第七十二話 No.17
※謙一郎先生の戦闘システム講座!!
[その3 祓い士の戦い方 〜霊技発動方法(霊法ver)〜]
例:ケンイチロウが、「風の霊法 (風の叫び THE FOURTH 竜巻連風陣)」を繰り出す。
①【あ! やせいの
ラッコ型・樹属性中級悪霊が たくさんとびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ! 霊法を発動するんだ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。
↓
②【ケンイチロウは 自身の霊力(RP20%)を 霊脈を通じて 風の精霊手裏剣の柄へ送り込んだ!
ケンイチロウは 霊法発動が可能になった!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→RP80%。
↓
③【ケンイチロウは 霊法を発動した!】
「風の叫び THE FOURTH!! 竜巻連風陣!!!!」
ケンイチロウ:HP100%/RP80%。
↓
④【てきの ラッコ型・樹属性中級悪霊は たおれた!】
HP100%/RP80%。
(注)霊法はHPを消費しない。ただし、その分RPの消費量が多い。
【東京都港区 お台場海浜公園】
「水の叫び THE SEVENTH!!」
麻璃流が水の精霊分離剣を振り回した、次の瞬間──
水の両剣身が柄から勢いよく分離し、悪霊を挟むように飛翔した。
左へ、右へ。
水の両剣身はそれぞれ真逆の方向に舞い上がり、空間を斬るように飛翔。
そしてそのまま、独立して回転を始めた。
水の剣身らが描き出す水の軌跡は渦を巻き、やがて形を成す。
そして、左右の空間にそれぞれ展開されたのは、巨大な──
“渦巻型霊法陣”。
「え……!?複数の霊法陣……!?
まさか、あの時の超常級と同じ……!?」
「ほう……!これは……!」
悪霊を中心に据え、左と右に展開された双陣。
まるで狙いすました包囲網のごとく、対を成してそれは浮かび上がっている。
「伊奘波之陣!!!!」
霊法発動の刹那。
左右に展開された水の渦巻型霊法陣が青色に輝くと、同時に放たれたのは──巨大な大津波。
オレも萌華も思わず、驚きの声を漏らしていた。
それも無理はない。
霊法陣の複数同時展開──それを可能にするのは、霊力鍛心訓練を極めた者のみ。
これも前に話したとおり、霊力鍛心訓練は“霊法特化”の訓練。
霊力の質の高さが、そのまま霊法の性能に直結する。
この霊法──霊法陣を複数同時展開することで、さらに広範囲の霊法が可能となる。
それを可能にするのは、徹底的に鍛え抜かれた心に裏打ちされたものだった。
ふと、今度脳裏をよぎったのは──刹那の影。
「……刹那のやつ。
おっとりした見た目とは裏腹に、相当ハードな訓練を積ませてるな……」
つまり──この霊法の真価は、刹那仕込みの、過酷で緻密な訓練の賜物だということ。
その鍛え抜かれた霊法は、もうすでに二年生の枠に収まっていない。
──だが。
麻璃流も、これまた霊力制御となると話は別だった。
「え……?あのっ……!ちょっと……!おーーーーいっ!?うそだろーー!!
で、でかすぎるっ!!なんちゅう霊法だあぁぁぁぁっ!!」
「な、なんです……!?このでかさ!?異常すぎっ!!
ちょ、ちょっと……!わたしもう霊技使えませんって!防げな──」
──それは、まさにこの一帯すべてを呑み込もうとする、二つの巨大津波。
「萌華っ!」
──がしっ!
オレは、萌華の腹を片腕でしっかり抱きかかえた。
「えっ、なっ……!?ちょ、ちょっと……!?」
「風の叫び THE FIFTH!!
直線風!!!!」
霊法発動。
真下から吹き上がる強烈な上昇気流に乗り、オレたちは一気に空へと舞い上がった。
間一髪で、大津波の直撃をかわす。
自身を中心に、左右に展開された水の渦巻型霊法陣。そこから同時に放たれる、二つの巨大な大津波。
当然、悪霊どもに逃げ場など、あるはずもなかった。
──ザッパァァァァァンッ!!
左右から迫る巨大津波が、中央で正面衝突!
ぶつかり合った衝撃は、想像を超える“水の柱”を生み出した!
──パキンッ!
あまりにも高圧な衝突。
その中で悪霊は一瞬にして押し潰され、波音に紛れて響いたのは──悪霊玉の砕ける音だった。
「なんてやつだ……!」
眼下に広がる光景に、思わず息を呑む。
地面はすべて水に覆われ、さっきまでの戦場は、一瞬で“海”と化していた。
「良き、来世を。」
──キンッ!
水面に立つ麻璃流が、静かに水の精霊分離剣を鞘に納める。
すると、それに呼応するように──
辺りを満たしていた霊法が、音もなくスーッと消えていった。
「……ちょっと。」
「なんだ?」
「なにちゃっかり、わたしの豊満な胸の感触を堪能してるんですか。」
──むにゅっ♡
──確かにオレの右腕には柔らかい感触が。
「ふっ……!いいか萌華、覚えておけ。大人になると好みは変わるものだ。
胸で喜ぶのは子どもだけ。
大人っぽいオレが喜ぶのは──尻だけだっ!」
「いや、最低なんですけどっ!このエロジジイッ!!」
萌華のツッコミの叫びが、お台場海浜公園全体に行き渡るほど大きく響いた。
「エ、エロジジイ……。
そうだよな。オレはただの変態で、ジジイと呼ばれるくらい老けてるんだ。」
オレは空中で体育座りを決め込む。
「あっ!ずっるーい、二人とも!
