第十二話 ハイタリーゴルフ倶楽部の戦い
※今話は、国立十文字学園高等部神戸校祓い科二年、渡辺麻璃流の視線でお送りいたします。
【兵庫県神戸市 ハイタリーゴルフ倶楽部 ゴルフ場】
「きゃああああああ!
た・す・け・てーーーーーーっ!!」
「キィィィィーーーーッ!!」
みなさま、初めまして?それともお久しぶり?
国立十文字学園高等部神戸校祓い科二年の渡辺麻璃流です。
いまあたしは、ゴルフ場のコース内で、20体くらいのオキナワカブト型・氷属性中級悪霊に追いかけられながら、全力で逃げまわってます!!
——え?
その手に持っている武器かっこいいって?
さっすがー!お目が高い!
あたしがいま手にしているのは、伝説級の武器“精霊刀剣”のひとつ——
その名も“水の精霊分離剣”!
そして、あたしを選んだ大精霊の名は“水青龍”。
水の大精霊で、全身が水でできた青くて巨大な龍です!
……龍って、ほんっとかっこいいよね!
あの神々しさ! シンプルにビジュの良さ!
しかも英語にすると“ドラゴン”!!
龍ってだけでもヤバいのに、“ドラゴン”って響きまで最強とか、もう反則でしょ……
——って、今そんなこと言ってる場合じゃなかったーー!!
「もぉーっ!なんであたしばっかり〜〜!!
虫苦手なんだってばーっ!!」
「助助さんの『早速現状報告』を聞かずに独断専行して、悪霊にケンカを売るからですよ」
ボソッと静かに呟いたのは、一年生の伊藤天嶺叉。
あたしと同じ神戸校祓い科に所属してて、“樹の大精霊・青天森” に選ばれた“樹の精霊双刀”の使い手。
あたしのと〜っても可愛い後輩ちゃん♡
「だってあの人の説明、なんか堅いんだもん!
つまんない授業聞かされてるみたいで、ねむくなっちゃうからしょうがないじゃん!」
「麻璃流さん!そのまま悪霊をあちらに誘導してください!
あとはわたくしが対処いたしますわ!」
そう指示してきたのは、三年生の田中刹那さん。
刹那さんも同じく神戸校祓い科所属で、“氷の大精霊・白氷狼” に選ばれた“氷の精霊両刀”の使い手だ。
歩くだけで男たちの視線が釘付けになる、まさに“美”の化身。
道端ですれ違ったら男性陣は必ず一回はチラ見するであろう、あの豊満なバスト。
ほんと、うらやましいっ!!
あたしの胸も、この一年で果たしてあそこまで育ってくれるのかどうか……
頑張れ!あたしのおっぱい!
……なんて、心の叫びをしている間に、刹那さんに指示された地点に到着。
そこは、ゴルフ場のコース内にぽつんと設けられた観戦エリア。
白いイスとテーブルがきっちり並び、パラソルもぴょこんと立ってて、見た目は完全にピクニック会場!
「刹那さん!着きました!」
「了解ですわ!
麻璃流さん、急いでそこから離れてください!」
「はい!」
あたしは水の片剣身をジェット噴射させて、空を飛ぶように観戦場から一気に脱出する。
と同時に、刹那さんが氷の精霊両刀を構えた。
「氷の叫び THE FIRST!!」
刹那さんが、氷の精霊両刀を中級悪霊の群れの中心へ投擲!
氷の片刀身が地を貫いた瞬間、氷が十字に地を走ると、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な——
“氷の円形型霊法陣”
「大氷獄寒陣!!!!」
霊法発動の刹那。
氷の円形型霊法陣が薄水色に輝き、ブワァァッ!!と冷気が炸裂。
瞬く間に中級悪霊たちは氷塊となって凍りつく!
「パキッ……パキパキッ!……パキィンッ!」
次々と氷塊が砕け散り、中にいた中級悪霊たちは悪霊玉ごとバラバラに砕け散る。
するとその場には、透けた中年くらいの男女の姿が現れ、静かに空へと昇り、やがて消えていった。
「さっすが刹那さん!」
「麻璃流さん!!後ろ!!」
「えっ?」
振り返ると、ヤマトカブトムシ型・氷属性上級悪霊が、空中から突っ込んできた!
「うわっ!?あぶなっ!!」
なんとか横跳びで回避!
そのまま悪霊は上空へと飛び上がると、角の先端に“氷の円形型霊法陣”を展開。
「キィィィィーーーー!!」
次の瞬間——
氷の円形型霊法陣が薄水色に輝くと、放たれるのは、無数の三角柱の氷柱弾。
「こんのぉ!」
すかさずあたしは水の精霊分離剣を構える。
「水の叫び THE SECOND!!」
水の精霊分離剣を地面に突き刺す。
水の片剣身が地を貫いた瞬間、水が十字に地を走ると、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な——
“水の円形型霊法陣”
「水円陣!!!!」
霊法発動の刹那。
水の円形型霊法陣がパアアアッ!と青色に輝き、あたしを中心としたドーム状の水の結界が展開される。
それは、濃密に圧縮された水が織りなす、まさしく鉄壁の障壁。
そこへ飛来してきた無数の氷柱弾が衝突すると、全て見事に砕け散った。
上空では、上級悪霊がくるくると円を描きながら旋回している。
「くっそ〜!
ああ飛ばれちゃうと、中々狙いが定められない!」
「大丈夫!
わたくしが撃ち落としてさしあげますわ!」
そう言うと、刹那さんは再び氷の精霊両刀を構え、
「氷の叫び THE FORCE!!」
振り抜いた瞬間──
氷の両刀身が分離し、鋭く空へと舞い上がる。
悪霊よりもさらに高く、天を貫く勢いで飛翔すると、その軌跡は空を十字に切り裂き──
やがて鋭角を描きながら、氷の線は形を成していく。
形成されるのは巨大な──
”氷の菱形型霊法陣“
「香蓮氷塊陣!!!!」
霊法発動の刹那。
氷の菱形型霊法陣が薄水色に輝くと、そこから降り注がれるのは無数の氷塊。
「キィィィィーーーー!!」
氷塊の直撃を受けた悪霊が絶叫しながら地面に落ちていく!
「ナイス刹那さん!」
すかさずあたしは水の精霊分離剣を構える。
けれど、悪霊は羽を細かく振動させていた。
「まずい!また飛ぶつもりだ!」
「そうはさせません!」
すると今度は、天嶺叉が前へ出て、樹の精霊双刀を構えた。
「樹の叫び THE THIRD!!
芽樹丸!!!!」
樹の双刀身が、まるで生き物のようにぐぐっと伸びていき、悪霊の体を巻き付けるように絡みつく!
「キィィィィーーーー!!」
悪霊はもがき暴れるも、がっちり拘束されて身動きがとれない!
「麻璃流さん!」
「オッケー!任せて!」
あたしは一気に駆け出す!
「おりゃああああああっ!!」
一閃。
水の精霊分離剣を振り抜き、悪霊玉ごと一刀両断!!
「パキィンッ!」
甲高い破裂音が戦場に響き渡る。
そして——
砕けた悪霊玉から、微かに光がこぼれる。
その光の中から、透き通るような人影が現れた。
20代ほどの透き通った女性。
穏やかに微笑むと、静かに空へと昇っていき、光の粒となって消えていった。
——祓い、完了。
『良き、来世を』
キンッ!
あたしたちは、それぞれの精霊刀剣を静かに鞘に収めた。
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