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あれから、長く長く歩いた。
真っ直ぐ進むこともあれば何度も曲がり、分かれ道があったが蝶が行く道に付いていき、下り階段があった為降りたりと、様々な道を歩き、越えていった。
そのせいでただでさえない体力を消耗し続け、すっかりディアとアリスの息は上がっていた。お互い手を繋いでいるため疲れが出にくいとはいうものの、あくまで「でにくい」だけなので疲労は当然ある。長時間休みもせずに歩いていればバテてくるのは必然だった。
そろそろ休憩を取るべきだとは思うが、こんな右も左もわからないところで休憩を取るのはリスクがある。もっと安全がわかったところで休憩を取りたいが、そこがどこなのかもわからない。
どうしたものかと頭を悩ませていた時だった。――前方に、光が差し込んだのは。
「……お外……?」
「……どうだろうな」
外の光にしては、光源は明るくない。
しかし光であることは間違いなく。蝶もその光の方向に進んでいくので、ディア達もその後を追った。
ざ、ざと光が差し込むところまで進む。
そして蝶がその光の中に入っていったところで、ディア達もその光の中へ続いた。瞬間、ふわりと風が下から来たので思わず目を閉じるが、そこまで強い風ではなかったので直ぐ目を開く。
目を開いたディアとアリスは、お互いにその光景に目を見開いた。
光を抜けた先に待っていたのは、どこまでも下に続く螺旋状で出来た広大な遺跡だった。
石煉瓦で出来た壁の中側には、同じく石で出来た螺旋階段が下へ下へ続いている。その螺旋階段に連なるようにぽつぽつと紫色の松明が灯っており、螺旋階段を照らしていた。しかしその松明であっても、最下層が見えないくらいこの遺跡は深く深く作られていた。
上を見上げると、不規則に生えている紫色の大きな宝石が光源となって存在している。恐らくあの天井の大きな宝石が先程の光を出していたのだろう。道理で外の光にしては明るさがないと思った。
「……すげぇな、こりゃ……」
「わぁ……こんなの、初めて……!」
ディアとアリスは、初めて見る地下遺跡に圧倒されていた。
アリスは地下遺跡自体が初めてで、ディアの後ろから覗き込むようにきょろきょろと遺跡を見渡していた。一方でディアは地下遺跡の存在自体は知っていたものの、地下と全く無縁な生活を送っていた為、こうして地下遺跡を目にするのは初めてだった。
まさかこんな遺跡がこの洞窟内で存在するとは思わず圧倒されていると、ひらりと、蝶が螺旋階段に沿うように進み始めた。
「あ、ちょうちょさんが……」
「落ち着け、落ちるぞ」
急いで蝶の後を追うアリスを止め、彼女を落とさないように壁側になるように手の繋ぎ方を変える。
問題ないと判断したところで、ディアはアリスを連れて螺旋階段を降り始めた。




