第四十二話 On Your Mark
“On Your Mark”
陸上の短距離走などでスタート開始前に選手に対して“用意”を促す言葉として使われ、意味もそのままで“用意”。
子どもの時、同じ題名のジブリ短編映画を金曜ロードショーで初めて見た時の感動は忘れられません。
キャラクターのセリフは一切ないのに引き込まれていく世界観。
チャゲアスさんの曲も最高なんですよね!
見ていない方はぜひ!
ほんの数分しかない作品ですが、未だに私の記憶に残っている名作です!
なんだろう……
銅蘭さん、そして金翔兄さんと一緒にいると感じる、この胸の奥がじんわりと温まるような感覚。
言葉にするのは難しいけど、心の底から安らげるような──そんな、説明できない安心感。
これが……“家族”……?
なんだろう……
この、大切な人たちと、もう二度と話せないと気づいた瞬間に襲ってきた、言葉じゃ言い表せないほどの喪失感。
これが……家族を失ったときの──“悲しみ”……?
なんだろう……
目の前にいる、紅い目をした──“人”とは呼べない“なにか”。
そいつを見ていると、どうしようもなく心の奥底から湧き上がってくる、抑えきれないドス黒い感情──
これが……“破壊衝動”の根源……?
ああ……なぜだろう。
なんだか、すべてが……どうでもよくなってきた。
何もしたくない。
何も感じたくない。
何のやる気も起こらない。
体に力が入らない。
心が命令を出しても、体はそれに反応しようとしない。
……体が、自分の意思を拒否しているみたいだ。
心と体がバラバラになるような、得体の知れない“脱力感”。
この感覚──
……そうだ、覚えてる。
最初に白亜先生と出会った、あの時も同じだった。
何もかもが色あせて、ただただ体が重くて……
世界のすべてが、どうでもよくなっていた。
あのとき先生に、今と同じ気持ちを話したら──
「それはマジでヤバいやつだぞ」
って、珍しく真剣な表情で、静かに注意されたっけ。
──あのとき先生は、この感覚のことを、なんて言ってた?
……そうだ。思い出した。
これは──
“自暴自棄” ──“自分の命を粗末にして、やけくそになること“
……頭では分かってる。
それがどれほど危うくて、危険なことかなんて──
もう何度も教えられてきた。
でも……それでも──
心も体も、まるで他人のものみたいに言うことを聞かない。
気力なんて、とうの昔に底をついてる。
ただ、ただ……
ひどく、重たくて。
どうしようもなく、疲れているんだ。
……ダメだ。
ダメだと、分かってるのに。
なのに……
体が勝手に、あの“なにか”がいる神社の本殿へと、吸い寄せられていく。
振り返る力も、抗う意志も、もう残ってない。
ああ……もう、ダメだ……
全てを投げ出して、楽になりたい。
だって……どうせ……
もう、この世界に──
おれの“居場所”なんて、どこにもないんだから。
この世のすべてが、どうでもいい。
だったらもう──いっそ。
目の前にいる“なにか”に、この身を預けてみようか。
それで、全部──
救われるなら。
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【東京都千代田区 東京駅 丸の内駅前広場】
「……がっ!ぎんがっ!!銀河っ!!」
……誰だ?
誰かが──叫んでいる……?
「銀河!!起きろ!!銀河!!」
「……は、はいっ!!」
誰かの声に引き戻されるように、おれは意識を取り戻した。
視界がぶれて、ゆっくりとピントが合う。
目の前に立っていたのは──
「謙一郎さん……?」
おれの顔を覗き込んでいた謙一郎さんは、安堵したように頷いた。
「良かった……無事か?」
「あれ……ここは……?」
辺りを見渡すと、視界に飛び込んできたのは──
おぞましい異形の姿。
──サンドワーム型・地属性超常級悪霊。
そしてその周囲では、数人の少年少女たちがその悪霊と激しい戦いを繰り広げていた。
「氷の叫び THE FIRST!!」
刹那さんが、氷の精霊両刀を渾身の力で悪霊の足元へと投擲。
氷の片刀身が地を貫いた瞬間、氷が十字に地を走ると、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な——
“氷の円形型霊法陣”
「大氷獄寒陣!!!!」
霊法発動の刹那。
氷の円形型霊法陣が薄水色に輝き、ブワァァッ!!と冷気が炸裂。
辺り一帯の空気が凍てつく中、悪霊の巨体は一瞬にして氷塊へと閉じ込められた。……だが。
「パキッ……パキパキッ……」
音を立ててひび割れる氷。
そして──
「パキィンッ!!」
氷塊が、砕ける。
凍っていたはずの悪霊が咆哮と共に、原形を保ったまま姿を現した。
「そ、そんな……!これでも、足止めにすらならないなんて……!?
