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第三十七話 集結

ようやく主人公たちが全員集結いたしました。

みんな仲良くね!


【東京都千代田区 東京駅丸の内駅前広場】


「き、狂人……!?」

「なんなんだ、それは……?」

「だーはっはっはっはっ!!“狂人”だってよ、牙恩!!

 お前にピッタリなあだ名じゃねぇか!

 だーはっはっはっはっ!!……ゴホッ、ゴホッ!」


謙一郎さんは爆笑しすぎて、むせ返っていた。


「な、なんで“狂人”なんて呼ばれてるんですか?」


おれは萌華さんに尋ねる。


「有名……どころか、わたしたちにとっては“伝説”です

 中等部の頃、あいつの名を知らない人なんてまずいませんよ?

 それくらい、いろいろとやらかしてましたからね」

「……と、言いますと?」

「たとえば──

 理科の実験中に、理科室の薬品を全部混ぜて大爆発を起こし、理科室を吹き飛ばした“理科室爆破事件”

 刀剣道の授業中、相手が横に躱したにもかかわらず、そのまま突っ込んで壁をぶち破った“刀剣道場壁破壊事件”

 さらには、学外ボランティアで街のゴミ拾い中、調子に乗ってゴミを投げてきたヤンキー集団を片っ端からボコボコにした“ヤンキーボコボコ事件”

 他にも──」

「あっ、うん、もう大丈夫

 お腹いっぱいです……」


なるほど、おれが知ってる牙恩のモードを照らし合わせれば、その時の牙恩はきっと──

理科室爆破事件は、“好奇心モード”。

刀剣道場壁破壊事件は、“猪突猛進モード”。

そして、ヤンキーボコボコ事件は、“怒りモード”……だったのだろう。


「多重人格どころか、どのモードの人格も基本的に破綻してるんですよ、あいつ……

 だからこそついたあだ名が、“狂人・牙恩”

 しかも、あのモードは──

 ”エンジョイモード“」

「エンジョイモード……?」

「はい、別名を“自己中モード”

 “自分が楽しければなんでもOK”っていう、数あるモードの中でも最低最悪のやつなんです!」

「そ、それは……やばすぎる……」


もし既知のモードであれば、ある程度の行動パターンは予測できる。

だが今回は──初見。

何が起こるかさっぱりわからない。


この状況──完全に混乱必至だ。


はてさて、これから一体何が起こってしまうのやら……


「わたくしを……」


刹那さんの体がブルブルと小刻みに震えている。


これは──怒ってる……?


無理もない。

助けてくれたと思ったら、次の瞬間には無言で手放され、しかも見事に後頭部を強打。

きっと今から、怒りの鉄槌が牙恩に──


「わたくしを……こんな雑に扱うなんて……

 そ、そんな殿方、初めて♡──好き♡」


……え? 


刹那さんの瞳に、くっきりと浮かぶ♡マーク。

現実の目とは思えないラブコメ的デフォルメ表現が、堂々と顔に出現している。


「えええええっ!?」


──まさか、今この状況で愛の告白!?

戦闘の真っ最中に!?


こっちは戦闘準備、刹那さんは結婚準備。


完全にパニック。脳が処理を拒んでいる。


「が、牙恩さん!

 も、もしよろしければこの後、一緒に役所へ行って婚姻届を──」

「だーーひゃっひゃっひゃっひゃっ!♪

 鳥型か!よーっし!!」


牙恩は刹那さんの言葉をぶった切り、地の精霊大剣を肩に担ぎ上げた。


「じゃあ全部……

 撃ち落としてやる!!


 地の叫び THE FOURTH!!」


牙恩が、まるでホームランを狙うかのように、精霊大剣を横一閃──

バットのように豪快に振りぬいたその瞬間──

ガラスの剣身が柄から分離し、鋭く空へと舞い上がる。

悪霊よりもさらに高く、天を貫く勢いで飛翔すると、その軌跡は空を十字に切り裂き──

やがて鋭角を描きながら、地の線は形を成していく。

形成されるのは巨大な──


”地の三角形型霊法陣“


天地(てんち)降岩陣(こうがんじん)!!!!」


霊法発動の刹那。

地の三角形型霊法陣が茶色に輝くと、そこから勢いよく降り注がれるのは無数の巨大な隕石。

まるで、天地の怒りが形を取ったかのように、凄まじい勢いで大地へと向かっていく。


「うおっ!? あぶなっ!!」

「ちょ、牙恩ッッ!!

 こっちにも来てるってば!!」

「ちょっと!!狂人牙恩!!

