第七話 雷の精霊長刀
※用語解説
・霊格:悪霊の脅威度に応じた階級。基本的に、”霊気“によって判断される。
精霊省のデータによると、下記の四つに分類されている。
①下級:いたずら程度の悪霊。群れることが多い。
②中級:人に危害を加える可能性がある。下級を従えることも。
③上級:命の危機を及ぼす存在。群れを率いるリーダー格。
④超常級:街一つを消滅させる規模。災害級の悪霊。
【現代 東京都新宿区 国立十文字学園高等部東京校 六階 剣道場】
「29,986!……29,987!……29,988!」
「桜蘭々さん、トレーニング中失礼いたします
悪霊が発生しましたので、出動をお願いいたします」
「29,998!……29,999!……30,000!!」
この、剣道場で木刀を振るう妾の名は山本桜蘭々。
国立十文字学園高等部“東京校”祓い科の三年だ。
そして今、報告に現れた黒縁メガネの女性は飯田詩音。
同じ東京校所属で、精霊科三年。
常に冷静沈着で、現場でも的確な指揮を出すため、精霊科の学生たちから絶大な信頼を寄せられている才女だ。
「場所は?」
「新宿駅東口、“スモール・エコー”です」
“スモール・エコー”は確か……
全国に店舗を展開している大手カラオケチェーンだったな。
カラオケとは、そんなに楽しいものなのか?
入店後にプランを選び、部屋へ案内され、思いきり歌って楽しむ。
終了時刻が近づくと自動で通知が届き、会計を済ませて退店する──
店舗側が緻密に設計した、合理的かつスムーズな運用システム。
その仕組みは理解しているが、実際に体験したことはない。
いずれ機会があれば、試してみたいものだ。
「近いな
被害の状況は?」
「今のところ確認されていません
現場周辺にはすでに立入禁止の措置を取っています」
「さすが、手際が良い
着替えたらすぐ向かう」
「承知しました
先に現場でお待ちしております」
妾は剣道着を脱ぎ捨て、制服へと素早く身を包むと、即座に現場へと駆け出した。
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【東京都新宿区 新宿駅東口】
スモール・エコーは、新宿駅東口からすぐの場所にある。
周囲には高層商業ビルが立ち並び、まるでビル群そのものが光を放つ巨大な電飾のようだ。
その一角に、八階建てのビルがある。
一階から八階まで、すべてがカラオケ店。
騒がしさと享楽の象徴のような建物だ。
「桜蘭々さん、こちらです」
駅前で詩音と合流する。
彼女の背後には、精霊科の学生が三人控えていた。
「状況は?」
「変わらずです」
「そうか、悪霊の情報は何かわかっているのか?」
「はい、鳥型の上級が一体
体色は紺……影属性かと
……ですが、現在どの階層にいるかまでは特定できていません
どうやら、中で動き回っているようでして……」
「いや、そんなの調べる必要もない」
「……では?」
「ああ──
いつも通り、まずはここを更地にしてから考えるとしよう!」
妾は、腰に携行していた刀の鞘から、柄を引き抜く。
そして、柄を強く握りしめ、大声で叫んだ。
「出ろ!!白雷虎!!」
その名を叫んだ瞬間——
妾の体内から轟雷が炸裂し、全身を駆け巡った電流が一気に放たれる。
まばゆい雷光が天へと奔り、空を引き裂くように炸裂する。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
先ほどまで晴れ渡っていた新宿の空が、一転して暗雲に覆われる。
瞬く間に雷雲が渦巻き、天地が震えるような轟音が街を揺るがす。
そして、その雷雲の中心から咆哮とともに姿を現したのは、雷そのものが虎の姿を取った、巨大な獣。
これぞ──
“雷の大精霊・白雷虎”
全身が雷光で構成された、威風堂々たる白虎。
毛皮の一筋一筋すら雷で形作られ、歩くだけで空気がビリつく。
その身からは常に万雷のごとき電流が放たれていた。
妾が今、手に持っているのは──
“雷の精霊長刀”
長い柄は、黒色の鍔、柄巻きされた黒色の握り、頭の部分は精霊玉で構成されている。
白雷虎は雷雲の中から、まるで落雷そのもののように、一条の閃光となって妾の柄へと降り注ぐ。
“精霊玉”に、白雷虎が吸い込まれる。
次の瞬間──
透明色だった精霊玉が、黄色に染まる。
柄から雷鳴が轟き、奔る雷が空間を引き裂く。
暴れる電流は一点に収束し、“雷の刀身”を形作る。
迸る雷が鍛鉄のごとく凝縮され、柄と雷の刀身を合わせたその長さは、妾の背丈をも超える長刀となった。
今──
この刀は“真なる形”を顕現した。
“柄”だけだった未完成の刀に、大精霊の力が宿り、“雷の刀身”がここに生まれ、“雷の精霊長刀”は真価の姿を現した。
これこそが──
大精霊に選ばし者のみが扱うことを許された伝説級の武器。その名も──
“精霊刀剣”。
妾は、雷の精霊長刀を構える。
「みなさん!