さすが……わたくしの初体験を奪ったダーリンだけありますわ♡」
咆哮を上げた悪霊が、一直線に刹那さんへと突進していく。
「ふんっ!
外がダメなら……中から毒漬けにして、じっくり痛ぶってやる!!」
萌華さんが跳躍。
空中で軽やかに一回転しながら、毒の精霊短刀を構えた。
「毒の叫び THE FIFTH!!」
毒の刀身が、悪霊の開かれた口を正確に捉える。
その瞬間──
「煉毒刀身針!!!!」
毒の精霊短刀の柄から、毒の刀身が射出される。
即座に新たな毒の刀身が生成され、連続で次々と、機関銃のごとく連射される。
ドドドドドドドドドドッ!!
まさに“毒のマシンガン”。
無数の毒刃が、一直線に悪霊の口腔へと突き刺さる──はずだった。
だが──悪霊は瞬時に反応した。
刹那さんに向けていた動きをピタリと止め、代わりに全身を軸に、高速スピンを開始。
「キンッ! キンッ! キンッ!」
跳ね返される毒の刀身。
甲高い金属音を立てながら、ことごとく弾かれていく。
「んなっ!? ちっ……!」
萌華さんが悔しげに奥歯を噛みしめる。
「こいつ、今までの悪霊と違って──
バカじゃない!!
こっちの狙いを、完全に読まれた……!!」
悪霊の回転がさらに加速。
硬質な外殻が、全方位のシールドと化していた。
そして──凶暴な唸り声とともに、尾が振り上げられる。
全身の遠心力を集束させた巨大な尾が、大地の一撃のように、空中の萌華さんめがけて叩きつけられる。
「や、やばっ……!!
空中じゃ避けられ──!?」
まさに、絶体絶命のピンチ。
そこへ──
「いっくよーーっ!!
水の叫び THE FIFTH!!」
側にいた麻璃流さんが、すかさず地面に水の精霊分離剣を突き刺す。
水の片剣身が地を貫いた瞬間、水が十字に地を走ると、やがて鋭角を描きながら、水の線は形を成していく。
形成されるのは巨大な──
”水の菱形型霊法陣“
「二頭龍水陣!!!!」
霊法発動の刹那。
水の菱形型霊法陣が青色に輝くと、雄叫びとともにそこから飛び出してきたのは、二頭の水龍。
怒涛の勢いで空を駆け、今まさに振り下ろされようとしていた悪霊の尾に喰らいついた。
「ぐ、ぐぅっ……!な、なんてパワー……!」
麻璃流さんの顔が一気に強張る。
二頭の水龍は懸命に尾を押さえ込んでいるが……力の差は歴然。
「っ……あぐ、がぁっ……!!」
麻璃流さんの足元にある水の菱形型霊法陣が、悪霊の力圧に耐えきれず沈み込み──
バキィッ……!と鋭い音を立てて、表面にひびが走る。
「ま、まずい……!これは……もう保たない……!!」
ギリッと歯を食いしばり、
「よし……!!」
麻璃流さんはなにかを決意すると──
全力で、肺が千切れそうなほどの大声を張り上げた。
「誰かーーーーッ!!!
助けてぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!!!」
戦場に響き渡る見事な、助けを求める叫びが炸裂した。
「青春の匂いを嗅ぎつけ、颯爽と現れるのはこの拙者……!
影の叫び THE FIRST!!
