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第三十四話 Moon Saber

龍ってかっこいいよなぁ……

見た目ももちろんそうなんだけど、“りゅう”っていう名前も、“龍”または“竜”っていう漢字もかっこいい!

英語でも“ドラゴン”っていう名前だしかっこよすぎでしょ!

命名した人、センスあり過ぎる!


【東京都千代田区 東京駅丸の内駅前広場】


刹那さんの攻撃で、200体もいた悪霊たちのうち半数が——

一瞬で祓われた。


「あら……?

 何体か、急所を外してしまいましたわ

 まだまだ修行不足ですわね……もっと精進しないと!」


軽やかに微笑むその姿とは裏腹に、刹那さんの目は冷え切っていた。

虚ろな瞳。そこには光も、感情の色も一切ない。


残った悪霊たちを、無感情のまなざしで睨みつける。


「さて、残りのダーリンたち——

 ぶっ祓われる覚悟はできて?」


悪霊たちは一斉に悲鳴を上げた。

顔を歪め、ガタガタと震え、まるでこの世の終わりを目の前にしたかのような表情。


「……こわい」


よし、決めた!刹那さんを……

いや、女性を怒らせるようなことはしない。絶対に!

じゃないと……間違いなく殺される!!


そう、心の中で強く誓った。


『銀河さんはもっと、この世にはいろんなタイプの女性がいることを知るべきです!』


そう、牙恩に言われて、これまでいろんなアニメを見せられてきた。

ツンデレ系ヒロイン、病み系ヒロイン、お姫様系ヒロイン、天然ドジっ子ヒロイン……

とにかく、あらゆる“女性”を学び尽くしてきたつもりだった。

だからもう、どんな女性が現れても平然としていられる自信があった。

そう思っていた……けれど、それは“アニメの中の話”。

画面越しの、あくまでもフィクションの女性たち。


──現実で見ると、まさかここまで恐ろしいとは、思ってもみなかった。


これからはアニメじゃなくて、現実で学んでいこう……命を守るためにも。


残った悪霊たちは覚悟を決めたのか、再び動き出した。

100体ほどが二手に分かれ、刹那さんを挟み撃ちに……と思いきや、スルー!?


一方は、刹那さんの背後にいた元気いっぱいの女の子のもとへ。

もう一方は、そのさらに後ろ——小さな女の子に向かって、まっすぐ突進していく。


その瞬間、元気な声が響き渡った。


「あれ?もう鬼ごっこ終わり?

 じゃあ——戦闘開始だねっ!

 よーーし!燃えてきたーーーー!!!!」


元気いっぱいな女の子が笑顔で背中に手を伸ばし、何かを取り出した。


それは、刹那さんの“氷の精霊両刀”と同じく、変わった形状の“柄”だった。

全てが精霊玉で構成された“I字型”の柄。

普通なら剣や刀に付いているはずの鍔もない、不思議な武器だった。


あの制服。あの柄。そして『麻璃流さん』という名前──


あの子が、“水の大精霊・水青龍”に選ばれし少女──

“水の精霊分離剣”の使い手──


神戸校二年、渡辺麻璃流さん!


そう確信したその瞬間、彼女が大声で叫んだ。


「来なさい!!水青龍!!」


その名を叫んだ瞬間——

麻璃流さんの体内から水が一気に噴き出し、空間全体が渦を巻き始めた。


「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


地を揺るがすような轟音とともに、巨大な水の渦が周辺を包みこみ──

その中心から、咆哮を上げて龍が出現。

全身が透き通るほど澄んだ水で形作られた、巨大な龍。


その姿は、牙恩が勧めてきたアニメ『ドラゴンゴールドボール』に登場する、あの“神の龍”みたいだった。

この世のどこかに七つある、龍の金玉を集めると現れる、願いを叶える神龍。


だがこれは、もっと猛々しく、もっと神聖で、もっと圧倒的。

まるで自然そのものが龍の姿を借りて現れたような、そんな威厳と美しさに満ちていた。


やがて、その巨大な水青龍が、柄の精霊玉へと吸い込まれていく。

すると、透明色だった精霊玉が、青色に染まる。


次の瞬間──


I字型の柄の両端から、水が轟音とともに噴き出した!

