第六十九話 霊力制御講座②
※用語解説
・悪霊の霊法
・下級霊法
使用可能な悪霊:全ての悪霊。(下級・中級・上級・超常級)
詠唱:不要(無詠唱)
発動速度:遅い
威力:弱い
・中級霊法
使用可能な悪霊:中級・上級・超常級
詠唱:不要(無詠唱)
発動速度:普通
威力:中程度
・上級霊法
使用可能な悪霊:上級・超常級
詠唱:不要(無詠唱)
発動速度:速い
威力:強い
・超常級霊法
使用可能な悪霊:超常級
詠唱:不要(無詠唱)
発動速度:極めて速い
威力:非常に強い
【東京都港区 お台場海浜公園】
「それでは改めて──②祓い士と術士、それぞれの“戦い方”の違いについてだ。」
「それくらいなら、さすがにわかりますよ!
祓い士は精霊刀剣で、術士は自分の得意な武器を使って戦います!
ちなみにあたし、中等部の時は日本刀でした!」
麻璃流が元気よく胸を張る。
「日本刀ですか……。水の精霊分離剣といい、すっかり女剣士ですね。」
「へっへっへっ♪かっこいいでしょ!
中等部の制服だと“女騎士”っぽかったんだ!
もちろん今の高等部の制服も好きだけどね!完全に女剣士って感じで!」
そう言って麻璃流は、水の精霊分離剣をぶんぶん振り回す。……危ない。
「萌華ちゃんはどんな武器使ってたの?」
「わたしは──手袋です。棘付きの。」
萌華は拳を握りしめ、ふっ!と不敵に微笑んだ。
──あの、ヘビメタ好きがよくつけてるアレか。
なんだか不思議と容易に想像できるな。術士時代の萌華が、どう戦っていたのかが……。
「棘付き手袋!?あはは!萌華ちゃんらしい!
相手が泣き叫んでもお構いなしにボコボコにしてそう!」
「さ、サイコパスじゃないんですから、そんなことしませんよっ!」
麻璃流が笑い転げる。オレも全く同じ想像をしていたので、思わず吹き出してしまった。
「けんさんは?なにを使ってたんですか?」
「オレか?オレは……」
喉がつまる。だが、答えるしかない。
「──大剣だ。」
「へえっ!大剣だったんですか!?けんさん身体おっきいから、でっかい武器似合いそう!
ねっ!?萌華ちゃん!」
「……麻璃流さん。そこは察してあげてください。」
「え、なにを?」
麻璃流がきょとんと首をかしげる。
──そりゃあ、さすがに気づかれるよな。
オレがその武器をチョイスした理由が──。
萌華がぼそっと小声で、オレには聞こえないように麻璃流の耳元へささやく。
「剣っていうのは、自分の“ピー”のことを言ってるんです。
本当は“小剣”のくせに、後輩の前だから“大剣”なんて見栄を張ってるんですよ。かわいそうに……」
「そ、そういう意味だったんだ……!
“ピー”で悪霊と戦うなんて、よっぽど硬い“ピー”なんだろうね!」
「おい!だれの“ピー“が小剣だっ!見たことないだろうがっ!」
──全部丸聞こえだった……。
「……ごほん。続けるぞ。
戦い方の手段については、麻璃流の言った通りだ。
術士は得意な武器を使い、それぞれの武器に合った戦術で応戦していく。
例えば槍が得意なら槍術、棍なら棍術、杖なら杖術……とかな。」
「でも、武器の扱いや戦術をいくら極めても、悪霊には効かないと……!」
「そうだ。悪霊──つまり精霊の存在には、精霊の力しか通用しない。
槍で突こうが杖で殴ろうが、物理攻撃は全てすり抜ける。」
「だから術士は、霊法を使って対抗するんですよね!?」
「ああ。弱い下級相手なら、武器を使わず拳や足に霊法を込めるだけで祓えることもあるが、基本はまず武器に霊法を発動させ、精霊の力をまとわせてから戦う。
武器を媒介したほうが霊法の威力も上がるからな。」
「へぇー。だから武器持ちが多かったんだ。」
「……そういうことだ。
霊法の威力を増幅させる、術士にとっては必須道具。名を──」
「増霊器!!」
麻璃流が元気よく答える。
「正解だ。術士はみんな、それを使って戦うんだ。」
オレはポケットからスマホを取り出し、ある画像を見せながら説明を始めた。
それは──体内エネルギーについてまとめられた図だ。
「……”わからなければ、理解するまで何度でも読むこと!“?
