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顔のいい男が好みです。

作者: 飛鳥

「かわいくねー女!」

 10歳のとき、仲良くしていた男へと反論した途端に罵倒された。

「浮気するのも仕方がないだろう! きみみたいな可愛げのない女と付き合うんじゃなかったよ!」

 15歳のとき、付き合っていた男に浮気された。

「なんて気の強い女だ。婚約は破棄させて貰おう!」

 18歳のとき、婚約者に浮気された上に、開き直って婚約を破棄された。


 そこでミナが気づいたのは、自分には人を見る目がないということだ。

 ミナは彼らのことをミナなりに好きだったし、恐らく彼らも最初はミナのことを好きでいたのだと思う。けれど、ミナは彼らを表面的な性格で好きになり、彼らもまたミナの外見しか見なかった。

 一見誠実であった彼らの外道さを見抜けずに何度も裏切られた。裏切られたと思ったのは、彼らもまた同じだったのかもしれない。なぜならミナは、儚げな外見の豪傑であったから。


 裏切られたその全てに報復をした。

 突然の罵倒には、正論という名の適切な罵倒を返した。

 浮気をした男には、社会的な制裁が下るよう、世間に証拠を振り撒いた。

 婚約を破棄した男は、今も男として生きているのだろうか。

 当然、以降のミナに縁談が来ることはなかった。貴族令嬢であった女は早々に貴族社会に見切りをつけ、話し合いの後に円満に家を出て、冒険者のミナとなった。


 冒険者になって三年。どうにか冒険者として軌道に乗ったミナは、今更ながらに人生について考えた。

 結婚願望などとうに潰えた。だが、生来の性質なのか、ミナは未だに少々惚れっぽい。

 少し優しくされればドキッとして、いやいや待て待てと過去を思い返して心を落ち着ける。これはいけない。ミナには人を見る目がないのだから、また失敗をするに違いない。


 ――そうだ、面食いになろう!

 天から啓示が降りたような気持ちだったが、改めて考えるとかなり知能の低い思いつきである。

 しかしまあ、案外当たりだった。

 内面を見る目がないから、外見だけで見る。自分は最初から外見にしか期待を抱いていないので、内面がいかようであろうと関係ない。仕草に心ときめいたとしても、見た目のいいものが見た目のいいことをしたのだから当然の反応だ。外見だけで成立するのは、好意であって恋ではない。ミナが外見だけを見る限り、恋愛は成立しない。

「それって自己暗示とか呪いって言わないか……?」

 冒険者仲間やギルドの知り合いはそう言った。ミナもそう思う。でもいいのだ。なぜなら困っていないので。


 それから五年で、計八年。

「じゃあ、行ってきまーす」

「気をつけてくださいね。最近山に大きな魔物が出るとのことですから」

「わかってる、わかってる!」

 26歳になったミナは、中堅のソロ冒険者として順風満帆な毎日を送っていた。色恋沙汰に煩わされず、大きな危険を伴う冒険もせず、そこそこの稼ぎで不自由ない暮らしをして。

 ずっとそうして一人、平凡に暮らしていくのだと思っていた。

 依頼のために出かけた少々遠い山の中、目の前に一匹の竜が降り立つまでは。



 発達した四肢を持ち、炎と物理による地上戦を得意とするドレイク。ミナの知る個体よりはやや小柄だろうか。それにしたって随分大きい。あれは死骸だったから、立ち上がった姿を初めて見た。日を照り返して赤く輝く、ルビーよりもなお美しい鱗など、上級冒険者だって早々貫く術を持たないはずだ。

 耳元で繰り返される音がうるさいと思えば、それは己の心臓の鼓動だった。ひゅうひゅうと虚しく鳴く、か細い吐息。

 ぎょろりと縦に割れた瞳孔に見下ろされる。

 威圧感に死を覚悟した。目を逸らすこともできず、近づく大きな顔を凝視する。

 口が開く。赤い舌が動く。鋭い牙がぬらりと光った。ぐるぐるという地鳴りのような声が響く。

 訪れる死をこのまま待つか、最後まで抗うか――硬直した体にプライドが勝った。軋む指先を叱咤し、剣の柄を握る。引き攣った声で詠唱した魔法は氷を生んだ。


 死ぬならせめて、一撃だけでも食らわせてから死にたい!