影縛殺操!!!!」
悪霊の足元に映っていた影が、瞬時にうごめく。
黒き影はまるで意志を持つように形を変え──巨大な“影の手”となって尻尾に絡みついた。
「ぐぐっ……重い……けど……これを乗り越えた先に……
青春が待っているぅぅぅ……うぉりゃああああ!!」
是隠さんの魂の雄叫びと共に、影の手が全力で尻尾を横に逸らす。
ゴンッ!!……ドスンッ!!
逸らされた凶尾は──そのまま悪霊自身の顔面にクリティカルヒット。
衝撃で悪霊がバランスを崩し、盛大に転倒した。
「おおっ!
ありがとう、ぜっくん!助かったよ!!」
「ふっ……女性が助けを求める時、颯爽と現れ、ピンチを救う
……そうか、これが青──」
「ーーーーーーーーーーッ!!」
突如、悪霊が咆哮。
次の瞬間──爆風のような衝撃波が是隠さんを直撃。
「うわああああああああああああああああッ!!!」
盛大に吹き飛ばされ、空中でくるくるスピンしていく是隠さん。
「ぜっくんーーッ!!」
すかさず、近くにいた天嶺叉さんが動いた。
「ウ、ウチに任せてください……!
樹の叫び THE THIRD!!
芽樹丸!!!!」
樹の精霊双刀──樹の双刀身が、瞬時に伸び始める。
まず、自身が吹き飛ばされないように、左手に握る刀を地面へ突き刺した。
すると、樹の片刀身は地中に根を張り、彼女の体をしっかりと支える。
そしてもう片方。
右手に握る刀の樹の片刀身が、ぐいっと前方へと伸びる。
「っ……!」
樹の刀身はツルのようにしなりながら伸びていき、空中で吹き飛ばされている是隠さんの腹部に、きゅっと巻きついた。
「ぎぎぎっ……!
ウ、ウチだって……ウチだって、みなさんのお役に……!」
是隠さんが吹き飛ばされないように、必死に踏ん張る天嶺叉さんの姿があった。
そこへ──
「おっりゃあああああああ!!」
空中から現れた麻璃流さんが、水の精霊分離剣を構えて落下!
ズバァン!!
そのまま悪霊の口にカチ割る勢いで直撃!!
悪霊の咆哮が止まり、場に一瞬の静寂が戻る。
「い、今だ……!!」
天嶺叉さんは即座に巻きつけた樹の刀身を縮めて引き寄せ──
勢いよく是隠さんを自分の元に引き戻した。
「はあ……はあ……た、助かった……
ありがとうございます、天嶺叉さん」
「えっ……?あっ……え、あの……」
是隠さんにお礼を言われた天嶺叉さんの頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。
まるで、ゆでダコのように。
頬から額へ、ついには頭のてっぺんまで真紅に染まりきった、その瞬間。
ボンッ!
……彼女の体のどこかで、何かが破裂したような音が響くと同時に、頭の上からは、ほんのり湯気が立ちのぼっていた。
「だーーひゃっひゃっひゃっ!♪
やはりここは、未来の“狂戦士“(AXの最上位クラス)こと、おれっちの出番だな!!
たとえ相手がチーターだろうが、この勝負に勝ったとき、ぼくは──
現実世界の狂戦士となるのだあああああ!!
だーーひゃっひゃっひゃっ!♪」
牙恩は大声で叫びながら、地の精霊大剣を構える。
「地の叫び THE FIRST!!」
まるで、ホームランを狙う野球選手のように、精霊大剣を横一閃──
バットのように、豪快に大剣を振りぬいたその瞬間──
ガラスの剣身が柄から分離。まっすぐ悪霊の足元の大地へと突き刺さる。
ガラスの剣身が地を貫いた瞬間、地が十字に地を走ると、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な──
“地の円形型霊法陣”
「霊砂嵐牙陣!!!!」
霊法発動の刹那。
地の円形型霊法陣が茶色に輝くと、天をも貫かんばかりの巨大な砂嵐が巻き起こる。
「キンッ!キンッ!キンッ!」
轟く砂嵐の内部から、鋭い金属音のような衝突音が次々に鳴り響く。
同時に、火花──確かに火花が、砂風の中でバチバチと弾け飛んでいた。
牙恩はその光景を見ながら、満面の笑みで叫ぶ。
「だーーひゃっひゃっひゃっ!♪
これはただの砂嵐じゃないよーーーー!♪
超細かく、そして鋭利な“ガラス”!♪ 同じく超細密で鋭利な“砂”!♪
その二つだけで構成された、特別製の“砂嵐”だ!♪
どうだ!♪まったく身動きがとれないだろう!♪
だーーひゃっひゃっひゃっ!♪」
しかし、牙恩の思惑とは裏腹に──
超常級悪霊は、牙恩の砂嵐とは逆方向に、全身を猛烈な勢いで回転させる。
まるで巨大なグラインダーのように──
ブワアアアッ!!
