ミートの真髄
野球部Bの攻撃である。
「佐賀、その手で本当に打てるのか?」キャプテン所沢が聞いた。
「勿論! それにあのピッチャーには【通用】しそうです!!」
佐賀のバッティングを見てみたい。そんな人は多いだろう。そして、一流のアスリートはそれに答えてきた。高校生だが、競技によってはプロも存在する年齢。故に、佐賀ルューが一流なのか? 見極めたいのが人だろう。
「む? その手で打つのか?」
木下監督も怪訝そうに聞く。
「問題ないです!」
その声はピッチャーに聞こえていた。「ああ、そうかい! 俺の球なんざ片手で大丈夫ってことかい!」と、思っていたに違いない。
「プレイ!」
(初球はストライクを取りにくるはず! ……え?)ビュン! サッ!
なんと球はルューの身体目掛けて飛んできた。
(わざとデッドボールにしようとしたな。いや、わざととは……)
木下監督は考えたが、「ボール」と確信が持てなかった為不問にした。避けたルューはびっくりしたが、ピッチャーだからわかる。「打たれたくない」の現れ。
(まずストライクゾーンにはこない)
ならばどうするか? それは当初の予定通りだった。第二球ストレート外角低め。ルューはこれを待っていた! 体制を崩しながらもスイングは思いっきり、痛めてる手を途中で離し、ミートさせた!
ボールはサードの頭を超えてポテンヒット! これを狙っていた。非力な女子、しかも片手ならではの芸当だ。
2023年、大谷翔平選手は体制を大きく崩しながらもホームランを打っている。あれこそミートができていたからである。
入部テスト、及び野球部Bとの練習試合は終わった。野球部Bの新入り、佐賀ルューの活躍こそあったが、野球部の入部希望者にいいピッチャーが多く、また、毎回変わるので野球部Bは合わせる暇もなく、得点は僅かで終わった。そう、全ては言うまい。入部希望者達の勝ちだ。今年はレベルが高くそれも野球部Bの不運だった。お互い、エラーはなかった。よくやった。皆満足……
「してないですよ! なんで皆さん打たないんですか!!?」