「行け――」

「おれと結婚してくださ……つめたっ!」

「は?」

 なんだか人間の言葉が聞こえた。素早く視線を走らせるミナの目の前では、口の中に氷の塊を捻じ込まれたドレイクがゴロゴロと転げ回っている。

 気管支に入ったのか、ケンケンと何度か咳をして。

「おれと結婚してください!」

 整ったのどで改めて吠えた言葉は、間違いなく先程聞こえた声と同じものだった。

 耳を疑い、目を疑い、しまいにはもしかしたら己はもう死んでいるのではないかと疑い出すミナの前で、竜がもじもじと爪先をあわせながら語ることには。


 六年ほど前、竜は黒きキマイラに親を殺されたらしい。直前まで同族と熾烈な縄張り争いをしており、親竜たちは弱っていた。父の死骸を食い尽くし、腹をくちくしたキマイラは、母竜には目もくれずに立ち去った。

 息絶えた母に庇われたまま、幼き竜は死骸の下で呆然としていた。現実を直視したくない竜は、悲しみに暮れ、動くことができなかった。


 一週間ほどが経ち、更なる悲劇が訪れる。人間が現れたのだ。

 大きな竜の死骸に喜んだ人間たちは、次の瞬間には嘆きの声を上げた。キマイラの毒を受け、血に触れたまま一週間も経っていれば、腐敗が進み、どこもかしこも傷んでしまって素材としては使えない。

「くっそ、くせえゴミクズがよ!」

 人間の男は勝手に憤って母の死骸を蹴り上げた。連れの男は剣を抜き、憂さ晴らしに斬りつける。

 子竜が隠れる大きな体は揺れもしなかったが、母の体が嬲られることに大きな怒りを覚えた。自分は未だ人間と同じほどの大きさでしかなく、戦う力はない。だが、このまま母の亡骸が嬲られ続けるのを見ていることはできない。

 相討ちにでも持ち込めれば本望だ。死を覚悟して吠えかかろうとした矢先、凛とした声が聞こえて踏み止まった。


「止めなさいよ、みっともない」

 繁みを掻き分けて現れたのは人間の女だった。顎の辺りで切り揃えた髪が靡き、白い肌を際立たせる。

 ただでさえ小さい人間なのに、男たちより更に小さい。けれど萎縮することもなく、喧嘩を売るように鼻を鳴らす。

「死者を冒涜するなんて、顔がよくない上に心も醜いのね。いいとこなしじゃない」

「なんだと、このアマ……!」

 あっという間に喧嘩が始まって、瞬く間に男たちが圧倒された。女は魔術を使うようで、腕を凍らせ、肌を裂き、一方的に蹂躙するような戦いだった。


 悪態を吐いて逃げる背を追うことなく、女は竜の亡骸に目を向けた。

「ドレイクって、こんなに大きいのね。……戦わなくて済むのなら、生きてる姿を目にしたかったわ」

 独り言をこぼしながら女が細い手を持ち上げると、亡骸の上から水が降ってきた。血を洗い流し、毒を浄化し……腐敗はどうにもならなかったけれど、母の体が清められる。

「あなたの来世に幸運が降り注ぎますよう」

 人間の敵であるはずの竜に祈りを捧げ、女はそのまま立ち去った。

 湖のような目と、夜空の色の髪をした、美しい生物だった。


「……という感じで」

 恥ずかしげに鋭い爪で地面を引っ掻く竜に、ミナは顔を引き攣らせた。確かに覚えがある。

 なるほど、目の前の竜に重ねたあの亡骸の話だったか。

 冒険者になって2年の頃、ミナはまだまだ男運の悪さを引き摺っていた。性格の悪いクズ男など滅びろと常日頃から考えていた。そんなときに死体を嬲る胸糞の悪い男たちを見つけたから、狂犬もかくやという勢いで吠えかかったのだ。

 まさかあの場に竜の子がいたとは。もしその子に敵意があれば、喉笛を食い千切られていてもおかしくはない。また、子竜が復讐に身を焦がして成長していたら大変なことになっていた。

 存在に気づかなかったとは、まだまだ未熟者であったということだろう。あれから六年研鑽を積んだから大丈夫だろうなどと慢心せずに、気を引き締めておかねばならない。


 頭を抱えるミナに、たった六年で見違えるサイズに成長した元子竜は再度言う。

「おれと結婚してください!」

「やぁよ」

「なんで!?」

 ガーン、と文字でも背負っていそうな顔をした。竜のくせに表情が豊かだ。

「私、顔がいい男が好みなの。あなたそもそも人ですらないじゃない」

「ヒト、なれるよ!」

「そうなの?」

 竜にそんな技能があるなど聞いたことないが。疑惑の眼差しに、竜は意気揚々と目を閉じた。


 大きな体が炎に包まれた。燃え盛る火の塊から、腕を翳して顔を庇う。

 魔力でガードしてなお伝わってくる熱気。散々に浴びせられて少々汗をかいた頃、徐々に小さくなった炎から太い足が突き出てきた。お、と身を乗り出す。ちゃんと服を着ている。