一気に牙恩の砂嵐を切り裂き、掻き消した。
「ええええええーーーーーーッ!?!?」
牙恩は目をひん剥き、盛大に叫ぶ。
「うっそでしょおおおおおお!?!?
おれっちの、特製の!特級の!特許出願中の砂嵐があああああ!?!?
だーーひゃっひゃっひゃっ!♪
ランク“ルビー”のおれっちがチーターに挑むのは、やっぱり早すぎたああああああ!♪
やっぱり“マスタークラス”じゃないと無理なのかあああああ!?♪
これはヤバいーーーー!♪
誰かあああああッ!♪助けてえええええッ!!♪」
背後から迫る超常級悪霊のプレッシャー……すら、牙恩は本気で楽しんでいるように見えた。
「そのお役目は、貴方様のフィアンセである──
このわたくしにお任せくださいませ、ダーリン♡」
颯爽と舞い降りたのは──刹那さん。
氷の精霊両刀を優雅に構え、華麗に戦場へと飛び出す。
「氷の叫び THE THIRD!!
滅多大雪斬!!!!」
氷の両刀身が、ビュオッと一気に伸び──
猛烈な雪嵐を伴って、悪霊の胴体を狙い撃つ。
だが──!
「カァンッ!!」
超常級悪霊の分厚い外殻により、氷の斬撃は弾かれた。
「……んもぉぉおおおッ!?
硬過ぎますわ、このダーリン!
これじゃラチがあきませんっ!」
振るった両刀を握りしめながら、刹那さんは唇を噛む。
「かといって、毎回全力で攻撃していたら──
こちらの霊力が……もちませんし……」
額に汗をにじませながらも、彼女は踏みとどまる。
「うぅ……このままだと……ジリ貧ですの……!」
目の前の超常級悪霊はびくともせず、ずしん……と一歩を踏み出す。
まさにギリギリの攻防。
それでも──彼らは、彼女らは必死に戦っている。
まさしく、命がけの戦いが続けていた。
──そうだ。思い出した。
ぼやけていた頭の霧が、少しずつ晴れていく。
おれは、謙一郎さんや牙恩……
そして──今日初めて出会った東京校や神戸校の生徒たちと、共に戦っていたんだ。
今日が初対面の人もいるはずなのに、まるで長年の仲間のような連携で──
みんなは力を合わせて、この超常級悪霊に立ち向かっている。
「銀河、立てるか?
お前はもう、このまま精霊壁から出て、白亜先生が来るまで待機してるんだ」
謙一郎さんの声に──おれは首を振った。
「だ、大丈夫です……!
もう、頭痛は治まりましたから……!
だから、おれも戦います!!」
そうだ──おれはまだ、終わっちゃいない。
こんなところで、引き下がってたまるか。
おれだって、祓い科の一員なんだ。
だったら──
果たさなきゃいけない、自分の役目がある!
おれは……
いや、おれたちは、この悪霊に勝たなきゃならないんだ!!
「……わかった
だが、決して無理はするなよ」
「はいっ!」
おれと謙一郎さんは、再び戦場へと駆け出した。
「来いっ!!悪霊!!おれが相手だっ!!」
「えっ……!?銀河さん!?
体はもう大丈夫なんですの!?」
「はい!大丈夫です!
ご迷惑をおかけしてすみませんでした!
おれも……皆さんと一緒に戦わせてください!!」
そうだ──
全力の一撃なら、おれの攻撃も通じていた。
なら今は、霊力がどうこう言ってる場合じゃない!
今のおれにできること──
今、おれがすべきことは──
“全身全霊で、戦い続けること”だッ!!
