第七十四話 Phase3
※謙一郎先生の戦闘システム講座!!
[その5 術士の戦い方(遠距離戦闘ver)]
① 【あ! やせいの
ハエトリグサ型・雷属性中級悪霊が とびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。
↓
②【ケンイチロウは
大剣に 中級霊法を込めた!】
例:風の精霊の力を借り、風刃を放つ!
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→70%。
↓
③【ケンイチロウは
大剣から 風刃を放った!】
ケンイチロウ:HP100%/RP70%。
↓
④【てきの ハエトリグサ型・雷属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP100%/RP70%。
【東京都港区 お台場海浜公園】
「けん……さん……?」
「邪魔だ、どいてろ、てめえら。」
低く唸るような声とともに、けんさんが一歩、前に出た。
その目は、まっすぐにNo.17を射抜いている。
「てめぇだな。さっきから、オレ様にボコスカと汚ぇもん投げつけてきやがったのは。
いい度胸してんじゃねぇか。……お仕置きしてやる。そこで震えて待ってろ。」
その言葉に、空気が一瞬で張り詰めた。
けんさんの背中から、尋常じゃない気配がにじみ出ている。
……だが次の瞬間、その圧がこっちに向いた。
けんさんが、ゆっくりと、今度はあたしたちのほうへ歩いてくる。
「ところで──」
一歩ずつ、踏みしめるように近づきながら、けんさんは低く呟いた。
「誰だ?オレ様に向かって、何度も何度も生意気な口を叩いてたやつは……。てめぇか?」
「麻璃流先輩です。」
……即答。
萌華ちゃんは一切の迷いもためらいもなく、ビシッとあたしを指差した。
「ちょ、ちょっと!萌華ちゃんひどい!あたしを売らないでよ!」
けんさんがじっと、あたしを見据える。
「お前か……」
けんさんがピタリと足を止め、真っ直ぐにあたしを見つめた。
その視線は重く、鋭く、冗談なんて通じそうにない。
このとき、あたしの直感が言っていた。
──これは、やばいやつだ。
「え、ちょ、やだ。けんさん、目が怖い……」
「おい、女。そこから動くな。
……後で、“お仕置き確定“だ。」
「“ケツ穴確定”だって、麻璃流先輩。良かったですね。」
「え、そ、そんな……!
どSのSって、尻穴好きのSって意味だったの……!?」
パニックになったあたしは、咄嗟に両手でお尻を庇った。
「ふっ……!それがお望みなら、な。」
「お、おっさんが動揺してない……!?これはまさか……覚醒してる!?」
さっきまでのけんさんなら、絶対このくだりにツッコミを入れてた。
でも今のけんさんは違う。目が据わってる……完全に“肉食モード”だ。
そして再び、けんさんは無言でNo.17と向き合う。
「さて、てめえら、ちょっと下がってろ。邪魔だ。
オレ様はこれから、あいつを攻めなきゃならねえ。」
「はんっ!攻撃一発防いだくらいで調子に乗ってんじゃねえぞ、ブスがっ!」
No.17が、今度は左手をけんさんへ向ける。
次の瞬間、掌前の空間に、“地の円形型霊法陣”がふわりと浮かび上がった。
やがて、霊法陣は茶色の光を帯びて輝き出す。
「地霊法・転泥団子!!」
その叫びと同時に、霊法陣から拳大の泥団子が、まるでボウリング球のように転がり出す!
──ゴロゴロゴロゴロッ!
泥団子は地を這うように進むたび、周囲の砂利や小石を巻き込み、みるみる膨張していく。
転がるごとに重さと威圧が増し、轟音は地面を叩くような重低音に変わった。
けんさんの目前に迫る頃には、それはもう戦車の砲弾ほどのサイズに達していた。
泥の表面は不規則に脈打ち、黒ずんだ湿り気が不気味な光を放っている──まるで、生き物のように。
「攻め、あるのみ。」
けんさんは微動だにせず、冷静に風の精霊手裏剣を構えた。
「風の叫び THE FIFTH……」
次の瞬間──
風の精霊手裏剣が高速で回転し始め、三つの風の剣身が柄から分離、宙へと舞い上がる。
そして、けんさんの前方に展開されたのは──三つの“風の三角形型霊法陣”。
三角形、三角形、三角形。
それぞれが宙に浮かび、重なり合うように連結されていく。
やがて三つの陣は、一つの巨大な“風の三角形型霊法陣”へと姿を変えた。
「み、三つの霊法陣……!?どういうこと……!?」
「えっ……!?けんさんも、霊法陣を同時展開できるの!?」
あたしと萌華ちゃんは、あまりの光景に思わず息を呑んだ。
「直線風!!!!」
霊法発動の刹那。
巨大な“風の三角形型霊法陣”が、黄緑の光を帯びて眩く輝く。
次の瞬間──暴風が、一条の矢のように前方へと解き放たれた。
唸りを上げながら、大気を裂いて突き進む風。
その一直線の奔流は、地を抉り、視界をなぎ払いながら加速していく。
それは、あまりにも強烈だった。
転がってくる泥団子など──まるで紙くずのように、あっさりと押し返したのだ。
「はっ──!?