 竜の大きな体から連想するまま、いい体格をしているようだ。安定感のある下半身の次には、引き締まった腰が生え、分厚い胴が生え、ほどよくついた筋肉が艶めかしい腕が生えた。短い袖の先からは健康的な褐色の肌がのぞいている。

 体だけを見れば、芸術品のようだった。期待をもって顔面から炎が消えるのを待つと、仕上げとばかりに渦巻く炎が天高く吹き上がり。

 ――体にあわせて小さくなった、竜の頭が現れた。


「はいダメー」

「なんでぇ!」

「ちょっと、抱き着かないでよ!」

「おれ、竜の中ではいけめんだよ!」

「竜の美醜なんて知ったこっちゃないわよ」

 でかい図体で擦りつかれても、駄目なものは駄目である。そもそも顔がよかったとしても結婚などする気はなかったが。

 しかし、よくぞここまで期待を裏切ったものだ。恵まれた体に乗る竜の頭。滑稽の一言に尽きる。

「竜は竜、人は人といるべきよ。あなたの世界に帰りなさい」

「やだやだ、ずっときみと番になるために頑張ってきたんだ。結婚してくれるって言うまでずっと一緒にいるから。絶対帰らないからー!」


 べったりと貼りつかれては魔術で引き剥がすこともできやしない。当然ながら巌のような男に腕力で勝つなどできるはずもなく、街に戻るためには竜の説得に応じるしかなかった。説得というか、泣き落としというか。

 重い足取りで、行きは一人で潜った門を、帰りは一人と一匹で潜り抜ける。

「うわっ、竜……の……兜だけかぶってんのか、そいつ。変わった趣味だな」

「ミナさん、お友達は選んだ方がいいですよ……」

「ハハッ……」

 門番にはドン引かれたが、割とあっさり流された。

 さもありなん。どこの世界に、人に化けた竜がいると思うのだ。まして、顔だけ竜から変わらないまま堂々と人間の世界に踏み入れるなど。

 見知った住人たちが、軒並み引いた顔をする。見知らぬ住人たちはヤバイものを見たと距離を取る。子供たちは面白がって指をさしたが、その無邪気さが心に痛い。


「ミナっていうんだ。可愛い名前だね」

 隣の無邪気さにも別の方向で心が痛む。頼むから黙っていてくれ。口を開くとさすがにバレる。外殻の鱗は鎧のようだが、咥内は生物とはっきりわかる生々しさをしているのだ。目は……まあ、仕方がないとして。

『じゃあテレパシーするね』

「ウワー、ぞわぞわする!」

『すぐ慣れるよ。多分』

 独り言を垂れ流す痛い人間に見えるから嫌だ、と言うと、じゃあ声と同じくらいの範囲の皆に聞こえるようにするねと柔軟な対応をされた。器用である。これだから魔力が豊富な生物は羨ましい。

 まあ、使い手が非常に少ないとはいえテレパシーが使える人間がいないことはないから、喋って化け物と追われるよりはマシだろう。

 懐いた生物が迫害されるのは気分のいいことではない。返り討ちにあう可能性の方が高いのだろうけれど。


「ただいま……」

「おかえ――ミナさん、何連れて帰ってきたんですか。ダメですよ、元いた場所に返してきてください」

「帰ってくれないんだもの……」

 元いた場所に返せと聞いて、ぎゅっとミナの腕に縋りつく。筋肉質な腕が絡みつく感触にドキッとしたのは誰にも言えない恥だ。

 横目でちらりと竜を見て、ほんの一瞬だけ高鳴った心臓を落ち着かせた。でかいトカゲが、捨てられた犬のような瞳でこちらを見ている。顔がいいとか悪いとかを語る隙すらない。


「一緒にパーティ組むんですか?」

「いえ」

『組む!』

 ギルドの受付嬢が、鳥肌を立てて耳を塞いだ。隣の受付も、その対面の冒険者も同じようにしている。ごめんなさいね、縁もゆかりもない知らない生物が粗相をして。

「この子、テレパシーしか使えないの。すぐ慣れる……みたいだから勘弁してあげて」

「は、はい……え、パーティ組むんですか。じゃあこの書類に記入を」

「組まないわよ」

『やだー! 組む組む! やだやだやだやだ!』

 駄々をこねてミナの肩を揺さぶるのはまだいい。力強すぎて脳がシェイクされても、ミナの三半規管は強いので。しかし大声で喚くのはいけない。声と同じ範囲に届くテレパシーが、怪音波と化して外を歩く罪なき人々を不調に陥らせているではないか。

