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 は、と、今度こそ茫然とした声が、ディアの口から漏れた。

 

 「他の同族は、お前とワタシ以外全員人類に討伐された。千年を掛けて、一匹残らず」


 「……それこそ、冗談だろ。アイツらが、人間共に負ける、わけが」


 脳裏に気高く、勇ましく立つかつての同族の姿が浮かぶ。

 彼らはディアと同等に強靭な肉体を持ち、強大な力を持つ誉れ高きドラゴンだった。人類に後れを取ることもなく、向かってきた人類を簡単に躱し、返り討ちにしたのは記憶に新しい。

 そんな彼らが、千年の間に全員殺された?冗談も甚だしい。

 信じられるわけがない。なのに、冗談だと笑い飛ばすディアの声は震えていた。


 「ディア・フィアエナ。人類を甘く見るな。人類は、たった千年だけで成長していく」


 ドラゴンはディアの心情を知ってか知らずか、ディアが抱く希望を悉く砕いていく。

 千年前の人類は、モンスターに太刀打ちする術が少なく、モンスターに搾取され、玩具にされる運命だった。

 しかし、人類は千年かけてその状況を()()()()()()()()()()

 

 「奴らはワタシ達の想像を遥かに上回る成長を見せた。我々は、その成長に負けたに過ぎない」


 「……」


 「フィアエナ族は、進化した人類に次々に打ち倒された。最後のフィアエナ族は、」


 「もういい、やめろ」


 詳細に語ろうとするドラゴンを、ディアは声色だけで制した。

 ジロリ、とドラゴンはディアを見下ろす。対してディアはドラゴンを睨み上げた。その目には怒りと悲しみ、憎しみがごちゃごちゃに混ざり合っているように見えた。

 暫く睨み合った一匹と一人だが、最終的にその空気を切り裂いたのは、ディアの舌打ちだった。

 ディアは舌打ちを零すと、ドラゴンに背を向けて入り口に向かう。アリスは抱きかかえられたまま、慌ててディアに声をかけた。


 「ディー?どうしたの?」


 「……ちょっと、頭冷やしてくんだよ」


 「でも、どらごんさん……」


 「うるせぇ、ちょっと付き合え」


 「おい、ディア・フィアエナ。アリスは置いてけ。頭を冷やすなら一人で勝手にやれ」


 「うるせぇ!」


 アリスの言葉も、ドラゴンの頼みも全て一蹴したディアは、ずかずかと大股で入り口に向かっていく。

 ドラゴンがいる空間に出るまで、ドラゴンはジッとディアの後ろ姿を見つめており、アリスは戸惑った表情でディアに抱きかかえられたまま一緒にその空間から出た。



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