疎外感が半端ないので御座います。
アレンとアルルとシエルは食堂で一緒に食事をする様になった。
アレンの席は真ん中。その両隣にアルルとシエル。
話は専ら北の辺境の話になってしまう。
例えば……。
「このパンはすごく美味しいですわね。こんな美味しいパンは食べた事が無いですわ。流石に貴族様のお屋敷ですね」
アルルが誉める。
「有難う。ホイド小麦と言って、ここの領地の特産なのよ」
シエルが答える。
「ホイド小麦は水分の調整がすごく難しいんだ」
アレンが言う。
「レナル川の東側は一面小麦畑で、秋になるとそれは綺麗なのよ」
シエルの言葉に頷くとアルルは言った。
「ねえ。アレン様。覚えていらっしゃる? あの北の修道院で出たパンの固い事。これなら大砲に詰めて敵陣に打った方がましだって、ガランド副司令官が言ったでしょう?」
「覚えているよ。もう少し何とかならないのかって」
アレンはふっと口の端を上げる。
「あまりにも固いので、頭に来てあのパンを池に投げた人がいたらしいわ。そうしたらね。ぽちゃんって沈んでしまったって」
アルルはそう言って笑った。
アレンも「それは本当か? まるで石じゃ無いか」と笑う
そして修道院の話や同じ隊にいた人々の話になる。
討伐に2度、それも2年も行っているのだから、ある意味、通算1年しか一緒にいる事の無かった自分よりも思い出は沢山あるのだろうと思った。
シエルには分からない事だから微笑みを浮かべて話を聞いているだけである。
自分だけが仲間外れになった様な気分になった。
シエルに分からない話を延々と続ける二人に、給仕をする召使達は眉を顰める。
アレン様は一体どういうお積りだろうと誰もが話をした。
その内、シエルは二人と一緒にテーブルに着く事が苦痛となった。
むしろ屋敷にいる事さえ苦痛になった。
アレンは妻よりも看護師の方を優先している。それは誰の目にも明らかだった。
あの看護師はどう見ても旦那様の愛人だ。
堂々と愛人を伴って帰って来たのか?
可愛そうな奥様。
一生懸命に働いて健気に旦那様のお帰りを待ち続けたのに。
召使達は皆そう思った。