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「あの蝶もテメェが作り出したのか?」
「そうだ。あの蝶は、ワタシの魔力の残滓」
そう言うと、ベラウドの周りをあの虹色の蝶が周り、そしてディアの前で止まった。
アリスとディアを導き、時には助けてもらった虹色の蝶。蝶はディアの前で止まると、やがてひらひらとディアの周りを飛び始めた。
「嗚呼、お前に話しておかなければならない」
「あ?なにが……」
「お前の力についてだ」
「ッ何か知ってんのか……!」
ピクリ、とディアが反応した。
ディアの力――ディア自信が持っていた、失われた力のことを、ベラウドは何か知っているという。
手掛かりを掴めそうになり、ディアが前のめりに耳を傾ける。
「……ワタシが創り出した迷宮から、自身の力を感じ取っただろう」
元々この迷宮に入ったきっかけは、自身の力を微かに感じ取ったからだ。ディアは頷いた。
「その力がどこから感じたのか、お前はまだ正確に把握出来ていないな?」
「……ああ」
「今、教えてやろう」
ベラウドが頭を動かした、その瞬間。
ディアの目の前に、再度あの虹色の蝶が止まった。
すると、その虹色の蝶から、緑色の粒子が溢れ出す。バッ!ととびのこうとしたが既に遅く、緑色の粒子は忽ちディアの心臓に向かった。
「っな……!?」
防ぎ切れない、とディアが焦ったが、痛みはやって来ない。
何が起こっているのかと自身の身体を見下ろせば、緑色の粒子が自身の心臓部分に向かって消えていくのが見えた。
驚きに目を見開くディアだが、次に自身の身体の変化に気づく。
ずっと重かった身体が、軽くなった。ずっと鉛でも背負っているのかと言わんばかりの人間の身体に、余裕が産まれてきた。力が奥底から湧き上がった感覚が来て、目を見張る。
「なん、だこりゃ。前よりは少ねぇが、力が戻った感覚が……」
「当然だ。今ワタシは、お前の力を戻したからな」
「は!?」
さらりと言ったベラウドに、ディアは驚きの声を上げた。
「どういうこったよ……!!」
「……お前の力は、あの大賢者によって分散されている」
「は……!?」
「お前を封印した大賢者は、復活した場合のことを考え、万が一に備えてお前の力を抜き取り、分散させオーブに込めて各地に隠したのだ」
大賢者。その単語に、ディアは顔を顰めた。
その存在は、ディアを封じ込めた元凶であり、長年のディアの宿敵。
ディアの前に立ちはだかって幾度も邪魔をしてきた、ムカつく奴。今でも思い出す為に苛立ちが募る。
その大賢者が自身の力を封じ込め、簡単に元に戻さないようばら蒔いたと言われた。苛立ちは最高潮にまで募った。
「……そのオーブってのはどこにあんだ……!」
「オーブは全部で七つある。その内の一つは、ワタシが所有していた」
「……あ!?」




