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第39話 謹賀新年(2)

 3人は仰向けに寝転がって、満足そうに目を閉じていた。

「食べたねー、呑んだねー」

「うむ……美味かった」

「これぞ正月って感じだな」


 むくりと起き上がったマリモが、じっと管理者を見下ろす。

「今さらって気もするけど、それって骨のお面じゃなくて、普通に顔だよね? そこで食べてたもんね?」

「えー、気のせいじゃないかー?」

 真面目に答える気の無さそうな管理者の、頭の羽飾りに性懲りもなく褐色の指先が触れる。

「これも、飾りじゃなくて耳とか触覚とか、そういうものだよね? 動いてるもんね?」

「だーかーらー、触るなっつーの」

 以前と同じセリフを繰り返すが、前ほど怒った様子は無い。いい感じで酔いが回っているようだ。


「管理者、あんたは分類上何になるんだ? 悪魔か? アンデッドか?」

「オイラの分類? それは難しいねぇ。コレも仮の器だから、特に決まったカタチもねぇんだよな」

 コンコンと鼻先を叩くと、乾いた骨の音がする。

「不定形のモンスターってこと? 強そうだね! 何て名前なの?」

 強いかどうかは微妙だが、とつぶやいた管理者の眼窩のくぼみに、(くら)い闇の炎がゆらいだ。


「オイラ、女神殺しに手を染めた超悪党だからよ。名乗る名前も失くしたんだわ」


 ノエルは小柄な背中から立ち昇った邪気に、本能的な恐怖を感じ、思わず腰の短剣に手を伸ばす。

 しかし、管理者の言葉を胸の中で反芻(はんすう)して「メガミ?」と首を傾げた。

「メガミ殺しって、悪いことなの? 私だってモンスターをやっつけるよ」

 マリモもきょとんとした顔をしている。

「女神ってのは、女の神様で……あー、この世界に神様は居ねぇから、神様ってのは……ヨシ、やめた」

 めんどくせえと言わんばかりに、管理者は説明する努力をやめる。


理由(わけ)あってオイラには実体が無い。でもそれじゃ不便だから適当な素材で体を構築してるんだ。なかなかキュートだろ?」

「うん! かわいい!」

 即答したマリモに、ノエルがぎょっとした視線を向ける。かわいくは無い。

「オイラはこのダンジョンの管理者だ。オマエらはそれだけ分かってれば充分だよ」

「じゃあ、管理者のカンちゃんだね」

 あだ名なんてやめろよ照れるぜ、とまんざらでもなさそうな管理者を横目に、ノエルは相棒のコミュニケーション能力に舌を巻いていた。

 もしここにノエルが1人でいたら、何度話をぶった切って、シーンとさせていたことだろうか。


「そんで、カンちゃんはこんな大きなダンジョンを、何のために管理してるの?」

 そろそろ充分呑んだよね、と言わんばかりにほほ笑んだマリモには答えず、何故か管理者はノエルの方へ顔を向ける。

「ノエルも気になるよね?」

「…………いや。全く」

 えーっと大声をあげたマリモの横で、管理者はげらげらと笑った。

「やっぱりな、ノエルはそうこなくっちゃ」


 ひとしきり笑った後で、管理者は少し真面目なトーンの声を出した。

「オイラたちが何者か、何のためにランベアード大陸地下にダンジョンを作ったか、その答えはすでに最奥に到達した者に明かしてある」

 2人は同時に息を呑んだ。

「ラダトキア王が、知っているということか」

 そういうことだな、と管理者はうなずく。

「秘密にしているわけじゃないが、王様はわざわざ40階まで降りてきてくれたのに、オマエらにはここで明かしちまうのも何となく筋が悪いだろ。知りたきゃ王様に聞いてくれよ」

 管理者は軽くそう言ってくれるが、名も無き冒険者が簡単に会えるようなお人では無い。


「そうなんだ! なら、聞きにいってみようか」

 こともなげにマリモは言い、「カンちゃんも一緒に行こうよ」と続けた。

 えっ、ちょっ、どういうことだ? ノエルは戸惑いすぎて声も出せない。

「お誘いは嬉しいが、オイラたちはダンジョンから出ない。そういう約束だ」

「残念。ごちそうのお礼がしたかったのに」

 気持ちだけもらっとくよと軽く手を上げた管理者は、光る画面の前に座ってカチカチと何か操作する。


「しかし今戻っても、ギルドは閉じられてるんじゃないか? ダンジョンから出るだけなら手伝ってやるけど、その先は知らんぜ」

 表示されているのが、元闘技場の地図だと分かってマリモが近寄っていく。

「いや、そもそもダンジョン閉鎖してんのに、中に人がいたのがバレるのはマズいか」

 ナイショな、と骨の指を1本立てた管理者に、もちろんとマリモがウインクを返す。


「っていうか、ダンジョンから出られないかも。外から扉に鍵がかかってるし、確か封印の魔法もかけられてるはずだよ」

「そこはまぁ、ちょいと座標をずらして移動させればどうにでもなるさ。でも、建物から出る方法まではオイラの管轄外だ」

 扉の外に出られたら、あとは大丈夫だよと明るい声が返る。

「闘技場の地下には、隠し通路があるからね。城下にも、王宮にも、なんなら城の外にだって出られるよ」

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