第三十八話 個よりも全
まだ昼前ですが今日はもうこれから家帰って酒飲みます!
自堕落最高!!笑
【東京都千代田区 東京駅丸の内駅前広場】
「見てくださいましたか、桜蘭々様っ!?
一番多く悪霊を祓った、わたしの攻撃をっ!!」
「うむ
一番かどうかは分からぬが、しっかり見ていたぞ、萌華
よくやったな」
「えへへ♪ やった!
これで桜蘭々様から、今日だけで二回も褒められちゃった♪
ああ……もう、心が満たされて幸せ過ぎます……!」
「萌華の青春、しかとこの目に焼き付けたぞ」
「ちょっと!も〜うっ!
せっかく桜蘭々様からの尊い褒め言葉で、余韻に浸っていたところなのにっ!
なんで是隠先輩の茶々で、わたしの心が変な方向に上書きされなきゃいけないんですかっ!?」
東京校の三人が、和気あいあいと雑談を楽しんでいる。
そのすぐ傍らでは──
「ど、どうでしたでしょうか……?
ウ、ウチ、ちゃんと……うまくやれていたでしょうか……?」
「さっすが天嶺叉!!ナイスファイトだったよ!!」
「お見事でしたわ、天嶺叉さん!!
う〜〜ん♪さすが、わたくしのかわいい自慢の後輩ですわ〜!
よしよし、いい子いい子〜っ♪」
「うっ……!せ、刹那さん……
く、苦しい……です……!」
「刹那さんっ!
刹那さんのメガ……いや、ギガ……いや、テラおっぱいに圧迫されて、天嶺叉が呼吸できなくなってますよ!?
このままじゃ天嶺叉が……窒息死?いや、圧死?それとも幸福死?……しちゃいますって!」
「ぷはっ!
し、死ぬかと思った……はあ……はあ……
幸福死ってなんですか、麻璃流さん……」
神戸校の三人も、仲良く騒がしく雑談中。
そして、さらにそのまた傍らでは──
「牙恩!!ちょっとこっちに来い!!
オレが先輩として、ちゃんと説教してやるから!」
「だーーひゃっひゃっひゃっひゃっ!♪
これぞ、“バードストライク”!!ってね!
だーーひゃっひゃっひゃっひゃっ!♪」
謙一郎さんが牙恩を捕まえようと追いかけるが、牙恩は踊りながら器用にひらひらとかわし続けていた。
「ま、まあまあ……!謙一郎さん」
おれは、謙一郎さんをなだめながら、少しだけ苦笑いするのだった。
「それよりも、大事なお話が……」
「なんだ、銀河?」
「……なんだか、変だったと思いませんでしたか?
上級悪霊たちの動き」
「変……?どういう意味だ?」
「最初、三人で戦っていたとき、おれは50体近くの上級悪霊に囲まれたんです
けど、一旦は東京駅に向かう悪霊の軍勢を優先して、一度は無視して通り過ぎようとしたんです
なのに……上級悪霊たちは連携の取れた動きで──おれの進路を、正確に塞いできたんです」
「連携……?上級悪霊が、か?」
「そうです
“個よりも全”を優先とした、明らかな集団行動でした」
「……白亜先生の授業だと、上級悪霊って──
“命の危機を及ぼす存在。群れを率いるリーダー格”……だったよな?」
「はい
上級悪霊同士が群れること自体は珍しくありません
ですがあんな風に、明確に連携して行動するのは──見たことがありません
それに……さっきの鳥型悪霊たちも──」
その時だった。
一人の少女が静かに、音もなく歩み寄ってくる。
「ほう……さすがだな、銀河
よく気づいた」
──東京校三年の桜蘭々さん。
彼女は微笑を浮かべながら、おれたちに近づいてきた。
「桜蘭々さんも、気づいていたんですね」
「ああ……
妾がさっき言ったように、この時期に、あれほどの数の悪霊が出るのはそれほど珍しくはない
だが、今回はさすがに“上級悪霊の数“が度を超えている
それに先ほどの、あの鳥型悪霊の大群…… 整然と隊列を組み、まるで訓練された軍のようだった
──ということは、だ」
「ちょ、ちょっと待て……!
上級悪霊の大群が……連携した動き、そして軍隊のような隊列
それってつまり──誰かが、上級悪霊たちを統率してるってことだよな!?
う、うそだろ……まさか──!」
「はい、間違いありません
この東京駅のどこかに……います」
おれは、震えながらも喉の奥から絞り出すように叫んだ。
「──超常級悪霊が!!」
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