第七十三話 「十文字戦隊・ハラウンジャー」vs「No.17」
【注意!!】
※今話は、国立十文字学園高等部神戸校祓い科二年、渡辺麻璃流の視線でお送りいたします。
※謙一郎先生の戦闘システム講座!!
[その4 術士の戦い方(近距離戦闘ver)]
①【あ! やせいの
カメレオン型・影属性中級悪霊が とびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。(元気いっぱい!)
※HP0%=死!/RP0%=“霊法”発動不可!
↓
②【ケンイチロウは
大剣に 中級霊法を込めた!】
例:風の精霊の力を借り、大剣に風を纏わせる(持続時間3分)。
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→70%。
↓
③【ケンイチロウは
大剣で 中級悪霊を斬りつけた!】
ケンイチロウ:HP100%→90%/RP70%。
↓
④【てきの カメレオン型・影属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP90%/RP70%。
【東京都港区 お台場海浜公園】
「くっ!すごい霊圧……!」
空気そのものが震えていた。
肺の奥を掴まれるような圧迫感──精神も肉体も、同時に押し潰されそうになる。
この悪霊は、ただ“そこにいる”だけで周囲を支配する。そんな次元の存在だ。
あたしは歯を食いしばり、膝が折れぬよう両足に力を込める。
「“病の大悪霊”?なにそれ?」
「“No. 玖”?」
「ハッ!」
嘲るように、少年の姿をした人型の悪霊が笑う。
「俺様たち殉疫の八使徒はともかくとして──
お前ら、“三大悪霊”とも呼ばれる“病の大悪霊・No.零”様や、あの、”赤衣の九天使衆“を知らねぇとは。……さては三下だな、ブスども。」
「あーっ!またブスって言ったーー!!」
「“病の大悪霊”に、“赤衣の九天使衆”。そして“殉疫の八使徒”……一体、お前たちは何者なんだ!?」
「これから死ぬお前らに、そんなこと教えてどうするってんだ!!」
──人型・地属性上級悪霊。
自らを「No.17」と名乗ったその異形は、無言で右手をこちらへ向けた。
次の瞬間、掌前の空間に“地の円形型霊法陣”が展開されると──“地の円形型霊法陣” が茶色に輝き始めた。
「地霊法・泥団子連弾!!」
叫びと同時に、霊法陣から泥塊の弾丸が連続して撃ち出された!
──ブンッ!ブンッ!ブンッ!
空気を裂く重い音とともに、無数の泥団子が一直線に迫ってくる!
「うわっ、来た──っ!?」
あたしはすぐさまみんなの前に飛び出し──水の精霊分離剣を構えた。
「水の叫び THE SECOND!!」
叫ぶと同時に、剣を地面へと突き刺す。
防御霊法を発動するはずだった──のに。
……何も起こらない。
「あっ……!さっきの霊法で、霊力切れちゃった……!」
視界の端で、迫る泥団子の連弾。
──ドガァァァァン!!
「きゃあああああああああっ!!」
「麻璃流っ!」
「麻璃流先輩っ!」
轟音とともに、あたしの身体は宙を舞い、吹き飛ばされる。
背中から地面に叩きつけられ、全身を衝撃が駆け抜けた。
「麻璃流先輩!大丈夫ですか!?」
「いったたっ……!
この泥団子、一発一発が重い……!あんなの何発も喰らったら、死んじゃうよ……!」
泥なんてレベルじゃない。
あれは、石塊みたいな質量と硬度を持った“殺しに来る”弾丸だった。
制服にべっとりと貼りついた泥を手で払いながら、あたしはふらつく足取りでゆっくりと立ち上がる──。
次に標的されたのは──萌華ちゃん。
「地霊法・泥団子連弾!!」
再び放たれる、泥の弾丸の雨。
「チッ……!
霊力なんかに頼らなくても、有り余ってる体力でカバーしてみせますよっ!」
萌華ちゃんは、毒の精霊短刀を逆手に構え、襲いかかる泥団子を次々に斬り裂いていく。
……だが、それは止まらない。
弾丸の連打は、まるでガトリング銃の一斉掃射。
絶え間なく降り注ぎ、萌華ちゃんの動きは次第に鈍っていく。
「う、うそでしょ……!?多すぎる……!
どんな霊力量してんのよ、こいつ……!
ダメ……っ!これ、捌ききれ──」
──ドゴォォォォン!!
「きゃあああああああああっ!!」
「萌華っ!」
「萌華ちゃんっ!」
泥団子の直撃を受けた瞬間、鈍い衝撃音が響く。
萌華ちゃんの身体は宙を舞い、一瞬、空中で時間が止まったように見えた。
そして次の瞬間──鈍く重い音とともに、地面へと叩きつけられる。
「萌華ちゃん!大丈夫!?」
「はあ……はあ……。いっつつ……!
こんなん、霊法を使わないと防ぎきれない……!」
荒い呼吸を繰り返しながら、萌華ちゃんは苦悶の表情を浮かべていた。
握りしめた毒の精霊短刀が、震える手の中で、カチ……カチ……と乾いた音を刻む。
──まずい。
あたしも萌華ちゃんも、もう限界を迎えている。
けんさんの言う通りだった。
あの時、霊力をしっかり制御できていれば、今、この瞬間に霊技を発動して、この悪霊を祓えていたかもしれないのに……!