水はそのまま空中で凝縮され、棒状の剣身となって両端に形成されていく。


左に水の剣身、中央に柄、右にも水の剣身。

それは刹那さんの氷の精霊両刀と同じ、柄の両端から水の剣身が生えた“両刀”……いや、“両剣”だった。


思わず、胸が高鳴る。

まるで、牙恩の部屋で一緒に観たSF映画『MOON WARS』に出てきた武器──“Moon Saber”そのもの!


「か、かっこいい……!!」


思わず興奮の叫びが漏れた。

男の本能を揺さぶるような武器に、冷静でいられるはずもなかった。


そして、麻璃流さんは水の精霊分離剣を構え、声を上げる。


「水の叫び THE FIRST!!


 流流(るる)舞踏剣(ぶとうけん)!!!!』


その瞬間──風のような、いや、水流のようにしなやかで速く……


斬る、斬る、また斬る!


奔る剣閃は奔流となって悪霊たちをなぎ払い、その一撃一撃が、まるで水の舞踏──

絶え間なく繋がる動きが、攻撃と防御をひとつにし、敵の隙を一瞬たりとも逃さない。

圧倒的な速度、そして流麗な剣技。

“流れるように、踊るように斬る”という言葉が──いま、ここに具現化されていた。


そんな中──麻璃流さんが再び声を上げた。


「第二形態!!」


I字型の精霊玉、柄中央でパキッと分離。

一本だった柄が、二本の短い柄へと変化する。


そして“水の精霊分離剣”は──

両剣から双剣へと、その姿を変えた。


「“分離”って、そういうことだったのか……!」


驚きに声が漏れた。その名の通り、水の精霊“分離”剣。

形態を変え、戦術を切り替える自由自在な武器──それが、麻璃流さんの精霊刀剣だった。


そして彼女は、今度は双剣を両手に構え、さらに速度を増して悪霊たちの間を駆け抜ける。

斬撃の音、水の爆ぜる音、悪霊の断末魔──

そのすべてが、戦場に“踊る水”の存在を刻みつけていた。


「第一形態!!」


再び柄が一つに戻り、“両剣”の姿へ。


麻璃流さんは状況に応じて形態を切り替えながら、容赦ない剣舞を繰り広げていく。

その圧倒的な戦いぶりに、ついに悪霊たちが──


『やっぱりダメだーーーー!!』


とでも叫ぶかのように、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。


「まーた、鬼ごっこ!?

 悪いけどあたし、逃げるのも追いかけるのも得意なんだよ!!」


そう言うと、麻璃流さんは水の精霊分離剣を構え直した。


「水の叫び THE FIFTH!!」


水の精霊分離剣を地面に突き刺す。

水の片剣身が地を貫いた瞬間、水が十字に地を走ると、やがて鋭角を描きながら、水の線は形を成していく。

形成されるのは巨大な──


”水の菱形型霊法陣“


二頭龍(にとうりゅう)水陣(すいじん)!!!!」 


霊法発動の刹那。

水の菱形型霊法陣が青色に輝くと、雄叫びとともにそこから飛び出してきたのは、二頭の龍。

先ほどの水青龍よりは小柄だが、それでも十分すぎるほどに獰猛。

二頭の水龍は唸り声を上げながら悪霊たちに襲いかかり、強靭な顎と鋭い牙で次々に喰らい尽くしていく!


そして──


破壊された悪霊玉から微かに光がこぼれる。宙に舞い、やがて静かに消えた。


そうして、麻璃流さんのもとへ向かっていたすべての悪霊が──完全に祓われていった。

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