風ごときが、俺様の泥団子を押し返しやがっただと……!?」
No.17が、目を見開いて絶句する。
「返すぜ、それ。」
──ゴロゴロゴロゴロッ!
押し返された泥団子は、地面を抉りながら転がり続ける。
その身にさらに石と砂を巻き込みながら、みるみる巨大化していく。
今度は逆に、No.17へと襲いかかった。
まるで怪物そのものの勢いで──!
「お、おい……うそ、だろ……!?
ぐあああああああああああッ!!」
次の瞬間。
──ドシャッ!
轟音と共に、No.17は仰向けに吹き飛ばされ、巨大泥団子に真正面から押し潰された。
その身体はぺちゃんこに伸びきり──もはや再起不能。
「て、てめえ……!」
「すごいっ……!
威力もそうだけど、あれだけの霊法を……泥団子だけに集中させてた!」
「霊力制御……ね。」
あたしと萌華ちゃんは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
風の三剣身が柄に戻ると同時に、けんさんは再び構えを取る。
「終わりだな。
風の叫び THE SIXTH……」
けんさんは勢いよく、風の精霊手裏剣を投げ放った!
「風葬烈手裏斬!!!!」
風の精霊手裏剣が宙を裂いて飛ぶ──その瞬間。
唸りを上げる風が渦を巻き、そこから次々と生み出されるのは……無数に分裂し、高速で射出される、風の手裏剣の嵐!
「なっ、なんだと……!?
お、おい!や、やめろっ!俺様が悪かったってば!
一回話し合おう、な!?だから、それだけは──!」
「もう遅い。
覚えておけ、No.17。
攻めていいのは──攻められる覚悟があるやつだけだ!」
「ぜ、全然かっこよくない……」
萌華ちゃんが、ボソッと呆れたように突っ込む。
「その身で──償え!」
──シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!
風の手裏剣の嵐が、No.17に一斉に襲いかかった!
「ぐああああああああああッッ!!」
両腕、両足、胴、肩……
風の手裏剣は容赦なく、ありとあらゆる部位に突き刺さっていく。
身動き一つ、できない。
悪霊・No.17は、もはや完全に──封じられていた。
「やばっ……!」
「……チッ!このおっさん……!桜蘭々様と同じで……霊斬を極めてやがる……!」
──ここまで一緒に戦ってきて、なんとなくわかってきた。
萌華ちゃんの場合──
身体強化訓練はばっちり。それは、さっきの霊斬を見れば一目瞭然だった。
だけど、霊力制御と、霊法についてはまだまだ。……まあ、習っていないんだから、仕方ない。
あたしの場合は──
身体強化訓練と、霊力鍛心訓練はOK!……だけど、霊力制御はまだ全然ダメ。
さっきみたいに、たまに不安定になっちゃうときがある。
そして、けんさんの場合は──
刹那さんと同じ……全部が完璧だった!
徹底的に鍛え抜かれた霊法!研ぎ澄まされた霊斬!
それらを自在に使いこなせるのは、何より──霊力制御が完璧だから。
──すごいっ!すごすぎるっ!かっこいいっ!!!!
これが──三年生……っ!!!
「くそっ!俺様の負けだ!
情けは無用!一思いに、さっさと祓いやがれっ!!」
No.17は、まるで磔にされたみたいに──地面に大の字で倒れていた。
全身、風の手裏剣がぐっさぐさ。もう完全に無力。身動き一つとれずにいる。
そんなNo.17の目の前に、ゆらりと人影が立つ──
「ふっ……!ふっふっふっ……!!」
不敵すぎる笑みを浮かべながら、ゆっくりとNo.17に歩み寄る、けんさん。
「な、なんだ……てめえ、その顔……!?い、一体なにを……!?ま、まさか!?
お、おい嘘だろ!?そ、そこは……!こ、こんなところで……!?
や、やめろ……!やめろおおおおおッ!!」
──その直後。
目の前で繰り広げられたのは、
子どもには絶対に見せられない、PTAが緊急召集されるレベルの、“完全に放送コードアウト”な光景だった。
あまりに想像を超えたその展開に、私は赤面し、思わず両手で顔を覆ってしまったのだった。
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