入部テスト
「ではこれより野球部の入部テストを始める!」
野球部監督の【木下幸】が声をあげた。
「はい! お願いします!」と、息巻くルュー。
「はぁ〜、佐賀! お前は野球部Bだろうが」
「あ、そうでした! 女子野球部はどこですか?」
キョロキョロするルュー。
「ほら、あそこ、グランドの片隅でキャッチボールしてるだろ」
木下監督が指を指す。そこには確かにキャッチボールしている人達がいる。でも、なんであんな隅で? と、思うルューだった。その謎はすぐ解決できた。
「岡崎先輩!」
「佐賀! よく来てくれたね!」ガシ! とハグ。ルューも応じる。
「なんでこんな隅っこでキャッチボールしてるんですか?」
「あー、これね。野球部Bは野球部の対戦相手、試合用の部活で、普段はキャッチボールくらいしかできないんだよ。でも、佐賀が来てくれたから、もしかして……」
「?」なにか含みのある言い方に戸惑うルュー。
「ま、兎に角、自己紹介しなよ! 一年生はルューだけだから!」
「そうなんですか? わかりました……」すぅ、と息を吸い。
「初めまして!!!! 佐賀ルューと申します!!!!! 甲子園に連れて行きますので、以後よろしくお願いします!!!!!!」
その大声は野球部の耳にも入った。「おい、野球部Bが甲子園だってよ。くすくす」「何もわかってないんだな」などと囁く。
「おい!」
一人の野球部員が話し掛けてきた。
「佐賀とか言ったか? 甲子園? お前らが? 笑わせるなよ! お前らは俺らの養分でしかない」
ムッときた野球部B。
「ちょっと、【田沢】!」
「岡崎か。お前のとーちゃんはプロ野球選手なのにな! 娘がこれじゃあな!」
「田沢さん! 勝負です! 野球部対女子野球部!」
ルューが果たし状を突きつけた!
「ほう?」
「何やってる田沢!」木下監督が駆け寄ってきた。
「お前はエースなんだぞ!? 野球部Bなんかと勝負するな!」
カチン! 野球部Bは今、一心同体となった。「野球部ぶっつぶす!」と。
「木下先生。入部テスト今からやるんですよね? 私達が相手しますよ」
そう言ったのは野球部B部長の三年生【所沢優子】だった。
「それはいい! 是非お願いします。ははは」
田沢の態度はいちいちムカつく。
「しかしだなぁ……」
木下監督が迷う。そこに畳み掛ける所沢。
「私達が負けたら球拾いでもします!」
「わかった。じゃあ、始めよう」
斯くして、野球部の入部テストは実戦の野球部Bとの対決となった! ルューはまだアノコトに気付いてなかった。