 何してんのよっ!!」


──そう。

牙恩の霊法は、悪霊だけでなく──おれたちの頭上にも容赦なく降ってきた。


「だぁーーひゃっひゃっひゃっひゃっ!♪

 たーーのしぃぃぃーーーっ!♪!♪」


牙恩は爆笑しながら、自身にさえ降り注がれる隕石を、踊りながら器用にかわしていた。


おれはというと──

隕石の雨から逃げ惑うだけで精一杯だった。


「うわっ!今のギリかすった!」


頭上から落ちてくる隕石、隕石、隕石──!


その一発一発が、まさに空からの終末。

だが、そんな阿鼻叫喚の中──牙恩の霊法は、しっかりと効果を発揮していた。


鳥型の悪霊たちは、空中で直撃を受け、爆風と重力の衝撃で翼を粉砕され、次々に地面へ墜落していく。


ゴオォン!!

ズドォォォォォン!!!


着弾のたびに大地が震え、土煙が吹き上がり、辺り一帯が砂塵と化していく。

視界はもう、ぐっちゃぐちゃ。

聞こえるのは爆音と、牙恩の笑い声だけだった。


「おい、八戸校」


桜蘭々さんが舞うように、難なく隕石を避けながら、こちらを鋭く睨みつけてきた。


「お前たち、一体どういう後輩教育をしている?」

「後輩教育と言われても……なあ、銀河?」

「はい……

 あれが、牙恩の“素”ですからね……」


おれも謙一郎さんも、答えに困った。

おれたちでさえ、牙恩という人間を未だによく把握しきれていない。

ましてや、今回みたいな初見のモードに至っては、完全にお手上げ状態なのだ。


「まあいい──萌華」

「はいっ!桜蘭久様!!」

「東京校の力、あいつらに見せてやれ」


その瞬間──

萌華さんの目がギラリと光り、唇の端が、スッと持ち上がる。


「お任せくだい!桜蘭久様!!

 この萌華が……東京校がNo.1だということを、今ここで、証明してみせます!!」

「萌華──

 東京校の青春、思う存分見せてやれ」


桜蘭々さんの後ろで、なぜかグッドポーズを決めているのは──是隠さん。


「是隠先輩は黙っていてください!」


萌華さんは即座に毒の精霊短刀を気迫たっぷりに構えた。


一方その隣では──

神戸校の刹那さんが、柔らかな口調で、ある少女に話しかけている。


「あらあら……牙恩さんも萌華さんも、あの頃と変わらないようで何よりですわ」


そう言って微笑んだ先にいたのは──神戸校の一年生、天嶺叉さん。


「天嶺叉さん

 あのお二人が、あなたと同じ一年生──

 鈴木牙恩さんと小林萌華さんですわ」


刹那さんは、まるで家族を紹介するように、完全に信頼のこもった眼差しで話す。


「さあ、天嶺叉さん

 神戸校だって負けていないってこと……しっかり見せつけてあげましょう!」

「いっけーーー天嶺叉!!やっちゃえーー!!」

「は、はいっ!!」


天嶺叉さんは、やや緊張した面持ちのまま、一歩踏み出す。

けれど──その瞳だけは、燃えるような決意に満ちていた。


「ウチだって……

 ウチだって、これまでずっと刹那さんと麻璃流さんから鍛えてもらった……

 いろんなこと、教えてもらった……

 だから……

 二人のためにも……

 ウチが──神戸校のすごさを、証明してみせる!!」


天嶺叉さんが、樹の精霊双刀を構えはじめる。

風が、彼女のスカートをふわりと揺らしたその時だった──


「樹の叫び THE FOURTH!!」


天嶺叉さんが、樹の精霊双刀を振り抜いた瞬間──

樹の双刀身が柄から分離し、鋭く空へと舞い上がる。

悪霊よりもさらに高く、天を貫く勢いで飛翔すると、その軌跡は空を十字に切り裂き──

やがて鋭角を描きながら、樹の線は形を成していく。

形成されるのは巨大な──


”樹の菱形型霊法陣“


「絶対に……

 絶対に、桜蘭久様の期待に応えてみせる!


