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金欠ローグと地下40階の迷宮  作者: 竹部 月子
終章 それぞれのゴール
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第70話 ラストダンジョン(1)

 地下31階。風のスケルトンの支配階層に、ノエルとマリモは足を踏み入れた。

 深い堀に渡された跳ね橋を渡ると、重厚な城門は冒険者を迎え入れるように開いている。

 紫色のレンガで組まれた外壁には、髑髏(どくろ)のレリーフが施されていた。

「ボスの城って感じがするね!」

 上をむいたまま歩いているマリモに、そうだなとノエルはうなずく。

「禍々しい気配に満ちている。気を抜かずにいこう」




「これは……トラップも敵の一部だな」

 ゴウッと頭の上に吹き出た炎を、しゃがんでかわして、ノエルはつぶやく。

 頭上を飛び回るスカルバットは、絶妙に高い位置から魔法攻撃を仕掛けてきて、面倒なことこのうえない。

「マリモ、横から火が出るぞ、あと3、2……」

 カウントダウンの最後で、マリモはようやくコウモリを仕留め、前方に「ドゥワッ」と叫んで飛び込む。

「やだもう、変な声出ちゃった」

 パパッとホコリを払って、妙なところに相棒はテレる。

「強そうで良かったぞ」


 これまでダンジョンのトラップについてほとんど触れてこなかったのは、ワイヤーだろうが、落とし穴だろうが、ノエルがごく簡単に見抜いて無力化してきたからだ。

 水のワーウルフの階層では、「雪庇(せっぴ)」なんていう崖の上にせり出した雪の床トラップもあったのだが、熟練冒険者の2人は寄り付きもしなかった。

 豪雪の昨今、足元だけでなく頭上にも現れるトラップなので、屋根の下を通行される際は、ご注意願いたい。


 しかし、この階層から設置されている「見えてるトラップ」は、本気で冒険者を殺しにかかってきている。

 ガーゴイル型の石像から、一定間隔で噴出される高熱の炎をかいくぐり、通路の奥から転がってくる大岩をかわしながらモンスターと戦うのは、非常に疲れるのだ。



 

「うへー、カンちゃん、本気出しすぎー」

 へろへろになって部屋の扉を開けたマリモに、管理者はカカッと笑う。

「ラスダンだぜぇ? 簡単に攻略できちゃ、つまらんだろう」


「難易度と、ドロップ武器が釣り合わん」

 そう言いながらも、ノエルはちゃっかり新しく持ち込んだ武器を部屋の隅で並べている。

「スカルバットなんて、体力はゾンビドッグくらいだもんよ。高望みすんなって」

 まぁ、魔法も使うし、常に空中にいるし、必ずトラップ部屋に沸く設定だけどな、とは胸の中だけのつぶやきにしておく。


「強いモンスターからは、強い武器が出るのか? カタログには載っていたが、まだ見たことのないものがいくつかある」

 武器の整理を終えてコタツの方へ向かってきたローグに、管理者は腕組みする。

「さてはオマエ、武器コンプ100パーセント目指してんだろ」


 まぁせっかく来たんだから、今日はココアでもいれてやるかと椅子から立ち上がった管理者は、ノエルがデスクの下から拾い上げたものを見て「おっと」と声をあげた。


「あー、ノエル。それはアレだ。人にむけちゃイカン」

 L字の黒い塊は、先端に小さな穴が開いている。ちょうどよく手のひらに収まり、ちょうどよく人差し指をかける穴があって、本能的に何かを狙いたくなる。

「これは……武器だな?」

「ほんとに目ざといな。モデルガンだよ」


 クリスマス商戦が終わり、冬休みが明けると、ムーンロード商店街のオモチャ屋では決まってセールを行う。流行りの玩具を研究して、ダンジョンの宝箱用のアイテムの着想を得るのが、毎年恒例になっていた。

 手のひらが光るガントレットや、ダイヤモンド製のツルハシなど、用途不明で冒険者を困惑させるユニーク武器は、だいたいこのタイミングで製造されている。

 

 なぁにそれ、と興味深そうなマリモに、一通りモデルガンを眺めまわしたノエルが答える。

「おそらくここを操作し、引き金を引くと、何かが発射される機構だ」

「へぇ、何が発射されるの?」

 筒先をのぞき込もうとしたマリモの頭を、管理者がぐいっと引く。たとえBB弾でも、のぞき込むのはダメ絶対だ。

 

「ほれ、これを狙って撃ってみろ」

 いつもノエルに貸している座布団を、壁にたてかけて置いてやると、教えてもいないのにスムーズに射撃姿勢を取って、中央から出ている糸束の根本にパスッと当てた。

「ヒュー、さすが【器用】だな。未知の武器にも適用すんのかよ」

 管理者の驚きより、ノエルの感動の方が強い。しばらく銃身を抱いたまま身を震わせていた。


「……欲しい」

 言うと思った。「ダメだ」と管理者は即答する。

「オマエらの世界には、まだ無いものだ。そんで、無ければ無いままでいた方がいいと、オイラは思う」

 こいつに見せたのはウッカリだったと、反省する。

 

「こんなにカッコイイのに、何故だ。あった方がいい、絶対に欲しい」

 だだをこねるリーダーを、マリモが引き離す。

「もー、うちのコがすみませーん。ほら、ノエル、ダンジョンに戻りますよ」

 オホホ、と首根っこをつかんで部屋から出ていくマリモに「ホントにマリモは、ものすごい適応能力よな」と管理者はつぶやいた。 

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