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第六十二話 第三回戦・大食い競争

【注意!!】

※今話は、国立十文字学園高等部八戸校祓い科二年、佐藤銀河の視線に戻ります。


第三回戦・大食い競争 (わんこそば)


ルール

・全員参加の同時スタート

・制限時間:30分

・チームごとの合計杯数で勝敗を決定


わんこそばの基本ルール

・給仕係:給仕さんが「はい、どんどん!」などの掛け声と共に、一口大のそばを空のお椀に入れてくれる。

・終了の合図:もうこれ以上食べられないと思ったら、給仕さんがそばを入れるよりも早くお椀に蓋をする。

・お替わり:お椀の蓋を閉じるまで、給仕さんはそばを入れ続ける。

・薬味使用可:なめこおろし・鶏そぼろ・胡麻・海苔など、お椀に入れてそばと一緒に食してもOK!

・記録:食べ残し(お椀に蓋をしていない状態で、お椀内にまだそばが残っている)や、こぼした分は杯数に含まれない。


【国立十文字学園高等部東京校 五階 食堂】


「ふっ……やるな……銀河……そして麻璃流……

 まさか……妾を超える者が……この世に存在しようとは……」


──バタンッ!!


桜蘭々さんが椅子ごと後ろに倒れ、そのまま意識を失った。


「桜蘭々様ーーーー!!……うっぷ!」

「おーっとぉぉぉぉぉぉっ!

 300杯の大台を達成した直後、優勝候補だった東京校チームキャプテン、山本桜蘭々選手がここでまさかのリタイアーー!!」 


実況を務めるのはもちろんこの人、白亜先生。


“青春だよ!全員集合!大運動会!”も、ついに最終戦。

まさか最後の種目が大食い競争……

しかも、わんこそば大会だなんて、一体誰が予想できただろうか。


第二回戦を終えたおれたちは、ラストステージの食堂へと移動。

すでに給食調理員の方々が、大量のそばを用意してくれていた。

そして、白亜先生の「始めッ!」の掛け声とともに、給仕係を担当する精霊科の生徒たちが、


「はい、じゃんじゃん♪」

「はい、どんどん♪」


と明るく掛け声を上げながら、空いたお椀にそばを容赦なく投下していく。


そして今──


おれと麻璃流は300杯を突破してなお、箸を止めていなかった。


わんこそばは去年、謙一郎さんと一度だけ体験したことがある。

その時の記録は、たしか208杯。

だが今回は、確実にそれを上回る記録を更新している。

それは胃袋が鍛えられたから?

まあ、それもあるかもしれない。

だがしかし!!

今回、おれがここまで食べられている最大の理由は……これだぁぁぁぁっ!!


\たらららったら~♪/ (某◯◯◯モン風)


\にんにくチュ〜ブ〜♪ /(某 ◯◯◯モン風)


そう、今回の薬味の中に、なんと「にんにくチューブ」が用意されていたのだ!!


みなさんご存知のとおり、にんにくといえば、万能食材。

血行促進・代謝アップ・疲労回復・スタミナ増強・食欲増進など……その効果は数知れない。

なのに、なぜかおれ以外誰も使っていないだと!?

まさか……にんにくの恐るべき力を知らないのか!?


──よし、これならいける!

おれはこのにんにくパワーを武器に、絶対に一位をもぎ取ってやる!


現在、神戸校チームの刹那さん、天嶺叉。東京校チームの是隠。八戸校チームの牙恩は、すでにリタイア。

もはや生存者は数えるほどで、リタイア組のほとんどが、大食いならではの“禁断症状”に苦しんでいた。

自分の限界を超え、食べ過ぎたことがある人はすでに経験済みだろう。

そう──


一言も喋られない。


なにか言葉を発しようとするだけで、吐きそうになる。

その苦しい症状に、今や多くの者が沈黙を余儀なくされていた。


ぴくぴくっ……ぴくぴくっ……


牙恩に至っては、すでに気絶している。


「ふーーっ!ふーーっ!……ぱくっ、うぷっ!

 ふーーっ!ふーーっ!……ぱくっ、うぷっ!」


呼吸がとても荒く、明らかに危険な様子の謙一郎さん。


大丈夫……かな?


いまこの状況で誰か一人でも吐き出せば、嘔吐の連鎖が発生するのは間違いない。


「ぜ、絶対に…… うっぷ!……負けらない……うっぷ!

 わたしが必ず……うっぷ!

 優勝旗を…… うっぷ!…… 桜蘭々様に……うっぷ!」


一方で、苦しみながらも、執念で箸を動かす萌華さん。

ペースは遅いが、それでも一歩ずつ前に進んでいる。

その瞳にはまさしく、執念という名の炎が宿っていた。


「さあああっ!!

 各チーム、死力を尽くしてそばを食い続けております!!