「火の叫び THE THIRD!!」
柄に、全霊力を込める。
爆音と共に炎が噴き上がり、まるで火炎放射器のように刀身が形成される。
──5メートルの巨大な火の刀身。
「一刀──」
その瞬間だった。
超常級悪霊が尻尾を高く振り上げ──地面を思いきり叩きつけた!
ドンッ!!
「うわっ!!」
「きゃあっ!!」
激しい揺れ。
地震のような衝撃に、おれたちは体勢を崩す。
その一瞬を狙い──
悪霊は高速回転し、鋭利な尻尾を振り下ろしてきた!
「銀河っ!!」
「銀河さんっ!!」
……あっ。
──ダメだ。これは、避けられない……
──死ぬ。
「……?」
……あれ?
攻撃が──こない?
何かが肌に触れている。風の流れを感じる。
そして背中には、“誰かの腕”の感触──
……これは──
誰かに、抱き抱えられている?
おれは、恐る恐る目を開けた。
「……は、白亜先生!?」
そこにいたのは──
おれたち祓い科の担任、夜太刀白亜先生の姿だった。
白亜先生は、おれを抱きかかえたまま超常級悪霊から一気に距離を取り──
そっと地面に下ろしてくれた。
「よく頑張ったな、銀河」
優しい声。優しい笑顔。
そして、あの大きな手でふわりと──おれの頭を撫でてくれた。
……なんだろう。
それだけで、涙が出そうになる。
いつもはネクタイをゆるめて、Yシャツの裾を無造作に腕まくり。
どこかルーズで、いい意味で“いい加減”な先生なのに──
今日はきっちりとネクタイを締め、スーツの襟も正され、全身に隙がない。
こんなきっちりとした身のこなしを見るのは……本当に、久しぶりだった。
「お前なら……
いや、お前らなら乗り越えられると、信じてたよ」
「えっ……?」
乗り越えられる……?
なにを……?
そのときだった。
白亜先生の背後──
地鳴りのような唸り声。
サンドワーム型・地属性超常級悪霊が、空へ向けて大口を開いた。
またしても口前には──
あの、地の円形型霊法陣が三つ同時に展開されている!
──マズいッ!!
また、あの攻撃がくる!!
「は、白亜先生!!
後ろっ!!後ろっ!!」
おれは慌てて指差し、叫ぶ。
だが──
「大丈夫
あとは、俺に任せときな」
その声は、あまりにも静かで──
まるで、嵐の中心の“無風地帯”みたいだった。
白亜先生は、ズボンのポケットから白手袋を取り出し、静かに両手にはめる。
その動作ひとつひとつに、無駄がない。
そして──
右腰に携行していた剣の鞘から、柄をゆっくりと引き抜いた。
その柄は——特別な色をしていた。
皆の柄は“黒”を基調としている中で──
白亜先生のそれは、“紺”と“白”の美しいツートーン。
西洋の騎士剣を思わせるT字型の構造。
柄頭は丸く、鍔と握りの接合部には透明な精霊玉が、淡く光を帯びていた。
──そうか。これは……
“あの時期“以来だ……
白亜先生が戦っているところを見られるのは──
先生は両手で柄を構え、静かに目の前へと掲げた。
その姿は、どこまでも落ち着いていて──
だけど、確かに“強者の気配”を放っていた。
白亜先生が、静かに口を開く。
その声は、深く、穏やかで──澄みきっていた。
そして、静謐なる空気を裂くように──こう、喚んだ。
「On Your Mark
麒光麟」
※キャラクター紹介
プロフィール追加
名前:夜太刀 白亜
武器:光の精霊剣
召喚精霊:光の大精霊 麒光麟
服装:通常時 (ラフなスタイル)
上衣:紺色スーツ(ボタン2つ)(袖をまくっている)
ボタンをかけずに全開
白色Yシャツ(第二ボタンまで外している)(袖をまくっている)
紺色ネクタイ(緩めている)
下衣:紺色スーツ
靴:黒色の革靴
服装:戦闘時(きっちりとした着こなし)
上衣:紺色スーツ(ボタン2つ)
上のボタンだけ閉めている
白色Yシャツ
紺色ネクタイ
両手に白手
下衣:紺色スーツ
靴:黒色の革靴