その悔しさが、胸の中で圧し掛かってくる。
ただ、無力感に打ちひしがれながらも、握りしめた柄にその痛みを込めた。
「ふん……拍子抜けだな。
この程度か? 精霊刀剣の使い手ってのは。
俺様ひとりで十分じゃねぇか……よし、決めた!」
──パンッ!
急に手を叩き、満面の笑みを浮かべるNo.17。
「予定変更だ!
No.玖様からは“様子見だけでいい”って命じられてたけど……ここで三人まとめて抹殺してやる!
精霊刀剣の使い手を一気に三人も殺したら、No.玖様にも褒められるし──
もしかしたら……偉大なる霊母・No.零様に初めてお目通りできるかもな!」
その顔には、不気味なまでの興奮が滲んでいた。
No.17はゆっくりと、しかし確実に、じわじわと距離を詰めてくる。
「おい……ふざけんなよ。
なんで……なんでお前らだけ……」
けんさんの声が、低く、わなわなと震えた。
「ご褒美をいただいてるんだ!!
うらやましいぞ、こんちくしょーーーーッ!!!」
嘆きと嫉妬の混じった叫びが、お台場の空気を震わせる。
「おい、No.17ッ!!」
「……あん?」
けんさんは突然、両手両足を思いきり広げ、大の字のまま仁王立ちした。
どんな攻撃でも受け入れる──そんな覚悟を、全身で叩きつけるように。
そして──
「頼む……オレにも……!
ご褒美を、おくれええええええええええええッ!!!」
今度は、心の底からの“切望”を叫んだ。
「お、おい……。
こいつ、なに言ってやがる……?ご褒美……?」
No.17は引きつった笑顔を浮かべ、思わず一歩後ずさった。
その顔は、“敵”ではなく“人間の狂気”を見た時のようだった。
「お前の──攻撃、オレがすべて受け止めてやるッ!!
さあ、かかってこいッ!!」
「け、けんさん!?そんなことしたら……間違いなく死んじゃいますよ!!」
けんさんは、ふっと優しい微笑みを浮かべ──まるで、誰かを庇って死ぬ覚悟を語る戦士のように言った。
「いいんだ……。
だって……痛ぶられて死ねる。
それは……ドMにとって──本望なのだから。」
「いやいやいやいやッ!全然かっこよくないですからっ!
なにを決め台詞かのように言ってるんです!?それもキメ顔でっ!!」
萌華ちゃんの悲鳴に近い全力ツッコミが、戦場に爆音のように響き渡った。
「ハッ、いいぜ……お望み通りになぁ!!
お前が死ぬまで、泥団子を浴びせてやるよッ!!」
No.17が右手を突き出す。
掌に“地の円形型霊法陣”が再び展開され、茶色に輝き出す──!
「地霊法・泥団子連弾!!」
──ブンッ!ブンッ!ブンッ!
無数の泥団子が唸りを上げて、けんさんへと襲いかかる!
「ぐわああああああああああッッ!!」
けんさんが、盛大に吹っ飛ばされて仰向けに転がる──が。
「き……きっ……
気持ちいいいいいぃぃぃぃぃぃッ♡♡♡」
とびきりの笑顔。満面の快楽フェイス。
天にも昇る心地──まさに昇天。
そして立ち上がる。足をガクガクと震わせながら。
「ふっ……まだだ……まだ足りない……ッ!!」
再び、大の字で仁王立ちッ!!
「もっと……もっとご褒美をおおおおおおッ!!」
No.17は目を見開き、明らかに引いていた。
「……こいつ、マジで何なんだよ……」
それでも霊法は止めない。
無情にも、泥団子の連弾が、なおもけんさんに襲いかかる──!
「ぐわああああああああああッッ!!」
「ど、どうしよう萌華ちゃん!このままじゃ……けんさん、本当に死んじゃうよ!」
「……幸せそうだから、別にいいんじゃないですか?本望って言ってましたし。」
「ダ、ダメに決まってるでしょ!あたしたちでなんとかしないとっ!!」
「なんとかって……わたしに言われましても……。
あの人型・ドM属性変態級悪霊の扱い方なんて── ……あっ、そうだ!!」
萌華ちゃんがポケットをごそごそと探り、何かの紙を取り出す。
「えっと……あった、これですこれです!」
それは、ぎっくんから事前に手渡されていた──“謙一郎さん取扱説明書”。
「『謙一郎さんが、戦闘中にPhase2になった場合』……これだ!」
萌華ちゃんは、落ち着いた口調で読み上げる。
まるで災害マニュアルを確認するかのように。
「『悪霊との戦闘中に、その状態になるのは非常に危険です。
なぜなら、悪霊からの攻撃を、自ら喜んで受けにいくからです。』」
「今まさに目の前で起こってるやつだね……」
「『謙一郎さんはとても喜んでいますが、油断してはいけません。ダメージはちゃんと喰らっています。』」
「やっぱりダメージ通ってるの!?それってヤバいじゃん……!」
「『前記したとおり、日常時での発動であれば、時間の経過、あるいは慰めの言葉をたくさん浴びせてあげれば、元の状態に戻ります。
ですが、戦闘中にそんなことをしている暇も、余裕もありません。』」
「そうっ!!まさにそのとおりだよ、ぎっくん!!……で、どうすればいいの!?」
「『なので、その場合は……さらに、いじりたおしてください!
