看護師アルルの懺悔で御座います。
夕食はまるでお通夜の様だった。
召使達は一体何が起きたのかと心配していた。
アレンもアルルも黙って黙々と食べている。シエルも黙って食べていた。
「アレン様。シエル様。明日、ご領地の修道院と教会に参りたいと思います」
不意にアルルが口を開いた。
「至らない私で御座いますれば、教会で懺悔をして参りたいと思うので御座います。自分の罪を神に悔いて参ります。……シエル様。本当に生意気な口をきいて申し訳が有りませんでした。どうか私を追い出さないでください。追い出されたら行く所がありません。北の修道院はもう嫌です。来る日も来る日も負傷兵の看護ばかり……。ご飯は不味いし、寒いし、もう、うんざりなんです」
「……」
「もう二度とあなた様に逆らう事は致しません。誓います」
大きな目を潤ませてそう言うアルル。
「追い出すなんてそんな……。私を助けてくれた君にそんな事はしない」
アレンは言った。
「シエル。アルルを許してやってくれるな?」
シエルは黙ってアルルを見ていたが、こくりと頷いた。
「良かった。嬉しい。ああ、良かった。御免なさい。シエル様。これからは気を付けますね」
アルルは弾んだ声で言った。
「アレン様。なので教会と修道院にご案内して頂けたらと……」
アレンとシエルは顔を見合わせた。
「じゃあ、仲直りの印に3人で行ってみるか?」
アレンが言った。
「アレン様。私は明日レナル川を見に行く予定で御座います」
シエルは言った。
「ですから、アルルさんは旦那様とご一緒に教会に行ってください。私はレナル川の方に向かいますから。兵達の様子も見て来ます」
「レナル川なら私の具合が良くなってから一緒に行けばいいではないか。あの場所は少し遠過ぎる。馬車で2時間以上掛かる」
アレンは言った。
「いいえ。もう石積みを開始していますから、出来るだけ視察に行きたいのです。本当に昨年は大変だったので」
シエルは言った。
「教会も修道院も遠くは無いので負担にならないと思います。どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ」
「大丈夫ですよ。腕の良い看護師がいるのですから。シエル様。お任せください」
アルルがそう言って微笑んだ。
「宜しくお願いしますね。アルルさん」
シエルは頭を下げた。
その姿をアレンは不思議そうに見ていた。