どんだけ真面目なの、おっさん。」
教科書を撮影したページに、オレが書き込んだメモがしっかり映り込んでいた。
「う、うるさいっ!いちいち話の腰を折るんじゃないっ!……まったく。」
軽く咳払いして、改めて説明を続ける。
「まず、祓い士でも術士でも大事なポイントは変わらない。
悪霊を祓うには──精霊の力で“悪霊玉”を破壊すること。
そして、戦いにおいて最も意識すべきは、二つの体内エネルギー。
一つは“生命力エネルギー”、もう一つが“霊力エネルギー”。」
「その図に書かれているとおり、
“生命力エネルギー”とは──体力や筋力など、多くの訓練や経験によって積み上げられる体内エネルギー。
“霊力エネルギー”とは──“霊的エネルギー”そのもの。“霊法”の源になる体内エネルギーで、個人差が大きい。……と。」
「霊力エネルギーって、さっきの魔訶不思議エネルギーのことですよね?」
「そうだ。霊力エネルギー、略して霊力。
ただし精霊科の教えと違うのは──オレたちの場合、“霊法”の源じゃなく、“霊技”の源になるって点だ。……まあ、それは後述するとしてな。」
オレはスマホをスライドし、別の画像を表示させた。
それは──自作した「術士の戦い方」をRPG風に簡略化した図。
術士が悪霊と戦う時の、“生命力エネルギー“と”霊力エネルギー“の消費をまとめたものだ。
麻璃流がぐいっと身を乗り出す。
「わあっ!ゲームのバトルログみたいですね!これはテンション上がるなー!!」
「だろ?RPGっぽく、生命力エネルギーをHP、霊力エネルギーはRP って表記にしてみた。
イメージしやすいだろ。」
その図を指で示しながら、オレは解説を始めた。
◆術士の戦い方(近距離戦闘ver)◆
①【あ! やせいの
カメレオン型・影属性中級悪霊が とびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。(元気いっぱい!)
※HP0%=死!/RP0%=“霊法”発動不可!
↓
②【ケンイチロウは
大剣に 中級霊法を込めた!】
例:風の精霊の力を借り、大剣に風を纏わせる(持続時間3分)。
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→70%。
↓
③【ケンイチロウは
大剣で 中級悪霊を斬りつけた!】
ケンイチロウ:HP100%→90%/RP70%。
↓
④【てきの カメレオン型・影属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP90%/RP70%。
◆術士の戦い方(遠距離戦闘ver)◆
① 【あ! やせいの
ハエトリグサ型・雷属性中級悪霊が とびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。
↓
②【ケンイチロウは
大剣に 中級霊法を込めた!】
例:風の精霊の力を借り、風刃を放つ!
ケンイチロウ:HP100%/RP100%→70%。
↓
③【ケンイチロウは
大剣から 風刃を放った!】
ケンイチロウ:HP100%/RP70%。
↓
④【てきの ハエトリグサ型・雷属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP100%/RP70%。
「ここまでは、さすがに理解できたよな、麻璃流?」
「はいっ、もちろんです!
