ルュー
一人の女子がいた。
野球をやっている一人の女子がいた。
「えー、では、これで入学式は終わります。これから、我々と共に勉学に励むように」
教頭の【石渡悠】がマイクで言った。新入生の主人公【佐賀ルュー】は、鼻息荒く、体育館を出た。そこには、この高校名物部活勧誘活動が待っていた!
ルューは女子だ。目的は……。
「佐賀ー!」
一人の在学生、上級生が声を掛けてきた。
「あ! 【岡崎都】先輩!」
二人は手を合わせ、「キャー!」と喜ぶ。二人は同じ中学出身のようだ。
「佐賀が入ってくれれば野球部かなり強くなるよ!」
「そうですか!?」えっへん。
「入ってくれるんでしょ?」岡崎が促す。
「勿論!」
「女子「野球部Bへ!」へ!」
……。
「へっ?」
なんか変だった。
「先輩、なんて言いました?」それそれ!
「野球部B!」
「ええええええ! 女子野球部は無いんですか!?」
「相変わらず抜けてるわね。安心して、野球部Bはかつて在学生が作った女子野球部のことよ! 男子もいるけど」ボソッ。
今なんて言った?
「なあんだ! 女子野球部の事でしたかぁ!」
「そうよ! もう! 男子もいるけど」ボソッ。
ルューにはわくわくとドキドキで余り多くの言葉は入らなかったみたいだ。ルューは数々の部活勧誘を無視、と、言うより耳に入らないのだが、とにかく、入る部活は決めた! あとはつまらない授業をさっさと終わらせようと胸に秘めたのだった。
教室に入ると、まだ誰もいなかった。他の新入生は部活勧誘で手間取っているようだ。自分の席を確認し、暫し待機。しかし、頭の中では「どんなチームかなぁ?」とか「どんなバッターがいるかなぁ?」と思っていた。
ガラガラ。戸を開ける音。ベタだが。
「うわっ、見て! 金髪のお人形みたいな人がいる!」と、女子が言って。
「本当だ! 留学生かな?」と。
「誰が臭いじゃー!」ルューが怒った!
「???」二人は戸惑った。
「はっ!」我に帰るルュー。
「すみません。本当に」粛々と謝るルュー。
「で、でも、金髪なんて派手だね。あなた名前は? 私は【田辺カスミ】。こっちが、【羽場門叶】」
自己紹介された。
「私は佐賀ルュー。父がアメリカ人なの。でも、育ちは日本だから英語は全然なの」
ルューはハーフだった。なるほど。
「だから金髪なの!?」
「そうよ。ところで、二人は部活決めた?」
野球仲間を増やす気か?
「野球? 私達インドア派なんだよね」
羽場が口を開いた。ルューは残念そうにしょぼ~んとした。
「えー、私がこのクラスの担任の【中原隆】だ。自己紹介はこれで終わり。私よりクラスメイトの方が気になるだろ? それでは各人自己紹介を端から、ここ(黒板前)でしよう」
そこから生徒達の自己紹介が次から次へとされて、ルューの番だ。
「佐賀ルューと言います! 女子野球部に入って甲子園目指します!」