すけべジジイ先生!あたしももう一回、風に乗せてくださーい!」
「す、すけべジジイ先生……」
その時だった。
──プチンッ!
オレの中で何かの糸が切れたような音がした。
──ごめんなさい。
高三なのに、こんな老け顔でごめんなさい。
お尻が大好きな、ど変態でごめんなさい。
エロジジイが……すけべジジイが、こんなぴちぴちでかわいい女子高生たちと同じ空間にいて、同じ空気を吸ってごめんなさい。
「オレがいじられるのも当然。だったらもうこの際……中途半端は許さない!
どうせなら、もうとことん!オレを、オレを……!!
痛めつけてくれーーーー!!」
両手を広げ、まるで悟りを開いた僧侶のように、オレは空に向かって懇願の叫びをあげた。
「うわっ!また出た!人型・ドM属性変態級悪霊!!
うぅっ……!鳥肌が……!ボフッ!……んなにっ!?」
萌華のポケットから紙が一枚、風に煽られて飛び出し──勢いそのまま、顔にべしゃっと張り付いた。
「んもぉ、なによこれぇぇっ!?
……なんだ。銀河先輩からもらったおっさんの取扱説明書か。……って、え……?なに、これ……?」
萌華の両手は震え、それを握る紙もわしゃわしゃと震えている。
「Phase……3?」
「そういえば、けんさんの取扱説明書の最後にそんなこと書いてあったね!」
「な、なによ……?Phase3って……。
このおっさん、さらにもっときしょくなるの……?うそ……でしょ?」
「も、萌華ちゃん、大丈夫……?落ち着いて!」
「無理無理無理っ!!そしたらわたしもう……
ゲロってしまうわああああああぁぁぁぁ!!!」
萌華が吐きそうになるのを両手で抑えた──まさにその時だった。
「ったく……全員あっさり祓われやがって。情けねえやつらだ。」
『──!?』
突如、遠くから響く、くぐもったような声。
まるで地鳴りのような低音が空気を震わせ、全員の視線がその方角に集中する。
そこに立っていたのは── 一人の“少年”。
──いや、違う!
あの見た目に、この霊気……明らか“人間”ではない……!
──こいつは……悪霊だ!
「なんでこんなところに人が?一般の人はすでに避難させてるはずなのに。」
「いや、あの姿!どう見ても悪霊でしょっ!」
「な、なんなんだ……あいつは……!?」
──報告にあがっていた悪霊は、さっきので全て祓い終えたはず。
だが、あそこにいるのは紛れもない──“人型の悪霊”!
その身体は岩や細かな砂で構成され、ゴツゴツとした岩盤のような外殻に覆われていた。
動くたびに細かな砂が零れ落ち、足元に音もなく広がっていく。
つまり、こいつは──地属性。
しかも──この悪霊の霊気。
“上級”……それも、“超常級寄り”だ!
──ヤバい。あれは、さっきまでの奴らとはわけが違う。
オレはすぐさま霊法を弱め、萌華とともにゆるやかに着地する。
「え……?ってか……悪霊が喋ったぁぁぁーーーッ!?」
麻璃流の驚きの叫びが、空気を裂くように響き渡った。
この場にいる全員があれに驚くのも無理はない。
オレも、“言葉を話す悪霊”に会うのは初めての出来事だった。
「あん?しゃべったからなんだってんだよ、ブスこら。」
「ブ、ブス!?ひっどーい!
ブスって言った方がブスなんだよ!」
「麻璃流先輩、油断しないでください!こいつの霊気……!
ただ者じゃありませんよっ!」
萌華はすぐさま危険を察知し、即座に毒の精霊短刀を構えた。
「来なさい!!水青龍!!」
麻璃流も気を引き締め、再び水の大精霊を召喚。
柄は、水の精霊分離剣へと姿を変えた。
「……んで、アンタは一体、何者なんです?」
「……俺様か?……ふんっ、仕方ねえ。冥土の土産に、特別に教えてやるよ。」
悪霊はニヤリと口角を吊り上げると、ゆっくりと胸を張った。
その動きに合わせて、肩から岩の破片がパラパラと剥がれ落ちる。
「俺様は──
かの偉大なる、我らが母……“病の大悪霊様”に仕える大幹部の一人、“No.玖”様の直属の部下!」
言い放つと同時に、岩の拳を振り下ろす!
──ゴンッ!!
乾いた衝撃音と共に、地面に激震が走り、足元から砂煙が爆ぜるように立ち上がった。
「この俺様こそが──!」
指を天に突き立て、叫ぶ!
「──殉疫の八使徒が一人!
No.17様だっ!」
叫び終えた瞬間、その霊気が爆発的に広がった──!
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