番外編 ⭐︎Happy New Year⭐︎〜お年玉争奪戦編〜 Part2
※前話に引き続き、国立十文字学園高等部八戸校祓い科二年、佐藤銀河の視線でお送りいたします。
【青森県八戸市 八戸神社】
八戸市内に鎮座する、由緒ある神社。
朱塗りの鳥居をくぐった先には、正月を祝う参拝客があふれかえり、境内は活気に満ちていた。
屋台から響く呼び声。
鈴を鳴らす音。
あちこちで弾ける笑い声。
正月特有のにぎやかさが、冬の澄みきった空気を震わせている。
──集合場所である八戸神社の鳥居前に、おれたちは到着していた。
「ほら、もう泣かないで牙恩。
せっかくの袴が汚れちゃうよ。はい、このハンカチ使って。」
「ひっく……!ひっく……!
心の方はもう……完全に汚れました……ひっく……!」
地上に無事(?)自力で帰還した牙恩は、涙と鼻水で顔が大惨事。
おれはそっとハンカチを手渡し、その背中を軽くさすった。
後ろでは麻璃流が、
「空から見てどうだった、がっくん!? やっぱり地球は青かった!?」
と、騒いでいる。
「おーい、銀河ー!」
「謙一郎さん!」
手を振りながら駆け寄ってきたのは、黄緑色の羽織袴を着た謙一郎さん。
その後ろには、紺色の羽織袴に身を包んだ是隠、そして緑色の着物を着た天嶺叉が並んでいた。
「袴、すっごく似合ってますね!
是隠も、すごくかっこいいよ!」
「ありがとう! 銀河も似合ってるぞ!
初日の出みたいで、正月らしい色だな!」
「羽織袴を着て、友人と初詣。
……そうか、これがお正月。」
謙一郎さんも是隠も、穏やかに微笑んでいる。
その横で、袖をぎゅっと握りしめ、もじもじと落ち着かない様子の女の子が一人。
まるで、初めて家に迎え入れられた子犬のように、キョロキョロと視線を泳がせている。
「天嶺叉も、着物すっごく似合ってるよ!」
「えっ……!?
あ、ありがとうございます……!」
顔を真っ赤にして、さらに縮こまる天嶺叉。
「……んで、あいつはなんで泣いてるんだ?」
「あ、あとで説明します……。」
こうして祓い科のメンバーが全員揃い、鳥居をくぐって境内へと足を踏み入れた。
──その瞬間だった。
周囲が、ざわ……っと騒めき始める。
「おい見ろよ……。
なんだ、あの集団……美人ぞろいじゃねえか!?」
「なにかの撮影か!?」
「薄水色の着物の人、やばい……超でけぇ……っ!♡」
「あの一番背の高い、黄色の着物の人……
宝塚のトップスターみたいに凛としていて、かっこいいなっ! あんなん男でも惚れるぞ!」
「あの一番ちっちゃい緑の着物の子、小動物みたいでかわいい♡」
「俺は青い着物の、元気そうな子がタイプだな!」
「せ、拙者はあの紫色の……
見るからに生意気そうな、メスガキっぽい子がいいんだな♡
人生一度でいいから、あんな子に蔑んだ目で踏まれたい……♡」
当然、騒いでいるのは男連中だけだ。
これだけの美人集団が歩いているのだから、注目されるのも無理はない。
そんな中、一人の男性が意を決したように桜蘭々さんへと近づいた。
「あ、あの……す、すみません!
もしよければ、連絡先の交換など……!」
スマホを取り出す男性。
そこへ、萌華さんが無言で一歩前に出た。
「失せろ。
桜蘭々様はいま、初詣でお忙しいんだ。
次、話しかけてきたらぶっ祓うぞ。」
一蹴。
鬼の形相で、はっきりとした威圧を込めて告げる。
「こら、萌華。そう邪険にするな。」
桜蘭々さんが、やさしくたしなめる。
「すまぬな、男性。妾は──」
そう言って優雅に髪をかき上げ、男性へ向き直った、その瞬間だった。
『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ ♡』
『かっこいぃぃぃぃぃぃぃーーーっ ♡』
『こっち向いてぇぇぇぇぇーーーっ ♡』
今度は、一般女性陣の悲鳴にも近い叫びが、境内に響き渡った。
「び、びっくりした……!」
「な、なんの騒ぎだ……!?」
「ふうえいひんえおひあのはな?」
「おい、麻璃流。
食いながら喋るな。拙者の方にも飛び散ってるぞ。」
驚いて周囲を見回すおれたち。
「なんだ?