 ……さてここで、視聴者の皆さまに向けて──

 実況のわたくし白亜が、現時点の順位を発表いたしま〜す!」


白亜先生が、絶叫混じりに手元の紙を握りしめ読み上げた、現在の順位は下記の通りであった。


個人順位(途中経過)

一位(同率):銀河、麻璃流 301杯

三位:桜蘭々 300杯 (リタイア)

四位:謙一郎 277杯 

五位:萌華 272杯

六位:刹那 267杯 (リタイア)

七位:天嶺叉 223杯 (リタイア)

八位:是隠 218杯 (リタイア)

九位:牙恩 211杯 (リタイア)


チーム順位(途中経過)

一位:神戸校チーム:791杯

二位:東京校チーム:790杯

三位:八戸校チーム:789杯


「接戦!!まさに歴史に残るであろう、大接戦!!!!

 どのチームが勝ってもおかしくない中……

 残り時間はついに、一分を切ったーーーー!!」


──戦いは、ついに最終局面を迎えた。


「ギ……ギブア……うぷっ!」


謙一郎さんが、お椀の蓋に手をかける……が、


「はい、じゃんじゃん♪」


満面の笑みで容赦なく追加そばを注ぎ込むのは、ドS給仕、樹々吏さん。


「ほ、ほんと……もう……むり……」


──バタンッ!!


また一人、新たな犠牲者が椅子ごと崩れ落ちる。


「おおっと!

 ここで八戸校チームキャプテン、高橋謙一郎選手が脱落ーー!!

 残る挑戦者は……三名のみ!

 八戸校チーム、佐藤銀河選手!神戸校チーム、渡辺麻璃流選手!東京校チーム、小林萌華選手!

 勝負の行方はこの三名に委ねられたーーーー!!

 一体誰が!?どのチームが!?果たしてこの激闘を制すのか!?

 全く目が離せない展開となったぞーーーー!!」


残り時間わずか。

おれはただひたすら、無心でそばを口へと運び続ける。


「や、やるね……ぎっくん……うっぷ!

 このあたしと同じくらい食べられる人がこの世にいたとは……うっぷ!

 なんて世界は……ヒロインだ……うっぷ!」

「ふふふ……これがにんにくパワーだよ……うぷっ!

 それと麻璃流……『ヒロインだ』じゃなくて……『広いんだ』……だよ……うぷっ!」


大丈夫。

麻璃流のボケに、まだツッコミを入れられてる。

おれは、まだ……戦える!!


「ふーーっ!ふーーっ!……ぱくっ、うぷっ!

 ふーーっ!ふーーっ!……ぱくっ、うぷっ!」


萌華さんは涙目になりながらも、必死にそばを食べ続けていた。

それでも、その瞳の奥には──まだ執念の炎が消えていない。


「萌華さん、大丈夫ですか?

 そろそろやめておいた方が……」

「うぷっ!…… ふーーーっ!ふーーーっ!

 ……うるさいです、にんにく臭いので喋らないでくだ……うぷっ!」

「あっ、はい……すみません……」


そのまま三者は、最後の力を振り絞り、ブザーが鳴るその瞬間まで、一心不乱にそばを食らい続けた。


そしてついに、その瞬間が訪れる──


ビーーーーッ!!


終了のブザーが、食堂中に鳴り響くと同時に、


──バタンッ!!


おれたち三人は、一斉に椅子ごと後ろに倒れ、意識を失った。


しばらくして──


「結果発表ーーーー!!」


白亜先生の雄叫びが響く中、食堂のホワイトボードに紙が貼り出された。

そこは本来、おそらくその日の献立が書かれているであろう場所だったが、今は「最終順位」の一覧が、堂々と掲げられていた。


最終個人順位

一位:銀河 310杯

二位:麻璃流 309杯

三位:桜蘭々 300杯

四位:萌華 280杯

五位:謙一郎 279杯

六位:刹那 267杯

七位:天嶺叉 223杯

八位:是隠 218杯

九位:牙恩 211杯


「よっしゃ!!」


勝った!

おれが一位だ!……いや、そんなことよりも大事なのは──

チーム順位!!


おれは視線を下へ向ける。


最終チーム順位

一位:八戸校チーム:800杯

二位:神戸校チーム:799杯

三位:東京校チーム:798杯


なんと!?各チーム1杯差の超接戦!!


ということは、「第三回戦・大食い競争」の順位は──


おれは更に視線を下へ向ける。


第三回戦 大食い競争

第一位:八戸校チーム 3pt

第二位:神戸校チーム 2pt

第三位:東京校チーム 1pt


『やったーーーー!!』


おれたち八戸校チームは歓喜の渦に包まれ、抱き合いながら喜びを分かち合った。


「みんなほんとお疲れさん!

 どれも見応えのある戦いばかりで、見ていて楽しかったぞ!!

 さてここで、みんなが待ちに待った……

 ──総合順位の発表だ!!」


そしていよいよ、白亜先生から第一回戦から第三回戦までの総合ポイントが発表される!