『やだー!』

「ミナさん、ミナさんどうか私たちを助けると思って! どこで拾ってきたんですかこの男!」

「勝手についてきたのよ、絶対私のせいじゃない……」


 よろよろとペンを手にしたミナを見て、竜はぴたりと泣き止んだ。こいつもしやわざとなのでは。手を止めると、再び音の波がじわりと脳に滲む。

 慌てて書類を書き進め、名前の欄でペン先を浮かせた。

「あなた、名前は」

『5りゅqwfはgl9jkぱoるgぅ』

「なんて?」

『5りゅqwfはgl9jkぱoるgぅ』

「リューでいいわね」

『うん』

 1秒で考えた名前を書いて、続けてパーティ名に迷う。適度に覚えやすく、呼ばれても恥ずかしくなくて、わかりやすい名前がいい。

「え、名前も知らない人なんですか。大丈夫です?」

「……多分ね」

 結婚してくれと言うくらいなのだから、危害は加えないだろう。


 僅かな思案の後、パーティ名はドラゴネットとした。

 離れたくないと嘆く竜など、いくら図体ばかり大きかろうとも子供のようなものだ。この子が大人になった頃には、きっとミナへの思慕などなくなるはずである。竜が子供でいる間だけの臨時パーティ。我ながらふさわしい名前をつけられたと胸中で自画自賛をした。

「ドラゴネット……。竜はわかりますけど、子供って言うには大きすぎません?」

「いいの。これでお願いね」

「はぁーい」

 竜頭がご機嫌そうに肩を揺らす様を見て、納得がいったらしい。

 冒険者になって八年目。心の中では臨時と唱えども、ミナが正式にパーティを組むのはこれが初めてのことだった。



 何もかもが前途多難に思えた初めてのパーティは、意外にも綺麗に回った。それというのも、竜、あらためリューが、大変デキる竜であったためである。


 ドレイクという個体は、魔力は潤沢なものの、あまり細やかな魔術に長けてはいない。

 炎をドンと吐いて敵を炭にしたり、魔力をバンと浴びせて消滅させたり、本来はそういう単純な手段しか取らないと言われている種族だ。単純な戦法であるからこそその威力が凄まじく、人間にとっては脅威となる。

 リューはミナと接するために、テレパシーを使ったり人語を喋れるようにと、潤沢な魔力を惜しみなく利用し、心血を注いだ。努力の甲斐あってどうにか流暢に話せるようになったものの、やはりそういう細かい力の使い方は得意ではない。


「リュー、行ったわよ!」

『了解!』

 細かい調整が苦手なら、原則魔術は使わない。ミナはまずそれを徹底させた。

 蠟燭のような小さい火を出してみろと言えば、身の丈を超える炎が上がった。水は出せない。氷も無理。土を出せと言うと巨岩が落ちる。あと何ができそうかを問えば、大規模な爆発を起こせるよ、と自慢げに言う。

 人前で使わせたら絶対にまずいことになる。頼むから使ってくれるな。使ったら十中八九ギルドに在籍することは難しくなる。再三告げれば、神妙な顔をして――あくまでも雰囲気だが――深く頷いた。


 迫るワーウルフに、リューは手にした大剣を振り被った。肉体派のドレイクであるからテクニックなど必要もない。力任せの一撃は、硬い肉をあっさりと両断する。

 反射神経は抜群、動体視力は申し分なく、戦いの勘がすこぶるいい。早くも剣に慣れたようで、太刀筋を追うのが難しくなった。

 拳で殴る方が早かった蛮族から随分と成長したものだ。動きを阻害しない程度の防具を身につけ、竜の頭を兜として馴染ませた今、戦いの中で見る彼の姿は歴戦の戦士、ただのとても強い人間だ。


「ナイスよ、リュー!」

『かっこよかった?』

「そうねえ」

『じゃあ結婚して!』

「私顔のいい男が好きなのよ」

『おれいけめんなんだよー!』

 確かに顎のラインなどは格好いいと思うが、あくまで竜である。猫に美人さんねえと言うようなものだ。情が湧いてくると慕われて悪い気はしないが、恋愛対象にはならない。


『ミナ、危ない!』

「わっ……ありがと、助かった」

 冒険者なので、ときには危ない目にあうこともある。リューは大変頼りになる竜で、危機を察知することに長けていた。

『怪我ない?』

 崖に気づかず踏み出したミナを、力強い腕が支えた。

 抱き締めるように引き寄せ、切れ長の目で見詰められて息を呑む。赤い鱗に囲まれた艶めく濡れた金眼は、冒険の中で目にしたどんな宝石よりも美しかった。

「だ、大丈夫よ」

 ……足元を確認するためだ。目を逸らしたことに深い意味などない。高鳴る鼓動は落下を味わうところであったという恐怖心ゆえ。


『ミナのつくるごはんはおいしいね』

 竜の食事とはなんぞやと悩んだミナに、リューは人と同じでいいよと言った。肉体が人であるから、必要な食料も人と同じものになるそうだ。いまいち納得できない理屈だが、間違いなくそういうものらしい。