そうすれば──」
「ぐわああああああああああッッ!!いっ……イッ……!」
けんさんの叫びが、またも響き渡る。
もはやそれが悲鳴なのか歓喜なのか──それともその両方なのか、まったく判断がつかない。
ただ確かなのは、そのテンションだけは右肩上がりで絶好調だということだった──。
「けんさんっ!!」
「よくわかんないですけど……とにかく、あのおっさんをいじりまくればいいみたいですよ!」
「そ、そうなの?わ、わかった!
えっと、えっと……けんさんじゃなくて──けっさん!
あとは、えっと……短足っ!おたんこなすっ!!メガネッ!!!」
「全然ダメです、ぬるすぎますね。
いいですか?
“いじり倒す”っていうのは……こうやるんですよ!」
萌華ちゃんは両手を口に当て、大声で叫んだ──!
「ピーーーー!ピーーーー!!ピーーーー!!!(放送禁止ワード連発)」
「ふぐっ……!」
「ピーーーー!ピーーーー!!ピーーーー!!!ピーーーー!!!!(放送禁止ワード連発)」
「うぐっ……!」
「ピーーーー!ピーーーー!!ピーーーー!!!ピーーーー!!!!ピーーーー!!!!!(放送禁止ワード連発)」
「あうっ……!」
けんさんは、悶え、震え、床を転げ回る。
「さ、さすが萌華ちゃん……手慣れてる……。」
「ピーーーー!ピーーーー!!ピーーーー!!!ピーーーー!!!!ピーーーー!!!!!ピーーーー!!!!!!(放送禁止ワード連発)」
「おうっ……!」
けんさんの快楽フェイスが、徐々に──
だんだんと、苦痛フェイスに変わっていく。
──その横で。
「はぁ……はぁ……。」
No.17も、肩で荒く息をしていた。
「なんてしぶといんだ、こいつ……!
すでに何本かの骨はイってるはずなのに……!」
──目に宿る殺意が、一気にギラついた。
「……だが、これで終わりだッ!!」
今度は、両掌を突き出す。
先ほどよりも、遥かに巨大な“地の円形型霊法陣”が、両掌前の空間に展開され──
それは、茶色く、濃密に、重たく輝き始めた。
「地霊法・泥大団子弾!!」
──ドゴオォォォォォォン!!!
轟音とともに、放たれたのは──もはや「泥団子」とは呼べない。
それはまるで──戦車砲。
凶悪な質量と、殺意そのもののスピードを持って、けんさんへ一直線に飛来する。
「けんさん!避けてください!!
さすがにそれを真正面から受けたら……死んじゃいますっ!!」
「ピーーーー!ピーーーー!!ピーーーー!!!(放送禁止ワード連発)」
その時だった。
──プチンッ!
何かが切れる、小さな音。
けんさんの中で──決定的な“何か”が弾け飛んだ。
そして──
空気が……いや、風質が変わった。
肌を撫でる風の重さが、冷たさが明らかに違う。
「はあ……はあ……。あれ……?」
萌華ちゃんが、小さく息を呑む。
「なんだか……雰囲気が変わった……?」
けんさんは、ゆっくりと立ち上がる。
その顔に、もうあの“快楽の笑顔”はなかった。
「……おい、そこのクソガキ。」
低く、重い声。
「さっきからクソいてえんだよ、ボケコラ。
誰に向かって── 攻めてやがる。」
目つき。声色。立ち姿。
──完全に“別人”だった。
そして──静かに構えられる、風の精霊手裏剣。
けんさんが、たった一歩、踏み込んだ瞬間──
──ズバンッ!!
風を裂く音。
次の瞬間、空中の巨大な泥団子が──
まるで紙のように、真っ二つに断ち割られた。
「な……っ!」
No.17の目が、ありえないほど大きく見開かれる。
「てめえ……一体、何をしやがった!?」
「えっ……!?あんなに硬かった泥弾子を、まるで豆腐みたいに……!
すごくない、萌華ちゃん!」
……だけど、萌華ちゃんはわなわなと震えながら、それを見ていた。
「どうしたの、萌華ちゃん?」
「ま、麻璃流先輩……これ。」
「これって……さっきの、けんさんの取扱説明書?」
「そうです。最後の方……続き、見てください。」
「続き?」
あたしも、その紙をのぞき込んだ。
そこに書かれていたのは──
「『なので、その場合は……さらに、いじりたおしてください!
そうすれば──「Phase3:ドSモード」へと、突入します!』」
『ええええええええええええええっ!?』
あたしと萌華ちゃんは、同時に驚愕の叫びをあげた。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!