「東京校チーム  5pt!

 神戸校チーム 5pt!

 そして、八戸校チームも……5pt!?」


『ええええええええ!?』


全員の“驚愕の叫び”が、食堂中に響き渡る。


「えっ、それって……!?」

「まさかの全チーム同点!?」

「つまり……サドンデス!?」

「無理無理無理!

 もう胃袋が埋まって、もうなにも入らない!!」


絶望の声が広がる中──


「どうするの、白亜ちゃん?

 あなたこの後、“あれ”の準備しなきゃでしょ?」

「うーん……そうだな〜……」

 

白亜先生はしばらく考え込んでいた。


「しゃあない!

 俺都合で……全チーム優勝ってことで!!」


『ええええええええ!?』


またも、全員の“驚愕の叫び”が食堂中に響き渡る。


こうして、白亜先生の思いつきから始まった突発イベント──


“青春だよ!全員集合!大運動会!”


まさかの全チーム優勝という、とんでもない形で幕を閉じることとなった。


尚──


♡優勝賞品♡

超高級焼肉or寿司食べ放題(銀座or六本木)

みんな大好き♡白亜先生からの奢りだよ♡キャピキャピ♡


については、後日開催ということになったが……


「ここは寿司に決まってるだろ!

 大トロとかウニを無限に食べたいとは思わないのか!?」

「なにを言う!?

 それより、神戸牛(ブランド和牛)とかシャトーブリアン(希少部位)とかの食べ放題のほうがいいに決まってるだろ!?」

「やっきにく〜♪ やっきにく〜♪」

「お・す・し♪ お・す・し♪」


ここで、「焼肉派」vs「 寿司派」での大論争が勃発。


「よく……こんな状態で飯の話で盛り上がれますね……」


皆、食べ過ぎて限界を迎えていたはずなのに。

そのことを忘れたかのように、議論は白熱していた。


「あとは銀河だけか……当然、焼肉だよな?」

「何を言ってる!?寿司の方がいいよな!?」


焼肉派代表桜蘭々さんと、寿司派代表の謙一郎さんが、鬼の形相でおれに詰め寄ってきた。


え……?

まさか、この状況……おれの一票で勝敗が決まるのか……?

どうしよう……焼肉か……寿司か……

……仕方ない、ここは今の“おれの叫び”に従おう。

今のおれは……今のおれは……


──飯のこと考えるだけで吐きそうである。


「う、うおええええっ!!」


──案の定だった。


大食い直後、満腹極限のこの状態で、食べ物なんて想像した結果──

おれは、きれいに、盛大に、吐いた。


「きゃっ!?」

「うわああああ!?ぎっくんが吐いたーー!!」

「ダーリーーーーン!?」


騒然とする神戸校チーム。


「銀河、大丈夫か!?

 愛淫ちゃんだ!愛淫ちゃんを呼べーー!!

 大至急治療だーー!!」


桜蘭々さんが、精霊科に指示を飛ばす。


「愛淫先生……治療……うっ!?……ウォロロロロロロロッ!!」

「うおおおお!?今度はこっちで謙一郎さんが吐いたーー!!」

「ちょっと!?服にかかったんだけど!?

 なにしてくれてんじゃこのクソジジイイイイイ!!」

「愛淫ちゃんのことを思い出すだけで嘔吐する

 ……そうか、これが“恋”」


こうして、結局──

焼肉か寿司かの結論は出ず、優勝賞品の内容は保留となったのであった。

【ホワイトボード】


⭐︎⭐︎⭐︎青春だよ!全員集合!大運動会!⭐︎⭐︎⭐︎


全三回戦による総合ポイント制

第一位:3pt

第二位:2pt

第三位:1pt


種目発案者(くじ引きにより、各チームから一種目を採用)

・東京校チーム:桜蘭々「総合格闘技」/是隠「3on3 」/萌華「ダンス」

・八戸校チーム:謙一郎「マラソン」/銀河「テニス」/牙恩「AX」

・神戸校チーム:刹那「フィギュアスケート」/麻璃流「大食い競争」/天嶺叉「かくれんぼ」


第一回戦 3on3

第一位:東京校チーム(不戦勝) 3pt

第二位:無し

第三位:無し

失格:八戸校チーム・神戸校チーム 0pt


第二回戦 AX

第一位:神戸校チーム 3pt

第二位:八戸校チーム 2pt

第三位:東京校チーム 1pt


第三回戦 大食い競争

第一位:八戸校チーム 3pt

第二位:神戸校チーム 2pt

第三位:東京校チーム 1pt


総合順位(最終)

第一位(同率):東京校チーム・神戸校チーム・八戸校チーム 5pt

第二位:無し

第三位:無し


♡優勝賞品♡

超高級焼肉or寿司食べ放題(銀座or六本木)

みんな大好き♡白亜先生からの奢りだよ♡キャピキャピ♡

調整中

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