 ソロからパーティになって、野営で必要な食事が一人分から二人分に増えた。面倒かと思いきや、全くそうではなかった。一人ではつくる気が中々湧かなかった食事の用意も、リューと二人で食べるとなると腕が鳴る。

 ミナは貴族ではあったが高位貴族ではなく、およそ平民のように暮らす家庭的な女だった。黒歴史となっていたが、花嫁修業として料理の腕を磨いたこともある。

 その黒歴史を掘り返し、やや味つけにこだわってみると、リューは些細な違いにも気がついて感想をくれた。この間のこれが凄くおいしかったと言われれば、じゃあまたつくってあげようと思う。あれが好きならこれも好きそうと思えば、次の野営が楽しみになる。

『ごはんつくってくれたんだから、他のことは任せてよ』

 しかも、食事以外のことは率先してやってくれた。焚火をおこすのはお手の物。手間取っていた食器の片づけまで、いつしかスムーズにこなす男になった。

 なんてできた相棒だ。世の中の腰の重い旦那どもに見せてやりたい。


 街に戻ると、リューは色々な人に声をかけられる。一線を引かれていた最初とは大違い、今では一目置かれる存在だ。多少ズレたところはあるものの、リューは人と遜色ないくらいの常識的な言動をするようになった。

 リューは大変善良で、困っている人を見過ごせない。力仕事となればすぐさま手伝いに走るし、誰かが魔物の被害で苦しんでいると聞けば、条件が悪かろうと真っ先にクエストに手を伸ばす。

 手を伸ばした後にミナを振り返る彼の顔ときたら、表情は変わらないはずなのに何が言いたいのかすぐにわかるのだ。

『ミナ……』

「いいわよ。行きましょ」

 その目立つ見た目から、名声が広まるのは人一倍早かった。


 勿論、最初は何もできなかった。しかし彼には向上心があった。ミナのやることをじっと見て、わからなければ素直に教えを請う。

 成長する姿に、子供はこうやって大人になっていくのだなとミナはしみじみ考えた。

 これが世で言うスーパーダーリンというやつか、とも、ほんの欠片くらいは考えた。

 いや、不埒な思いを抱くなかれ。リューは顔がいいとか悪いとかいう判定すらできないではないか。ミナは顔のいい男が好きだ。面食いになろうと決めたのだ。

 リューはあのゴミクズたちとは違うんだから、別にうっかり惚れたっていいんじゃないか。そんな己を惑わす声が時折胸を焦がしたが、そうやってズルズルと決めたラインを緩めるから思わぬ事故を起こすことになる。


 決めたことは守らねばならない。ミナは己に言い聞かせる。

 言い聞かせる行為こそ、既に相当絆されている証だと気づかぬフリをして。



 さしたる問題はなく、リューと出会って一年が経った。

 パーティランクはどんどん上がり、中堅だったミナも、今ではリューと二人で上級である。

 リューの顔は相変わらず竜のままだ。これはもう魔力でどうにかなるものではないようで、立派な体格、肌や鱗の色なども変えることはできないらしい。


 ちなみに一年もあれば、ミナが顔のいい男をちやほやするシーンなども当然見られている。

「なあ、この酒奢ってくれよ」

「いいわよぉ!」

『もー、ミナ! 他の男に貢がないで!』

 嫉妬して泣いたり怒ったりすることはあれど、それでもリューはミナを見限ったりしなかった。


 その日豪勢な夕飯を貢いだ優男は、一時的にパーティを組まないかと言った。

 女ばかりをパーティに入れてハーレム擬きを楽しむ、あまり評判のよくない男だ。顔のいいクズは安心する。絶対に惚れ込む可能性がないからである。

「北の山のキマイラ討伐依頼を受けたんだよ。でもキマイラの弱点は氷だろう。僕たちのパーティには高火力の氷属性を使える魔術師がいないからね。協力をしてくれないかな」

 ダメージソースが不在ならそもそも討伐依頼なんぞ受けるなと白けた気持ちを抱いたが、少し考えて了承した。

 どうせこの男はミナが断っても討伐に赴くだろう。ギルド長が言うには、プライドが山ほど高い割に実力はあまり、とのこと。中途半端に手を出して、逃げ帰るに違いない。

 怒らせるだけ怒らせて放置されたら、困るのは近隣の住人と次のクエスト受注者だ。それなら彼らを後方支援に回して、ミナとリューで倒してしまうのがいいだろう。


「あらぁ、よろしくね、子竜ちゃんたち」

「ねえねえ、兜取らないの? 取っていい?」

『わわっ、触らないで。あんまり近寄らないで!』

 一時パーティ成立と見て、垣根の取れた女性陣がリューの垂涎の肉体に手を伸ばした。二の腕に胸を押し当てられた様子を見て片眉を跳ね上げたが、リューが他の女の子を知るのはいいことだろうと思い直して目を瞑る。

