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洋服に関する私的見解

作者: コルシカ

 洋服に関する私的考察


 男性で自分の着る洋服にこだわりを持っている人というのは、はたして全体の何割いるだろうか。

 たいていが妻に買ってきてもらった服、あるいは若い人であれば母親に買ってきてもらった服を着ているのか。あるいは必要に迫られてユニクロ等ファストファッションの安価な洋服店で購入しているのか。

 いずれにせよ、男性は女性に比べ洋服に興味をもつ、定期的に購入する層が低いことは間違いないであろう。

 私はというと、若い頃から洋服に興味を持っていたが、高校大学ではやはり少数派であった。

 興味を持っているといってもいわゆるハイブランドを買うようなお金はないため、大学ではボタンダウンシャツにリーバイス501、冬になればその上にチルデンセーターとダッフルコートのような、いわゆるアイビーファッションのようなものを好んで着ていた記憶がある。

 そのうちファッションの知識が増えていって、様々なアウターやトップス、ボトムス等をそろえていくことになった。

 今は結婚し家庭もあるので好きな洋服メーカーの春夏と秋冬のサンプルセールを覗くのがメインとなっている。

 そもそもがオタク気質のため、ポップミュージックや本、好きなスポーツ、プラモデルなんかのグッズのコレクションの仕方はお手の物である。二十代の前半にはもう「周りに比べればオシャレな人」で通るようになっていた。

 ところで洋服を長持ちさせるコツをご存知だろうか。答えは何てことない「太らなければいい」ということだ。

 たいがい男女とも中年期になるとお腹がでてきたり全体的に肉付きが良くなってしまい、若い頃せっかく買ったお気に入りの洋服が入らなくなってしまうケースが多い。

 なので「ダイエットしてその服を着ることができるまで痩せる」という面倒なことは概ね人はしないのであって、サイズアウトした洋服はそのままタンスの肥やしになるか、「断捨離」の名のもとに古着屋行きあるいは廃棄の憂き目にあう。

 私は洋服の中でもジーパンを愛好し収集しているので、一度太ったらウエストが伸びないジーパンはアウトである。

 そのため洋服やジーパンを長く楽しむために、思い切って棄てた。何を?食に関する執着を、である。

 思うがまま食べて太ると洋服だけでなく、生活習慣病すなわち糖尿病や高血圧など健康にも支障をきたす。洋服やジーパンは標準体型の方がシルエットが綺麗でキマる。どちらかを棄てるのであれば健康も体型も維持できる食への執着にした。

 だから現在は粗食を満腹にならない腹五分~六分程度食べて、多少の筋トレをしている。

 これはまさに「私的見解」なので誰にも勧めることはしていない。


 (洋服の意義)

 ファッションを楽しむ以外に洋服には「暑さ寒さ」をしのぐ機能的意義もある。

 アフリカの赤道直下の国であれば、腰蓑ひとつで(極端な例だ)過ごすこともできようが、日本に住む身であれば四季のある土地ゆえ、夏は猛烈な暑さに紫外線や人の視線が気になるのでTシャツやポロシャツくらいは着るだろう。また冬ともなれば防寒対策としてセーターやダウンジャケット等を着ざるを得ない。

 機能的側面のみを重視するならば、このような種類の洋服類を適宜組み合わせて着ればよいのであって、めんどくさければ「すべての洋服を黒一色だけに統一する」、「普段着もスーツで過ごす」などということも可能だが、そういうことを実行している人は稀であろう。

 たいがいの人は「自分がオシャレだなと考える」配色やサイズ感で洋服を適宜組み合わせて着用している。第三者から見て「良い感じの洋服だな」と思われたい(顕在的・潜在的意思を問わず)。やはり他人の目というのは気になるものなのである。

 中には、とくに男性に多いと感じられるのだが「人は見た目ではない。内面にこそその価値がある」と放言し、それこそ全く身なりに頓着しない思想の人もいるにはいる。

 しかし、だらしなく清潔感やセンスのかけらもない洋服を着ている人間をどうやって「内面の優れた人だ!」と判断できるだろうか。

 「人は見た目が九割」という本も売れていたがまさにその通りで、最低限の清潔感・身だしなみのできている洋服を着ていないことには、第三者としては「内面を判断するまでもない」と門前払いをしてしまうのが現実というものであろう。


(異性関係と洋服の親和性)

