第七十一話 霊力制御講座④
※謙一郎先生の戦闘システム講座!!
[その2 祓い士の戦い方 〜霊技発動方法(霊斬ver)〜]
例:ケンイチロウが、「風の霊斬(風の叫び THE THIRD 鎌韋太刀)」を繰り出す。
①【あ! やせいの
カメレオン型・影属性中級悪霊が たくさんとびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ! 霊斬を発動するんだ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。
↓
②【ケンイチロウは 自身の霊力(RP10%)を 霊脈を通じて 風の精霊手裏剣の柄へ送り込んだ!
ケンイチロウは 霊斬発動が可能になった!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→90%。
↓
③【ケンイチロウは 霊斬を発動した!】
「風の叫び THE THIRD!! 鎌韋太刀!!!!」
ケンイチロウ:HP100%→ 90%/RP90%。
↓
④【てきの カメレオン型・影属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP90%/RP90%。
(注)霊斬はHPとRPの両方を消費する。
【東京都港区 お台場海浜公園】
「霊力の制御……つまり、わたしの場合、必要なだけの霊力をうまく柄に流せていない。
だからあの時、柄に霊力を多く込め過ぎたせいで、必要以上に広範囲・高威力の霊法が発動し、結果的にみなさんにご迷惑をおかけしてしまった、と。
今後、みなさん……はどうでもいいとして、桜蘭々様にご迷惑をおかけしないようにするためには、霊力制御ができるようになれなければならない。
そのために大事なことは、最初に言っていた──“イメージ”。
そういうことです?」
「……なんか途中ひっかかったが……正解だ。」
「萌華ちゃんてんさーい!!」
麻璃流が嬉しそうに萌華に抱きつく。
「だ・か・ら!
その、わたしよりも大きな胸を押し付けないでください、麻璃流先輩!
次やったら、本気でぶっ祓いますよ!」
萌華は顔を真っ赤にして、麻璃流の胸を押し返していた。
「イメージとは何か──。
具体的に言語化するなら、まず大切なのは相手の力量を見極めること。その物差しになるのが、霊気だ。
敵の霊気を読み取って、どのくらいの範囲、あるいはどれほどの威力の攻撃を仕掛けるかを判断する。
その上で、自分はどのくらいの霊力を柄に供給すればいいのか……それをイメージすることが霊力制御の鍵になる。」
「それって、口で言うのは簡単ですけど、実際にやるのは難しそうな気がするんですけど。」
「だからこそ、普段の訓練がものを言うんだ。
考え方はスポーツと同じ。練習でできないことは、本番でもできない。
鍛えて、鍛えて、ひたすら鍛える!試合でそれを発揮する!
練習のうちに体に覚えさせるんだ。試合のときには、意識しなくても体が自然に動くように。
霊力制御は、最終的には無意識で行える域に達しなくてはいけない。
その域に達するにはある程度の経験も必要……だが、一番大事なのはやはり──努力だ。
もし、努力を怠れば……」
「もう結構です。
霊技が暴発して桜蘭々様に迷惑をかけたり、霊力切れで自分の身が危うくなるっていうんでしょ。」
「その通りだ。」
オレは静かに、しかし確信を持って言葉を繋いだ。
「んじゃ、改めて麻璃流のためにシンプルにまとめよう。
霊力制御の仕方は“イメージすること”──それに尽きる。
相手の強さを見極めて、自分が使うべき霊技の範囲、あるいは威力を明確にイメージし、それに必要な分の霊力を正確に柄に込める──それだけだ。」
「ありがとうございますっ!理解しましたっ!」
「逆に言えば、霊力制御ができていないということは、イメージがうまくできていないということ……ね。
ふ、ふんっ……!
誰だって、教わってないことができるわけないじゃないですかっ!?」
「その通り。
だから、しつこく言うが大切なのは──これからだ!」
オレはにっこり微笑みかける。
そこへ、まるでタイミングを見計らったかのように現れたのは──
【あ! やせいの
カメレオン型・影属性上級悪霊が 一体とびだしてきた!】
「なんというグッドタイミング!
ゆけっ! モカ! この講座で習ったことを意識して、霊技を発動してみるんだ!」
「ちょっと!!
