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記憶の海  作者: ツミキ
3/3

出会いの始まり


気温が高く、太陽がジリジリと地面を照らしていたとても暑い日だった。

綺麗な青い空が嘘だったように雲に覆われて雨が降ってきた。


宙は休みの日に家の中で1日過ごすのがなんだか悔しくて散歩に出掛けていた。

せっかく散歩に来たのだからと普段は行かない道を選び気の向くままに歩いており、あわよくばおいしいカフェでも見つけられたら良いと思っていた。

「こんなことなら家にいれば良かった。」

朝見た天気予報では1日晴れる予報だったから傘なんて持っていない。

どこか入れる店でもあれば良かったが、住宅街に入ってしまったために雨宿りできそうな店も見つからなかった。


宙はとりあえず入れそうな店を探そうと早くも出来上がりはじめている水たまりを避けながら走った。

少し大きな通りに行けば何かあるだろうと狭い裏路地を抜けると、丁度よく喫茶店があった。


ラッキー。雨宿りついでに何か食べて帰ろう。

そう思い、宙はドアをくぐった。


ドアを開けるとふわりと紅茶の匂いがした。

あまり紅茶の種類は分からないけれど、良い匂いだと思った。

カウンターとテーブル席があるお店でカウンターには、優しそうなマダムというのが正しいというような女性がいた。

「いらっしゃい。開いている席にどうぞ。」

いわゆるマスターのようなその女性は、優しい声でそう言われたので店内を見渡すと、私の他に客はいないのか、とても静かだった。


せっかくだから、外が見える窓側の奥の席にしようと進むと、入口の前では見えなかったのか先客がいた。


目が合ってしまった。


女の人だった。

腰まであるストレートの髪を下ろしたその女性は頬に涙が一筋、零れ落ちていた。

悲しいような苦しいようなその涙は不謹慎かもしれないが見とれてしまうほど美しく。

女性は私が店内に入っていたことに気付かなかったのか、少し驚いた表情をしていた。


「あ、えっと、すみません。」

何も悪いことをしていないのに、なぜか謝ってしまった。

「いや、こちらこそ、恥ずかしい所を見られてしまったな。」

女性は頬の涙を拭い、微笑んでそう言った。

「い、いえ」

何も言えずに宙はペコリとお辞儀をしてなんだか見てはいけないものを見た気分になって女性が見えない席に座った。



紅茶を頼み、サンドイッチを食べてしばらくすると、雨は止んで嘘かのような晴れ間が見えていた。

さっきの女性はどうして泣いていたのだろうか。失恋でもしたのだろうか。

この店の常連なのかな。綺麗な人だったけれどまた会えるだろうか。

宙は気になる人がいるととことん仲良くなって、その人の事を知りたくなるような性格だった。

また憶測だけで妄想する私の悪い癖が出てしまったと考えながら、もう一度女性を見たくて、女性が座っていた席を通って会計をしに行こうとしたが、その女性はすでに喫茶店を出てしまっていたようだった。


宙は会計を済ませて紅茶もサンドイッチも美味しかったし、もしかしたらまたあの人に会えるかもしれないから、また行こうと思い、道順を覚えながら帰路についた。


総合的にはよいひになったかもしれないと思った。

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