 思春期以降、若い子たちは男女問わず異性と仲良くしたい、さらにお付き合いして彼氏彼女がほしくなる。

 そんなとき、まずもって重要となるアイテムは洋服であるとの言を俟たない。

 普段は学生なら制服、社会人ならスーツを着用しているケースが多いけれども、仲良くなった異性と休日にお出かけするときには私服の出番である。

 そうなるとやはり彼や彼女に良く見られたい、あわよくば「いいセンスですね」とまで褒められたいのが人情だ。

 デートには一張羅を着て臨むであろうし、気合を入れるためにファッション誌やネットで異性に受けるファッションをリサーチして洋服を新調する人も多いだろう。

 若い人ならばそれでがんばりすぎて多少ピントを外すことも少なくないが、そのがんばりを見て異性は「私のために背伸びしてくれているんだな」と好意的に受け取ってくれるであろう(個人差があります)。

 そうしてデート等でお互いの洋服を見にショッピングに行ったりすると、そこにはプロのショップ店員がおりいろいろ洋服に関するアドバイスをしてくれる。はじめはぎこちなかった洋服の着こなしもそのような試行錯誤を経て、次第に洗練されていくだろう(個人差があります)。

 「人は見た目から」とはよくいったもので、自分に似合っている洋服を着ている人は自信がもてるようになる。少なくとも「変な恰好はしていないので安心だという安心感と言い換えてもよい。

 安心感は余裕を生む。恋愛において「この人感じのいい人だな」って異性が感じるのはなんといっても「余裕の感じられる人」である。身だしなみにぬかりがないと自分に自信をもっている人は目の前の相手にだけ気を配ればいいのであって、その余裕は異性にも安心感を与える。こうして「恋愛への第一歩」が踏み出されると。こういう仕組みなのである。

 いうまでもないが、異性に「自分の内面だけを見抜け」と豪語している人は、その強気の反面「このダッさい服装(黒一色の毛玉だらけの洋服をしまむらで購入)をバカにしてるんじゃなかろうか」「髪型(千円カットで散髪)が変だと思われてないかな」等無意識下でも自己卑下を行っており、自信のある態度あるいは余裕がもてず、言動も偏狭で的外れなものになっていく。

 案の定そのような人に魅力を感じる異性は少ないため、己の思うような反応が得られないと「ほ~ら、結局人間の内面を理解できる女(男)はおらんのだ」と先述した「恋愛への第一歩」が踏み出せないことに気づかない。

洋服や身だしなみを軽んじる者は、実は様々な局面で「戦わずして負けている」ことが多い。


(アパレル不況)

 このように「衣食住」の三本柱の一つにも数えられる洋服。その果たす役割は機能性からファッション性、人間関係など幅広い。

 にもかかわらず、洋服業界はここ数年深刻な不況に陥っている。いわゆる「アパレル不況」というものだ。

 日本経済が数十年にわたる不況続きであることに追い打ちをかけ、海外の戦争による原料高に起因するインフレが直撃。

 ただでさえ家庭で多くなる見込みのない収入を住宅ローンや食費等に回さねばならず、衣食住の洋服にかけるお金は真っ先に削減された。

 三陽商会やワールドといった大手アパレル企業が経営危機に陥ったニュースは記憶に新しい。

 一方でファストファッション、ユニクロやGU、無印良品らは好業績を上げている。とくにユニクロなど価格に見合わぬ高品質でデザインも欧米の最新トレンドを反映させるなど、大躍進を遂げている。

 エルメスやシャネル等のハイブランド、ユナイテッドアローズやビームス等のドメスティックブランドは今や贅沢品であり、それを購入できる高所得者層と大部分の中流下流層に分断が大きくなった。

 とはいえ若者でスマートな男女がユニクロやGAPを着用しているのと、高齢者のおじさんおばさんでお腹が出た体型にグッチやバーバリーを着用しているのを比較すれば、やはり前者の方が爽やかであり、決して洋服は価格がすべてではないと再考させられる。

 とくに「Z世代」と呼ばれる若者たちは、お金に物事の本質・価値を置くことがなく、洋服を楽しむ術を知っている。古着やファストファッション、さらには両親が着ていた服をワードローブに取り入れるなど、その創意工夫はかつての洋服の大量生産大量消費とは真逆のベクトルを向いている。

 近年は再生素材を新しい洋服の素材に取り入れたり、着なくなった洋服の再利用をメーカーが促進するなど不況下でも不況下なりに堅実な取り組みもなされている。

 かつてバブル時代に土地は実質を大きく上回る価格で取引されていたが、バブル崩壊後は適正な価格に下落していった様子と、洋服業界の現在過去を重ねて見ている私がいる。

 洋服を売る業界も消費する人たちも、背伸びすることなく楽しんで洋服を着ることができる日常が、荒唐無稽な想像であるとは思われないのである。


                   終


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