんな魔道具がいつできた」

「そうですね。数か月前でしょうか」

「お前たち、知っていたか」

「「いえ、知りませんでした」」

「これを売ってくれ」

「ダメです。これは私のですから」

「そんなあ」

「当日は、持って行きますので、貸出しますよ」

「お貸しするだけですからね」

「ああ、分かったよ。それだけでも助かる」

「後は何かあるか」

「いえ、無いです」

「今日の模擬戦はどうしますか」

「そうだな。ちょっと予定よりも遅くなったから、今日はこのまま帰っていいぞ」

「出発する日が決まったら連絡する。恐らく10日後ぐらいだ」

「分かりました。では失礼いたします」


【アリソン子爵 side】

「はあ、なんだか疲れたな」

「そうですね」

「やっぱり、アンたちは普通じゃないな」

「あんなに色んな事を知っているのも、おかしいだろ」

「それに魔道具もだ。あんなの何時できた」

「まったく、知りませんでした」

「考え方が俺たちとは違うな」

「女に護身術を教えるなんて思いつかないだろう」

「普通は騎士がいるから大丈夫だと思うよな」

「そうですね。でも、アンが女性だから気がつくこともあるのかもしれません」

「そうか。俺たちだと、どうしても男目線になるからな」

「教える奴を急いで探さないと」

「体力なんてすぐに身につかないからな」

「パニックルームとやらも、そうだよな」

「あんなものは、すぐには造れないしな」

「でも、話しを聞く限り、あれば安心出来そうです」

「避難訓練もそうだな」

「確かに、日頃から訓練をしていなければ、いざという時に対応できないな」

「騎士たちの訓練と同じだ」

「それも、避難ルートや責任者を決めて、早々に行おう」

「アンたちは何者なのか。調べてみるか」

「いや、ここまで親切に教えてくれたんだ、裏切れないだろう」

「そうですよ。お館様家族のことを心配して、色々教えてくれたんですから、このままでいましょう」

「そうだな。しかし、アンたちはビックリ箱みたいだな。いつ、何が飛び出てくるか分からない」

「ハハ、確かにそうですね」

「出発する日が決まったら、アンたちに護衛依頼を発行してくれ」

「承知いたしました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