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 なんとか機嫌を直して手を繋ぐことを許して貰えたディアは、アリスと手を繋ぎながら森の中の探索を再開していた。

 早朝の森の中は空気も澄んでおり、またモンスターの気配も昨日と比べて少ないように感じる。恐らくまだ大半のモンスターは起きていないのだろうと予測した。

 その間にこの森から出れる道を見つけなくては、とディアとアリスは体力が許す限り森の中の探索を続けた。


 そうして探索を続けていた時に、見つけたのである。


 「――これは」


 それは、森の最奥に存在していた。

 ディアとアリスが寝床として使用していた洞穴よりもさらに暗く、深い、深い「大穴」。

 下が見えない程続いているその「大穴」からは、近くにいるだけでも異様な空気が感じ取れる。

 実際にディアはその異様な空気に冷や汗を垂らし、アリスはディアの後ろで恐怖に震えていた。

 

 (――関わっちゃだめだ奴だ、これは)


 ディアはその「大穴」を見て、直感的にそう思った。

 これは、元の姿で活動していた時にも感じていた第六感。

 危険信号が鳴りやまない程のヤバい何かがこの「大穴」にはあると、ディアの直感が告げている。

 早々に立ち去るべきだと、自分の直感が何度も語り掛けている。


 「ディ、ディー、はやく、はなれよ……?」


 アリスもそう言っている。アリスも何か感じているのだ。

 だからここは早く離れた方が賢明だというのに。


 「――」


 ディアは憑りつかれたかのようにその場から動かず、ただただ「大穴」を見つめていた。

 

 「――」


 その「大穴」から目が離せない。

 アリスがディアの異変を感じ取って手を引っ張るが、それでもディアの身体は梃子のように動かない。

 何故動かないのか。何故危険だとわかっていながらも、その場から離れないのか。

 それはただ一つ――。


 (――なんでアソコから、()()()()()()()()()()


 あの「大穴」からは、微弱ながらも己の力が感じ取れた。

 それは気のせいだと済ましてしまう程の本当に微弱なものだったが、ディアは感じ取ってしまった。

 これがアリスと出会う前のディアだったのなら、この微弱な力を感じ取ることは出来なかっただろう。しかし今はアリスと手を繋いでいるおかげで、少ないがディアは本来の力を取り戻している。その影響もあってか、微弱であろうとディアは自分の力をあの「大穴」から感じ取ることが出来た。

 本当なら、人間の姿になってしまっているディアと、人間で子供のアリスが近寄るべきではない。自分の力が関わっていなければ、ディアはあの「大穴」に近づきもしなかっただろう。

 しかし、あの「大穴」から自分の力を感じ取ってしまっては、その謎を解明しなければならない。


 「……行くぞ」


 「い、いくの……?」


 ディアは、あの「大穴」に入ることに決めた。

 何故あの「大穴」から自分の力が感じ取れるのか、その原因を知る為に。

 アリスの意見も聞かない。聞いてもアリスは入りたがらないだろう。しかし自分にとってあの「大穴」に入るのは決定事項だ。当然、アリスも強制的にあの「大穴」に入ることになる。

 一歩「大穴」に向かって前進する。最初はアリスも多少の抵抗は見せていたが、意地でも譲らないディアに諦めがついたのか、恐る恐るながらもディアに付いていくことに決めた。

 そうして彼らは、異様な雰囲気が漂う「大穴」に自らの意思で入っていった。

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