第五十一話 極光
極光とは、“オーロラ”の和名となります。
北極や南極だけでしか見られない現象だと思っていたのですが、調べると日本でも見られる場所があるらしいです。
見てみたいなあ……
オーロラで一杯……
最高だろうなあ……
【東京都千代田区 東京駅丸の内駅前広場】
「霊力最大!!!!
奥義!!
光の叫び THE 十!!!!」
白亜先生の足元に、光輝く”光の円形型霊法陣“が展開され──
陣内には大きく”光“の文字が浮かび上がっていた。
次の瞬間──
光の剣身が一直線に、天高く突き抜けるように伸びていった。
その光に刺すような鋭さはなかった。
どこか、人の温もりを思わせるような、あたたかさを帯びていた。
あの光は、まるで──
暗い海を彷徨う船がようやく見つけた、灯台の灯り。
どっちに進めばいいのかもわからない、真っ暗な道に差し込まれた一筋の光。
そして、人生の、人としての歩む道を見失い、闇の真っ只中にいる者を導く一条の標。
それはまさに──
一縷の希望。一筋の光明。一条の光。
絶望の淵にいる者たちを、確かに、それでいて優しく照らす“救いの光”のような、神聖な輝きだった。
白亜先生は、光の精霊剣を静かに上段に構える。
光の精霊剣は、未だかつてないほどの輝きを放っていた。
この、未曾有の輝きを放つ剣はまるで──“聖剣エクスカリバー“
それを掲げる白亜先生はいわば──”聖騎士“
「──光よ!!叫べ!!
極光……聖剣斬アアアアアアアアアアッ!!!!」
白亜先生が片足を力強く踏み出し、光の精霊剣を大きく振り抜いた。
その瞬間──
解き放たれるは、波動砲のような、超広域、超高密度の光の奔流。
それは、人間の枠を遥かに超えた規格外の攻撃。
──“神の聖なる裁き”。
そう呼ぶにふさわしい、最強の一撃だった。
「ーーーーーーーーーー!!!!」
一直線に放たれた攻撃が超常級悪霊に直撃。
同時に十字に交差する光の斬撃。
十字に刻まれた光の軌跡は、天をも貫く光の柱と化して、超常級悪霊を、そして戦場までをも光で包み込んでいく。
「っっうわああああああ!!」
「っっきゃああああああ!!」
「ま、眩しいっ!!」
太陽の核を直視したかのような強烈な閃光。
誰もがまたしても、反射的に目を瞑らないといけない状況に強制的に追い込まれた。
……だが今回は、まだ……まだ、それでも足りない。
目を閉じてもなお、光が視界に焼きつく。
「っ……く……!!
手で……塞がないと……!」
咄嗟に、両手で目を覆う。
「パキッ…… パキッ……パキン!」
悪霊玉が砕けていく音が響き渡る。
「い、一体、どうなったんだ!?」
自身の目を守るのに必死で、戦場の状況が全くわからない。
……だが、やがて……
ゆっくりと光が引いていった。
「えっ……?
な、なにあれ!?すっごーーい!!
みんなみんな!上を見て!!」
麻璃流さんの興奮した声が聞こえてくる。
みんなもその声に誘われるように、ゆっくりと目を開けていく。
「うわぁ……すごい……」
「とても……きれいですわ……」
「これは……
ふむ、見惚れる美しさだな」
「はい……ほんとに……
い、いえ!!桜蘭々様の方がこの100倍お美しいですけれども!!」
女性陣の視線が、上空に釘付けになっていた。
無理もない。
そこに現れていたのは──
“極光”
英語名、“オーロラ”
真昼の東京、快晴の空に、極彩色のヴェールが緩やかに揺れ、幻想的な光景が広がっていた。
「仲間たちとオーロラを鑑賞する
……そうか、これが青春」
「だーーひゃっひゃっひゃっ!♪
なにこれ、すっげーーーー!♪
昼間で晴れてんのに、こんなにはっきりとオーロラが見えるなんてーーーー!♪
おもしろーーーー!♪」
「まさか日本で……しかも東京でオーロラが見られるとはな……」
「感動ですね……」
おれたち男性陣も、皆が皆、ただただ目の前に広がっている光景にうっとりと見惚れていた。
牙恩が言う通り、天候は晴天、時間帯的には真っ昼間なはずなのにも関わらず、空には確かに、色鮮やかに揺れる神秘的なオーロラがそこにあった。
そしてその中に──
一人の透き通った、リクルートスーツを着た若い男性が浮かび上がっていた。
男性は何も言わず、ただ穏やかな笑みをこちらに向けると、そのまま空の彼方へとゆっくりと昇っていく。
白亜先生が生み出した光の道をたどるように……
やがて身体は光に包まれるように透けていき、そして霧のように消えていった。
「良き、来世を」
キンッ!
白亜先生が、光の精霊剣を鞘に収める。
と同時に、大精霊モードが解かれ、元の姿へと戻った。
『良き、来世を』
キンッ!
おれたちも、それぞれの精霊刀剣を鞘に収めた。
誰もが、その魂を送り出すように、静かに微笑みながら空を見上げていた。
ようやく、本当に──
この戦いは終わったのだ。
どっと疲れが押し寄せてくる。
初めての東京での悪霊祓い。
そして、初めての上級悪霊の大群。
そしてそして、初めての超常級悪霊との対決。
数々の困難があったが、なんとか無事に乗り越え、生き延びたのだ。
しかし、そんな余韻に浸れるのも、ほんのわずかだった。
なぜなら──
ぞくっ……!
身体が本能的に反応する。
背筋を走る、凍てつくような悪寒。
「な、なんだ……これは……!?」
視線を落とすと、目の前に広がる光景に誰もが絶句した。
そこには──
地面が直径およそ100メートルにわたって崩落しており、底が全く見えない“超巨大な空洞”が──
ぽっかりと口を開けていたのだから。
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