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 「アリスは"フィアエナ族"について知っているか?」


 ドラゴンがそうアリスに問いかけた。

 アリスは「ふぃあえな?」と反芻させると、ディアの方に顔を向けた。


 「ディーのみょーじ?」


 「みょ……は?」


 「間違ってはいない。ファミリーネーム、種族名、そんなものと同じように考えればいい」


 ディアの疑問をわかっているかのように補足したドラゴンは、そのまま話を続けた。


 「フィアエナ族は、大昔に世界を混沌に陥れた種族。先祖「フィアエナ」の名を継ぎ、己が敵を全て討ち滅ぼし、世界に恐怖と絶望を与えた者達のことを言う」


 「……??」


 「嗚呼、お前に対して難しい言葉を使ってしまったな、許してくれ」


 つまり簡単に言うと、とドラゴンが一度咳払いをした後、アリスにもわかるように簡潔に答えた。


 「お前が気を許しているそこのディア・フィアエナは、かつて幾つもの国を滅ぼし、人間を殺した、凶悪なモンスターだということだ」


 「………………………………………………」


 もう一度、アリスはディアの顔を見て、そしてドラゴンを見て、またディアを見て。


 「ディー、こわいもんすたーじゃないよ?」

 

 彼らの顔を交互に見たアリスは、キョトンと疑問を落とす。

 アリスの疑問も最もだ。ドラゴンはディアのことを「モンスター」と称したが、アリスから見てもディアはちょっと力の強い人間にしか見えない。アリスが思い浮かべるモンスターは、ディアと出会う前に遭遇したバーベアーとイーゴリラのような怖いモンスターだ。それとディアが同列だとは、彼女はとても思えなかった。

 アリスのその疑問に、ドラゴンはクツクツと嗤う。


 「そうだろうな。お前からしてみれば、今のソイツはただの人間だ。だが、ソイツは正真正銘のモンスターだよ、ワタシと一緒の、な」


 「いっしょ……?」


 ああ、と肯定したドラゴンは、そのまま話を続ける。


 「フィアエナ族は、他のモンスターとは違う特性を持つ」


 「とく、せい?」


 「他のモンスターには無く、フィアエナ族にはあるものだ。それがなにか、アリスはわかるか?」


 「わかんない」


 「そうだろうな。折角だ、少し遠回りしながら答えてやろう」


 ドラゴンは身動ぎした後、『フィアエナ族』について話し始めた。


 「先程も言った通り、フィアエナ族は、先祖「フィアエナ」の名を継いで生きている種族のことだ。さてアリス、この先祖「フィアエナ」だが、コイツが何のモンスターかわかるか?」


 「……?なに?」


 「――ドラゴンだよ」


 どら、ごん、とアリスは反芻する。

 ディアは、つまらなさそうに黙ったままだ。


 「フィアエナは、元々はドラゴンだった。しかし他のドラゴンとは違うものを、フィアエナは持っていた。なんだと思う?」


 「えーと……?うーん……」


 「わからないのも無理はない。…他のモンスターには無く、フィアエナが持っていたものは」


 そこでドラゴンは一度言葉を区切り、ディアを見た。

 ディアが依然としてつまらなさそうだ。それを一瞥したドラゴンは視線を元に戻すと、答えた。


 「――()()()()だ」


 …………………………。


 「……にんげんの、ち?」


 「そうだ、アリス」


 肯定したドラゴンは、言い切る。


 「フィアエナ族は、ドラゴンと人間の血が混じった混血の種族。奴らは人間にも、ドラゴンにもなれる特性を持った、異質なモンスターだよ」


 

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