ファミコン40周年! ビンテージROMカセット『麻雀』は、今も母親をエキサイトさせている。
1983年7月、任天堂から発売されたテレビゲーム機『ファミリーコンピューター』は、ドンキーコングやマリオという人気キャラクターを生み、ファミコンの愛称で親しまれ、後に爆発的なブームを巻き起こしました。
そしてファミコンは日本国内で約2000万台、全世界で約6000万台を売り上げる世界的ムーブメントへと拡大。
これまでボードゲームやテーブルゲームが築き上げていた『ゲーム』の定義を、現在も認知されている「ディスプレイに映し出されるカラフルな電光の遊戯」へと書き換えたのです。
あれから40年、当時9才だった私はアラフィフとなりましたが、かつてPCエンジンのエッセイを書いていた事でも分かる通り、個人としてはファミコン世代ど真ん中から外れ、本体もソフトも持っていませんでした。
勿論、『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』など、ファミコン黄金期の名作ゲームは堪能しましたが、それはあくまで友達とワイワイ楽しませて貰うだけ。
現在こうして、ファミコン40周年エッセイを書こうと思う程の愛着はなかったのです。
今から4年前。
私が『小説家になろう』サイトを訪れる少し前、父親の肺ガンが末期と宣告され、これ以上の手術は出来ないと知った2019年の夏の終わり。
自宅での抗ガン剤治療、いわゆる終末医療主体に切り替えた私達家族は、定期的な入院時以外は自宅で父親の側にいるようになります。
しかしながら、倦怠感こそあれ、まだ重篤な症状のない父親を介護するのは、良くも悪くも退屈。
私が仕事に出ている間、父親を置いて母親が外で遊ぶ事も難しいため、部屋で短時間の暇潰しが必要になった母親のリクエストに応えた結果が、「麻雀のテレビゲーム」でした。
たまたま大手新聞の通販広告で見た、中国製の『TV麻雀ゲーム』を3000円程で購入した私は、そのゲーム画面を見た瞬間、懐かしさと笑いが込み上げます。
これ、絶対ファミコンだわ! と。
実際、その麻雀ゲームはカプコンから1987年に発売された『井手洋介名人の実践麻雀』であり、グラフィックの配色を少しいじっただけで、BGMも機能も全く同じでした。
大手新聞の全国紙に載る通販ですから、中国のメーカーもカプコンや井出洋介名人に著作権料を払っていると信じたいものですが……。
私には懐かしいものの、それまでテレビゲームに馴染みのなかった母親にとっては、ファミコンクオリティでも十分に新鮮。
レトロゲームらしいゆったりしたテンポも、むしろ高齢者には丁度良く、それからは暇を見ては麻雀ゲームに熱中する日々が続き、病床の父親も「よく飽きないな〜」と茶化す程でした。
そして2020年2月4日、父親は天に召されます。
コロナ禍もあって母親の麻雀ゲームライフは継続し、その年の夏、安物の中国製麻雀ゲームは僅か1年で専用コントローラーが不能に。
麻雀ゲームのない生活が考えられなくなっていた母親は、すぐに新しい麻雀ゲームを買い替えるよう、今度は自費で私に依頼してきました(笑)。
中国製の『TV麻雀ゲーム』は全国の高齢者から支持を拡大しており、定価も3000円から4000円に上がっております。チャイナは金に汚いと思いますぅ。
カプコンと井出洋介名人に後ろめたい気持ちはありましたが、やむなく2台目を購入。
しかし、また1年でコントローラーが不能になり、通販では定価が5000円にまでつり上がっていた時、我々親子は流石に資本主義の奴隷にはならないと(笑)、別の選択肢を模索しました。
そこで思い出したのが、古いソフトの多くがそのまま使えるファミコン互換機の存在。
こちらも安っぽい中国製ではありますが、麻雀専用コントローラーとは違う、シンプルな十字キーとABボタン構造。
更にファミコン互換機なら、コントローラーが2個ついていて2倍長持ち……。
そう判断した私は、某通販サイトでファミコン互換機を購入し、近所のブ✕✕オフで当時38年もののファミコンビンテージROMカセット『麻雀』を、110円で入手したのです。
お店の人は、まさかこれが2021年に売れるとは思わなかったでしょうね(笑)。
『麻雀』は1983年8月、ファミコン発売とほぼ同時期に世に出た、家庭用テレビ麻雀ゲームのパイオニア的存在。
大人をファミコンに呼び込む戦略は大当たりし、何と日本で200万本以上を売り上げた、歴史に残る大ベストセラーでした。
現在では適用されていないルールもありますが、このゲームの初級モードでは、手を打たずにぼ〜っとしていても永遠にコンピューターが待ってくれるという、高齢者にはありがたいシステムがあります。
麻雀マットを模した緑ベースの画面もシンプルで見やすく、母親もコントローラーの違いをすぐに体得。
まさに「好きこそものの上手なれ」ですね。
ファミコン互換機とビンテージROMカセット『麻雀』は、2年後の現在も故障なく動いており、我々親子の目論見は成功しました(笑)。←人生のスケールがショボい
しかしながら発売から40年が経過し、少なくとも30数年間、幾多のユーザーの手とファミコン端子に擦られてきたビンテージROMカセット『麻雀』の頑強さには、ほとほと驚嘆してしまいます。
勿論、現在のゲーム機器より遥かにシンプルな構造ではあるものの、最近はテレビや掃除機もすぐに壊れてしまう「日本のモノづくり」が、40年前にピークを迎えていたように思えてなりません。
加齢による認知症を予防するという意識もあるのでしょうが、私の母親はもう、麻雀ゲームを生涯の趣味としたようです。
つまり、私達の世代が40年前に胸踊らせた「カラフルな電光の遊戯」は、今の高齢者の胸を踊らせる事も出来るのですね。
これだけの日本の遺産を、中国にパクらせるだけでは勿体ないです。
現在から未来の高齢者用に、麻雀や将棋、囲碁やオセロ、そして野球のレトロゲームを活用して欲しいと思います。