人をビンモンスター扱いしないでもらえます!?」
……オレと麻璃流は、反射的に萌華から距離を取った。
◆【祓い士の戦い方 〜霊力制御の仕方(霊力供給過剰ver)〜】◆
① 【あ! やせいの
カメレオン型・影属性上級悪霊が 一体とびだしてきた!
ゆけっ! モカ! 霊技を繰り出すんだ!】
モカ:HP100%/RP100%。
ケンイチロウ先生:「相手は上級悪霊が一体。この霊気であれば……霊斬ならRP10%、霊法なら20%くらいか。」
↓
②【モカは まだうまく霊力制御ができない!
柄への霊力供給が過剰 (RP40%)! 無駄に広範囲・高威力の 霊法が発動された!】
「毒の叫び THE FIRST!! 毒沼無暴陣!!!!」
モカ: HP100%/RP100%→60%。(本来は20%消費で十分)
↓
③【てきの カメレオン型・影属性上級悪霊を オーバーキルした!
ケンイチロウとマリルは 距離をとっていたので 無事だった!
モカはRPを無駄に20%分消費! 60%しか温存できなかった!】
モカ:HP100%/RP60%。(本来は80%温存できた)
「っとまあ、霊力制御がちゃんとできず、柄への霊力供給が多過ぎると、ああなるわけだ。
霊力制御がどれほど大事かわかってもらえたかな、麻璃流くん?」
「はいっ!けんさん先生!とってもわかりやすかったです!
萌華ちゃん先生もありがとーう!」
麻璃流は、遠くにいる萌華に元気よく手を振った。
「むっかぁぁぁーーーっ!!
いま、わたしのことを完全に教材扱いしましたねーっ!!
しかもちゃっかり、最初からわたしがミスるのを見越して距離もとってるしーっ!!」
両手を振り上げ、怒りの叫びをあげながら近づいてくる萌華をよそに、その後方に現れたのが──
【あ! やせいの
ハエトリグサ型・雷属性上級悪霊が 一体とびだしてきた!】
「これまた、なんというグッドタイミング!
ゆけっ! マリル! 霊力制御理論をちゃんと理解した (はずの)今のお前なら、これまで以上にうまく霊技を発動できるはずだ!」
「よーしっ!燃えてきたーー!!」
……オレと萌華は、無意識に麻璃流から距離を取っていた。
◆【祓い士の戦い方 〜霊力制御の仕方(霊力供給過小ver)〜】◆
①【あ! やせいの
ハエトリグサ型・雷属性上級悪霊が 一体とびだしてきた!
ゆけっ! マリル! 霊技を繰り出すんだ!】
マリル:HP100%/RP100%。
ケンイチロウ先生:「相手は上級悪霊が一体。さらにこの霊気であれば……ふむ。これも霊斬ならRP10%、霊法なら20%くらいか。 」
↓
②【ケンイチロウ先生の不安が的中! やはりマリルの霊力制御は不安定だった!
柄への霊力供給が過少 (RP10%)! 狭範囲・低威力の 霊法が発動された!】
「水の叫び THE FIFTH!! 二頭流水陣!!!!」
マリル:HP100%/RP100%→90%。(本来は20%必要)
↓
③【てきの ハエトリグサ型・雷属性上級悪霊を たおしきれなかった!】
マリル:HP100%/RP90%。(本来は80%)
「……柄への霊力供給が少なすぎると、今度はああなる。
わかったかね、萌華くん。」
「はーい。」
「あれれーー?おっかしいぞーー!?
いつもはちゃんとできてるのになー。
初めてのチームに緊張しちゃって、乱れたのかもー?」
「麻璃流先輩にも、“緊張”っていう概念がちゃんとあったんですね。」
「あっ!ひっどーい!萌華ちゃん!ぷんぷんっ!」
遠くの方で、麻璃流が両手を振り上げて抗議していた。
「……訓練方針は、麻璃流は座学中心、萌華は実践重視ってとこだな……」
オレは、霊力制御訓練のプランを頭の中で組み立てていく。
「なるほどね。
今の麻璃流先輩の霊法……本来なら、霊力制御がちゃんとできていれば、あんなふうに悪霊玉にヒビではなく、まるごと粉砕できてたってわけか。
でも失敗して壊しきれなかったから、また霊技を発動しなくちゃいけなくなって、そのぶんまたHPもRPも無駄に消費する……ってことですよね?」
「そうだ。
もし、もう他に悪霊がいないという状況とかなら生命力や霊力温存を気にせず、全身全霊・全霊力を使い果たしても大丈夫かもしれない。
だが、まだ麻璃流が仕留め損なったあれもいるし、報告にあがってたラッコ型・樹属性上級悪霊も未だ健在だ。
だからこそ、体内エネルギー──つまり、生命力エネルギーと霊力エネルギーを意識しながら戦うことはとても重要なんだ。」
そのとき早速、麻璃流が仕留めきれなかったハエトリグサ型・雷属性上級悪霊が、萌華に牙を向けた。
「……やろう。
この中で一番弱そうに見えたのがわたしだってか?舐めやがって!