近距離攻撃はHPが減っちゃうっていうデメリットはありますけど、そのぶん、敵に当てやすいっていうメリットもあるんですよねっ!」
「その通り。
逆に遠距離攻撃なら、相手の動きを見ながら戦えるし、反撃されにくいって利点もある。
……さて、次は“祓い士”について説明しようか。いや、その前に、“精霊刀剣”の仕組みを一度──」
「いやいや、その前に、一回神天呑に怒られてこい。」
「どういうこと?」
「このバトル画面、どう見てもビンモン(ビンモンスター)のパクリでしょ。」
萌華の鋭すぎるツッコミに、俺は苦笑しながら画面を切り替え、次の図を表示した。
◆精霊刀剣の仕組み◆
日常:大精霊は普段、祓い士の精神世界に存在している。
バトル開始:大精霊を召喚する(精神世界から飛び出す)→大精霊は精霊刀剣の柄の「精霊玉」に入る→精霊刀剣の「刀剣身」へと姿を変える。
「つまり、霊法を使わずとも、武器そのものに大精霊の力が宿るってわけだな。」
「大精霊が武器に憑依する……って感じですよね!わぁー、ほんとカッコイイ!」
「だよな!で、次が“通常攻撃”についてだ。」
「“通常攻撃”?」
「そう。霊力エネルギーを消費せずに繰り出せる、基本的な攻撃のことだ。」
オレはさらに画面をスライドさせ、次は「祓い士の戦い方」をRPG風にまとめた図を表示した。
◆祓い士の戦い方(通常攻撃ver)◆
① 【あ! やせいの
ラッコ型・樹属性中級悪霊が とびだしてきた!
ゆけっ! ケンイチロウ!】
ケンイチロウ:HP100%/RP100%。(元気いっぱい!)
※HP0%=死!/RP0%=“霊技”発動不可!
↓
②【ケンイチロウは
風の精霊手裏剣で 通常攻撃をくりだした!】
ケンイチロウ:HP100%→90%/RP100%のまま。(霊技を使っていないので消費なし)
↓
③【てきの ラッコ型・樹属性中級悪霊は たおれた!】
ケンイチロウ:HP90%/RP100%。
「まあ、ざっくりまとめるとこんな感じだな。」
オレが画面を閉じると、萌華が腕を組んでつぶやいた。
「改めて比べてみると……違いがはっきりしますね。」
「どこが?」
「……霊力の消費ですよ。
最初に武器に精霊の力を込めるって流れは、術士も祓い士も同じですけど──術士は霊法を使うから、その時点で霊力を消費しますよね。でも祓い士にはそれがない。だから、そこが大きな差になってるんです。」
「あっ、ほんとだ!」
「萌華の言うとおりだ。
精霊刀剣の“刀剣身”は──大精霊そのもの、つまり膨大な霊力エネルギーの塊で作られている。
だから武器自体にすでに精霊の力が宿っていて、術士みたいにわざわざ霊法を使う必要がない。霊力の消費もゼロだ。
さらに──相手がそこまで強くなければ、霊技なんて使わなくても、通常攻撃だけで十分祓えることもある。」
「じゃあ麻璃流先輩のために、簡単にまとめますね。
術士は、まず霊法を使って“増霊器”に精霊の力を込める。そこで霊力を消費します。
一方、祓い士は、武器そのものが“大精霊”だから、霊法も霊力も使わずに、そのまま悪霊と戦える。──ってことです! 分かりましたか、麻璃流先輩?」
「うんっ! わかりやすく説明してくれてありがとう!
……ほんと、精霊刀剣ってすごいんだね!」
麻璃流がパァッと笑顔になり、自分の剣の柄を両手で大事そうに撫で回す。
「通常攻撃だけで祓えるなら、それが一番だ。
理由は単純──さっきの図でも示した通り、通常攻撃は生命力エネルギーしか消費せず、霊力は減らないからだ。
だが問題は、敵の数や強さ。
悪霊の数が多ければ多いほど生命力エネルギーの消費が激しくなるし、強さが上がれば上がるほど“悪霊玉”は硬化し、通常攻撃では砕けなくなる。
そういう場面では、“霊技”が必須となる。
そして──その霊技を発動するためには、オレたち自身の霊力が必要だ。
……というわけで、ここで重要になってくるのが── ③祓い士の霊技と術士の霊法、その“発動方法”の違いについてだ。」
オレはスマホの画面を切り替えた。
「はい先生!……わかりませんっ!」
麻璃流が食い気味に即答する。
「いや、まだ何も言ってないだろ!?」
思わず声を荒げたあと、オレは咳払いして無理やり話を続けた。
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