第四十八話 光の精霊剣
【注意!!】
※今話から、国立十文字学園高等部八戸校祓い科二年、佐藤銀河の視線に戻ります。
【東京都千代田区 東京駅 丸の内駅前広場】
「On Your Mark
麒光麟」
白亜先生のその喚び声が──
戦場を一変させた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
雄叫びとともに、白亜先生の体内から何かが召喚されると、戦場がまるで太陽のような激しい光に包まれた。
同時に周囲の空気がひときわ震え出し、地面さえもその震動を感じ取っているかのようだ。
「きゃあっ!!」
「な、なんて輝きだっ!!」
「ま、眩しいっ!!」
目を開けることが困難なほどの閃光。
おれたちは強制的に目を瞑らざるを得なかった。
閉じた瞼越しでも、真っ白な光が知覚できる。
しばらくして光がおさまり、先程の光の正体が明らかになった。
それは──
白亜先生が召喚した、全身が光で構成された巨大な麒麟だった。
これが──
“光の大精霊・麒光麟“。
その凜とした立ち振る舞いからは、圧倒的な強者の気配を感じさせ、麒光麟の背後にある光の円環からは神々しさを感じる。
一年前の新人教育で初めて見た時も感じたが、なによりもすごいのはあの目。
絶対的な威圧感というのか、誇りある気高さというのか、志ある光の目というのか。
厳しい弱肉強食の世界で勝ち抜いてきた、そんな豪傑の目をしている。
麒光麟が白亜先生の持つ柄の精霊玉に吸い込まれると、透明色だった精霊玉が白色に光り輝く。
次の瞬間──
柄から、眩い光が四方八方に放たれる。
その光は徐々に収縮していくと、“光の剣身” を形作った。
この煌めきを放つ剣こそ、大精霊を宿すことで戦うことができる武器、“精霊刀剣”の内の一つ。
その名も──
“光の精霊剣”。
激しい光を直接浴びた超常級悪霊は視界を奪われ、悲鳴を上げながら仰向けに倒れる。
すると、まるで子どもが駄々をこねるように闇雲にジタバタと暴れ始め、その影響で周囲にある建物が次々と崩壊していく。
そして、その闇雲の攻撃が──白亜先生に牙を向けた。
「こらこらっ!
おいたがすぎるぞっ!
光の叫び THE FIRST!!」
白亜先生が、光の精霊剣を地面に突き刺す。
光の剣身が地を貫いた瞬間、光が十字に地を走ると、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な──
“光の円形型霊法陣”
「瞬間光速陣!!!!」
霊法発動の刹那。
光の円形型霊法陣が白色に輝くと、そこから無数の光剣が空高く放たれ、降下し、戦場の至るところに突き刺さっていく。
次の瞬間──
先程まで光の円形型霊法陣の中心部にいたはずの白亜先生の姿が──消えた。
“光の叫び THE FIRST 瞬間光速陣”
目で追うことは不可能。
突き刺さった光剣へと、光の速度で移動する霊法だ。
周囲に突き刺さった光剣へ目を配ると、白亜先生は超常級悪霊の正面にある光剣へと光速移動していた。
ようやく目が慣れたのか、超常級悪霊は落ち着きを取り戻すのも束の間、いつの間にか自身の正面にいた白亜先生に驚き、慌てて周囲にあった瓦礫を食べ始めた。
そして、
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
勢いよく咆哮を上げ、そのまま食べた瓦礫を放出した。
「は……や」
白亜先生の背後にいた神戸校の三人は、反応できずその場に立ちすくんでいる。
「光の叫び THE SECOND!!
光円陣!!!!」
白亜先生だけはその攻撃に全く怯まず、瞬時に自身の足元に光の円形型霊法陣を形成し、光で構成された巨大なドーム型の防御壁を展開。
全ての瓦礫を一人で防ぎきり、自身と神戸校の三人を守った。
「は、はは……
た、助かった……」
「さ、さすが白亜先生です……」
麻璃流さんと天嶺叉さんがその場にへなへなと座り込む。
「ったく!
俺のかわいい生徒に汚えもん投げてんじゃねえぞ!
しばらく大人しくしてなさい!」
間髪入れず、超常級悪霊の背後に突き刺さっている光剣へ光速移動すると、飛び上がり、攻撃を仕掛ける。
「光の叫び THE THIRD!!」
柄から、破壊光線のような激しい光のビームが放たれ、20メートルをゆうに超える長さの剣身となる。
「破壊光線斬!!!!」
光の精霊剣を横一閃に振りかざすと、超常級悪霊を真っ二つに斬り裂いた。
そして、即座に上半身の方を遠くへ蹴っ飛ばす。
全く無駄も迷いもない動き、そして何よりもものすごく展開が早い動きに思わず息を呑む。
まさしく──光芒一線!
やっぱりすごいや!!
白亜先生は!!
「これでしばらくは大人しくなるだろ!」
白亜先生は地面に着地すると、こちらを振り向いた。
「さて、みんな!
待たせて悪かったな!!」
なにか良い事があったのか、とても上機嫌で顔をほころばせていた。
「ぜ、全然待ってませんよ、もう少しでオレらだけで祓うところでしたから!」
「け、謙一郎さんの言う通りですわ!
わたくしたちだけで十分でしたのに!」
「後もう少し到着が遅れていれば、妾が祓うところでしたよ、白亜先生」
「“英雄は遅れて参上する”
……そうか、これが青春」
「これは、“かっこつけ”って言うんですよ、是隠先輩
せっかくの”できる後輩“を桜蘭々様に見ていただく絶好の機会を奪いやがってーー!!
こんちくしょー!!」
「ウ、ウチは……正直ちょっとほっとしたり、しなかったり……」
「だーーひゃっひゃっひゃっ!♪
やっぱりこの人“狂戦士“クラスだーーーー!♪
すっげーーーー!♪」
「さっすが白亜先生!
強過ぎーー!!」
みんなが白亜先生の元に集まっていく。
「あっはっは♪
いいな!素晴らしいぞ、その向上心!!
やっぱり若人はこうでないと!!
で、どうだみんな!?初めての超常級は!?」
白亜先生は笑顔でこちらに問いかける。
「めっちゃ怖強です!!」
麻璃流さんが正直に答え、
「めっちゃ面白いです!!」
未だ“エンジョイモード”の牙恩も素直に自分の感想を述べる。
「そうだろう、そうだろう!
上級とはまた格段と違うだろう!?
だけど、残念ながら今の君たちでは超常級悪霊を祓うことはできない
あと、もう一歩足りない
何が足りないのか、どうすれば超常級悪霊を祓うことができるのか……
知りたいだろう!?
ということで……今からここに──
“青空教室”の開催を、宣言する!!」
『はっ……?』
白亜先生からの突然の宣言に、おれたちはみんな、声を揃えて疑問の声をつぶやいたのであった。
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