 これは、そう、手塩にかけて育てた子が異性と触れあうことに抵抗を覚えた保護者の気持ちだ。


 代わりに苛立ちをあらわにしたのは優男で、綺麗な顔を醜く歪めて鼻を鳴らした。

「四六時中隠しているなんて、よっぽど哀れな顔をしているんだろうね」

 やだあ、意地悪ね、とキャッキャする連中に、気持ちが悪くなるほど腹が煮立つ。

「……あなたは見た目が恵まれているけど」

 気づいたときには言い返していた。

「内面はリューの方が圧倒的に男前みたい」

「なっ……!」

 椅子を蹴倒して立ち上がった男の赤い顔は、変わらず整っているけれど、なぜか格好いいとは思えなくなっていた。

 それでも共闘を捨てる気はなかったらしく、一方的に集合時間を告げて去って行く。一拍遅れて男の背を追う女性陣。

 残された酒を一息に呷り、ふとリューが満面の笑みを浮かべてこちらを見ていることに気づいた。


『ミナ、ああいう顔の男、なんでも許すんじゃなかったの?』

「……今までだって、他人に迷惑をかけるような場合は注意してたでしょ」

『いつもは怒ってなかったよ』

「嬉しそうにするんじゃないわよ」

 毎日行動を共にしている相棒だ。情くらい深くなる。顔のよさより仲間を優先したいくらいには。

 家族のようなものだ。家を出て、一度はなくした身近な存在。だから、結婚したいなどという妄言は撤回してくれないかなと未だ思っているが、いざ撤回をされて行く道を違えたなら、ミナは寂しくて泣くかもしれない。

 できればこのまま生温く、いつまでも仲間という立場でいたかった。


 ――不誠実なことを考えていたから、罰が当たったのかなと思う。


 目がいいからとリューが先頭を行かされて、泥濘を均すためにミナがその後ろを歩く。背後にずらずらと並ぶ男女が足が痛いだの疲れただのと抜かすから、耳が痛くてうんざりとしていた。

「あのね、少しは静かに――」

 端的に言って油断をしていた。背中からは読み取れなかったが、リューも辟易していたのだろう。警戒が疎かになっていたのであろうことは否めない。


 だが、それにしても接近は急だった。横合いから殴りつけるように飛び出してきた大きな影が、リューの体を吹き飛ばす。

「リュー!」

「あ……あれがキマイラ……? 冗談だろ!?」

 そこには絶望が鎮座していた。

 リューの本性たるドレイクよりは小柄であると思う。けれどそれよりずっと凶暴な気配が、少しの気遣いもなく人のか弱い肌を焼く。今になってわかる。リューには全く戦意がなかった。だから四肢の美しさに見惚れるだけの余裕があった。

 この魔物はどうだ。ただ死だけが押し寄せてくる。少しでも視線を気を抜けば、次の瞬間には命が尽きているだろう。


 そのキマイラは全てが黒かった。獅子の頭も、その隣で吠える山羊の頭も、胴体も、蛇の尾も、全てが黒く光を拒む。ただ、ぎょろりとした瞳だけが赤く染まって凶光を放っていた。

 キマイラという魔物は元々強敵だが、ここまで大きくはないし、人が集まれば倒せない魔物でもない。

 しかし、これは。

「ひっ、おい、逃げ、逃げるぞ!」

 逃げるのが正解だろう。自分たちなどでは絶対に倒せない。小手先の技で攪乱すれば、人に慣れぬ獣ならどうにか逃走できる可能性はあった。


「私が引きつけるから、リューを」

「もう死んでるよ!」

「わからないでしょう。リューを連れて来て!」

「できるわけないだろ!?」

「お願い……様子を確認するだけでもいいから……!」

 昂る気持ちを抑えて魔力を集める。冷静さを失ったら終わりだ。

 かちあう視線に足が震える。下がろうとする身をどうにかその場に繋ぎ止め、先手必勝と組み上げた魔術を――。

「じゃあ、お前が自分で行けよ!」

 どん、と背中を押されて全てが霧散した。

 集めた魔力が塵と消え、衝撃を受けて冷静さが軸を失う。思わぬ力に抗えず、肩から地面に転がった。

 均衡が崩れた。こちらが動いたと見て、黒きキマイラが衝撃波のような咆哮を撒き散らす。ひい、と情けない男の声と、泥に踏み込み滑る音。いつ逃げたのか、すでにかなり小さくなった女の悲鳴が遠くから聞こえた。


