第六十話 第二回戦・AX②
【注意!!】
※今話も、国立十文字学園高等部八戸校祓い科一年、鈴木牙恩の視線でお送りいたします。
第二回戦 AX(AOMORI X)
AX:First Person Shooter(略称FPS)形式の、チーム対戦型バトルロワイアルゲーム。
FPSゲーム:プレイヤーの操作するキャラクターが、一人称視点でゲーム画面に表示されるシューティングゲーム。
基本ルール
・形式:チーム戦によるバトルロワイアル制
・チーム構成:1チーム3名
・参加チーム:計9人の全3チーム(本来のAXは、計60人の全20チーム)
・勝利条件:最後まで生き残ったチーム(尚、今回はキル数やダウン数は順位に影響しない)
ゲームの流れ
①キャラクターを選択
②ジャンプマスターが降下地点を決定、マップに降下して装備を収集
③他チームと戦い、最後まで生き残る
ゲーム用語解説
・ダウン:プレイヤーが戦闘不能状態になること。
・蘇生:ダウンした味方を回復して戦線復帰させる行為。
・キル:敵をダウン状態から完全に戦線離脱させること。
・リスポーン:キルされた味方を、リスポーンポータルにより再登場させること。
・リング:時間経過で縮小していく安全地帯(範囲外ではダメージを受ける)
・ウルト:キャラクター固有の、必殺魔法(クールタイム有り)
・スキル:キャラクター固有の、状況に応じて使える魔法(クールタイム有り)
・クールタイム:ウルト、スキルが使えるようになるまでの所要時間
【AX 森林ステージ(最終リング)】
最終リングがじわりじわりと狭まりゆく中、ぼくたち八戸校チームは木造のコテージの中に身を潜めていた。
外からは断続的に響く銃声や爆発音。まるで戦争映画さながらの轟音が鳴り響いている。
間違いない。このコテージのすぐ外で、他の二チームが激しく交戦中だ。
だが、まだ誰も倒されてはいない。画面右上のキルログには、変化がなかった。
「まだです……まだです……まだ……」
息をひそめ、全神経をキルログに集中させる。
緊張が高まっていく。
最初から三チームしかいなかったとはいえ、この最終リングの緊迫感は、何度経験してもたまらなくおもしろい。
キルログを注視していると、ついに表示が現れる。
「シャドウ 《クレイジー》 セラフィム」
赤い矢印が表示されていない。これは“キル”ではなく、“ダウン”。
つまり、シャドウがセラフィムを、このゲーム最強武器“クレイジー”というスナイパーライフルで撃ち抜き、ダウンを奪ったということだ。
交戦が本格化した。
最終リングの浸食も目前に迫っている。
本当なら、どちらかのチームが敗北した瞬間を狙って奇襲をかけたかったが……
「仕方ない!出ましょう!」
『了!!』
ぼくの合図とともに、八戸校チームは一斉にコテージを飛び出した。
視点右、崖の上に一部隊。フルパ。
視点左、崖の下に一部隊。セラフィムがダウンしている。
「右側の部隊を一気に潰しましょう!銀河さん!」
「了!
ウルト発動──
シャイニング・アロー!!」
銀河さんの使用キャラクター「アロー」は、光属性のアタッカータイプの魔法使い。
先月実装されたばかりの新キャラだ。
ウルト“シャイニング・アロー”は、巨大な閃光の矢を放ち、着弾と同時に光り輝き、敵の視界を一時的に奪う光属性の必殺魔法。
スキル“ライトアロー”は、弓矢武器を装備時に発動可能で、30秒間、矢の着弾時に爆発を引き起こす。
次の瞬間、爆発的な閃光が辺りを包み、崖上の敵たちの視界を奪った。
「全員ピヨってる!!謙一郎さん!!」
「了!
ウルト発動──
アルマゲドン!!」
謙一郎さんのキャラクター「グラン」は、岩属性のアタッカータイプの魔法使い。
ウルト“アルマゲドン”は、空から巨大隕石を降らせ、広範囲に大ダメージを与える岩属性の必殺魔法。
スキル“ロックシールド”は、どんな攻撃も防ぐ、ドーム型の岩石シールドを展開する。
天が砕けるような演出と共に、巨大な隕石が崖上に落ちる。
爆音と振動。そして、
バリンッ!!
