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金欠ローグと地下40階の迷宮  作者: 竹部 月子
2章 管理者とローグ
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第31話 孤軍奮闘(2)

 19階は、今までのごちゃごちゃした迷路のようなマップとうって変わって、すっきりとした通路が伸びているだけだ。

 入り口は南にあり、北の突き当りに何か建物があるのがギリギリ見えるくらいの距離がある。通路の幅は、大人が手を繋いで横に5人並べるくらいだ。

 通路を進んでいくと、ちょうど真ん中で東西にもほぼ同じ長さと幅の通路が伸びていて、この部屋が十字の形をしていることが分かる。


 クロスする通路の中心に台座があり、「ゾンビラッシュ! 覚悟を決めて押せ」と書いたボタンが設置されていた。その下には親切な説明書きも添えられている。

【北端、西端、東端には、レバーがある。3本を同時に引ければ下層への階段が出るが、レバーは時間経過でじわっと戻っていくぜ。押し寄せるゾンビを倒しつつ、同時にレバーを操作しろ。おまえらのチームワークを見せてくれ! ヤバいと思ったら、お戻りは南へダッシュだ】


 なるほど、とうなずいて、まずは北端まで歩く。ゴンゴルノの古い工場のような建物が通路の終わりにあるが、入り口から向こうへは不思議な力で跳ね返されて入っていけない。

 壁際に置かれた目立つ色のレバーは、今はどんなに力を込めて引いても動かなかった。


 西端、東端も全く同じ様子であることを確認し、一度西から東へ全力疾走してみる。【俊敏】のギフト持ちのノエルの足で、5秒少々というところだろうか。レバーがどのくらいの時間で戻るのかは不明だが、1人でも3つ操作することが可能かもしれない。

 軽い準備運動の後に、ノエルはボタンを押した。ドゥーンと雰囲気のある音楽が流れはじめ、北、西、東の三方向からゾンビたちが押し寄せてくる。


 まずは北へ突っ込み、工場入り口からぞろぞろと出てきた5体の歩く屍に斬りかかる。

「……!」

 先程まで戦ってきたものより、強化されているのか、一撃では沈まない。ノエルを抱きしめようとするように伸ばされる腕をかいくぐり、トドメの一太刀を入れて回る。

 レバーに飛びつくと、今度は簡単に左方向へ動いた。手を離すと、確かにゆっくりと元の右側に向かって戻ろうとしているが、これならば充分に東西のレバーに間に合いそうだ。


 そう思った瞬間、左右の角を曲がってゾンビドッグの群れが駆けてくる。

 迎撃のために一気に十字路中央へ戻り、片っ端から蹴散らしていくと、今度は背後から新しい歩く屍がまた沸いてくる。

 全てを片付けると、すでにレバーはほとんど右に倒れており、これでは到底3つを同時に引くのは不可能だ。

 さらに東西から新しい腐犬が湧き出てきていて、ゾンビラッシュとはこういうことか、とノエルは歯噛みした。


 短弓に持ち変えて、中央で迎撃する作戦を取ると、今度は絶妙に歩く屍の足が遅い。ゾンビドッグを撃ち終わっても、うーあーしながらノロノロ歩いてくるので、射程に入らず、オールクリアにならない。


 こうなれば仕掛けの操作だけに集中するしかない、と敵を無視して駆けだし、最初のゾンビドッグの群れの頭を飛び越える。軽やかにレバーを倒し、振り返ると3方から集まったモンスターがみっしりと通路を塞いでいた。詰みである。


 何とか隙間をこじあけて、犬にマントをかじられながらも南の出口から転がり出る。パッとノエルから離れたゾンビドッグは、「ばうっ」と鳴いて戻っていった。

 しばらく階段前の部屋で、ローグは仰向けに倒れたままだった。

 画面を見ていた管理者が、そろそろ心配になって腰を浮かすと「腹が減った」とつぶやいて立ち上がり、ゆっくり元来た道を戻り始めた。




 ラダトキアに戻り、受付嬢に帰還報告をするとノエルの名が書かれた木札は、壁からはずされて大きなカゴに放り込まれる。

「そろそろ札がいっぱいなので、回収お願いします」

 受付嬢が奥へ声をかけている。再利用するというなら、毎度お金を取らず、自分に返してくれればいいのにと、恨めしくそれを見つめた。


 空腹にふらつく足を励ましながら、どの商人なら高く戦利品を買ってくれそうかと見回して、ノエルはやたらと身軽な己に気付く。

「……忘れてきた」

 戦利品を詰め込んでいた管理者室へ寄って、アイテムを回収してくることを忘れてきた。

 慌てて財布を開くと、銅貨が数枚。もう一度ダンジョンに戻ろうにも、銀貨3枚の木札は買えない。今度こそ本当に詰んだ。


 ハッとして、カウンターに駆け戻ると、無情にも木札は回収された後だった。

「どうかなさいましたか?」

「札を、ダンジョンに、行くための木札を」

「はい、銀貨3枚になります」

 にっこりほほ笑んだ受付嬢に、「違う、さっきの木札を返してくれ」とは、もちろん言えるはずもない。弱く首を振って、ノエルはギルドを出た。




「有料……だと」

「ははぁん、お客さんさてはゴンゴルノから来たばかりだね? 王都では馬小屋に泊まるのもタダじゃないよ」

 絶望的な宣告を受けて、ローグはプルプルと震えている。

 優しい馬なら、同じ桶から水を飲んでも許してくれる、心のオアシス馬小屋。そこまで有料だというのだから、王都の連中は金の亡者だ。

「金が無いからって、その辺で寝たら衛兵にしょっぴかれて罰金だからね、気を付けなよ」

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