 同じ赤色でもリューの鱗とは大違いだ。赤い眼差しに貫かれ、なす術もなく見返すことしかできなかった。立ち上がろうとするのに、足が震えて動かない。

 黒いキマイラ。……黒いキマイラ? そうだ、確か、リューの親を殺した魔物が。

 思い当たって、なんだか笑えてきてしまう。リューの両親を殺した魔物が、次はミナを殺すのか。なんて因果だ。一緒にいたかった、リューと家族でいたかった。けれど彼の家族と同じ道を辿りたかったわけではない。

 一緒に、生きていたかった。


「う、うわああぁあ!」

 男がなんの対策もなく駆け出した。女たちは迷うことなく一目散に逃げたおかげで距離を稼げたようだが、この状態で背を向けて、注意を引かれぬはずがない。

 案の定、獅子の目が逃げる獲物に向けられた。地響きを立てて男の背を追うキマイラの腹に、ミナは気力を振り絞って氷の刃を撃ち出した。

 効いたとは言えないだろうが、鬱陶しいとは思ったようだ。足を止めたキマイラは、男を追うよりうるさい小虫へと向き直る。

 ぐるぐると唸る口元から涎が落ちた。地面を溶かし煙を上げる。爪に引き裂かれるか、牙で貫かれるか、それとも消化液のような涎で溶かされるか。


 ……リューは無事だろうか。

 一撃だけ。食らったのは牙だか爪だかの一撃だけだ。彼の人としての肉体は、その実ドレイクそのままの強度を保持している。

 気絶してくれているなら、ミナを食らったキマイラがリューを思い出さずに男を追って行くのなら、傷は負ったかもしれないが、彼は生きて戻れるかもしれない。

 リューは善良な竜だった。だが相棒であるミナは、己の背を押した男を命を賭して助けるほど善良ではない。

 お前はこれから餌になるのだ。生きのいい餌、リューの代わりの、囮に。


 覚悟を決めて魔力を充填した。限界まで振り絞るよう、強く片手に押し込める。抑え切れなくなった魔力が漏れて腕を凍らせた。コントロールが利かず、バチバチと音を立てて雷が走り出す。

 これで仕留めることができれば、本当は一番いいのだけれど。苦く笑って、ついに痺れを切らしたキマイラに拳を突き出した。

 食らい尽くそうと開けた大口に、巨大な氷の刃を叩き込み――噛み砕かれる。

 ああ、と溜息を吐いた。キマイラは無傷ではない。鋭利な牙はいくらか欠け、咥内は傷を負ったようだ。

 この怪我で戦力が削げていれば、少しは後始末をするギルドの皆に報いられる。リューが無事なら復讐に乗り出す可能性があるから、その助けにもなれるのかもしれない。


「いいお嫁さん、見つけるんだよ」

 そして、それはできれば見たくない。


 キマイラの牙を前に、ミナは諦めて目を閉じた、瞬間。

 大きな、大きな赤いものがキマイラの横腹に食いついた。ふたつの巨体が地面を転がり、森林を薙ぎ倒す。

「おれの番に手を出すな!」

 美しい、赤い鱗。一年ぶりに見る姿は、以前よりも一回り大きい。まるで彼の母のように。

 キマイラの巨体を圧倒し、強靭な顎で羊の頭を食い千切り、太い前脚で蛇を叩き潰す。その怒れる竜は、ミナのよく知る者だった。

「リュー……」

 黄金の瞳がミナに向く。弱った己の雌を見て、鋭い牙の奥から抑え切れない炎が上がった。


 叩き壊し、切り裂き、擦り潰し、抵抗の唸りが小さくなり、哀れな鳴き声へと代わり、やがて沈黙する。

 肉片を量産し、それでも堪えられぬとばかり高らかに天へと吠えたリューは、興奮冷めやらぬ荒々しい瞳のままそろそろと近寄ってきた。


「だい……じょうぶ?」

「ええ……大丈夫」

「怪我、ない?」

「膝と肩を擦り剥いただけ。腕は自分でやっちゃった。キマイラからは攻撃を受けてないの」

「……立てない?」

「ええ。魔力を使いすぎちゃったせいね。街まで運んでくれる?」

「うん、運ぶ!」

 ばさりと羽を広げたリューが、宝物を包むように大きな手にミナを乗せた。一年間テレパシーばかり使っていたからか、久しぶりの肉声がぎこちない。



 ドレイクという種族は飛ぶのが上手くない。安定しなくて揺れるのに、リューは絶対にミナを落とさないという安心感が眠気を運んできた。

 硬い手の中でごろりと寝返りを打つ。視界一杯に広がる大きな竜。大きすぎて全貌が見えないし、下からでは顎しか見えない。

 どこをということもなく眺めていると、気づいた竜がこちらに顔を向けた。

「寝てていいよ、ミナ」

「うん……。……ねえ、リュー」

「なあに?」


 鋭いラインで構成される顔の輪郭。雄々しい角は天を向き、びっしりと生えた鱗の切れ目、大きな口からは牙が覗く。切れ長の瞳は威圧感に満ちているのに、ミナを見下ろす眼差しはこの上なく優しい。

