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「……!?」
思わず彼は驚いた。
何故だ。先程まではこんな感覚がなかったのに、何故回復が始まった?
一体何がきっかけで彼の身体が回復を始めたのか。思い当たるとしたら、少女が腕に触れて喋りかけてきたことくらい……………………。
「……オイオイオイオイ」
そこまで思い至った彼は、いやいや冗談だろという顔をしながら、ちらりとアリスの方を向いた。
アリスは百面相する彼を不思議そうな顔で見上げている。そんな彼女の手は、未だ彼の腕に乗っていた。
それを見た彼は、自分の仮説が当たっているかどうか確かめる為に、アリスに話しかけた。
「……おい、クソガキ」
「ありすだよ」
「……」
「ありす!」
…………………………きらきらとした無垢な瞳を向け続けられ、彼は観念して彼女の真名を呼ぶことにした。
「…………………………アリス、ちょっと手を退けてくれねえか」
「なんで?」
「いいから」
彼の申し出に疑問符を浮かべるアリスだが、存外素直に手を離す。
すると次の瞬間、彼の身体にドッと怠さが戻って来た。回復が続いている感覚も一瞬で消える。
これだけで彼の仮説が証明されたも同然だが、もう一つ確認しておく。
「アリス、この手の上に手を乗っけろ」
「はーい」
彼から差し出された手を、アリスは躊躇いなく乗せた。
すると、止まっていた回復が再開され、彼にある力が湧き上がってくる。それは体力ではなく、慣れ親しんだ己の力の一つ。
それを感じた彼は、確信した。確信した上で、はぁあああああああああああああ~……と大きな溜息を吐いた。