悪霊でもでたのか?」
「──あれは……そうですね。
ぶっ祓わないといけないやつですね。」
萌華さんの視線の先。
そこにいたのは──
「よお、みんな!
あけましておめでとう!」
白い羽織袴に身を包んだ、白亜先生だった。
「あっ! 白亜先生!」
参道の中心を堂々と歩き、片手を上げてこちらへ向かってくる。
「白亜先生ではないか。
なにが『ぶっ祓わないといけないやつ』だ、萌華。」
──ゴツンッ!
桜蘭々さんのゲンコツが、萌華さんの頭に落ちる。
その音を合図にするかのように、全員が一斉に白亜先生のもとへ駆け寄った。
自然と足取りが軽くなるあたり、さすがの人望だ。
『あけまして、おめでとうございますっ!』
ぴしっと揃った挨拶とお辞儀。
白亜先生は満足そうに頷く。
「はい、おめでとうっ!
いやぁ、みんな着物がよく似合ってるな!」
「白亜先生も、とてもお似合いです。」
桜蘭々さんが上機嫌に褒めると、先生は鼻をかきながら照れ笑いした。
そこへ──
『白亜先生っ! お年玉くださいっ!』
容赦なく手を突き出したのは、牙恩・麻璃流・萌華さんの三人衆だった。
「お、おいっ、牙恩っ!」
「ダメですわよ、麻璃流さんっ!」
「こらっ、萌華!!」
三年生ズが慌てて止めに入るが、三人の目は完全に“お年玉ロックオン”状態だ。
だが白亜先生は、豪快に笑い飛ばした。
「はっはっはっ!
子どもにお年玉をやるのは大人の勤めだ!
もちろん、ちゃんと用意してるぞ!」
『やったーーー!!』
三人の声がきれいに揃い、境内に響き渡る。
──しかし、その時だった。
白亜先生の笑みが、ふっと鋭くなった。
「……だがな。
普通に渡しては、つまらん。」
ゆっくりと口角が上がる、不敵な笑み。
それは全員がよく知っている──嫌な予感しかしない笑顔だった。
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【国立十文字学園高等部八戸校 学生寮10階 談話室】
初詣を終えたおれたちは、学生寮の談話室へと戻ってきていた。
畳敷きの広い部屋では、テレビから正月特番が流れている。
部屋の隅には、みかんが山盛りに詰められた段ボール箱。
その脇には、簡素ながらも立派な盆栽が、正月らしく凛と佇んでいた。
窓の外に広がるのは、静かな冬景色。
部屋の中には、初詣を終えたあとの、どこか気の抜けた和やかな空気が満ちている。
そんな中──
「夜太刀家恒例の正月遊びを教えてやろう。」
不穏な前振りとともに、白亜先生が一歩前へと進み出た。
「その名も──
“お年玉争奪戦”!!」
高らかな宣言と同時に、全員の視線が床へと集まる。
そこにはずらりと並んだ、黒い紐が50本。
それぞれの片端には、セロハンテープで小銭がぺたりと貼り付けられていた。
10円玉、50円玉、100円玉、500円玉──。
そして、中には何も付いていない紐も混ざっている。
「ここに、お前たちへのお年玉、9万円分の小銭がある。」
「きゅ、9万円……!?」
「……ってことは、一人1万円ずつってことですか?」
「やったーー!
1万円ももらえるんですかー!?」
「えー! なんで小銭なんですかー!?
普通にお札でくださいよー!」
「こらっ、萌華!!
