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金欠ローグと地下40階の迷宮  作者: 竹部 月子
2章 管理者とローグ
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第33話 ユニーク武器が欲しい(2)

 彼女が恥ずかしそうに差し出したギルドの認識票には、これも稀有(けう)なギフト【怪力】と刻印されている。

「私、すこーし力強(ちからづよ)くて、戦闘強度に武器のほうがついてこれないの」


 じっとハンマーを観察していると、敵にたたきつけられたであろうヘリの部分がめくれあがり、ノエルの腕ほどの太さがある柄が、くの字になりかけているのが分かる。

「少し前までは、パーティーに所属してたの。でも、ギルドの人混みでよろけたリーダーを支えようと思ったら、つかんだヒジを外しちゃって……そしたら急にみんなよそよそしくなったから、居辛くて脱退してきたんだ」

 その様子が目に浮かぶようで、彼女にも、彼女の元仲間にも同情する。


 ふう、とノエルは息を吐いた。

「俺は木札を買う金も無い。明日ダンジョンに潜るための木札を(おご)ってくれるなら、その礼にユニーク武器が出るまで付き合おう」

「ホント? ありがとうノエル! 私、マリモ。よろしくね」

 目を輝かせて礼を言った女性は、聞き慣れない変わった名だった。

「よろしく、マリモ」

 礼儀としてノエルが手を差し出すと、握手はダンジョンでしようねとはにかむ。


「よーし、じゃあパーティー結成を祝って、今日は朝まで飲もう!」

 マリモがワインを注文すると、1杯目の途中でノエルはテーブルに突っ伏して寝息をたてはじめた。

「お疲れっ! じゃあ、私は2杯目いっきまーす!」




 片側の頬にテーブルの跡をつけたまま、ノエルはパーティー結成の手続きをする。

「ええと……ならず者(ローグ)のノエルさんと、破壊者(デストロイヤー)のマリモさんの2名パーティーですね。はい、これで登録完了です。入場手続きも完了しました、どうぞお気をつけていってらっしゃいませ」


 ローグとデストロイヤーのパーティーだ、すげえぜ、と周りの冒険者たちがヒソヒソしている。

悪役(ヒール)感満載だね、こんなに善良な冒険者なのに」

 堂々と人の間を歩きながら、マリモが笑ったので「違い無い」とノエルもうなずいた。




 突然女連れでダンジョンに現れたノエルに、管理者は驚いて画面を凝視する。

「おぉ、ゾンビラッシュはソロじゃ無理だって観念したか。しかし、昨日の今日で手の早いことで……あれ、この女の子見覚えが」

 よほど目立つ冒険者でもないと、記憶に残らないが、この褐色の戦士には既視感がある。


「そんじゃ、改めてこれからよろしくね」

 入ってすぐの部屋で、マリモから手を差し出されて「短い間だが」と思った言葉は飲み込む。

 マリモと握手を交わした瞬間、ぞわっと握られた手が震えた。

「ダンジョン内では、味方同士のダメージは無いから大丈夫。外なら手の骨砕けてると思うけど」


「えっ、怖ぁ」

 黒い画面で、ダンジョン内の効果で無効化したダメージを見て、管理者は震えあがる。

「ああ見えて、エキセントリックな娘が好みなのな。分からんもんだぜ。しかし、前衛同士はやめろって言ったのに、言うこと聞かんヤツだなぁ」




 管理者の心配をよそに、ローグとデストロイヤーの初戦は非常にスムーズだった。

 マリモは基本的に、定点で重量武器を振り回す「待ち」の戦闘スタイルで、ノエルは敵陣に切り込む「攻め」の動きをするから、攻撃範囲が重ならないのだ。

「ナイスー」

「今のカバーは、助かった」


 想定外の相性の良さに、一番驚いているのは何を隠そう当人たちだ。

 戦闘経験の浅いオーガストたちとは比べるべくも無いが、マリモが組んでいたのはすでに20階層を攻略し終わったパーティーで、中級クラスと言える。それでもこんなに伸び伸びと動けて、安定感のあるバトルはお互いにはじめてだった。




「むぅ……探すと出ないものだな」

 16階まで降りてもなお、求めるユニーク武器が出ない。

「いやいや、やっぱ激運はすごいよ。こんな毎回レア箱出るとか、鼻血出そうだもん」

「とりあえずさっき折れたハンマーの代わりに使ってくれ」

 無造作に箱から出した大型の槍が、獄炎(ごくえん)の槍という超レア武器だということに、マリモはうわーと悲鳴を上げた。

「絶対折っちゃうって」

「構わない、どのみち重量級の武器は、ソロなら拾いもしない」

 こわごわと受け取った槍をそっと握って、マリモはつぶやく。

「何でこのドロップで、木札代まで無くなるのか理解できないよ」

「俺もだ」


 そうこうするうちに、あっというまに再び19階。

「おぉ、そっか、メンバーに未踏破者がいると、仕掛けは復活するんだね」

 このボタンの台座の下に、階段が現れるんだよねと軽やかにネタバレしてくる。


「マリモはこれより下層まで進んでいたのか」

「うん、前のパーティーは5人いたから、前衛3人がそれぞれレバーに向かって、魔法使いと回復術師が補佐した感じで攻略したけど、2人ってすごいね」

 言葉の割りに、キラキラした目でスイッチを見つめるのは、さすがデストロイヤーといったところだろうか。


「行けそう?」

 昨日の手ごたえを思い返して、ノエルは深くうなずいた。

「沸いてくるモンスターさえ殲滅(せんめつ)できれば、俺が一人でレバーを押して回れる」


「あはは、さすが【神速】」

「違う、【俊敏】だ」

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