すぐに精霊壁を展開します!」
「はい!」
詩音の号令に、精霊科の学生たちが即座に配置につく。
「先輩、もしかして……あの人が……」
「そう──
“雷獣の桜蘭々”だ」
「“何でも派手にぶっ壊すこと雷獣の如し” ──で有名な、あの桜蘭々先輩ですか?」
「その通り!
そしてその現場に同行するってことは……」
「修復作業、完徹コース?」
「正解!」
「ひ、ひぃ……今日提出期限のレポートがあるのにぃ……!」
後方で学生たちがざわついていたが、妾はそれらを意にも介さず、ただ己の任務に集中した。
「雷の叫び THE FIRST!!」
雷の精霊長刀を振り抜いた瞬間──
雷の刀身が分離し、鋭く空へと舞い上がる。
ビルの屋上よりもさらに高く、天を貫く勢いで飛翔すると、その軌跡は空を十字に切り裂き、ぐるりと回り円を描き始める。
形成されるのは巨大な──
”雷の円形型霊法陣“
「雷降直雷陣!!!!」
霊法発動の刹那。
雷の円形型霊法陣が黄色に輝くと、そこから放たれるのは──
一点集中型の、絶対的な落雷。
──ピシャアアアアアアアアンッ!!
天地を貫く轟雷が、スモール・エコーのビルを直撃した。
激しい閃光と爆音、焼け焦げる空気が一瞬にしてすべてを飲み込む。
稲妻に穿たれた八階建てのビルは、内部から崩れ落ち、瓦礫が雨のように降り注いだ。
そして、まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく消え去っていた。
「チュッ…… チュッ……」
残骸の中から、異様な気配が現れる。
『上級悪霊
俗名:渡部一介
種別:雀型
属性:影』
それは、雷撃を受けて麻痺した上級悪霊だった。
すかさず妾は構えを整えると、全力で雷の精霊長刀を振り抜いた。
「はああああッ!!」
──ズバンッ!
一閃。
悪霊の核、“悪霊玉”を真っ向から斬り裂いた。
「パキィンッ!」
甲高い音が響き、砕けた悪霊玉からふわりと光が漏れ出す。
そこに現れたのは、透き通るような男性の霊。三十代ほどか。
彼は何も言わず、穏やかに微笑み、静かに空へと昇っていった。
——祓い、完了。
「良き、来世を」
キンッ!
妾は、雷の精霊長刀を静かに鞘に収めた。
※キャラクター紹介
プロフィール
名前:山本 桜蘭々
年齢:18歳
身長:182cm
体重:秘密
職業:国立十文字学園高等部東京校祓い科三年
武器:雷の精霊長刀
召喚精霊:雷の大精霊 白雷虎
性格:豪快・大雑把
一人称:「妾」
好きな食べ物:肉
最近気になっていること:カラオケとは楽しいものなのか?(知識はあるけど未経験)