 毒の叫び THE() FOURTH(フォース)!!」


続けて、萌華さんが毒の精霊短刀を振り抜いた瞬間──

毒の刀身が柄から分離し、鋭く空へと舞い上がる。

これもやはり、悪霊よりもさらに高く、天を貫く勢いで飛翔すると、その軌跡は空を十字に切り裂き──

やがて鋭角を描きながら、毒の線は形を成していく。

形成されるのは巨大な──


”毒の五角形型霊法陣“


毒雨(どくさめ)燦々陣(さんさんじん)!!!!」


霊法発動の刹那。

毒の五角形型霊法陣が紫色に輝くと、そこから降り注がれるのは、見るからに人体に悪そうな、毒々しい紫色の雨。


丸尖(がんせん)多樹陣(たじゅじん)!!!!」


ほぼ同時に、天嶺叉さんの霊法も発動。

樹の菱形型霊法陣が緑色に輝くと、そこから降り注がれるのは、無数の先端が鋭利に尖った丸太。

まるで槍の雨のよう。


──空には、三種の霊法陣。

三方向からの降下攻撃が、空から一斉に放たられた。


隕石(牙恩)!

毒雨(萌華さん)!

丸太(天嶺叉さん)!


──そして当然のように。


「ちょっ……まッ……

 嘘だろおおおおおおおおッッ!!」


一年生たちの攻撃は、次々と悪霊たち……のみならず!

おれたちにも降り注がれた!


降り止まない、次々と降り注がれる隕石に毒雨、そして鋭利な丸太。


戦場が味方からの攻撃により、一気に地獄と化した。


その中心で──


牙恩は大爆笑しながら、その惨状を見て楽しんでいた。


毒雨を踊って避け、丸太をスライディングで回避し、降り注ぐ隕石の影でポーズをキメる──

まるで、公園で無邪気にはしゃぐ子ども。

完全に戦場を遊び場にしていた。


「戦場がめっちゃ荒れてるーー!♪おもしれーー!♪

 だーーひゃっひゃっひゃっ!♪


 地の叫び THE SECOND!!


 地円陣(ちえんじん)!!!!」


「誰のせいだと思ってるんだっ!?

 ったく……!あいつは後で、先輩としてちゃんと説教しとかないとだな!


 風の叫び THE SECOND!!


 風円陣(ふうえんじん)!!!!」


「ふむ……皆、なかなか良い攻撃

 日々の修行の成果が現れているな


 雷の叫び THE SECOND!!


 雷円陣(らいえんじん)!!!!」


「仲間にも攻撃を仕掛け、それを防御する

 ……そうか、これが青春


 影の叫び THE SECOND!!


 影円陣(えいえんじん)!!!!」


「これは、“狂気”っていうんですよ、是隠先輩!

 桜蘭々様にまで被害が……!狂人牙恩、許すまじ!!


 毒の叫び THE SECOND!!


 毒円陣(どくえんじん)!!!!」


「なんて素晴らしい攻撃……

 皆さんの日々の努力……汗と涙の結晶が目に浮かびますわ……

 わたくし、心から感動いたしました!!


 氷の叫び THE SECOND!!


 氷円陣(ひょうえんじん)!!!!」


「いいねー!一年生ズ!

 パワフルで、はちゃめちゃ!って感じの攻撃で!!

 やっぱり若い子は勢いがなくっちゃ!!

 

 水の叫び THE SECOND!!


 水円陣(すいえんじん)!!!!」


「うぅ……

 ぜ、絶対最悪の第一印象だ……

 

 樹の叫び THE SECOND!!


 樹円陣(じゅえんじん)!!!!」


「も、もうめちゃくちゃだ……


 火の叫び THE SECOND!!


 火円陣(かえんじん)!!!!」


おれたちはそれぞれ、自身を中心としたドーム状の結界を展開。


──そう。味方からの攻撃を防ぐためだ。


なおも、隕石が唸りを上げて落ち、毒の雨が地面を焼き、空から槍のような丸太が突き刺さる。

敵味方の区別もない、無慈悲な天地の猛襲。

戦場は、もはや“戦場”ではなく──“災厄”そのものだった。

 

その中で、500体はいたはずの鳥型の悪霊たちは、次々と空中から叩き落とされ、地に叩きつけられ──

逃げ場も、休む間も与えられぬまま、最後の1体に至るまで──悪霊玉を砕かれ、完全に祓われた。


──かくして。


凄絶を極めた“味方の猛攻”により、鳥型悪霊500体は、一掃されたのだった。

プロフィール追加

名前:佐藤 銀河

髪型:黒色・短髪

服装:上下制服(一般的な着こなし)

   上衣:紺色ブレザー(ボタン3つ)

      ボタンは全部かけている

      白色Yシャツ

      国立十文字学園の校章入りの紺色ネクタイ

   下衣:紺色ズボン

   靴:ブラウン(茶色)の革靴


名前:鈴木 牙恩

一人称:通称エンジョイモード・別名自己中モード時。「おれっち」

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