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金欠ローグと地下40階の迷宮  作者: 竹部 月子
2章 管理者とローグ
34/83

第34話 仲間(1)

 スイッチを押したら、まずは北の通路。歩く屍を出てくる順に速やかに排除し、レバーを倒す。

 中央へ駆け戻る最中に、東西から押し寄せるゾンビドッグは全てマリモが獄炎の槍の力で、灰燼(かいじん)と化す。

「西に行く」

「おっけい!」

 すれ違いざま短く言うと、マリモもやや西へ立ち入りをずらす。次のゾンビドッグが現れる前に、西のレバーも倒し、今度は全力で東へ。背後から犬の狂ったような吠え声が迫ってくる。


「後ろからのは任せて! 北のレバーが戻るまで、あとこのくらい」

 せっかくのハンドサインはさっぱり分からなかったが、自信を持ってうなずく。

「行ける」


 東側から再沸きした腐犬は、相手にせず跳躍。スライディングしながら東側の最後のレバーに手をかけて、思い切り引いた。

 ゴゴゴと仕掛けの動く音が響きはじめても、ゾンビラッシュは止まらない。中央に合流した歩く屍と、西からのゾンビドッグに挟まれたマリモが、力ずくで槍を振り回すと、案の定真ん中あたりからボキリと折れた。

「うぁー、レア武器がー」

「気にするな、また出る」

 一匹ずつを確実に仕留めながら、マリモに近づくと、武器の破壊者(デストロイヤー)は、慣れた様子で折れた槍を両手に分けて戦っていた。


 ゴゴゴ……。ネタバレ通り、中央の台座が床に吸い込まれ、代わりに下り階段が現れると、ようやくゾンビたちの沸きが止まる。

 北と東西にそれぞれ光る宝箱が現れたのを見て、マリモは目を丸くした。

「なにこれ、3個も出るの?」

 普通は出ねぇよ、と管理者がぼやいたのは、二人には聞こえない。


「お、ブオンと振り回せる感じの武器とは、こんな感じか?」

 ノエルがしゃがみ込んでいた宝箱の前を譲ると、すっとんできたマリモが歓声をあげた。

「やったぁ! すごい【壊れない】戦斧(バトルアックス)だぁ」

 無骨な戦斧を、宝物のようにマリモは掲げる。

「武器屋で、マリモと名を入れてもらってからでないと、ユニーク効果は発現しない。まだ振り回せないぞ」


 うん、うん、分かってると、湿った声で彼女はうなずいた。どれほどこの武器が欲しかったのかと思うほど、感激している。

「帰り道用に、壊れるハルバードも出た。とりあえず10階まで戻ろう」

 ノエルが差し出したハルバードも戦士垂涎(すいぜん)のレア武器で、もったいないなぁと笑いながらマリモは受け取る。そして、途中でもちろん壊した。




 ラダトキアの元闘技場へ続く扉の前で、ノエルは別れの挨拶のために手を差し出す。

「ユニーク武器取得のためと言いつつ、結局こちらが19階の攻略を手伝ってもらってしまってすまない。助かった」

「……こちらこそ、ありがとう」

 握り返されなかった手を、さほど気にした様子も無くノエルはひっこめる。


「ノエルはこれから、どうするの?」

 どうと言われても、と困りながら青年は答えた。

「40階を目指し、この迷宮の最奥に到達する」

「……!」

 シンプルな回答に、マリモは目をみはる。

 できればそれに伴って、武器コレクションを増やしたいし、見たことのない武器も扱ってみたいし……。長くなりそうだからそこは端折(はしょ)った。


 黙っているマリモを、いつまでも引き留めるのも悪いと思い、ノエルは再び口をひらく。

「パーティー解散は、メンバーからでもできる。急ぐなら、ラダトキアに戻ったら手続きをしておいてくれ」

 かつてメンバーから追放されたリーダーは、解散の手続きに関してはお手の物なのだ。


 さあどうぞ出てくれと言わんばかりにしているのに、自分はダンジョンから出る気配が無いノエルに、戸惑った声が上がった。

「ねぇ、ノエルは戻らないの? まさかこのまま40階に挑むつもり?」

 いや、さすがにそれは無いとノエルは首を振る。


「ゴンゴルノに戻る。色々とがめつい王都は【浪費家】には住みにくすぎる。どこからでも()む拠点には居られない」

 詰むってどういうこと? と尋ねたマリモに1つずつ指折り解説する。


「木札を買えないと、ダンジョンに潜れなくなるというのが最恐(サイキョウ)だ。俺の所持金は平気で銀貨3枚を下回る。馬小屋に無料で泊まれないのも厳しいし、王の祝日の劇は……思い出したくもない」

 その点がゴンゴルノを拠点にしていれば、全てが解消される。


「じゃあ、毎回ダンジョン探索を1階から始めるってこと?」

「そういうことになるな」

 ぱちぱちっと瞬きしたマリモは、笑いだした。

「すごーい、おもしろいね!」

 別に面白くはない、やむにやまれぬだけだ。


「まぁ、その前に宿にため込んだ武器を少し売却して、大道具を壊した分の借金を清算したい。だからこのまま一度ゴンゴルノへ行って来る」

「じゃあ、私もゴンゴルノまで一緒に行ってもいい? 最初に馬車で行ったきりだから懐かしいな」

 さっき武器を壊したんじゃなかったか、とノエルが言うと10階層までならコレがあるよと拳を突き出す。


「うわ、思い出した! このマリモ、初見で10階踏破したパーティーの子だ。拳ひとつで進んできて、顔をボコボコにぶん殴られたもんで、ヴァンパイアのヤツもう辞めるって大騒ぎになったんだよなぁ……」

 マリモの右ストレートに、ボコーン、キュウ、と壁に吹っ飛ばされるピクシーがひたすらに哀れだった。

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