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 「お兄ちゃん?どうしたの?」


 急に項垂れた彼の顔を少女は覗き込む。そんな少女の頭を、彼は繋がれていない方の手で押し返した。「わー!!」と小さく叫ぶアリスは転びそうになるが、彼と手が繋がれているので転ぶことはなかった。


 ふらふらと片手を繋がれながら、もう片方の手が彼の太ももに乗る。それを見た彼は、もう一度深い溜息を吐きながら、今発覚した事実を改めて心の中で吐露した。


 ――どうやら彼は、アリスに触れられている間なら力が戻ってくるようになった、らしい。


 一体どういうことだと言われる事実だが、彼も全くわからない。何故この少女に触れられる間だけは()()()()が戻るのか。


 身体中に巡るこの力は、確かに彼が封印される前に流れていた力だ。懐かしい力の感覚に、思わず彼の口角が少し上がる。


 「お兄ちゃん?」


 アリスに呼ばれた彼は顔を上げて、彼女と視線を合わせた。アリスは顔を上げた彼と視線を合わせると、二ヘラと笑いかけた。


 いつもなら人間風情のその笑顔にすら虫唾が走る程の短気だったのに、今ではその気持ちは凪いていた。少女の存在が、己の生命線だと確定した影響からなのかはわからないが、確かに言えることは――。


 ――この少女を死なせるのは絶対にダメだということ。


 もしこの少女が彼より先に死んでしまえば、彼はあっさりと死んでしまうだろう。


 それだけはなんとしても防がなくてはならない。


 「アリス」


 故に、彼は少女を、アリスを護らなければならない庇護対象だと定めた。


 定めたからには、いつまでも彼女を邪険に扱うわけにはいかなかった。


 だから彼は一歩、彼女に歩み寄ることにした。


 名を呼ばれたアリスは「ん?」と首を傾げる。そんな彼女に、彼は告げた。


 「ディアだ」


 親しい人にしか明かさない、己の真名を。


 名を告げた彼に、アリスは目を丸くした。


 そんな彼女にもう一度、彼は己の名を告げた。


 「ディア=フィアエナ。仲のいい連中からは、「ディー」って呼ばれてる。呼びずらかったそっちで呼べ」

 

 そう言う彼――ディアに、アリスはぱちぱちと瞬きをした後、満面の笑みで「ディー!」と呼んだ。どうやらアリスはこちらの方がお気に召したようだ。


 ニコニコと笑顔を浮かべるアリスに、ディアは毒気が抜かれたように肩の力を抜いた。


お読みいただきありがとうございます。


書き貯め更新しました。(2025.06.08現在)

予定としては以下になります。

6/12 21:00

6/13 21:00

6/14 21:00

6/15 21:00

6/16 21:00

6/17 21:00


それ以降はこれから書きますので更新が入るかどうかは未定です。

更新するときは、6/17更新のあとがきでお知らせします。

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