お年玉をいただけるだけでもありがたいことだろう! 贅沢を言うなっ!」
一気に騒がしくなる談話室。
その様子を見て白亜先生は軽く手を上げ、場を制した。
「まあまあ、そう焦るでない。
確かに小銭で渡すことにはなるが……なにも、“一人1万円”とは限らんぞ。」
「……どういうことです?」
全員がぴたりと動きを止め、そろって首をかしげる。
その視線を一身に受けながら、白亜先生は──
実に楽しそうな、そして明らかにろくでもない笑みを浮かべた。
「さて、今からルールを説明しよう!」
一拍置いて。
「夜太刀家伝統の正月行事だ。
──覚悟して、挑め!!」
その瞬間。
談話室に漂っていた正月の緩い空気が、一気に不穏な空気へと切り替わった。
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【夜太刀家恒例 お年玉争奪戦!!】
「みんなもよかったら家でやってみてくれ!」── by白亜。
〜(1)事前準備〜
・用意するものは、紐50本、セロハンテープ、そして大量の小銭 (今回は、合計9万円分)
・紐の片側(以下、A側)に、以下をセロハンテープで貼り付ける。
500円玉×1。 100円玉×4。 50円玉×10。10円玉×15。 (計30本)
・ハズレ×20も用意する。
・もう片側(以下、B側)には何も付けない。
こちらが参加者──つまり、生徒たちが掴む側となる。
「紐の数や内訳は、親が自由に設定してOKだぞ!」── by白亜。
〜(2)ルール説明〜
①親が、B側の紐を床に叩きつけてばら撒く。
②子は、床に散ったB側の中から一本を選ぶ。
③親は、A側の中から好きな紐を一本選び、引いていく。(例:10円玉の紐)
④B側は、引っ張られたら、A側に付いていた小銭をもらい、その回は終了となる。
(例:銀河が10円玉の紐を引き当てた→白亜が銀河に10円を渡す→銀河はこの時点で終了、次の二回戦待ちとなる。)
※いちいちセロハンテープを貼ったり剥がしたりするのは面倒なので、実際の受け渡しは小銭ケースから行う。但し、最終戦のみ、紐についている小銭をそのまま受け取ってOK。
⑤引っ張られなかった場合は、③へ戻る。
「後半戦は、A側の内訳を変えると、もっと盛り上がるぞ!
500円玉の本数を増やしたり、ハズレを減らしたりとかな!」── by白亜。
〜(3)図解〜
A側:500円玉が1本。100円玉が4本。50円玉が10本。10円玉が15本。ハズレが20本。
B側:50本の内、好きなのを選択。
・A側 〜〜〜紐〜〜〜 B側
・500円玉 〜〜〜紐〜〜〜 B側×1本
・100円玉 〜〜〜紐〜〜〜 B側×4本
・50円玉 〜〜〜紐〜〜〜 B側×10本
・10円玉 〜〜〜紐〜〜〜 B側×15本
・ハズレ 〜〜〜紐〜〜〜 B側×20本
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「──それじゃあ運が良ければ、1万円以上もらえるってことですね!」
麻璃流は嬉しそうに目を輝かせた。
「その通り!
逆に運が悪ければ、1万円以下。
まさに──今年の金運を試すゲームってわけだな!」
「お年玉を仲間同士で奪い合う。
……そうか、これがお正月。」
妙に納得している是隠に、謙一郎さんがすかさず「いや違うだろ!」とツッコんだ。
「よーし!
それじゃあさっそく第一回戦、いってみよー♪」
こうして、白亜先生の掛け声とともに──
“お年玉争奪戦”の幕が上がったのである。
【予告!!】
新年──
華やかな着物、にぎわう八戸神社。
笑顔あふれる平和な一日……のはずだった。
新年早々幕を開ける、夜太刀家恒例の正月行事。
その名も──お年玉争奪戦!!
それは、仲間同士でお年玉を奪い合う、デスゲ……もとい、マネーゲームだった。
今年一番最初の金運を掴むのは果たして、一体誰なのか──!?
正月物語もいよいよ大詰め!
次回──
「番外編 ⭐︎Happy New Year⭐︎〜お年玉争奪戦編〜 Part3」
明日、2026年1月3日12時公開予定!
お楽しみに!!




