3組目 5
遅くなりすみません。
ノロノロ更新となってしまい…長い目で読んで下さるとありがたいです。
よろしくお願いします!
3ヶ月が過ぎた。
「これからナナカマド様による魔族のご利用者様の魂の再確認に入る。誰も部屋に入るなよ。」
ユズ本部長からの連絡が入った。部屋の前にはこの件に関わったもの達、ナノハナ先輩、アイ先輩はやつれているが…僕とヤマちゃんが待機し、固唾を飲んで結果を待つ。これでも真っ黒のままならば対処方針を考えなければならないからだ。
延長か、縁切りかどちらかを判断される。
そうなればこのご利用者様は私の手から離れる。魔族のご利用者様は本部長の預かりになり、教会やカルミアの王族案件だ。
「まだ黒は残っているが…白に近いグレーになっているそうだ。」
「「「はぁー。」」」
「延長はどうされますか?」
「これ以上は休ませても無理だそうだ。むしろここまで戻ったのを喜べといわれてしまったよ。イチョウの判断が良かったな。根本的な原因を取り除かないとすぐに真っ黒になるし、次は壊れる可能性が高い。心して見守る様にと仰せだ。」
本部長も心底ほっとしているようだ。この頃色々…そう。色々ありすぎてね。狼少年にバカエルフ、暴走ユニコーンに名乗りをやらかしたお客様。思い出すだけでもうお腹一杯だよ。
「指導係、エルフの指導対象者の進行具合はどうだ?」
「万事滞りなく。夜の指導がかなり聞いたようですね。わがまま言うときは他国へ転移させております。身をもって解らせることが出来るのは楽でしたよ。」
「え!?」
ナノハナ先輩…驚きの声が出ちゃってるよ。ヤマちゃんがさらっと言ってのけるから僕も呆然としてしまったけど。他国へって…被害は?ってなるよね。
「ご心配なくドラゴン国へ転移させましたから。あちらでは雨が早々降らないのでむしろありがたかったみたいですよ。縁切りされたら身柄をたまにドラゴン国へ貸してくれと言われた位です。」
清々しく笑っていらっしゃるヤマちゃんと目を合わす勇者はこのメンバーには居ないようで皆がやや斜めな方向を見ている。
「…利用価値が解って良かったな。指導は順調と。イチョウどうする?」
「お見合い係としてイチョウは魔族のお客様の魂の休息の一時停止を申告します。半身との面会を様子を見ながら随時開始していき半年後再度の停止か終了か判断します。」
「本部長承認する」
「ナノハナ了承します。」
「アイも了承する。」
「ヤマブキ、了承いたします。」
「全員の了承を確認した。イチョウ、魔道具をもってご利用者様を起こして来るように。部屋の準備は大丈夫か?」
「はい。」
僕はやっぱり重たい魔道具を持って魔族のご利用者様の側へ向かった。顔色は悪くない。むしろ隈や青白さや目の腫れもなくなったようだ。良かったな。
3のメモリの付いていたボタンを押す。
「スリープ停止。おはようございます。」
「…?おはよ…う?」
ぼーっとされていて状況が解っていないようだ。
「良い夢を見られましたか?」
「え?あー。そうか。うん。子供の頃の思い出とか行ってみたかった風景とか色々見ていた気がするんだけど…あまり覚えていないなぁ~。」
「そうなのですね。何処か痛いところとか動かせない所などありませんか?」
「むー。なんかぎこちない所はあるんだけど少し動かせば大丈夫かな?」
手を伸ばしたり足を曲げたりして動作を確認されているご利用者様。3ヶ月眠っていたのだ状態保存の魔法が使われているとはいえそれでも何も無いわけではないだろう。
「何かあればすぐに言ってくださいね。まずは療養からです。少しずつ体を戻して行きましょうね。」
「うん。」
にっこり笑って答えてくださるお客様の顔は朗らかだった。
「ねぇ。聞いてもいいかな?」
「何でも。」
ご利用者様に否はない。今回否があるのはお客様だからな。
「俺はどれぐらい寝てたの?」
「3ヶ月程ですね。」
実際はもう少し長い。魔法具には前後十五日間の猶予が設けられている。私達の日程の都合や指導の進行具合によってはずれが生じてしまうからだ。早まることも可能ではあるが早まったことがあるとは聞いたことがない。
おばかばかりとはなんとも嘆かわしい…。
「その…はっ半身とは…」
そら来た。やっぱり気になるんだな…あんなに傷つきボロボロにされた筈なのに…これが運命というのならば運命とはなんなのだろうか?
「会いたいならば直ぐにでも手配できますよ。ご利用者様が望まれればですが…ですが私達の立ち会いのもと時間も指定がありますし、帰宅も出来ません。ですが、ご利用者が望まれればです。お客様にはその権利はございませんのであちらから会いに来ることはございませんよ。」
「会わなくても良いってこと?」
驚きの表情で聞いてくるご利用者様。
「はい。会いたいですか?」
「っつ。解らないんだ。今は…会うのが怖い。」
「それならばー」
「違う!会わないと!俺の半身なんだ!何が有ろうとも手放してはダメだと悲鳴を上げる自分もいるんだ。気持ち悪いよな。」
「全く。気持ち悪くありません。自分の中に2、3人の性格が居るなんて当たり前です。」
「イチョウさんは何時も優しいな。あんたみたいな人が半身だったならば幸せだっただろうな。」
「本当にそう思われますか?」
「え?」
「ご利用者様の前にいる私はフィーリングカップルのお見合い係のイチョウなのですよ。半身のイチョウと同じではありません。私は半身となればおそらく最低な部類に入ると思いますよ。」
私の軽い威圧に顔を青くするご利用者様。イカンイカン怯えさせてしまった…スリープ明けの弱っている方に…ダメだったな。
「そっそうなのか…」
「ええ。だから比べてはなりません。貴方の半身は変わりません。縁を切るか続けるかの選択だけです。」
「…そうだな。」
「ですが、今は決める必要はございませんよ。貴方は50年我慢しました。50年かけて決めて行けば良いのです。」
「そんなにかけて…」
「全く問題ありません。」
「はっ!あははは!そうか。そうだよな。焦りすぎたみたいだ。じゃあ今はまだ会わない!腹が減ったな何か食わせてくれ!」
「はい!」
そうそう。あいつは飼い殺し位が丁度よいのよ。
その頃の隣の部屋では…
「…何とか上手く言ったようだな。」
「本部長本気ですか!あれで…上手くいったんですか!?ご利用者様に威圧かけちゃダメでしょ!」
「めっちゃ怖かった…イチョウ。吐くかと思ったわ。あの威圧いいなぁ。ユニコーンにも少しかけてくんないかな…。」
「良い威圧でしたね。お陰で生存本能が発動してイチョウの意見を肯定出来ていましたよ。強いものに従うは獣人だけではないのですねー。私も魔族の血が騒ぎましたもん。跪きそうになりました。」
「お前の跪くはちょっと…」
ふー何とかエルフと魔族の夫夫を完結させられました!
家族に終わりはないですけどねー。
次もノロノロかもしれません。すみません。