村上陽一郎「科学・技術の歴史の中での社会」まとめ
◆「技術の歴史」=「人間の社会の歴史」
(理由)「農耕技術こそ社会の初め」であり、そこでは「膨大な技術知を必要として」おり、「そして、それが人間社会の形成に」「決定的な動因となった」から。
「動因」…ある出来事を引き起こす直接の原因。動機。
◆「農耕のための技術」の例示
…「これらの技術を維持し、発展させることこそ、人間が社会的存在として生きることと直接繋がる」
なぜなら、「原始的社会構造は、農耕という技術とともに生まれ育ったから」
「灌漑」…田畑に必要な水を、人工的に引いて来て供給すること。
「食餌」…食べ物。
「社会的存在」…人が社会の中で(中にいるからこそ初めて)存在すること。そこには、他者との関係、生産に携わることなどの要件がある。
「アクセス」…つながること。接触すること。
◆「科学」=「人類発祥とほとんど同時」
…「自然現象を組織的・体系的に捉えようとする人間の知の営み」・「技術」
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この定義における「科学は、技術と明確に区別のできないもの」・「ノウハウ」・「エスノサイエンス」
「編暦」…暦を作ること。
「ノウハウ」…製品開発などに必要な知識や技術上の秘訣。
「エスノサイエンス」…民族科学。それぞれの文化圏が持つ価値観や自然観に基づいた独自の知識体系。また、それを研究する学問。
◆「近現代の科学・技術」
…「まず(一般)社会と縁を切るところから始まった」。それは「十九世紀半ば近くのこと」。
「科学に専門的に携わる人々が出現」=「科学者」の「誕生」
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「科学者」の「共同体」は「それを取り囲む一般の社会とは自らを隔絶させる、という性質を備えたものだった」
◆「科学者」とは
・「専門領域を持つ」…「専門分野が誕生」
「部分的現象」」…ある一部分の出来事・現れ
「専門分野」…同じ好奇心を持つ専門的な研究者(=「科学者」)たちが集まって一つの共同体を形成することによって成立」←「科学」は、「こうした社会制度(社会の仕組み・共同体)を前提にして初めて存在しうるもの」
「共同体」…共同社会。家族や村落など、血縁や地縁に基づいて自然的に発生した閉鎖的な社会集団。
◆「科学者の作る共同体(社会)」
「科学者」…「自分の関心に従って研究を行」う→「研究成果は、同じ専門家仲間とのみ共有」→「さらに研究を先に進めるのは、自分自身か、同じ共同体に属する仲間だけ」・「評価するのも共同体の仲間だけ」
「科学者にとって最高の勲章」=「エポニム」…「共同体の仲間が、自分の到達した成果を自分の名前を付けて呼んでくれること」
〇「科学は、個々の専門領域において成立している専門家の共同体の内部で自己完結し、自己充足している知的営みとして、自らを確立していった」。
「自己完結」…ひとりですべての物事を行い、処理・解決すること。
「自己充足」…自分(の中)だけで物事を終わらせ満足すること。
「徒弟制度」…親方が弟子(徒弟)に技術や知識を伝える職業教育制度。弟子は親方の下で一定期間修行しながら技能を学び、最終的には独立して職人になることを目指す。この制度はヨーロッパ中世のギルドや日本の江戸時代の丁稚奉公など、各地域の歴史的背景に合わせて発展した。
「イノベーション」…革新。技術革新。
「チャンネル」…伝達手段。経路。
「十九世紀のヨーロッパに誕生した科学」…「社会的効用(社会の役に立つかどうか、利用できるか)という概念(考え方)の外に意図的に(わざと)自らを置こうとした」
=「直接的な社会的利得を追求しない営み」・それに「携わる人々の好みと趣味に由来する喜びをひたすら追求する営み」
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「科学にとってある意味では幸福であった」「時代」
「利得」…もうけ。
「実地」…実際。実生活。
◆「第一次世界大戦」の頃からの科学
「軍事と産業において、科学の中に蓄積されている知識の「利用可能性」がようやく認知されるようになった」。
また、「工業における「開発」に科学研究が寄与することが明らかになってきた」。」
=「科学は、否応なく、共同体の外部の一般社会との間に強い絆を持たざるを得なくなった」
→「社会的利得を生むという科学的知識の価値には、一般社会からそれなりの対価が支払われることになった」。「豊かな研究のための資源(=「資金」)」+「科学者は、それだけの「社会的責任」を負った」…「研究結果がそのまま社会全体の動向を左右するような可能性が生じている」
「認知」…(皆に)知られること。
「寄与」…役立つこと。貢献。
「楔を打ち込む」…①敵陣の中に攻め込んで、その勢力を二分する。また、他の勢力範囲の中に地盤を築く。②親しい間柄の邪魔をする。
「還元」…元に戻すこと。
「奉仕」…貢献。