ぶっ祓ってやる!」
「萌華、ちゃんと霊力制御は意識しろよ。」
「言われなくても!今度こそ、ちゃんとやってみせますよ!!」
萌華は姿勢を低くし、毒の精霊短刀を構えた。
「毒の叫び THE SIXTH!!」
その叫びが、空気を裂いた。
妖しく輝く毒を帯びた短刀が、下から上へ──半円を描くように、目にも止まらぬ速さで振り抜かれる!
「飛毒・三日月斬!!!!」
瞬間、空間そのものを裂くかのような斬撃が解き放たれる。
宙を舞うのは──三日月型の飛ぶ斬撃!
風を唸らせながら突き進むその刃は、下縁で地面を抉りながら、目にも止まらぬ勢いで悪霊へと襲いかかった。
「速いっ……!」
「ヤバっ……!」
オレも麻璃流も思わず、声を漏らしていた。
それも無理はない。
今の動き──下から上への鋭い振り抜き。
体幹のしなりを活かした連動。力強くも無駄のない踏み込み。
そのすべてが、徹底的に鍛え抜かれた肉体に裏打ちされた動作だった。
ふと、あの身体能力の高さの裏に見え隠れしたのは──桜蘭々の影。
「こ、これは……桜蘭々さん、相当シゴいてますね……」
「……桜蘭々は、一体どれだけ厳しい身体強化訓練をやってるんだ……」
以前にも言ったとおり、身体強化訓練は“霊斬特化”の訓練。
身体能力の性能が、そのまま霊斬の性能に直結する。
つまり──あの高速、高威力の霊斬は、桜蘭々仕込みの、過酷で緻密な訓練の賜物だということ。
その鍛え抜かれた身体能力は、もうすでに一年生の枠に収まっていない。
──だが。
霊力制御となると、話は別だった。
「どこが、『今度こそ、ちゃんとやってみせますよ!!』、だ!
斬撃、でかすぎるだろ!一体の上級悪霊に、どんだけ霊力をぶっ込んだんだー!」
「けんさん!こっちまで届きますよ!逃げろーー!!」
飛ぶ毒の三日月斬は──“無駄に”超巨大だった。
三メートルほどの悪霊に対し、斬撃はその六倍ほど。
その超巨大な斬撃は、一瞬で悪霊の胴体を、悪霊玉ごと真っ二つに引き裂いた。
「ちっ!想像以上の霊斬だ、くそっ!
……わたし、今ので霊力が尽きました!あとはお願いします、先輩方!」
「……だろうな。」
「ゴホッ!ゴホッ!あぶなかったーー!」
土煙が舞い上がる中、なんとか避け切ったオレと麻璃流は、土を払いながら立ち上がる。
──うん。だがまあ、こればっかりは仕方ない。
まともに訓練もしていないのに、知識を得ただけでいきなりやってのけるのは……牙恩くらいのもんだ。
大事なのはこれから──ここからだ。
「あとは、この麻璃流先輩にドーンと任せなさーいっ!」
突如、水の精霊分離剣を手に、麻璃流が駆け出した。
その先に待ち構えていたのは──三体の、ラッコ型・樹属性上級悪霊。
それぞれの両手に握られた木製の貝に霊力が集まり、宙に浮かぶように円形型霊法陣が展開される。
霊法陣が緑色に輝くと、そこから放たれたのは──巨大な、木製の二枚貝だった。
それらが、勢いよく麻璃流を挟み込もうと迫る!
「っととっ!あっぶなっ!」
次々と紙一重で躱した麻璃流は、滑るように体勢を立て直し、水の精霊分離剣を構えた。
「イメージ♪イメージ♪
水の叫び THE SEVENTH!!」
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