復活
「ピッチャー交代です!」
その一言に全員絶句した。
「【束本】さん、グローブ借りていいですか?」
ルューが言った束本とは野球部Bのベンチでサウスポーのピッチャーだ。
「え? 佐賀は右利きでしょ?」
「まあ、見ててください!」
「おい!」木下監督がモタモタしてる野球部Bにイライラし始める。
「変わるなら早くしろ。あまり時間がない」
「じゃあ投球練習はいいです」
「なっ!」岡崎がそれはキャッチャーにとってもキツイと言いそうになったが、木下監督が「わかった」と試合再開。
「プレイ!」
皆ドキドキしている。不安と期待、ルューの第一投はセットアップからのオーバースローストレートど真ん中! 球速は百キロ!! バッターからしたら打ちやすいがバットが追いつかない!
「あれ?」
「すごい!」岡崎が手にきた重みをうけ発した。
「……。球威的には三百キロに値するかもな」
木下監督がそう言うと、野球部Bは「わーっ」と、盛り上がった。
「すごいよ佐賀! でもなんで?」
「えへへ、実は……」
「私から説明するわ」
白衣を纏い現れたのは保健の室田だ。
「佐賀さんは両利きよ。保健室で気付いたわ。そこで、左で投げてみたらーって私が言ってみたの♪」
「む、室田せんせ……。」木下監督がドッキドキ!
「???」わからぬ男子。
「ははぁ〜ん」察する女子。
「監督、若いですね!」ヒソヒソ。ルューが囁く。木下はもう中年の独身だ。室田は若い。
「そ、そんな事より! 試合再開!!」
いつの間にか、他の部活や帰宅部の生徒達も集まってきていた。
ツーアウト満塁。ワンストライク。バッター心理としては外野まで飛ばす。しかし、飛ばし過ぎてフライになってはいけない。勿論飛ばし過ぎてホームランなら文句なしだが、そうはいかないみたいだ。そして、これは入部テスト。目立つ事をした方がいいのでは? と頭によぎる。
ルュー、セットアップからの、投げ、ようとした時!
バッターはバントの構えをした! セーフティーバント!
しかし! ルューの球威が勝り平凡なキャッチャーゴロ、岡崎がホームを踏みアウト。
(面白いこと考える奴だな)
木下監督はチェックしておいた。バントしたのは【経後】だ。