バリンッ!!
バリンッ!!
敵のシールドが一斉に割れる音が響き渡った。
「全員シールド割れたぞ!!」
AXでは、キャラクターはシールドによって守られている。
そのため、最初にこのシールドを破壊しなければ、HPにダメージは通らない。
つまり、戦闘の第一段階は“シールド破壊”が必須条件だ。
「了!
一気に決めましょう!」
そしてぼくが使っているキャラクター「レヴィン」は、雷属性のアタッカータイプの魔法使い。
ウルト“バースト・サンダー”は、避雷針を投げ、避雷針を中心とした一定範囲内の敵に高い継続ダメージを与える雷属性の必殺魔法。
スキル“スタン・ボルト”は、単体の敵に雷を撃ち、低いダメージと数秒間麻痺させる効果を持つ。
──そう。ぼくたち八戸校チームは、全員がアタッカータイプの超攻撃型構成。
本来は、他の二チームが潰し合った後、勝者に奇襲を仕掛けて勝利する──
いわゆる“漁夫の利”が狙いだった。それがこのゲームのセオリーでもある。
そのために組んだ、アタッカー三人による超攻撃型構成。
だが、この状況。もうセオリー通りにはいかない。
崖下のチームはすでに一人ダウンしているから、立て直しに時間を要し、すぐには動けないはず。
本来であれば一人少ない崖下チームを一気に潰し、キル数を稼ぐのがやはりセオリーなのだが、今回のルール上“キルムーヴ”よりも“生存ムーヴ”が大事になってくる。
ならば今は、崖上のチームを一気に殲滅し、射線が切れる高所の有利ポジションを確保する。
その上で、崖下のチームを叩きチャンピオンをとる──
もう、その選択肢しか残されていない。
「桜蘭々様!左からベッチ(別チーム)が来てます!
スキルで空に逃げた方がいいかもです!」
「わかった
スキルは……何ボタンだったかな……?」
「Rボタンです!」
「Rボタン……あっ、間違えた」
桜蘭々さんが慣れない手つきでコントローラーを操作し、なぜかグレネードを自身の真上に投げつけた。
「はわわっ!?
こ、この機械音痴で不器用な感じ……
そして極めつけは──この困り顔……!!
はぁぁぁあ〜〜っっ!!と、ととと尊すぎる……っ!!
このエスエスレア表情、絶対……ぜっったいにコレクションに入れたいぃぃぃ!!」
萌華さんは隣でプレイしている桜蘭々さんを何度もチラ見し、興奮鼻血を出しながらも、必死に操作を続けていた。
空への回避スキルを持っているのはひとりだけ。
つまり、桜蘭々さんが使っているのは「スカイ」。風属性のアタッカータイプの魔法使い。
ウルト“サイクロン・スフィア”は、風を球状に凝縮して投げつけ、敵を中心に吸い寄せる風属性の必殺魔法。
ダメージはないが、グレネードと組み合わせることで凶悪な連携ができる。
スキル“アップウインド”は、上昇気流を発生させ、緊急回避や高所移動に使える。
「是隠先輩!
桜蘭々様が回復する時間を稼いでください!」
じゃあ、その隣にいるファイアが萌華さんだな。
萌華さんの使用キャラ「ファイア」は、火属性魔法のアタッカータイプの魔法使い。
ウルト“ファイアボール”は、前方にまっすぐ火の大玉を投げつけ、敵に当たると爆発する火属性の必殺魔法。
スキル“ファイアハンド”は、右手から火炎放射器を放射し、燃焼ダメージを与える。
そうなると、残っているシャドウが是隠さんか。
「いいだろう……
ウルト発動──
シャドウ分身!!
ふっ、霊力もなしに影分身を発動とは
……そうか、これが“チーター”」
是隠さんが使っているのは、闇属性サポーター「シャドウ」。
ウルト“シャドウ分身”は、自身の分身を多数生成して敵の照準を混乱させ、攪乱する闇属性の必殺魔法。
スキル“グラビティ”は、小範囲の重力場を展開し、敵の移動を一時的に拘束する。
「くそっ!