 ミナは顔のいい男が好みである。

「あなたの顔って、こんなに格好よかったかしら」

「えっ!」

 ぐらりと一段と大きく揺れた。慌ててバランスを整えるリューを見て、ミナはくすくすと笑った。

 ミナは顔のいい男が好みである。ミナが顔だけを見る限り、中身を見ない限り恋愛は成立しないが、ミナはリューの中身が最高であることを理解してしまっている。

 顔がよくて、中身もいい。胸が高鳴ってしまったからには、ここにはすでに恋が存在しているのだ。


「いつものやつは言ってくれないの?」

「えっ、け、え? ミ、ミナ! おれと、結婚してください!」

「……いいわよ。でも、まずはお付き合いからね」

 指の一本を抱き締めて唇を押しつける。

 頭上から、わー! と悶える声が聞こえてきた。

 なんだか凄く面白くて、おかしくて、声を上げて笑って、ミナはいつしか意識を失った。



 その後何があったかと言うと。


 意識を失ったミナを見て、リューは大慌てで街へと急いだ。竜の姿のまま、全力で空を飛んで。

 当然街は大騒ぎになって、冒険者や兵士たちが総出で相対したらしい。そこで誰かが言った。

「……あれって、リューの兜にそっくりじゃないか?」

 そっくりも何も本人の原寸大の顔である。そうだった、と叫んだリューは、皆の前で人型に変わった。相変わらず顔面は竜である。

 誰かが言った。

「リュー……おまえ……竜だったのか……」

 少しは隠せよ、と皆の心がひとつになった。

 あまりにも無防備な名前すぎやしないか。ドラゴネットというパーティ名といい、発覚したらまずいとは思わなかったのか。


 皆の気が削がれたところで、こうこうこういうことがあってと説明をして、とにかくミナを休ませて欲しいと震える涙声で懇願した。

 竜だったことは驚きだし、竜が脅威であることに変わりはないが、リューがいいヤツなのは誰もが知っている。その彼が哀れっぽく頼むのだから、跳ね除けられなどできなかった。

 ミナを拠点のベッドに寝かせ、つきっ切りで看病をして、その姿に街人たちは更に絆されて。

 ミナが目を覚ました頃には、リューの存在はまるっと受け入れられていた。オツキアイしてくれるって! と喜ぶ竜を、そうか、よかったなと微笑ましく見守る人間たち。自分が言えることではないが、柔軟性がありすぎるのではないだろうか。


 ちなみにミナの背を押した優男は、ハーレム役であった女たちの証言によりギルドを追放されたらしかった。

 いわく、顔はいいけど性格が悪すぎるとのことだ。


 正体が知れてから、リューはしばしば竜の姿に戻るようになった。そのたびミナを振り返る。

「ねえ、おれ格好いい? ミナ、おれのこと好き?」

「ええ、格好いいわ。好きよ」

 ……多分、彼はちょっと誤解をしていると思う。ミナはリューの、竜の姿が好きなのだと。

 顔が格好いいと言っただろう。人の形をした自分の顔が、一体どれほど変わっていると思っているのだ。サイズ以外、鱗の形も角の角度も、牙の鋭さも、目の奥に光る優しさだって変わらないのに。


 彼は大きな顔を近づけて、大きな手で抱き締めるようにミナを囲う。片目の辺りで蓋をして、宝物を独り占めするように閉じ込めた。

 馬鹿だなあと思いながらも、訂正をせずに慈しむ。

 だって、人の体をしてこんなふうに抱き締められたら照れるではないか。もしも竜の体ではできない手段で関係を深められてしまったらと思うと、いい歳をして乙女のように狼狽えてしまいそうだ。


「ねえ、ミナ、結婚して」

「そうね、近い内にね」


 近い内にちゃんと覚悟を決めるから、もう少しだけ待っててね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] えーっ可愛すぎか! 素敵なお話ありがとうございました。良い夢見られそうです
[良い点] 読ませていただきました、面白かったです!
[気になる点] 子供ができたらミナ似になるのかリュー似になるのか気になりますね! [一言] これは絆されるわー かわいいお話ありがとうございました
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