どれが本物だ!?」
「デコイを片っ端から撃っていってください!!」
「了!」
当然、敵もただやられるだけではなかった。
シールドが割られた瞬間、東京校チームは反撃に転じてきた。
シャドウ(是隠さん)が分身を撒き散らしながら、フィールドを縦横無尽に逃げ回る。
ぼくたちはデコイか本体かもわからぬまま、とにかく目に入ったシャドウを片っ端から撃っていく。
「今だ!
ウルト発動──
ファイアボール!!」
「うわあっ!?」
ファイア(萌華さん)のウルトがアロー(銀河さん)に直撃。
火の大玉の爆発とともに、アロー(銀河さん)の周囲に持続ダメージの炎上エリアが生成される。
「あつっ!あつっ!」
銀河さんの動きが止まり、炎上エリアの燃焼によりシールドが徐々に減っていく。
「Rボタン、Rボタン……あった!
スキル発動──
アップウインド!」
スカイ(桜蘭々さん)が風をまとって、ふわりと宙に舞い上がる。
狙撃の射線をかわし、回復に入ろうとしたそのとき──
ドカンッ!!
先ほど自分で投げたグレネードが、空から戻ってきて直撃。まさかの自爆。
「んなっ!?
一体、何が起こったんだ!?」
スカイ(桜蘭々さん)、ダウン。
残りはファイア(萌華さん)とシャドウ(是隠さん)。
「謙一郎さん!スキルでこっちを守ってください!」
「了!
スキル発動──
ロックシールド!」
岩のドームが出現し、アロー(銀河さん)がその中に避難して回復を始める。
そのとき、シャドウの分身が一体こちらに突っ込んできた。
「本体か!?……
いや、この状況で3v1は仕掛けてこないはず……デコイだな
シャドウ(是隠さん)のウルトも、もう効果が切れてる頃だし、このデコイが来た方角から察すると……
スカイ(桜蘭々さん)の蘇生に行ってるな!」
ぼくはすぐさまロックシールドから出て、スカイ(桜蘭々さん)がダウンした方向へと向かう。
「謙一郎さんと銀河さんはファイア(萌華さん)を!
ぼくはシャドウ(是隠)の方に行きます!」
『了!』
そして──
ぼくがスカイ(桜蘭々さん)蘇生中のシャドウ(是隠)をダウンさせ、その直後にグラン(謙一郎さん)とアロー(銀河さん)がファイア(萌華さん)をキル。
東京校チーム──全滅。
「くっそーーー!!負けたーーー!!」
「すみません、拙者のサポートが遅れました……」
「気にするな
妾が足を引っ張ってしまったな、悪かった……
だが、これが“テレビゲーム”というものか
知識はあったが、実際にやったことがなくてな……
ふふふ♪すごく楽しかったぞ!♪」
こうして東京校チームは敗北し、ぼくたちはすかさずデスボ(デスボックス)を漁って物資を補充する。
残るは──崖下に陣取る、神戸校チーム。
こちらは崖上という圧倒的な高所アドバンテージに加え、シャドウ(是隠さん)が所持していた最強武器“クレイジー”も手に入れた。
──勝てる。この戦い、勝てるぞ。
そして、戦いは──
いよいよ最終局面へと突入する!
【ホワイトボード】
⭐︎⭐︎⭐︎青春だよ!全員集合!大運動会!⭐︎⭐︎⭐︎
全三回戦による総合ポイント制
第一位:3pt
第二位:2pt
第三位:1pt
種目発案者(くじ引きにより、各チームから一種目を採用)
・東京校チーム:桜蘭々「総合格闘技」/是隠「3on3 」/萌華「ダンス」
・八戸校チーム:謙一郎「マラソン」/銀河「テニス」/牙恩「AX」
・神戸校チーム:刹那「フィギュアスケート」/麻璃流「大食い競争」/天嶺叉「かくれんぼ」
第一回戦 3on3
第一位:東京校チーム(不戦勝) 3pt
第二位:無し
第三位:無し
失格:八戸校チーム・神戸校チーム 0pt
第二回戦 AX
第一位:
第二位:
第三位:
第三回戦
第一位:
第二位:
第三位:
総合順位(暫定)
第一位:東京校チーム 3pt
第二位:八戸校チーム・神戸校チーム 0pt
第三位:
♡優勝賞品♡
超高級焼肉or寿司食べ放題(銀座or六本木)
みんな大好き♡白亜先生からの奢りだよ♡キャピキャピ♡